StudyMed医師国家試験

「病気がない」だけでは健康じゃない―WHO憲章が示した健康の定義

第107回医師国家試験 E問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第107回 E問題 第5問

「Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.」を含む憲章を掲げる国際機関はどれか。

  1. a.ILO
  2. b.JICA
  3. c.UN
  4. d.UNICEF
  5. e.WHO

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、世界で最も有名な「健康の定義」がどの国際機関の憲章に書かれているかを問う問題だ。英文の意味をつかむことと、選択肢に並ぶ国際機関の略称と役割を整理しておくことがポイントになるよ。まず、この英文を日本語にするとどうなるかな。
医学生医学生
健康とは、単に病気や虚弱がないことではなく、身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態である、という意味だと思います。
ドクタードクター
その通り。この定義のすごいところは、健康を「病気がないこと」という消極的な捉え方ではなく、身体だけでなく心や社会的なつながりも含めた積極的な良好状態、つまりwell-beingとして示した点なんだ。どの機関の言葉か、見当はつくかな。
医学生医学生
健康の話なので、世界保健機関のWHOだと思います。でも国連そのものの憲章に書いてあると言われると、少し迷います。
ドクタードクター
迷うのはわかるよ。正解はWHOで、この一文はWHO憲章の前文にある。国際連合は1945年に国連憲章に基づいて発足した国際機構で、平和と安全の維持や国際協力を目的としているけれど、保健分野は専門機関であるWHOが担っているんだ。国連憲章自体にはこの定義は含まれていない。
医学生医学生
WHO憲章はいつできたんでしたっけ。CBTの勉強で年号を覚えた気がするんですが。
ドクタードクター
1946年に採択され、1948年4月7日に発効してWHOが発足した。この4月7日は世界保健デーになっている。日本は1951年に加盟したよ。本部はスイスのジュネーブだ。
医学生医学生
ILOもジュネーブでしたよね。労働衛生の講義で出てきました。健康と関係がありそうで引っかかりました。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。ILOは国際労働機関で、1919年に設立され、のちに国連の専門機関になった。労働時間や労働安全衛生に関する国際労働基準を条約や勧告として採択しているから、労働衛生とは深く関わる。でも健康の定義を掲げた憲章をもつ機関ではないんだ。
医学生医学生
UNICEFも予防接種などで子どもの健康に関わっていますよね。
ドクタードクター
そうだね。UNICEFは国連児童基金で、1946年に戦後の子どもへの緊急援助を目的に設立され、のちに常設機関となった。予防接種、栄養改善、安全な水と衛生、教育などを行っているけれど、やはり健康の定義を定めた機関ではない。
医学生医学生
JICAは国際機関というより、日本の組織でしたっけ。
ドクタードクター
その通り。JICAは国際協力機構という日本の独立行政法人で、政府開発援助、つまりODAを実施している。技術協力や円借款、無償資金協力、青年海外協力隊などで途上国を支援しているけれど、国際機関ではないから、この時点で外せるね。
医学生医学生
国際機関か日本の機関か、保健が専門かどうか、で区別すると整理しやすいですね。
ドクタードクター
そういうことだ。それから国試では、この英文の一部を空欄にして、physical、mental、social、well-being、infirmityといった語を補わせる形でも繰り返し出題されている。英語のまま覚えておくといいよ。
医学生医学生
spiritualという言葉が入っていると聞いたこともあるんですが、それは違うんですか。
ドクタードクター
よく出るひっかけだね。1998年のWHO執行理事会で、dynamicとspiritualを加える改正案が提案されたけれど、世界保健総会では審議されず、定義は今も変わっていない。だから正式な定義にspiritualは含まれていないんだ。
医学生医学生
改正案は出たけれど採択されていない、ですね。ほかにWHOについて押さえておくべきことはありますか。
ドクタードクター
WHOは国際疾病分類のICDや国際生活機能分類のICFを作っているし、国際保健規則に基づいて感染症の監視も行っている。1978年のアルマ・アタ宣言でプライマリヘルスケア、1986年のオタワ憲章でヘルスプロモーションを提唱したのもWHOだ。たばこ規制枠組条約の採択や、1980年の天然痘根絶宣言も覚えておこう。臨床では病名をICDコードで扱うから、実は毎日のようにWHOの仕事に触れているんだよ。
医学生医学生
病棟実習で書いた退院サマリーにもICDコードがありました。身近なところにつながっているんですね。
ドクタードクター
そうなんだ。そして健康の定義そのものも、臨床で患者さんを病気だけでなく生活や心理、社会的な背景まで含めて診るという姿勢の原点になっている。単なる暗記項目ではなく、医師としての考え方の土台として覚えておいてほしい。

まとめ

「健康とは、単に病気や虚弱でないことではなく、身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態である」という定義は、1946年に採択され1948年4月7日に発効したWHO憲章の前文に記されています。病気がないことにとどまらず、精神面・社会面を含めた積極的なwell-beingとして健康を捉えた点が特徴で、physical、mental、social、well-being、infirmityといった英語のキーワードも問われます。spiritualとdynamicを加える改正案は1998年に提案されましたが採択されておらず、定義は現在も変わっていません。ILOは労働条件、UNICEFは子どもの福祉、国連は平和と国際協力、JICAは日本のODA実施機関と、それぞれの役割を区別しておくことが大切です。この定義は、患者を生物学的な側面だけでなく心理・社会的背景も含めて診るという全人的医療の原点でもあります。

解答・解説

正解はeです

問題文の英文は、世界で最もよく知られた「健康の定義」である。日本語にすると「健康とは、単に病気や虚弱でないということではなく、身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態(well-being)にあることをいう」となる。この一文は世界保健機関(WHO:World Health Organization)の憲章の前文に置かれている。 この定義の特徴は、健康を「病気がないこと」という消極的な捉え方ではなく、身体面だけでなく精神面・社会面も含めた積極的な良好状態として示した点にある。国家試験では、英文のどこかを空欄にして physical・mental・social・well-being・infirmity などの語句を補わせる形式でも繰り返し問われている。 選択肢はいずれも国際協力・国際保健に関わる機関の略称なので、正式名称と役割を合わせて整理しておくと、類題にも対応できる。

選択肢考察

  1. ×a.  ILO

    誤り。ILO(International Labour Organization:国際労働機関)は1919年に設立され、1946年に国際連合の専門機関となった。本部はジュネーブにある。労働条件の改善や労働者の権利保護を目的とし、労働時間・労働安全衛生などに関する国際労働基準(条約・勧告)を採択している。労働衛生とは関わりが深いが、健康の定義を憲章に掲げている機関ではない。

  2. ×b.  JICA

    誤り。JICA(Japan International Cooperation Agency:独立行政法人国際協力機構)は国際機関ではなく、日本の政府開発援助(ODA)を実施する日本の独立行政法人である。技術協力、有償資金協力(円借款)、無償資金協力、青年海外協力隊などの事業を通じて開発途上国の経済・社会の発展を支援しており、保健医療分野の協力も行うが、健康の定義を定めた憲章はもたない。

  3. ×c.  UN

    誤り。UN(United Nations:国際連合)は1945年に国際連合憲章に基づいて発足した国際機構で、国際平和と安全の維持、諸国間の友好関係の発展、経済・社会・文化・人道上の問題の解決に向けた国際協力を目的とする。保健分野は専門機関であるWHOが担っており、国連憲章そのものに問題文の健康の定義は含まれていない。

  4. ×d.  UNICEF

    誤り。UNICEF(United Nations Children's Fund:国際連合児童基金)は1946年に第二次世界大戦後の子どもへの緊急援助を目的として設立され、その後常設の機関となった。開発途上国を中心に、予防接種、栄養改善、安全な水と衛生、教育、子どもの保護などの活動を行う。子どもの健康に関わる活動は多いが、健康の定義を掲げた憲章をもつ機関ではない。

  5. ○e.  WHO

    正しい。WHO(World Health Organization:世界保健機関)は保健分野を担当する国際連合の専門機関で、本部はジュネーブにある。WHO憲章は1946年に採択され、1948年4月7日に発効してWHOが発足した(この日は世界保健デーとされる)。問題文の健康の定義はこのWHO憲章の前文にある。日本は1951年に加盟した。

WHO憲章前文の健康の定義

原文:Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity. 要旨:健康とは、身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病や虚弱がないことではない。 前文には続けて、到達しうる最高水準の健康を享受することは、人種・宗教・政治的信念・経済的または社会的条件によって差別されることのない、すべての人の基本的権利の一つである、という趣旨も述べられている。

定義改正の議論

1998年のWHO執行理事会で、健康の定義に dynamic(動的な)と spiritual(霊的な)を加える改正案が提案されたが、世界保健総会では審議されず、定義は現在も変更されていない。

WHOの主な活動

・国際疾病分類(ICD)や国際生活機能分類(ICF)の作成 ・国際保健規則(IHR)に基づく感染症の監視と国際的対応 ・1978年アルマ・アタ宣言(プライマリヘルスケア)、1986年オタワ憲章(ヘルスプロモーション) ・たばこ規制枠組条約(FCTC)の採択 ・天然痘根絶(1980年)

国際保健に関わる主な機関

・UNICEF:国連児童基金(子どもの保健・福祉) ・ILO:国際労働機関(労働条件・労働衛生) ・FAO:国連食糧農業機関(食料・栄養) ・UNAIDS:国連合同エイズ計画 ・JICA:日本のODA実施機関(二国間協力)

POINT

・問題文の健康の定義はWHO憲章前文に記されている。 ・キーワードは physical, mental, social well-being と absence of disease or infirmity。 ・WHO憲章は1946年採択、1948年4月7日発効(世界保健デー)。 ・spiritual と dynamic を加える改正案は採択されていない。 ・国際機関の略称(ILO, UNICEF, FAO など)と役割を対応させて覚える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。