StudyMed医師国家試験

胆嚢を埋め尽くす腫瘤―「大きさ・形・造影効果」で見抜く胆嚢癌

第107回医師国家試験 D問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第107回 D問題 第3問

腹部造影CT(A),腹部造影CT冠状断像(B)及び摘出された胆嚢標本の写真(C)を別に示す。  診断として最も考えられるのはどれか。

第107回 D問題 第3問の問題画像
  1. a.胆嚢癌
  2. b.胆嚢腺筋症
  3. c.急性壊疽性胆嚢炎
  4. d.過形成性ポリープ
  5. e.コレステロールポリープ

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は胆嚢の隆起性病変を画像と摘出標本から見分ける問題だ。注目点は、病変の大きさ、茎があるかどうかという形、そして造影されるかどうか。この3つで良性か悪性かの見当をつけていこう。
医学生医学生
胆嚢ポリープというと、健診の腹部超音波でよく見つかる小さなものという印象があります。
ドクタードクター
そうだね。頻度でいえば圧倒的に多いのはコレステロールポリープだ。でも今回の画像はどうだろう。CTでは胆嚢の内腔の大部分が、造影される充実性の腫瘤で占められていて、胆汁の部分がわずかしか残っていない。冠状断でも壁から広い基部で内腔へ盛り上がっている。
医学生医学生
内腔を埋めるほどなら、胆泥や凝血塊がたまっている可能性はありませんか。
ドクタードクター
いい疑問だね。胆泥や血の塊なら血流がないので造影されない。内部が不均一ながら造影されるということは、血管を持った生きた組織、つまり腫瘍だということになる。
医学生医学生
なるほど、造影効果で「ただの溜まり物」と区別するんですね。標本のほうはどう見ればいいですか。
ドクタードクター
切り開いた胆嚢の底部側に、数cm大で分葉状、表面がでこぼこした隆起があり、暗赤色の出血や壊死を思わせる部分を伴っている。残りの粘膜は比較的平滑だ。大きい、広基性、表面不整、もろくて出血する、と悪性を示唆する特徴がそろっている。
医学生医学生
それなら胆嚢癌ですね。消化器の講義で「10mmを超える隆起は悪性を疑う」と習いました。
ドクタードクター
正解。数cmという大きさは良性ポリープとしては大きすぎるし、内腔に突出して発育する乳頭型・結節型の胆嚢癌の像に合う。では、ほかの選択肢がなぜ合わないか確認しよう。胆嚢腺筋腫症はどうかな。
医学生医学生
壁が厚くなる病気で、CBTの問題で砂時計みたいなくびれの画像を見た気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。腺筋腫症は粘膜上皮が筋層内に入り込んだRokitansky-Aschoff洞の増生と筋層の肥厚が本体で、超音波では厚い壁の中の小嚢胞やコメット様エコーが特徴だ。壁肥厚性の病変であって、内腔に大きく突き出す出血性の腫瘤はつくらない。
医学生医学生
急性壊疽性胆嚢炎も、壁がぐちゃぐちゃになるイメージなので少し迷いました。
ドクタードクター
迷うのはわかる。でも壊疽性胆嚢炎は壁の虚血による壊死だから、CTではむしろ壁の造影不良や途絶、壁内のガス、周囲脂肪織の濃度上昇が目立つ。内腔にたまるのは膿や剥がれた粘膜で、造影される充実性腫瘤にはならない。臨床的にも発熱や右季肋部痛など急性症状を伴うのが普通だ。
医学生医学生
残りの2つの良性ポリープは、大きさと形で外れるということでしょうか。
ドクタードクター
その通り。コレステロールポリープは泡沫化したマクロファージの集簇で、通常10mm未満、細い茎をもつ桑実状で多発しやすい。過形成性ポリープはさらにまれで、小さく表面平滑なことが多い。今回のような数cmの広基性・不整形腫瘤とはかけ離れている。
医学生医学生
つまり、大きさが10mm以上、広基性、単発、増大傾向、造影効果あり、が悪性を疑う所見ということですね。
ドクタードクター
そう、それをセットで覚えておこう。10mm以上や増大傾向のある病変は胆嚢摘出術を考え、小さいものは超音波で経過を追うのが一般的だ。もう一つ大事なのは、胆嚢癌は予後が悪くなりやすいこと。胆嚢壁には粘膜筋板と粘膜下層がなく、漿膜下層にリンパ管や血管が豊富で、すぐ隣が肝臓だから、早い段階から肝浸潤やリンパ節転移をきたしやすい。
医学生医学生
危険因子は胆石と膵・胆管合流異常でしたよね。消化器外科の実習で、合流異常の患者さんに予防的手術をすると聞きました。
ドクタードクター
よく結びつけたね。合流異常では膵液が胆道に逆流して胆嚢癌のリスクが高まるので、手術が勧められる。治療の基本は外科切除で、深達度に応じて単純な胆嚢摘出から肝床切除とリンパ節郭清を加えた拡大手術まで選ぶ。切除不能ならゲムシタビンを中心とした化学療法が行われる。CEAやCA19-9は上がることがあるけれど、早期診断には頼れない点も注意しておこう。

まとめ

胆嚢内腔を占めるほど大きく、内部が造影される充実性腫瘤で、標本上も広基性・分葉状・表面不整で出血や壊死を伴う隆起であれば、胆嚢癌を最も考えます。胆嚢隆起性病変では、径10mm以上、広基性、単発、増大傾向、造影効果が悪性を疑う所見で、最多のコレステロールポリープは小さく有茎性・桑実状で多発しやすいのが対照的です。胆嚢腺筋腫症は壁肥厚とRokitansky-Aschoff洞、急性壊疽性胆嚢炎は壁の造影不良やガスが特徴で、いずれも造影される腫瘤は形成しません。胆嚢癌は胆石や膵・胆管合流異常を危険因子とし、壁構造の特徴から早期に肝浸潤やリンパ節転移をきたしやすいため、画像で悪性所見を拾い上げて早期に切除につなげる視点が臨床で重要です。

解答・解説

正解はaです

画像所見の整理

腹部造影CT水平断(A)では、胆嚢の内腔の大部分を占める充実性の腫瘤がみられ、内部は不均一に造影されている。胆汁のような低吸収域はわずかしか残っていない。冠状断(B)でも、肝下面に接する胆嚢の中に、内腔を埋めるような大きな軟部組織濃度の腫瘤が確認でき、壁から内腔へ向かって広い基部で増殖している様子がうかがえる。 摘出標本(C)では、胆嚢を切り開いた粘膜面の一端(底部側)に、数cm大の分葉状・結節状で表面が凹凸不整な隆起性病変があり、暗赤色の出血や壊死を思わせる部分を伴っている。一方、残りの粘膜は比較的平滑である。

診断へのプロセス

胆嚢の隆起性病変を評価するときは、大きさ・形(有茎性か広基性か)・表面の性状・内部の造影効果・壁の連続性に注目する。 ・大きさ:数cmに及ぶ病変であり、良性ポリープとしては大きすぎる。一般に10mmを超える隆起性病変は悪性の可能性が高まるとされる。 ・形態:広い基部をもち、分葉状で表面は不整である。良性ポリープにみられる細い茎をもつ桑実状・小球状の形とは異なる。 ・造影効果:病変内部に血流があり充実性腫瘍であることがわかる。胆泥や凝血塊であれば造影されない。 ・肉眼像:出血・壊死を伴う脆い不整な腫瘤であり、悪性腫瘍に典型的な像である。 以上から、胆嚢内腔に突出して発育した悪性腫瘍、すなわち胆嚢癌(乳頭型・結節型の隆起を示すもの)が最も考えられる。

設問の考え方

選択肢には、悪性腫瘍(胆嚢癌)、壁肥厚性の良性疾患(胆嚢腺筋腫症)、炎症性疾患(急性壊疽性胆嚢炎)、良性ポリープ(過形成性ポリープ、コレステロールポリープ)が並んでいる。CTで内腔を占める造影される大きな充実性腫瘤があり、標本で不整な隆起性腫瘍が確認できる点から、腫瘍性・悪性の病変を選ぶ。

選択肢考察

  1. ○a.  胆嚢癌

    CTで胆嚢内腔を埋めるほどの大きな充実性腫瘤があり、内部が不均一に造影される。標本では広い基部をもつ分葉状の隆起が底部にあり、表面は凹凸不整で出血や壊死を伴っている。大きさ(10mmを大きく超える)、広基性、表面不整、充実性の造影効果という悪性を示唆する特徴がそろっており、胆嚢癌の像に合致する。

  2. ×b.  胆嚢腺筋症

    胆嚢腺筋腫症(adenomyomatosis)は、粘膜上皮が筋層内に入り込んだロキタンスキー・アショフ洞(Rokitansky-Aschoff sinus:RAS)の増生と、筋層の肥厚を特徴とする良性の病変である。画像では壁のびまん性・分節性・限局性(底部型)の肥厚として現れ、分節型では胆嚢がくびれて砂時計(ひょうたん)のような形になる。超音波で肥厚した壁の中に小嚢胞(RAS)やコメット様エコーがみられ、MRIでは壁内の小嚢胞が数珠状に描出されるのが特徴である。本例のように内腔へ大きく突出する分葉状・出血性の腫瘤を形成することはない。

  3. ×c.  急性壊疽性胆嚢炎

    急性壊疽性胆嚢炎は急性胆嚢炎の重症型で、壁の虚血によって壊死が生じたものである。CTでは胆嚢の腫大、壁の肥厚、壁の造影不良や途絶、壁内・内腔のガス、周囲脂肪織の濃度上昇などがみられ、内腔には胆汁・膿汁・剥離した粘膜がたまる。標本では粘膜面が暗赤色から黒色に変色し、膿や壊死物質が付着する。造影される充実性の腫瘤が内腔を占める所見は炎症では説明できず、本例の所見に合致しない。また、臨床的には発熱や右季肋部痛などの急性症状を伴うのが通常である。

  4. ×d.  過形成性ポリープ

    過形成性ポリープは胆嚢粘膜上皮が過剰に増殖してできた良性の小隆起で、胆嚢ポリープの中ではコレステロールポリープに比べてまれである。多くは数mm〜10mm程度の小さな病変で、表面は比較的平滑である。本例のような数cm大で広基性、表面不整で出血を伴う腫瘤は、過形成性ポリープの像とはかけ離れている。

  5. ×e.  コレステロールポリープ

    コレステロールポリープは、粘膜固有層にコレステロールを取り込んだ泡沫細胞(マクロファージ)が集まって隆起したもので、胆嚢ポリープの中で最も多い。通常は10mm未満と小さく、細い茎をもつ桑実状(金平糖状)の形をとり、多発することが多い。超音波では点状の高エコーを伴う有茎性病変として描出される。CTでは小さすぎて描出されないことも多い。本例の大きな広基性・不整形の腫瘤とは一致しない。

胆嚢隆起性病変の鑑別

・コレステロールポリープ:最も頻度が高い。10mm未満、有茎性、桑実状、多発しやすい。超音波で点状高エコーを含む。 ・過形成性ポリープ・炎症性ポリープ:まれ。小さく表面平滑。 ・腺腫:良性腫瘍だが癌化しうる。単発で有茎性〜亜有茎性のことが多い。 ・胆嚢腺筋腫症:壁肥厚性病変。RAS(壁内小嚢胞)、コメット様エコーが特徴。分節型では砂時計様のくびれ、底部型では底部の限局性肥厚を示す。 ・胆嚢癌:広基性、表面不整、大きい(10mm以上)、増大傾向、壁の不整な肥厚や外側高エコー層の断裂(深部浸潤の所見)などを示す。

悪性を疑う所見

一般に、径10mm以上、広基性(無茎性)、単発、経過での増大、内部の血流(造影効果)、付着部の壁肥厚などは悪性を疑う所見である。10mm以上の病変や増大傾向のあるものは胆嚢摘出術の適応となり、それより小さいものは超音波で経過観察されることが多い。

胆嚢癌の概要

・高齢の女性にやや多い。危険因子として胆石(特に長期間のもの)、膵・胆管合流異常(胆嚢癌の高リスク)、陶器様胆嚢などが知られる。 ・組織型は腺癌が大部分を占める。 ・早期は無症状で、健診の超音波や胆石で摘出された胆嚢で偶然発見されることもある。進行すると右季肋部痛、黄疸(肝門部・胆管への浸潤)、体重減少がみられる。 ・肉眼形態は乳頭型・結節型(隆起型)と平坦型・浸潤型に大別され、本例は内腔へ突出する隆起型の像である。 ・腫瘍マーカーとしてCEA、CA19-9が上昇することがあるが、早期診断には役立たない。 ・胆嚢壁は粘膜筋板と粘膜下層を欠き、漿膜下層にはリンパ管・血管が豊富で、肝臓とも接しているため、早期から肝浸潤やリンパ節転移をきたしやすく、予後不良になりやすい。 ・治療の基本は外科的切除であり、深達度に応じて胆嚢摘出術から肝床切除・リンパ節郭清を伴う拡大胆嚢摘出術まで選択される。切除不能例には化学療法(ゲムシタビンを中心とした併用療法など)が行われる。

画像検査の役割

胆嚢隆起性病変のスクリーニング・経過観察には腹部超音波検査が最も有用である。精査には超音波内視鏡(EUS)、造影CT、MRI/MRCPが用いられ、CTは病変の広がり(肝浸潤、リンパ節転移、遠隔転移)の評価に役立つ。小さな病変はCTのスライス幅の関係で描出されにくいことがある。

POINT

・胆嚢内腔を占める大きな造影される充実性腫瘤と、広基性・分葉状・表面不整で出血を伴う肉眼像は胆嚢癌を示す。 ・胆嚢隆起性病変で悪性を疑う所見:10mm以上、広基性、単発、増大傾向、造影効果、壁の不整な肥厚。 ・コレステロールポリープは最多の胆嚢ポリープで、小さく有茎性・桑実状・多発性。 ・胆嚢腺筋腫症は壁肥厚性病変で、RAS・コメット様エコー・砂時計様のくびれが特徴。 ・急性壊疽性胆嚢炎は壁の壊死・造影不良・ガスなどを示し、腫瘤は形成しない。 ・胆嚢癌の危険因子として胆石と膵・胆管合流異常が重要。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。