「来月から」が決め手―患者のひと言で読み解く行動変容ステージ
第107回医師国家試験 H問題 第19問
国試問題にチャレンジ
糖尿病の患者が行動変容の準備期に入ったと考えられるのはどれか。
- a.ストレッチ体操を7か月続けている。
- b.夕食後に必ずデザートを食べている。
- c.食べたくなったらストレッチ体操をするようにし始めた。
- d.糖尿病が悪化しているので来月から間食をやめようと思う。
- e.テレビを見ているとついお菓子を食べてしまうことがある。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
行動変容ステージモデルでは、行動を始める前の段階を、変える意思と時期によって無関心期(6か月以内に変えるつもりがない)、関心期(6か月以内に変えるつもりがある)、準備期(1か月以内に変えるつもりがある)に分け、始めた後を継続期間によって実行期(6か月未満)と維持期(6か月以上)に分けます。糖尿病の悪化を自覚し「来月から間食をやめよう」と1か月以内の具体的な開始時期と目標を示す発言は準備期にあたり、すでに行動を始めていれば意欲の強さにかかわらず実行期以降と判定します。支援はステージに合わせ、無関心期では情報提供で関心を高め、関心期では利点と負担を整理し、準備期では具体的な計画と決意表明、実行期では強化と環境調整、維持期では逆戻りの予防を行います。ステージは逆戻りを繰り返しながら進むことが多いため、その都度見極め直す視点が欠かせません。このモデルは糖尿病の食事・運動療法や禁煙指導、特定保健指導など生活習慣病の患者指導全般に応用される、臨床で実践的な考え方です。
解答・解説
正解はdです
行動変容ステージモデル(Prochaska らが提唱したトランスセオレティカルモデル〈多理論統合モデル〉の中心概念)に基づき、患者の発言や行動がどのステージにあたるかを判定する問題である。
ステージの判定基準
・無関心期(前熟考期):6か月以内に行動を変えるつもりがない。 ・関心期(熟考期):6か月以内に行動を変えようと考えているが、まだ具体的な準備はしていない。 ・準備期:1か月以内に行動を変えるつもりがある(すでに小さな試みを始めていることもある)。 ・実行期:望ましい行動を始めてから6か月未満である。 ・維持期:望ましい行動を6か月以上継続している。
考え方
判定の鍵は「まだ行動していないのか、すでに行動しているのか」と「いつから変えるつもりか・どのくらい続いているか」という時間軸である。まだ行動を始めていない段階は、変える意思の有無と時期によって無関心期・関心期・準備期に分かれ、すでに始めている段階は継続期間によって実行期(6か月未満)と維持期(6か月以上)に分かれる。 本問では、自分の病状の悪化という理由を自覚したうえで、「来月から」と1か月以内の具体的な開始時期と行動目標(間食をやめる)を示している発言が準備期にあたる。
選択肢考察
- ×a. ストレッチ体操を7か月続けている。
誤り。望ましい行動(運動)をすでに開始し、6か月を超えて継続しているので維持期にあたる。維持期では逆戻り(再発)を防ぐことが支援の中心となる。
- ×b. 夕食後に必ずデザートを食べている。
誤り。糖尿病に好ましくない習慣を毎日続けており、それを改めようとする意思がうかがえないため、無関心期にあたる。この段階では、行動を変えることの利点や、現状を続けた場合の不利益について情報を提供し、関心をもってもらうことが支援の目標となる。
- ×c. 食べたくなったらストレッチ体操をするようにし始めた。
誤り。すでに具体的な行動を始めており、「し始めた」とあることから開始後6か月未満と考えられるため、実行期にあたる。食べたいという衝動を運動という別の行動に置き換える工夫は、行動療法でいう拮抗条件づけ(反対条件づけ)に相当する。実行期には、この行動を継続できるよう称賛や周囲のサポートで強化することが重要である。
- ○d. 糖尿病が悪化しているので来月から間食をやめようと思う。
正しい。病状の悪化を自覚して行動変容の必要性を認識しており、「来月から」という1か月以内の開始時期と「間食をやめる」という具体的な行動目標を示しているので、準備期にあたる。まだ実行はしていない点で実行期とは異なり、開始時期が1か月以内に定まっている点で関心期とも区別される。この段階では、具体的で実行可能な計画を一緒に立て、決意を周囲に宣言させるなどして実行への後押しをする。
- ×e. テレビを見ているとついお菓子を食べてしまうことがある。
誤り。「つい食べてしまう」という表現には、よくないと自覚しながらも行動を変えられずにいる迷いが表れており、関心期にあたると考えられる。行動を変える具体的な時期や計画は示されていないため準備期ではない。なお、変える気持ちがまったくないのであれば無関心期となるが、いずれにしても準備期には該当しない。関心期では、変えることの利点と障害を整理して迷いを解消し、実行への意欲を高める支援が行われる。
行動変容ステージと支援のポイント
・無関心期:行動変容の必要性に気づいてもらう。疾患や合併症のリスクについての情報提供、感情に訴えるはたらきかけ、周囲への影響を考えてもらうなど。 ・関心期:変えることの利点と障害(負担)を天秤にかけ、利点が上回ると感じてもらう。自分にとっての意味を考えさせる。 ・準備期:具体的な目標と計画を立てる。「来週から」「毎日○○する」など実行可能な小さな目標を設定し、決意を表明してもらう(自己の解放)。 ・実行期:行動を続けられるよう、成果の称賛や褒美による強化、誘惑となる刺激を遠ざける(刺激統制)、望ましくない行動を別の行動に置き換える(拮抗条件づけ)、周囲の支援などを活用する。 ・維持期:逆戻りを防ぐ。逆戻りしやすい状況を予測して対処法を準備する。
モデルの特徴
・ステージは一方向に進むとは限らず、逆戻りを繰り返しながら進むことが多い。 ・ステージが進むにつれ、行動を変えることの利益を大きく感じるようになり(意思決定バランス)、また「自分にもできる」という自己効力感が高まっていく。 ・禁煙指導、食事療法、運動療法など、生活習慣病の患者指導や特定保健指導で広く応用されている。 ・患者のステージを見極め、それに合った支援を行うことが重要であり、無関心期の患者にいきなり具体的な行動計画を提示しても効果は乏しい。
POINT
・無関心期:6か月以内に変えるつもりがない。 ・関心期:6か月以内に変えるつもりがある。 ・準備期:1か月以内に変えるつもりがある(「来月から〜しよう」)。 ・実行期:行動開始後6か月未満。 ・維持期:行動開始後6か月以上継続。 ・ステージに応じた支援を行う。
