「痛みは主観」なのに客観?―SOAPのOに入る痛みスケールの謎
第107回医師国家試験 H問題 第2問
国試問題にチャレンジ
問題指向型医療記録〈POMR〉におけるSOAPのOに該当する事項として正しいのはどれか。
- a.検査計画
- b.帰宅後の生活指導計画
- c.医師による分析・評価
- d.患者の主観的な症状や訴え
- e.患者の痛みスケールの得点
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
POMRの経過記録はSOAP形式で書き、Sは患者や家族が語る主観的な訴え、Oは診察所見・バイタルサイン・検査結果などの客観的情報、AはSとOを統合した医療者の分析・判断、Pは診断・治療・教育の各計画を記載します。痛みそのものは主観的な体験ですが、NRSやVAS、フェイススケールなどの評価尺度で数値化した得点は、医療者間で共有・比較できる情報としてOに記載します。検査計画や生活指導計画は「これから行うこと」なのでPに含まれ、すでに得られた検査結果はOに入る点も整理しておきましょう。POMRは問題ごとに記録して医療者の思考過程を明示する方式であり、正しいSOAPの書き分けはチーム医療での情報共有と診療の質の担保に直結します。
解答・解説
正解はeです
本問は、診療録(カルテ)の記載方式である問題指向型医療記録(POMR: problem-oriented medical record)と、その経過記録に用いられるSOAP形式の各項目の意味を問う一般問題である。 POMRは、患者が抱える問題(症状・異常所見・診断名・心理社会的問題など)を一つずつ「問題リスト」として挙げ、それぞれの問題ごとに情報収集・評価・計画を記録していく方式で、1960年代に米国のWeedが提唱した。POMRに基づく経過記録(progress note)は、問題ごとに次の4項目で記載する。 ・S(Subjective data、主観的情報): 患者本人や家族が語る訴え・症状・病歴 ・O(Objective data、客観的情報): 医療者の診察所見、バイタルサイン、検査結果など、観察や測定によって得られた情報 ・A(Assessment、評価): S と O をもとにした医療者の分析・判断(診断、病状の解釈、治療効果の評価など) ・P(Plan、計画): 診断計画(検査)、治療計画、患者教育(説明・生活指導) 解くうえでのポイントは、各選択肢の情報が「誰の言葉・判断・計画か」「測定された値か」を見分けることである。痛みそのものは主観的な体験であるが、痛みスケールの得点は、決められた尺度を用いて評価・記録された数値であり、医療者間で共有・比較できる情報としてOに記載する。
選択肢考察
- ×a. 検査計画
Pに該当する。今後どのような検査を行って診断を確定・評価するかという方針は、計画のうちの診断計画(diagnostic plan)にあたる。すでに実施された検査の結果であればOに記載するが、これから行う予定の検査はPである。
- ×b. 帰宅後の生活指導計画
Pに該当する。患者や家族への説明・指導は、計画のうちの教育計画(educational plan)にあたる。食事・運動・服薬・再受診の目安などの指導内容はここに記載する。
- ×c. 医師による分析・評価
Aに該当する。SとOの情報を統合し、医療者がどのように解釈・判断したか(考えられる診断や鑑別、病状が改善しているか悪化しているか、治療が有効かなど)を記載するのがAである。
- ×d. 患者の主観的な症状や訴え
Sに該当する。「昨夜から頭が痛い」「食欲がない」など、患者本人(あるいは家族)が述べた内容はSubjective dataとして記載する。可能な限り患者の言葉をそのまま記録するのが望ましい。
- ○e. 患者の痛みスケールの得点
Oに該当する。痛みの感じ方は主観的であるが、NRS(numerical rating scale、0〜10の数値で痛みを表す尺度)、VAS(visual analogue scale、線上に痛みの強さを示す尺度)、フェイススケール(表情のイラストで選ぶ尺度)などの評価尺度で得られた得点は、一定の基準に沿って数値化された情報である。医療者間で共通の物差しとして用いられ、経時的な変化を比較したり、言葉でうまく表現できない小児などの痛みをある程度定量化したりできるため、他の検査値と同様に客観的データとして扱う。
POMRの構成
POMRは次の要素から成り立つ。 1. 基礎データ(data base): 主訴、現病歴、既往歴、家族歴、社会歴、身体所見、検査所見など 2. 問題リスト(problem list): 基礎データから抽出した問題に番号を付けて列挙したもの。診断が確定していない症状や、心理的・社会的・経済的問題も含められる 3. 初期計画(initial plan): 問題ごとの診断計画・治療計画・教育計画 4. 経過記録(progress note): 問題ごとにSOAP形式で記載する 5. 退院時要約(discharge summary)
POMRの利点
・患者の問題を漏れなく把握でき、医師の思考過程(なぜその判断・計画に至ったか)が記録に残る。 ・多職種間で情報を共有しやすく、診療の質の評価(監査、audit)にも用いられる。
SとOの区別で迷いやすい例
・患者が「38℃あった」と言った → S(患者の申告) ・病棟で測定した体温38.2℃ → O(測定値) ・患者が「お腹が痛い」と訴えた → S ・腹部を触診して右下腹部に圧痛を認めた → O(医療者の診察所見) ・痛みスケールの得点(NRS 7/10 など) → O(評価尺度で数値化された情報)
POINT
・SOAP: S=主観的情報(患者の訴え)、O=客観的情報(診察所見・検査結果・測定値)、A=評価(医療者の分析・判断)、P=計画(診断計画・治療計画・教育計画)。 ・検査計画も生活指導計画もPに含まれる。 ・痛みスケールの得点は、評価尺度で数値化された情報としてOに記載する。 ・POMRは問題ごとに記録し、医療者の思考過程を明示する記録方式である。
