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生後数日の吐血にPIVKA-Ⅱ―新生児メレナとビタミンKの深い関係

第108回医師国家試験 B問題 第17問

国試問題にチャレンジ

第108回 B問題 第17問

生後1週以内の新生児においてPIVKA-Ⅱを測定すべき症候はどれか。

  1. a.下痢
  2. b.黄疸
  3. c.吐血
  4. d.多呼吸
  5. e.チアノーゼ

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、PIVKA-Ⅱという検査が何を意味するかを知っていれば解ける問題だ。まずPIVKA-Ⅱが何の指標なのか、そして生後1週以内の新生児に何が起こりやすいのか、この2点を結びつけて考えよう。
医学生医学生
PIVKA-Ⅱって、肝細胞癌の腫瘍マーカーとして消化器内科の講義で習いました。新生児でも測るんですね。
ドクタードクター
そう、成人ではAFPと並ぶ肝細胞癌マーカーとして有名だね。でも名前を分解すると本質が見える。protein induced by vitamin K absence or antagonist、つまりビタミンKが足りないときに出てくる異常なプロトロンビンなんだ。
医学生医学生
ビタミンK依存性の凝固因子はⅡ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹでしたよね。CBTの前に「肉納豆」で覚えました。
ドクタードクター
覚え方まで準備万端だね。それらの因子は肝臓でビタミンK依存性にγ-カルボキシル化されて、初めてカルシウムと結合して働けるようになる。ビタミンKが足りないとこの修飾ができず、機能のないプロトロンビンが血中に出てくる。それがPIVKA-Ⅱで、ビタミンK欠乏の鋭敏な指標になるんだ。
医学生医学生
なるほど。でも新生児がビタミンK不足になるのはなぜですか。
ドクタードクター
理由はいくつかある。ビタミンKは胎盤を通りにくくて生まれたときの蓄えが少ない、母乳中のビタミンKも少ない、腸内細菌叢がまだ育っていないので腸での産生も乏しい、さらに肝臓の凝固因子合成能も未熟だ。
医学生医学生
だとすると、測るべきなのは出血のサインですね。黄疸も肝臓絡みなので少し迷いましたが。
ドクタードクター
その迷いは大事なポイントだから後で触れよう。生後2〜7日ごろに起こる古典型の新生児ビタミンK欠乏性出血症では、消化管出血による吐血や下血、いわゆる新生児メレナが典型だ。だから吐血が正解になる。PIVKA-Ⅱ高値とPT延長が診断の根拠になるよ。
医学生医学生
新生児の吐血なら、全部ビタミンK欠乏と考えていいんでしょうか。
ドクタードクター
そこは注意が必要だ。分娩時や授乳時に飲み込んだ母体の血液を吐いているだけの仮性メレナもある。これはApt試験で区別する。アルカリに強い胎児ヘモグロビンが主体なら児自身の血液で真性メレナ、すぐ変性する成人ヘモグロビンなら母体血と判断するんだ。真性メレナならビタミンKの静注で速やかに止血が得られる。
医学生医学生
では黄疸はどうして違うんですか。胆道閉鎖症だとビタミンKの吸収が落ちるって小児科の講義で聞いた気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。胆汁うっ滞では脂溶性のビタミンKが吸収されにくくなり、生後2週〜数か月の乳児期に頭蓋内出血などのビタミンK欠乏性出血症を起こしうる。その段階では凝固能やPIVKA-Ⅱの評価が必要になる。でも新生児の黄疸に対して最初に測るのは総ビリルビンと直接・間接ビリルビンで、生理的黄疸か、溶血か、胆汁うっ滞かを見分けるのが先なんだ。
医学生医学生
下痢も、続けばビタミンKの吸収に影響しそうですが。
ドクタードクター
長引く下痢や抗菌薬投与は乳児期のビタミンK欠乏の誘因にはなりうる。ただ早期新生児の下痢は感染性腸炎や乳糖不耐症、ミルクアレルギーなどをまず考えて、便培養や脱水の評価を優先する。PIVKA-Ⅱを真っ先に測る意義は乏しいね。
医学生医学生
多呼吸やチアノーゼは呼吸器や心臓の問題なので、ビタミンKとは結びつかないですね。NICUの見学では、まず胸部X線と血液ガスを見ていました。
ドクタードクター
その通り。多呼吸なら新生児一過性多呼吸や呼吸窮迫症候群、胎便吸引症候群、チアノーゼならチアノーゼ性先天性心疾患や新生児遷延性肺高血圧症などを考えて、SpO2、血液ガス、心エコーで評価する。凝固とは別の軸だね。
医学生医学生
出血傾向があるからPIVKA-Ⅱ、という流れで考えればいいんですね。病型も分かれていましたっけ。
ドクタードクター
3つに分けて押さえよう。生後24時間以内の早発型は母体の抗てんかん薬やワルファリン内服などが関与する。生後2〜7日の古典型が今回の新生児メレナ。生後2週〜6か月、特に1〜2か月に多い遅発型は母乳栄養児や胆汁うっ滞の児に起こり、頭蓋内出血で重い後遺症を残すことがある。検査ではPTとAPTTが延長し、血小板数やフィブリノゲンは通常正常なのも特徴だ。
医学生医学生
だから予防的にビタミンK2シロップを飲ませるんですね。産科の実習で新生児に投与しているのを見ました。
ドクタードクター
そう。日本では出生時、退院時、1か月健診時の3回投与が広く行われてきたし、近年は生後3か月まで週1回続ける方法も推奨されている。特に遅発型の頭蓋内出血を防ぐ意味が大きいから、保護者への説明も含めて大切な予防策なんだ。

まとめ

PIVKA-ⅡはビタミンK欠乏時に肝臓で作られる機能のない異常プロトロンビンで、ビタミンK欠乏の鋭敏な指標です。新生児は胎盤移行の乏しさ、母乳中の含量の少なさ、腸内細菌叢の未発達などからビタミンK欠乏に陥りやすく、生後2〜7日の古典型では吐血・下血(新生児メレナ)を起こすため、早期新生児の吐血ではPIVKA-ⅡとPTを調べます。母体血を飲み込んだ仮性メレナとはApt試験で鑑別し、黄疸ではまずビリルビン分画、多呼吸やチアノーゼでは呼吸・循環の評価が優先されます。早発型・古典型・遅発型の病型と、ビタミンK2シロップによる予防の意義を合わせて理解しておくことが、新生児期の出血を見逃さない臨床判断につながります。

解答・解説

正解はcです

PIVKA-Ⅱ〈protein induced by vitamin K absence or antagonist-Ⅱ〉は、ビタミンKが不足しているとき(またはワルファリンなどのビタミンK拮抗薬の作用下)に肝臓で作られる、機能をもたない異常なプロトロンビンである。凝固因子Ⅱ(プロトロンビン)、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹは、肝臓でビタミンK依存性にγ-カルボキシル化を受けて初めてカルシウムと結合し、凝固に働けるようになる。ビタミンKが欠乏するとこの修飾が行われず、不完全な因子が血中に出てくる。そのためPIVKA-Ⅱの上昇はビタミンK欠乏の鋭敏な指標となる。 新生児はビタミンK欠乏に陥りやすい。理由は、①ビタミンKが胎盤を通過しにくく出生時の貯蔵量が少ない、②母乳中のビタミンK含量が少ない、③腸内細菌叢が未発達で腸内でのビタミンK産生が乏しい、④肝臓での凝固因子合成能が未熟、などである。生後2〜7日ごろに発症する古典的な新生児ビタミンK欠乏性出血症では、消化管出血による吐血や下血(新生児メレナ)が典型的な症状となる。 したがって、生後1週以内の新生児でビタミンK欠乏性出血症を疑ってPIVKA-Ⅱを測定すべき症候は、出血症状である吐血である。

選択肢考察

  1. ×a.  下痢

    生後1週以内の新生児の下痢は、感染性腸炎、乳糖不耐症、ミルクアレルギー(新生児・乳児消化管アレルギー)などを考える症候であり、それ自体は出血症状ではない。長期の下痢や抗菌薬投与、吸収不良が続く乳児ではビタミンK欠乏の誘因となりうるが、早期新生児の下痢でまずPIVKA-Ⅱを測定する意義は乏しい。便培養、電解質、脱水の評価などが優先される。

  2. ×b.  黄疸

    新生児の黄疸では、まず総ビリルビンと直接(抱合型)・間接(非抱合型)ビリルビンを測定し、生理的黄疸、血液型不適合などによる溶血性疾患、胆道閉鎖症・新生児肝炎などの胆汁うっ滞を鑑別する。胆汁うっ滞では脂溶性ビタミンであるビタミンKの吸収が障害され、乳児期(生後2週〜数か月)のビタミンK欠乏性出血症(頭蓋内出血など)の原因となるため、その段階では凝固能やPIVKA-Ⅱの評価が必要になる。しかし黄疸そのものに対して最初に測定すべき項目はビリルビンであり、PIVKA-Ⅱではない。

  3. ○c.  吐血

    生後1週以内の吐血では、ビタミンK欠乏による消化管出血(新生児メレナ)を鑑別する必要があり、PIVKA-Ⅱの上昇とプロトロンビン時間(PT)の延長がその診断根拠となる。なお新生児の吐血・下血には、分娩時や授乳時に飲み込んだ母体血を吐き出す仮性メレナもある。両者はApt試験(アルカリ変性試験)で区別でき、アルカリに抵抗性の胎児ヘモグロビン〈HbF〉が主体なら児の血液(真性メレナ)、容易に変性する成人ヘモグロビン〈HbA〉なら母体血(仮性メレナ)と判断する。真性メレナであればビタミンKの静注で速やかに止血が得られる。

  4. ×d.  多呼吸

    新生児の多呼吸(おおむね呼吸数60回/分以上)は、新生児一過性多呼吸、呼吸窮迫症候群、胎便吸引症候群、肺炎、気胸、先天性心疾患、敗血症、代謝性アシドーシスなどを考える所見である。評価には胸部エックス線、血液ガス分析、SpO2、血糖、炎症反応などを用いる。ビタミンK欠乏とは直接の関係がなく、PIVKA-Ⅱを測定する根拠にはならない。

  5. ×e.  チアノーゼ

    チアノーゼは毛細血管血中の還元ヘモグロビン(デオキシヘモグロビン)がおよそ5 g/dL以上になると現れる皮膚・粘膜の青紫色調である。新生児では呼吸器疾患、チアノーゼ性先天性心疾患、新生児遷延性肺高血圧症、多血症、メトヘモグロビン血症などを考え、SpO2、血液ガス分析(PaO2)、ヘモグロビン値、心エコーなどで評価する。ビタミンK欠乏とは関係しない。

新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症の病型

・早発型:生後24時間以内。母体の抗てんかん薬(フェニトイン、フェノバルビタールなど)、抗結核薬、ワルファリン服用などが関与する。 ・古典型(新生児メレナ):生後2〜7日。消化管出血(吐血・下血)が主体。 ・遅発型(乳児ビタミンK欠乏性出血症):生後2週〜6か月ごろ、特に1〜2か月に多い。母乳栄養児や、胆道閉鎖症などの胆汁うっ滞・肝疾患、長期の抗菌薬投与・下痢のある児に起こりやすく、頭蓋内出血で発症して重い後遺症を残すことがある。

検査所見

PTおよび活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長、ヘパプラスチンテスト低値、PIVKA-Ⅱ陽性(高値)。血小板数やフィブリノゲンは通常正常である。

予防と治療

日本では出生時、産科退院時(生後4〜7日ごろ)、1か月健診時の3回、ビタミンK2シロップを経口投与する方法が広く行われてきた。2021年の日本小児科学会などの提言では、生後3か月まで週1回投与を続ける方法(計13回)が推奨されている。発症時にはビタミンK製剤の静注を行う。

PIVKA-Ⅱの他の用途

成人では肝細胞癌の腫瘍マーカー(AFPとともに用いられる)として知られる。ワルファリン内服中やビタミンK欠乏状態でも上昇するため、腫瘍マーカーとして解釈する際には注意が必要である。

POINT

・PIVKA-ⅡはビタミンK欠乏で出現する異常プロトロンビンで、ビタミンK欠乏の指標となる。 ・ビタミンK依存性凝固因子はⅡ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ(ほかにプロテインC・S)。 ・生後2〜7日の吐血・下血は新生児メレナ(ビタミンK欠乏)を疑い、PIVKA-ⅡとPTを調べる。 ・母体血嚥下による仮性メレナとの鑑別にはApt試験を用いる。 ・黄疸ではまずビリルビン分画を測定する。 ・成人ではPIVKA-Ⅱは肝細胞癌の腫瘍マーカー。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。