StudyMed医師国家試験

2本の物差しで腎臓を測る―CKD重症度分類はeGFRと蛋白尿で決まる

第120回医師国家試験 A問題 第8問

国試問題にチャレンジ

第120回 A問題 第8問

Chronic kidney disease 〈CKD〉,which affects around 20 million people in Japan, is a major cause of end-stage kidney disease. CKD severity is classified based on (①)and(②). Choose the correct combination for ① and ② from below.  eGFR:estimated glomerular filtration rate

  1. a.① body weight ② eGFR
  2. b.① body weight  ② proteinuria(albuminuria)
  3. c.① creatinine ② daily salt intake
  4. d.① creatinine ② eGFR
  5. e.① eGFR ② proteinuria (albuminuria)

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は英語の問題で、慢性腎臓病、CKDの重症度を何に基づいて分類するかを問うている。英文自体は難しくないので、重症度の「軸」が何なのかを思い出せるかがポイントだよ。
医学生医学生
英語の問題は少し身構えましたが、要するにCKDの重症度分類の項目を答えればいいんですね。eGFRが入るのは間違いないと思います。
ドクタードクター
そうだね。CKDの重症度はCGA分類で表す。Cは原疾患、Gは腎機能を示すGFR、Aはアルブミン尿、つまり蛋白尿だ。このうち重症度の段階を決める2つの軸はどれだと思う?
医学生医学生
GとAですね。腎臓内科を回ったとき、カルテに「G3aA2」と書かれていたのを覚えています。
ドクタードクター
まさにそれ。GFR区分のG1〜G5と、蛋白尿区分のA1〜A3を組み合わせる。だから正解は、eGFRとproteinuria(albuminuria)の組合せだ。
医学生医学生
でも、GFRが分かれば腎機能は十分評価できる気がします。なぜ蛋白尿も必要なんですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。GFRは腎臓の濾過能力そのものを表し、蛋白尿は糸球体がどれだけ傷んでいるかを表す。この2つはそれぞれ独立して、末期腎不全への進行や心血管疾患、死亡のリスクと関連するんだ。だから両方を組み合わせたヒートマップで、緑・黄・オレンジ・赤とリスクを層別化する。
医学生医学生
eGFRが保たれていても、蛋白尿が多ければリスクは高いということですね。
ドクタードクター
その通り。では、クレアチニンとeGFRの組合せはどう思う?
医学生医学生
クレアチニンも腎機能の指標なので、ありそうに見えました。
ドクタードクター
迷いやすいところだね。でもeGFRはそもそも血清クレアチニンから計算する値だから、2つは実質的に同じ「腎機能」の情報で、独立した軸にならない。しかもクレアチニンは筋肉量や年齢、性別の影響を受けるから、単独では重症度の評価に向かない。そして何より、糸球体障害を表す蛋白尿の軸が抜けているね。
医学生医学生
体重を含む組合せはどうですか。肥満もCKDに関係すると習いましたが。
ドクタードクター
肥満はCKDの発症や進展の危険因子ではあるけれど、重症度の分類基準ではない。日本人のeGFRは体表面積1.73 m²あたりに標準化した値で表すので、計算式にも体重は使わないんだ。
医学生医学生
食塩摂取量も、CKDの食事指導でよく出てきますよね。
ドクタードクター
そう、減塩はCKD管理の大事な項目で、一般に1日3 g以上6 g未満が目標とされる。24時間蓄尿の尿中ナトリウムから推定もできる。ただ、これも管理項目であって重症度分類には使わない。
医学生医学生
蛋白尿の区分は、原疾患によって測るものが違うんでしたっけ。
ドクタードクター
よく覚えていたね。糖尿病では尿アルブミン/クレアチニン比、それ以外では尿蛋白/クレアチニン比で区分する。糖尿病では早期の微量アルブミン尿を拾うことが大切だからだ。あわせてCKDの定義も確認しておこう。腎障害を示す所見、特に蛋白尿か、GFR 60未満のどちらかが3か月を超えて続くものをいう。
医学生医学生
筋肉量が少ない高齢者だと、クレアチニンからのeGFRは当てにならないこともありますよね。
ドクタードクター
鋭いね。そういうときは筋肉量の影響を受けにくいシスタチンCによるeGFRも使う。治療面では、蛋白尿を伴う場合はACE阻害薬やARBが推奨され、SGLT2阻害薬にも腎保護効果が示されている。透析導入の原疾患では糖尿病性腎症が最多で、腎硬化症が増えていることも押さえておこう。

まとめ

慢性腎臓病(CKD)の重症度は、原疾患(C)、GFR区分(G1〜G5)、蛋白尿・アルブミン尿区分(A1〜A3)からなるCGA分類で表し、重症度の段階はeGFRと蛋白尿の2軸で決まります。GFRは腎臓の濾過能力を、蛋白尿は糸球体障害の程度を反映し、それぞれ独立して末期腎不全や心血管疾患のリスクと関連するため、両者を組み合わせてリスクを層別化します。血清クレアチニンはeGFRの算出材料にすぎず筋肉量などの影響を受けるため、単独では分類の軸にならず、体重や食塩摂取量も危険因子や管理項目ではあっても分類基準ではありません。蛋白尿は糖尿病では尿アルブミン、それ以外では尿蛋白で評価し、腎障害の所見またはGFR 60未満が3か月を超えて続けばCKDと定義されます。この分類の考え方は、日常診療での腎機能評価や専門医紹介の判断、治療方針決定の土台になります。

解答・解説

正解はeです

問題文の意味

「日本で約2,000万人が罹患しているとされる慢性腎臓病(CKD)は、末期腎不全の主要な原因である。CKDの重症度は(①)と(②)に基づいて分類される。①と②に入る正しい組合せを選べ。」という英語の問題である。eGFRは推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate)を指す。

考え方

CKDの重症度分類は、国際的なガイドライン(KDIGO)および日本腎臓学会のガイドラインで共通しており、CGA分類と呼ばれる。C(Cause:原疾患)、G(GFR:腎機能)、A(Albuminuria:アルブミン尿・蛋白尿)の3要素で表し、例えば「糖尿病性腎臓病 G3aA2」「腎硬化症 G4A1」のように記載する。このうち重症度の「段階」を決める2つの軸が、GFR区分(G1〜G5)と、蛋白尿(アルブミン尿)区分(A1〜A3)である。 GFRは腎臓の濾過能力そのものを示し、蛋白尿・アルブミン尿は糸球体障害の程度を反映する。両者はそれぞれ独立して末期腎不全への進行や心血管疾患発症・死亡のリスクと関連するため、2つを組み合わせたヒートマップ(緑→黄→オレンジ→赤の順にリスクが高い)で重症度を評価する。したがって①eGFR、②proteinuria(albuminuria)の組合せが正しい。 血清クレアチニンはeGFRを算出する材料ではあるが、筋肉量・年齢・性別の影響を受けるため単独では腎機能の評価指標として不十分であり、重症度分類の軸には用いない。体重や食塩摂取量も分類の基準ではない。

選択肢考察

  1. ×a.  ① body weight ② eGFR

    eGFRは重症度分類の軸の一つであるが、体重(body weight)は分類基準に含まれない。なお、日本人のeGFR推算式は血清クレアチニン・年齢・性別から求め、体表面積1.73 m²あたりに標準化した値で表すため、体重は計算式にも用いない。

  2. ×b.  ① body weight  ② proteinuria(albuminuria)

    蛋白尿(アルブミン尿)は重症度分類の軸の一つとして正しいが、もう一方の軸はGFRであり、体重ではない。体重(肥満)はCKDの発症・進展の危険因子ではあるが、重症度の分類基準ではない。

  3. ×c.  ① creatinine ② daily salt intake

    1日食塩摂取量はCKDの食事療法で重要な管理項目(一般に3 g以上6 g未満/日が目標)であり、24時間蓄尿の尿中ナトリウムから推定できるが、重症度分類には用いない。クレアチニン単独も分類の軸ではない。

  4. ×d.  ① creatinine ② eGFR

    eGFRは血清クレアチニンを基に算出するため、両者は実質的に同じ「腎機能」の情報であり、2つの独立した軸にはならない。また血清クレアチニン値は筋肉量・年齢・性別の影響を受け、同じ値でも腎機能が大きく異なりうるため、単独では重症度評価に適さない。糸球体障害を反映する蛋白尿(アルブミン尿)の軸が欠けている。

  5. ○e.  ① eGFR ② proteinuria (albuminuria)

    CKDの重症度は、腎機能を表すGFR区分(G1〜G5、G3はG3aとG3bに細分)と、糸球体障害を表す蛋白尿区分(A1〜A3)の組合せで分類される。原疾患が糖尿病の場合は尿アルブミン/クレアチニン比、それ以外の場合は尿蛋白/クレアチニン比で区分する。両者を組み合わせることで、末期腎不全への進行や心血管死亡のリスクを層別化できる。

CKDの定義

以下の①、②のいずれか、または両方が3か月を超えて持続するもの。 ①尿異常(特に0.15 g/gCr以上の蛋白尿、30 mg/gCr以上のアルブミン尿)、画像診断・血液検査・病理での腎障害の存在 ②GFR<60 mL/分/1.73 m² 従来の「慢性腎不全」よりも早期の段階を含む概念で、末期腎不全だけでなく心血管疾患の重要な危険因子でもある。

GFR区分(mL/分/1.73 m²)

G1:≧90(正常または高値) G2:60〜89(正常または軽度低下) G3a:45〜59(軽度〜中等度低下) G3b:30〜44(中等度〜高度低下) G4:15〜29(高度低下) G5:<15(末期腎不全)

蛋白尿区分

・糖尿病:尿アルブミン/Cr比 A1(正常)<30 mg/gCr、A2(微量アルブミン尿)30〜299 mg/gCr、A3(顕性アルブミン尿)≧300 mg/gCr ・糖尿病以外(高血圧、腎炎、多発性嚢胞腎など):尿蛋白/Cr比 A1(正常)<0.15 g/gCr、A2(軽度蛋白尿)0.15〜0.49 g/gCr、A3(高度蛋白尿)≧0.50 g/gCr

eGFRの推算

日本人ではクレアチニンに基づく推算式 eGFRcreat=194×Cr^(−1.094)×年齢^(−0.287)(女性は×0.739)を用いる。筋肉量が極端に少ない(多い)人では誤差が大きくなるため、筋肉量の影響を受けにくい血清シスタチンCによる推算式(eGFRcys)も用いられる。

CKDの主な原疾患

糖尿病性腎症(糖尿病性腎臓病)、高血圧に伴う腎硬化症、慢性糸球体腎炎(IgA腎症など)、多発性嚢胞腎など。透析導入の原疾患としては糖尿病性腎症が最多で、腎硬化症が増加傾向にある。

管理の要点

生活習慣の改善(禁煙、減塩、肥満の是正)、血圧管理、血糖管理、脂質管理、貧血・骨ミネラル代謝異常・高カリウム血症・代謝性アシドーシスへの対応。蛋白尿を伴う場合はRA系阻害薬(ACE阻害薬・ARB)が推奨され、SGLT2阻害薬も腎保護効果が示されている。

POINT

・CKDの重症度はCGA分類(原疾患・GFR区分・蛋白尿区分)で表し、重症度の軸はeGFR(G1〜G5)と蛋白尿/アルブミン尿(A1〜A3)である。 ・糖尿病では尿アルブミン、それ以外では尿蛋白で区分する。 ・CKDの定義:腎障害の所見またはGFR<60 mL/分/1.73 m²が3か月を超えて持続。 ・血清クレアチニン単独は筋肉量などの影響を受けるため、重症度評価には用いない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。