StudyMed医師国家試験

膿疱があっても菌はいない―病原体で仕分ける皮膚疾患と丹毒

第107回医師国家試験 I問題 第25問

国試問題にチャレンジ

第107回 I問題 第25問

連鎖球菌感染症はどれか。

  1. a.丹毒
  2. b.皮膚腺病
  3. c.掌蹠膿疱症
  4. d.膿疱性乾癬
  5. e.Celsus禿瘡

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、いくつかの皮膚疾患の中から連鎖球菌による感染症を選ぶ問題だ。コツは、それぞれを「感染症かどうか」「感染症なら病原体は何か」で仕分けること。見た目の「膿」に引っ張られないことも大事だよ。
医学生医学生
膿疱という名前がついているものは、細菌感染っぽく見えてしまいます。
ドクタードクター
まさにそこが引っかけだね。まず、皮膚科で連鎖球菌といえば何を思い浮かべる?
医学生医学生
A群β溶血性連鎖球菌ですね。微生物学の講義で、咽頭炎のほかに伝染性膿痂疹や丹毒の原因になると習いました。
ドクタードクター
その通り。正解は丹毒だ。丹毒は主にA群β溶血性連鎖球菌、つまり化膿レンサ球菌が、小さな傷や足白癬のびらんなどから侵入して、真皮の浅い層とリンパ管に感染して起こる急性の化膿性炎症なんだ。
医学生医学生
見た目にはどんな特徴があるんでしょうか。
ドクタードクター
境界が明瞭でわずかに隆起した、光沢のある鮮紅色の浮腫性紅斑が急速に広がる。熱感と強い圧痛があり、悪寒や発熱を伴うことが多い。好発部位は顔面と下肢だ。血液検査では白血球増多やCRP上昇がみられ、ASOなどの抗連鎖球菌抗体が上がることもある。
医学生医学生
蜂窩織炎との違いがいつも曖昧です。皮膚科の実習で下腿の発赤の患者さんを見たときも、どちらか迷いました。
ドクタードクター
いい疑問だね。違いは感染の深さだ。丹毒は真皮浅層の感染なので、紅斑の境界がくっきりして盛り上がる。蜂窩織炎は真皮深層から皮下脂肪組織の感染で、境界が不明瞭になる。蜂窩織炎では黄色ブドウ球菌も主要な原因菌だよ。では、ほかの選択肢を見ていこう。皮膚腺病はどうかな。
医学生医学生
名前からはピンときませんが、「腺」はリンパ節のことでしょうか。
ドクタードクター
鋭いね。皮膚腺病は真性皮膚結核の一病型で、頸部リンパ節結核や骨・関節結核といった深部の病巣から、冷膿瘍をつくりながら皮膚へ連続的に広がるものだ。皮下結節が軟らかくなって破れ、瘻孔や潰瘍をつくり、治ったあとに索状の瘢痕を残す。病原体は結核菌だから連鎖球菌ではない。
医学生医学生
Celsus禿瘡は頭の病気ですよね。名前だけ覚えていました。
ドクタードクター
これは白癬菌による頭部白癬のうち、強い炎症を伴う深在性の病型だ。毛包に一致した膿疱を伴う、ぬかるみ状の腫瘤ができて脱毛する。頭部白癬を湿疹と思ってステロイド外用薬を塗ったことが契機になることがあるので注意したい。病原体は真菌で、治療は抗真菌薬の内服だ。
医学生医学生
残りの掌蹠膿疱症と膿疱性乾癬は、膿疱があるのに感染症ではないんですか。
ドクタードクター
そう、どちらも膿疱の中身を培養しても菌が出ない「無菌性膿疱」なんだ。掌蹠膿疱症は手のひらと足の裏に無菌性膿疱が左右対称に多発し、再燃と軽快を繰り返す。扁桃炎や歯性感染などの病巣感染、金属アレルギー、喫煙が関与するとされ、胸肋鎖骨間骨化症などの骨関節炎を合併することもある。
医学生医学生
扁桃炎が関係するなら、連鎖球菌感染症と言えそうな気もしますが…。
ドクタードクター
そこが紛らわしいところだね。病巣感染は発症や増悪のきっかけになりうるけれど、皮膚の膿疱そのものに菌がいるわけではない。膿疱性乾癬も同じで、特に汎発型は発熱とともに全身が潮紅し、無菌性膿疱が多発する重症疾患だ。上気道感染やステロイドの急な減量・中止、妊娠、低カルシウム血症などが誘因になり、IL36RN遺伝子変異の関与も知られている。感染が引き金になっても、疾患自体は感染症ではないんだ。
医学生医学生
「誘因としての感染」と「病原体による感染症」を区別する、ということですね。
ドクタードクター
その通り。最後に、連鎖球菌による皮膚感染症をまとめておこう。痂皮性の伝染性膿痂疹、丹毒、蜂窩織炎、そして浅筋膜に沿って急速に広がる壊死性筋膜炎、なかでも劇症型溶血性レンサ球菌感染症は命に関わる。全身性の紅斑といちご舌が出る猩紅熱も、A群連鎖球菌の発熱毒素によるものだ。
医学生医学生
丹毒の治療はペニシリン系でいいんですよね。
ドクタードクター
そう、ペニシリン系が第一選択だ。丹毒は同じ部位に再発を繰り返しやすく、習慣性丹毒と呼ばれる。侵入門戸になる足白癬の治療も再発予防として大切だよ。それから、A群連鎖球菌の皮膚感染のあとには急性糸球体腎炎を合併することがあるので、数週間後の血尿や浮腫にも気を配っておきたい。

まとめ

丹毒は主にA群β溶血性連鎖球菌が真皮浅層とリンパ管に感染して起こり、境界明瞭で隆起する鮮紅色の浮腫性紅斑、圧痛、発熱を特徴とし、顔面と下肢に好発します。より深い層の感染である蜂窩織炎は境界が不明瞭となる点で区別でき、治療はペニシリン系が第一選択で、再発を繰り返す習慣性丹毒にも注意が必要です。皮膚腺病は結核菌、Celsus禿瘡は白癬菌による感染症であり、掌蹠膿疱症と膿疱性乾癬は膿疱がみられても無菌性で、感染が誘因になることはあっても感染症ではありません。皮膚疾患を「感染症か否か」「病原体は何か」で仕分ける視点は、見た目に惑わされず適切な治療を選ぶための基本になります。

解答・解説

正解はaです

皮膚疾患の中から、連鎖球菌が原因菌となる感染症を選ぶ問題である。

考え方

各選択肢を「病原体による感染症かどうか」「感染症なら病原体は何か」で分類すると整理しやすい。 ・細菌感染症:丹毒(主にA群β溶血性連鎖球菌) ・抗酸菌感染症:皮膚腺病(結核菌) ・真菌感染症:Celsus禿瘡(皮膚糸状菌=白癬菌) ・非感染性の無菌性膿疱症:掌蹠膿疱症、膿疱性乾癬 膿疱(うみを含む水疱)がみられても、掌蹠膿疱症や膿疱性乾癬の膿疱内容は細菌培養で陰性の「無菌性膿疱」であり、感染症ではない点が引っかけになっている。 丹毒は、主としてA群β溶血性連鎖球菌(化膿レンサ球菌、Streptococcus pyogenes)が真皮の浅い層とリンパ管に感染して起こる急性の化膿性炎症であり、これが正解となる。

選択肢考察

  1. ○a.  丹毒

    主にA群β溶血性連鎖球菌が、小さな傷や足白癬のびらんなどから侵入し、真皮浅層およびリンパ管に感染して起こる。まれにB群などほかの連鎖球菌や黄色ブドウ球菌が関与することもある。境界が明瞭でわずかに隆起した、光沢のある鮮紅色の浮腫性紅斑が急速に拡大し、局所の熱感と強い圧痛を伴う。悪寒・発熱などの全身症状を伴うことが多い。好発部位は顔面と下肢である。血液検査では白血球増多やCRP上昇がみられ、ASO(抗ストレプトリジンO抗体)などの抗連鎖球菌抗体が上昇することがある。治療はペニシリン系抗菌薬が第一選択であり、同じ部位に再発を繰り返しやすい(習慣性丹毒)。

  2. ×b.  皮膚腺病

    皮膚病変から結核菌が検出される真性皮膚結核の一病型である。頸部リンパ節結核や骨・関節結核などの深部の結核病巣から、冷膿瘍(熱感や発赤に乏しい膿瘍)を形成しつつ連続的に皮膚へ波及して生じる。皮下結節が軟化・自潰して瘻孔や潰瘍をつくり、治癒後に索状の瘢痕を残す。病原体は結核菌(抗酸菌)であり、連鎖球菌感染症ではない。

  3. ×c.  掌蹠膿疱症

    手掌と足底に、小水疱から移行する無菌性膿疱が左右対称性に多発し、紅斑・鱗屑・痂皮を伴って慢性に再燃と軽快を繰り返す疾患である。胸肋鎖骨間骨化症などの骨関節炎を合併することがある。扁桃炎や歯性感染症などの病巣感染、歯科金属などへの金属アレルギー、喫煙が発症・増悪に関与するとされるが、原因が特定できないことも多い。膿疱そのものに細菌はおらず、連鎖球菌による感染症ではない。

  4. ×d.  膿疱性乾癬

    乾癬の一病型で、特に汎発型(汎発性膿疱性乾癬)は発熱とともに全身の皮膚が潮紅し、その上に無菌性膿疱が多発する重症疾患である。低アルブミン血症、電解質異常などの全身症状を伴うことがある。上気道感染などの感染症、副腎皮質ステロイドの急な減量・中止、薬剤、妊娠、低カルシウム血症、ストレスなどが誘因となり、IL36RN遺伝子変異の関与も知られている。感染が引き金となることはあっても、膿疱は無菌性であり、疾患自体は連鎖球菌感染症ではない。

  5. ×e.  Celsus禿瘡

    皮膚糸状菌(白癬菌、Trichophyton属やMicrosporum canisなど)による頭部白癬のうち、強い炎症を伴う深在性の病型である。頭部に毛包一致性の膿疱を伴う隆起性・ぬかるみ状の腫瘤を形成し、脱毛を伴い、所属リンパ節の腫脹をきたすことがある。頭部白癬に誤って副腎皮質ステロイド外用薬を用いたことが契機となることがある。病原体は真菌であり、治療は抗真菌薬の内服である。

連鎖球菌による主な皮膚感染症

・伝染性膿痂疹(痂皮性):A群β溶血性連鎖球菌が主体。厚い痂皮を伴い、全身症状を伴いうる。なお水疱性膿痂疹は主に黄色ブドウ球菌による。 ・丹毒:真皮浅層・リンパ管の感染。境界明瞭な鮮紅色の浮腫性紅斑。 ・蜂窩織炎:真皮深層〜皮下脂肪組織の感染。境界不明瞭な紅斑・腫脹。黄色ブドウ球菌も主要な原因菌である。 ・壊死性筋膜炎:浅筋膜に沿って急速に拡大する重症軟部組織感染症で、A群連鎖球菌による劇症型(劇症型溶血性レンサ球菌感染症)が知られる。 ・猩紅熱:A群連鎖球菌の発熱毒素による全身のびまん性紅斑、いちご舌。

丹毒と蜂窩織炎の違い

丹毒は感染の深さが浅いため、紅斑の境界が明瞭で隆起する。蜂窩織炎はより深い層の感染であり、境界が不明瞭となる。

連鎖球菌感染の合併症

A群連鎖球菌の皮膚感染後には急性糸球体腎炎を合併することがある(咽頭炎後にみられるリウマチ熱は、皮膚感染後には起こりにくいとされる)。

POINT

・丹毒=主にA群β溶血性連鎖球菌による真皮浅層の感染症。境界明瞭で隆起する鮮紅色の浮腫性紅斑、圧痛、発熱。顔面・下肢に好発し、ペニシリン系が第一選択。 ・皮膚腺病は結核菌、Celsus禿瘡は白癬菌による。 ・掌蹠膿疱症・膿疱性乾癬の膿疱は無菌性であり、感染症ではない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。