StudyMed医師国家試験

年齢と性別がなければ腎機能は測れない―CKD重症度分類とeGFRの関係

第118回医師国家試験 D問題 第12問

国試問題にチャレンジ

第118回 D問題 第12問

慢性腎臓病〈CKD〉の重症度分類に必要なのはどれか。2つ選べ。

  1. a.血圧
  2. b.性別
  3. c.尿比重
  4. d.年齢
  5. e.腹囲

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は慢性腎臓病、CKDの重症度分類に何が必要かを問う問題だ。一見すると腎臓と関係が薄そうな項目も並んでいるけれど、ポイントは「重症度分類の各要素を、実際に何から求めているか」まで遡って考えることだ。まず、CKDの重症度分類の枠組みを覚えているかな。
医学生医学生
CGA分類ですよね。原疾患のC、GFR区分のG、蛋白尿区分のAの3つです。
ドクタードクター
その通り。たとえば「糖尿病 G3aA2」のように記載して、末期腎不全や心血管死亡のリスクを色分けした表で評価する。では、G区分を決めるGFRは日常診療でどうやって求めている?
医学生医学生
イヌリンクリアランスで実測する……のは手間がかかるので、血清クレアチニンから計算するeGFRを使っていると思います。
ドクタードクター
そうだね。日本人向けの推算式は、194に血清クレアチニンのマイナス1.094乗と年齢のマイナス0.287乗を掛け、女性ならさらに0.739を掛ける。この式に入っている変数を考えると、答えが見えてこないかな。
医学生医学生
クレアチニン以外には年齢と性別ですね。でも、どうして年齢や性別で補正する必要があるんですか。
ドクタードクター
いい疑問だ。クレアチニンは筋肉で作られるから、血清値は腎機能だけでなく筋肉量にも左右される。女性や高齢者は筋肉量が少なく、同じ腎機能でも血清クレアチニンが低めに出てしまう。それを補正しないと腎機能を過大評価してしまうんだ。だから同じクレアチニン値でも、女性や高齢者ほどeGFRは低く算出される。
医学生医学生
なるほど。生理学の実習でクレアチニンクリアランスを計算したときは、性別や年齢を意識していませんでした。
ドクタードクター
実測なら補正は要らないからね。推算式だからこそ、これらが欠かせない変数になる。つまり年齢と性別が分からなければeGFRを出せず、G区分が決まらない。だから正解は性別と年齢の2つだ。ほかの選択肢も見ておこう。血圧はどうかな。
医学生医学生
高血圧は腎硬化症の原因になりますし、CKDでは降圧目標も決まっているので、必要な気がしてしまいます。
ドクタードクター
迷うのは自然だよ。ただ、高血圧は原疾患としてC区分に書かれることはあっても、血圧の値そのものが区分を決めるわけではない。重要な危険因子であり管理対象だけれど、重症度分類の項目ではないんだ。
医学生医学生
尿比重は尿検査の項目なので、A区分に関係しそうに思いました。
ドクタードクター
尿比重は濃縮・希釈の程度を示すもので、水分摂取や脱水で大きく変動する。A区分に使うのは、糖尿病なら尿アルブミン/クレアチニン比、それ以外なら尿蛋白/クレアチニン比だ。随時尿でもクレアチニンで割ることで、尿の濃さの影響を打ち消せるわけだね。
医学生医学生
腹囲はメタボリックシンドロームの診断基準でしたよね。CBTの勉強で、男性85 cm、女性90 cmと覚えました。
ドクタードクター
よく覚えているね。肥満やメタボはCKDの危険因子だけれど、分類の項目ではない。ちなみにeGFRは体表面積1.73 m²あたりに標準化した値なので、計算に身長や体重、腹囲は使わないよ。
医学生医学生
臨床実習で腎臓内科を回ったとき、カルテに自動でeGFRが表示されていましたが、裏で年齢と性別を使っていたんですね。
ドクタードクター
そういうこと。臨床での注意点もまとめておこう。eGFRはあくまで推算値だから、筋肉量が極端に多いアスリートや、長期臥床・四肢切断・低栄養の人では誤差が大きくなる。その場合は筋肉量の影響を受けにくいシスタチンCによる推算式を使うか、実測を考える。ただしシスタチンCの式にも年齢と性別は入っている。
医学生医学生
成人の式は小児には使えないんでしょうか。
ドクタードクター
この式は18歳以上が対象で、小児には別の推算式がある。それから薬の投与量調整では、体表面積で補正しない個人のGFRを使う場面があることも覚えておくといい。CKDの定義は、蛋白尿などの腎障害所見かGFR 60未満が3か月を超えて続くこと。区分の境界値とあわせて整理しておこう。

まとめ

CKDの重症度は、原疾患(C)、GFR区分(G)、蛋白尿区分(A)を組み合わせたCGA分類で評価します。G区分は血清クレアチニンから求めるeGFRで判定し、日本人の推算式には年齢と性別(女性は0.739を掛ける)が組み込まれているため、この2つがなければ分類できません。これはクレアチニンが筋肉量に依存し、女性や高齢者では腎機能が同じでも低めに出ることを補正するためです。A区分は尿アルブミン/クレアチニン比または尿蛋白/クレアチニン比で判定し、血圧・尿比重・腹囲は危険因子や関連指標ではあっても分類項目ではありません。筋肉量が極端な人ではシスタチンCによる推算や実測を考慮するなど、eGFRの成り立ちを理解しておくことは、腎機能評価や薬剤の投与量調整を正しく行うための基本になります。

解答・解説

正解はb, dです

慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の重症度は、日本ではCGA分類で表す。C(Cause:原疾患)、G(GFR区分:腎機能)、A(Albuminuria:アルブミン尿・蛋白尿区分)の3要素を組み合わせ、例えば「糖尿病 G3aA2」のように記載し、末期腎不全や心血管死亡のリスクを色分けしたヒートマップで評価する。 このうちG区分の判定に用いるGFR(糸球体濾過量)は、日常診療ではイヌリンクリアランスで実測することは少なく、血清クレアチニン値から推算した推算GFR(estimated GFR:eGFR)を用いる。日本人向けの推算式(18歳以上)は次のとおりである。 eGFRcreat(mL/分/1.73 m²)=194 × 血清Cr(mg/dL)^−1.094 × 年齢(歳)^−0.287 女性の場合は、上式の値に0.739を掛ける。 つまり、血清クレアチニン値に加えて「年齢」と「性別」が分からなければeGFRを算出できず、G区分を決められない。クレアチニンは筋肉量に依存して産生されるため、筋肉量の少ない女性や高齢者では同じ腎機能でも血清Crが低めに出る。その影響を補正するために年齢と性別が式に組み込まれている。筋肉量が極端に少ない人などではシスタチンCによる推算式も用いられるが、こちらも年齢と性別を変数に含む。 A区分は尿アルブミン/クレアチニン比(糖尿病の場合)または尿蛋白/クレアチニン比(それ以外)で判定し、C区分は原疾患である。したがって、選択肢のうち重症度分類に必要なのは性別と年齢の2つとなる。

選択肢考察

  1. ×a.  血圧

    不要。血圧はeGFRの計算式にもA区分の判定にも含まれない。高血圧は原疾患(高血圧性腎硬化症)としてC区分に記載されることや、CKD進展・心血管疾患の重要な危険因子として管理目標(降圧)が定められていることはあるが、血圧値そのものが重症度区分を決める項目ではない。

  2. ○b.  性別

    必要。日本人のeGFR推算式では、女性の場合に算出値へ0.739を掛けて補正する。女性は男性より筋肉量が少なく血清クレアチニン値が低めになるため、同じCr値でも腎機能は男性より低いと推定する必要があるからである。性別がわからなければeGFR、すなわちG区分を決定できない。

  3. ×c.  尿比重

    不要。尿比重は尿の濃縮・希釈の程度を反映する指標で、水分摂取量や脱水の有無で大きく変動し、CKDの重症度分類には用いない。尿所見のうち分類に用いるのは、尿アルブミン/クレアチニン比(mg/gCr)または尿蛋白/クレアチニン比(g/gCr)である。

  4. ○d.  年齢

    必要。eGFRの推算式には年齢(歳)が「年齢^−0.287」の形で組み込まれており、同じ血清クレアチニン値でも高齢になるほどeGFRは低く算出される。加齢に伴う筋肉量の減少でクレアチニン産生が減る分を補正するためである。年齢がわからなければG区分を決定できない。

  5. ×e.  腹囲

    不要。腹囲は内臓脂肪蓄積の指標で、メタボリックシンドロームの診断基準(男性85 cm以上、女性90 cm以上)に用いられる。肥満やメタボリックシンドロームはCKDの危険因子ではあるが、重症度分類の項目には含まれない。なお、eGFRは体表面積1.73 m²あたりに標準化した値であり、計算に身長・体重や腹囲は用いない。

CKDの定義

以下の①、②のいずれか、または両方が3か月を超えて持続するもの。 ①腎障害の存在を示す所見:特に0.15 g/gCr以上の蛋白尿(30 mg/gCr以上のアルブミン尿)。そのほか尿沈渣異常、画像診断・病理での腎の形態異常など。 ②GFR<60 mL/分/1.73 m²

GFR区分(mL/分/1.73 m²)

・G1:≧90(正常または高値) ・G2:60〜89(正常または軽度低下) ・G3a:45〜59(軽度〜中等度低下) ・G3b:30〜44(中等度〜高度低下) ・G4:15〜29(高度低下) ・G5:<15(末期腎不全)

蛋白尿区分

・糖尿病:尿アルブミン/Cr比で A1 30未満、A2 30〜299(微量アルブミン尿)、A3 300以上(mg/gCr) ・高血圧、腎炎、多発性嚢胞腎、移植腎、不明、その他:尿蛋白/Cr比で A1 0.15未満、A2 0.15〜0.49、A3 0.50以上(g/gCr)

eGFR利用上の注意

・あくまで推算値であり、実測GFRとの間にずれがある。 ・筋肉量が極端に多い人・少ない人(アスリート、四肢切断、長期臥床、低栄養など)ではクレアチニンに基づくeGFRの誤差が大きくなる。この場合は筋肉量の影響を受けにくいシスタチンCによる推算式(これも年齢・性別を用いる)や、イヌリンクリアランス・24時間蓄尿によるクレアチニンクリアランスでの実測を考慮する。 ・上記の成人式は18歳以上に用いる。小児には別の推算式がある。 ・薬物の投与量調整では、体表面積で補正しない個人のGFR(mL/分)を用いることがある。

POINT

・CKDの重症度はCGA分類(原疾患・GFR区分・蛋白尿区分)で評価する。 ・GFR区分はeGFRで決める。日本人のeGFRcreat=194 × Cr^−1.094 × 年齢^−0.287(女性は×0.739)。 ・よってeGFRの算出には血清Crのほかに年齢と性別が必要。 ・蛋白尿区分は糖尿病なら尿アルブミン/Cr比、それ以外は尿蛋白/Cr比で判定する。 ・血圧、尿比重、腹囲は重症度分類の項目ではない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。