「かかりつけ医に話した」は通用しない―臓器提供の意思表示は"書面"がすべて
第107回医師国家試験 E問題 第25問
国試問題にチャレンジ
平成22年改正後の臓器の移植に関する法律で,脳死時の臓器提供の意思が法律的に有効でないのはどれか。
- a.運転免許証に記載しておく。
- b.医療保険の被保険者証に記載しておく。
- c.書面にせずにかかりつけ医に話しておく。
- d.日本臓器移植ネットワークに登録しておく。
- e.本人の意思が不明な場合に臓器提供の承諾書を家族から得る。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
平成22年に改正施行された臓器移植法では、本人が書面で提供意思を示し家族が拒まない場合に加え、本人の意思が不明でも家族が書面で承諾すれば脳死下臓器提供が可能になりました。法的に有効な本人の意思表示は、意思表示カード、運転免許証・被保険者証・マイナンバーカードの記載欄、日本臓器移植ネットワークへのインターネット登録といった書面によるものであり、医師に口頭で伝えただけでは効力をもちません。改正により15歳未満からの提供や親族への優先提供の意思表示が可能となった一方、本人が拒否していれば提供できず、18歳未満では虐待の有無を確認する必要があります。「意思表示は書面で」という原則を軸に改正点を整理しておくことは、試験対策だけでなく、救急や集中治療の現場で家族と向き合う際の基盤となります。
解答・解説
正解はcです
臓器の移植に関する法律(臓器移植法)は平成9年(1997年)に施行され、平成22年(2010年)に改正法が全面施行された。改正の要点は、本人の書面による意思表示がなくても家族の承諾で脳死下臓器提供ができるようになった点にある。 改正後、脳死下で臓器を摘出できるのは次のいずれかの場合である。 ①本人が書面で臓器提供の意思を表示しており、かつ家族がこれを拒まない(または家族がいない)とき。 ②本人の臓器提供の意思が不明で、家族が書面により承諾するとき。 いずれの場合も、臓器提供に関して法的に効力をもつのは「書面」による意思表示である。ここでいう書面には、意思表示カード(ドナーカード)、運転免許証・医療保険の被保険者証(マイナンバーカードを含む)の意思表示欄、日本臓器移植ネットワークへのインターネット登録などが含まれる。一方、口頭による意思の伝達は、それを聞いた者が医師であっても、本人の意思表示としての法的効力をもたない。 本問では、各選択肢が「書面による本人の意思表示」または「家族の書面による承諾」に当たるかどうかを判断すればよい。
選択肢考察
- ×a. 運転免許証に記載しておく。
運転免許証の裏面(備考欄)には臓器提供に関する意思表示欄が設けられており、本人が記入・署名すれば書面による意思表示として法的に有効である。脳死後・心停止後の提供の意思、提供しない意思、提供したくない臓器などを選択して記入できる。
- ×b. 医療保険の被保険者証に記載しておく。
医療保険の被保険者証(健康保険証)の裏面にも臓器提供の意思表示欄があり、記入すれば書面による意思表示として有効である。現在はマイナンバーカードの意思表示欄やマイナ保険証についても同様の意思表示が可能である。
- ○c. 書面にせずにかかりつけ医に話しておく。
臓器提供の意思は書面で表示されることが法律上の要件であり、口頭で伝えただけでは本人の意思表示として有効にならない。口頭の意思は記録として残らず、聞き手の記憶や解釈に依存するため、本人の真意を客観的に確認できず、伝達の正確性も保証されないからである。かかりつけ医が医師であっても例外ではない。なお、このような場合は法的には「本人の意思が不明」として扱われ、家族が書面で承諾すれば提供は可能となる(その際、家族が本人の生前の発言を判断材料にすることはありうる)。
- ×d. 日本臓器移植ネットワークに登録しておく。
日本臓器移植ネットワーク(JOT)は、国内で唯一の臓器あっせん機関である。同ネットワークのウェブサイトからインターネットで意思を登録することができ、この登録は本人の意思表示として有効に扱われる。登録すると登録カードが発行される。
- ×e. 本人の意思が不明な場合に臓器提供の承諾書を家族から得る。
平成22年の改正により、本人の意思が不明な場合でも、家族が書面で承諾すれば脳死下での臓器提供が可能となった。改正前は本人の書面による提供意思が必須であったため、この点が改正の最大の変更点である。ただし、本人が提供を拒否する意思を示していた場合には、家族が承諾しても提供はできない。
平成22年改正の主な内容(改正前との比較)
・本人の意思が不明な場合:改正前は提供不可 → 改正後は家族の書面による承諾で提供可能。 ・年齢:改正前は、意思表示が有効とされるのが15歳以上であったため、15歳未満の脳死下臓器提供はできなかった → 改正後は、家族の書面承諾により15歳未満からの脳死下提供も可能となった。なお、提供の意思表示が有効となるのは現在も15歳以上であるが、提供しない意思(拒否)は年齢にかかわらず尊重される。 ・親族への優先提供:本人が書面で表示していれば、親族(配偶者、子、父母)に優先的に提供する意思を表示できるようになった(この部分は平成22年1月に先行施行)。 ・虐待を受けた児童への対応:18歳未満の者から臓器を提供する場合、虐待の有無を確認し、虐待が行われた疑いがあるときは臓器を提供しない。 ・普及啓発:運転免許証や被保険者証などに意思表示欄を設けるなど、意思表示の機会を広げる施策がとられた。
意思表示の方法(いずれも書面扱い)
・意思表示カード(ドナーカード) ・運転免許証、医療保険の被保険者証、マイナンバーカードの意思表示欄 ・日本臓器移植ネットワークへのインターネット登録
脳死判定
脳死下で臓器提供を行う場合、法に基づく脳死判定(深昏睡、瞳孔固定・散大、脳幹反射の消失、平坦脳波、自発呼吸の消失)を2回行う。臓器提供を前提としない場合には法的脳死判定は行わない。
POINT
・臓器提供の本人の意思表示は書面(意思表示カード、運転免許証・被保険者証・マイナンバーカードの記載欄、日本臓器移植ネットワークへのインターネット登録)によるものが有効である。口頭のみの意思は無効である。 ・改正後は、本人の意思が不明でも家族の書面による承諾で脳死下臓器提供が可能であり、15歳未満からの提供も可能になった。 ・本人が拒否の意思を示している場合は、家族が承諾しても提供できない。 ・親族優先提供の意思表示が可能になった。18歳未満のドナーでは虐待の有無を確認する。
