生後2週の発熱は「様子見」厳禁―新生児の熱が告げる重症細菌感染症
第118回医師国家試験 F問題 第41問
国試問題にチャレンジ
日齢14の女児。夕方からの発熱を主訴に両親に連れられて夜間救急外来を受診した。活気は不良。完全母乳栄養で哺乳は減弱している。体温38.8℃。脈拍160/分。呼吸数60/分。SpO2 98%(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない。大泉門は開大し軽度膨隆している。 両親への説明で適切なのはどれか。
- a.「明日まで経過をみましょう」
- b.「抗菌薬を内服させましょう」
- c.「入院して治療をしましょう」
- d.「腋窩部や鼠径部を冷却しましょう」
- e.「母乳栄養を人工栄養へ変更しましょう」
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
生後28日未満の新生児の発熱は、免疫の未熟さから敗血症・細菌性髄膜炎・尿路感染症などの重症細菌感染症を強く疑い、全身状態にかかわらず入院・精査・経静脈的抗菌薬投与を行うのが原則です。乳児では項部硬直などの髄膜刺激症状が出にくく、活気不良・哺乳低下・大泉門膨隆が髄膜炎を疑う重要な手がかりとなります。精査では血液培養・尿培養・髄液検査を採取し、GBS・大腸菌・リステリアをカバーするアンピシリンとセフォタキシムの併用などを結果を待たずに開始します。「翌日まで経過観察」や「内服抗菌薬で帰宅」は重篤な転帰を招きうる不適切な対応で、冷却や栄養変更は根本的な解決になりません。年齢によって発熱の重みが大きく異なることを理解しておくことは、小児救急の現場で子どもの命を守る判断の基盤になります。
解答・解説
正解はcです
所見の整理
・日齢14の新生児(生後28日未満)である。 ・夕方からの発熱で夜間救急外来を受診。体温38.8℃と38℃以上の発熱がある。 ・活気不良、哺乳力の低下(完全母乳栄養)がみられ、全身状態が悪い(いわゆる not doing well)。 ・脈拍160/分、呼吸数60/分は新生児の正常範囲(心拍数おおむね120〜160/分、呼吸数おおむね40〜60/分)の上限にあり、発熱に伴う頻脈・多呼吸傾向と解釈できる。SpO2は保たれ、心音・呼吸音に異常はなく、明らかな呼吸器・循環器の局所所見はない。 ・腹部所見は正常で、肝脾腫もない。 ・大泉門が開大し、軽度膨隆している。新生児では大泉門が開いていること自体は正常だが、膨隆は頭蓋内圧亢進を示唆する重要な所見である。
診断の考え方
新生児の発熱は、それだけで重症細菌感染症(敗血症、細菌性髄膜炎、尿路感染症など)を強く疑うべき状態である。新生児は免疫機能が未熟で、感染が局所にとどまらず急速に全身へ広がりやすく、症状も「活気がない」「哺乳が弱い」といった非特異的なものになりやすい。本例では発熱に加えて活気不良・哺乳低下があり、さらに大泉門膨隆を伴うことから、細菌性髄膜炎および敗血症を最も疑う。新生児期の主な起因菌はB群溶血性レンサ球菌(GBS)、大腸菌、リステリアである。
設問の考え方
生後3か月未満、とくに新生児の発熱では、全身状態にかかわらず入院のうえで敗血症の精査(血液培養、尿検査・尿培養、髄液検査など)を行い、結果を待たずに抗菌薬の経静脈投与を開始するのが原則である。本例は全身状態も悪く、大泉門膨隆という髄膜炎を示唆する所見もあるため、ただちに入院治療が必要であることを両親に説明するのが適切である。帰宅させて経過をみる、外来で内服薬を処方する、解熱のための冷却のみを指導する、といった対応は重篤な転帰を招きうる。
選択肢考察
- ×a. 「明日まで経過をみましょう」
新生児の発熱で、しかも活気不良・哺乳低下・大泉門膨隆を伴う本例は、細菌性髄膜炎や敗血症が疑われる緊急事態である。翌日まで様子をみると、その間に敗血症性ショックや痙攣、意識障害へ進行し、死亡や重い神経後遺症につながるおそれがある。治療開始の遅れが予後を左右するため、経過観察は誤りであり、禁忌肢に相当すると考えてよい。
- ×b. 「抗菌薬を内服させましょう」
抗菌薬が必要という方向性自体は正しいが、投与経路と治療の場が不適切である。内服薬は吸収が不確実で、髄液中に十分な濃度を得ることも難しく、細菌性髄膜炎や敗血症の治療にはならない。哺乳が低下している新生児では確実な内服自体も困難である。さらに、培養検体(血液・髄液・尿)を採取する前に抗菌薬を投与すると、起因菌の同定ができなくなる問題もある。入院して各種培養を採取したうえで、抗菌薬を経静脈的に投与すべきである。
- ○c. 「入院して治療をしましょう」
新生児の発熱は重症細菌感染症の可能性が高く、入院精査・治療が原則である。本例は活気不良・哺乳低下に加え大泉門膨隆があり、細菌性髄膜炎や敗血症が強く疑われる。入院のうえで血液培養、尿検査・尿培養、髄液検査などを行い、結果を待たずに起因菌(GBS、大腸菌、リステリアなど)をカバーする抗菌薬(例: アンピシリンと第3世代セフェム系のセフォタキシムの併用)を経静脈的に開始する。あわせて輸液などの全身管理を行う。両親への説明として最も適切である。
- ×d. 「腋窩部や鼠径部を冷却しましょう」
腋窩や鼠径部など太い血管の走る部位を冷やすクーリングは、発熱時の不快感を和らげる対症療法にすぎず、発熱の原因である感染症を治療するものではない。本例で冷却だけを指示して帰宅させれば、重症感染症の診断・治療が遅れる。また新生児は体温調節機能が未熟で、過度の冷却は低体温を招くおそれもある。
- ×e. 「母乳栄養を人工栄養へ変更しましょう」
哺乳低下は重症感染症による全身状態の悪化の表れであり、栄養の種類が原因ではない。人工乳へ変更しても改善は見込めない。むしろ母乳には分泌型IgAなどの感染防御因子が含まれており、母乳栄養をやめる理由はない。
乳児早期の発熱への基本的な対応
・生後3か月未満の発熱(一般に38.0℃以上)では、一定の割合(おおむね1割前後)で重症細菌感染症(尿路感染症、菌血症・敗血症、細菌性髄膜炎など)が見つかるとされる。とくに生後28日未満の新生児ではリスクが最も高い。 ・新生児の発熱は、全身状態がよく見えても原則として入院とし、血液培養、尿検査・尿培養(カテーテル採尿など清潔な方法で採取)、髄液検査を含む精査を行い、抗菌薬の経静脈投与を開始する。 ・生後1〜3か月では、全身状態や血液検査・尿検査の結果に基づき低リスクと判断できれば外来管理が選択されることもあるが、新生児では慎重な対応が基本である。
新生児の細菌性髄膜炎
・主な起因菌:B群溶血性レンサ球菌(GBS)、大腸菌、リステリア・モノサイトゲネス。 ・症状:発熱(逆に低体温のこともある)、活気不良、哺乳不良、不機嫌、易刺激性、嘔吐、無呼吸、痙攣など非特異的なものが多い。項部硬直などの典型的な髄膜刺激症状は乳児では出にくく、大泉門膨隆が頭蓋内圧亢進の手がかりになる。 ・初期治療:アンピシリン(リステリアやGBSをカバー)と第3世代セフェム系のセフォタキシム(大腸菌などのグラム陰性桿菌をカバー)の併用が代表的である。セフトリアキソンは新生児では高ビリルビン血症を悪化させるおそれやカルシウム含有輸液との沈殿の問題があり、使用に注意を要する。 ・合併症:硬膜下水腫・膿瘍、水頭症、難聴、てんかん、発達障害などの後遺症を残しうる。
新生児のバイタルサインの目安
心拍数はおおむね120〜160/分、呼吸数はおおむね40〜60/分である。発熱があると心拍数・呼吸数は上昇しやすい。
POINT
・新生児(生後28日未満)の発熱は重症細菌感染症を疑い、原則として入院・精査・経静脈的抗菌薬投与を行う。 ・生後3か月未満の発熱は重症細菌感染症のリスクが高く、慎重な評価が必要。 ・乳児では髄膜刺激症状が出にくく、大泉門膨隆・活気不良・哺乳不良が髄膜炎を疑う手がかりになる。 ・新生児髄膜炎の三大起因菌はGBS、大腸菌、リステリア。 ・新生児の重症感染症疑いで「経過観察」「内服薬で帰宅」は不適切(禁忌肢になりやすい)。
