肘は曲げて、指の上から叩く―上腕二頭筋腱反射を正しく出すための3つのコツ
第107回医師国家試験 C問題 第9問
国試問題にチャレンジ
神経系の診察場面(①~⑤)を別に示す。 上腕二頭筋腱反射の診察法として適切なのはどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
上腕二頭筋腱反射は、肘を軽く屈曲させて前腕を支え、肘窩の二頭筋腱に置いた検者の母指の上から打腱器で叩くのが正しい手技で、正常では二頭筋が収縮して肘が屈曲します(主にC5、筋皮神経)。腱反射を適切に誘発するには、筋を弛緩させ、腱を適度に張った肢位で、目的の腱を正確に叩くことが必要で、肘を伸展したまま肘窩を叩いても正しく評価できません。肘頭の上を叩くのは上腕三頭筋反射(主にC7)、橈骨遠位端の上方を叩くのは腕橈骨筋反射(主にC6)であり、上肢の三つの反射をC5・C6・C7として整理すると覚えやすくなります。反射の亢進は錐体路障害、低下・消失は反射弓の障害を示唆し、上肢反射の組み合わせは頸椎病変の高位診断にも役立ちます。正確な手技を身につけることは、神経診察で信頼できる所見を得るための第一歩です。
解答・解説
正解はcです
上腕二頭筋腱反射(二頭筋反射)は、上腕二頭筋の腱を叩いて筋を急に伸ばし、筋紡錘からの信号が脊髄を介して同じ筋を反射的に収縮させる伸張反射の一つである。反射中枢は主にC5(C5〜C6)髄節で、筋皮神経が関与する。 腱反射を正しく誘発するためのポイントは次の3点である。 1. 被検者の力を抜かせ、筋を弛緩させる。 2. 関節を適度な角度に置き、対象となる腱を軽く伸ばした(張った)状態にする。腱がたるんでいると、叩いても筋紡錘が十分に伸ばされず反射が出にくい。 3. 対象の腱を正確に叩く。二頭筋腱は細く触れにくいので、検者の母指を肘窩(肘の内側のくぼみ)の二頭筋腱の上に置き、その母指の上から打腱器(ハンマー)で叩く。 二頭筋反射では、被検者の肘を軽く屈曲させ(おおむね直角前後)、前腕を軽く回外または中間位として肘を検者の手で支え、肘窩に置いた母指の上を叩く。反射が正常に起これば上腕二頭筋が収縮し、前腕が肘で屈曲する。 図の各場面について、どの部位を、肘をどの肢位にして叩いているかを見極めると、肘を屈曲させて肘窩に当てた検者の母指上を叩いている③が二頭筋反射の正しい診察法とわかる。
選択肢考察
- ×a. ①
上肢を肘で屈曲させて垂らし、肘頭(肘の後面の骨の出っ張り)のすぐ上にある上腕三頭筋腱を叩いている。これは上腕三頭筋反射の診察法であり、正常では三頭筋が収縮して前腕が伸展する。反射中枢は主にC7(C6〜C8)、支配神経は橈骨神経である。二頭筋反射の診察法ではない。
- ×b. ②
肘関節を伸ばしたままの上肢で、肘の後面付近を叩いている。叩いている位置は三頭筋側であり二頭筋腱ではない。また肘が伸展しているため三頭筋腱も十分に張っておらず、三頭筋反射の手技としても不適切である。いずれにしても二頭筋反射の診察法にはあたらない。
- ○c. ③
肘関節を屈曲させた肢位で、肘窩の二頭筋腱の上に置いた検者の母指を打腱器で叩いている。肘を曲げることで二頭筋腱が適度に張り、母指越しに叩くことで細い腱に確実に刺激を伝えられる。正常では上腕二頭筋が収縮して前腕が屈曲する。これが上腕二頭筋腱反射の適切な診察法であり、主にC5髄節(筋皮神経)の機能を評価できる。
- ×d. ④
肘窩付近、すなわち二頭筋腱の位置を叩いてはいるが、肘関節を完全に伸展させている。この肢位では二頭筋腱が適切な張力で伸ばされず、叩いても筋紡錘への刺激が不十分となり、反射が正しく評価できない。叩く部位が合っていても肢位が不適切な例である。
- ×e. ⑤
前腕の母指側(橈側)の遠位部、手関節に近い橈骨下端付近を叩いている。これは腕橈骨筋反射の診察法であり、肘を軽く曲げ前腕を回内・回外の中間位にして橈骨茎状突起の上方を叩くと、腕橈骨筋が収縮して前腕が肘で屈曲する。反射中枢は主にC6(C5〜C6)、支配神経は橈骨神経である。
上肢の主な腱反射
・上腕二頭筋反射: 肘を軽く屈曲し、肘窩の二頭筋腱に置いた検者の母指上を叩く。反応は肘の屈曲。主にC5(C5〜C6)、筋皮神経。 ・腕橈骨筋反射: 前腕を回内・回外中間位にして橈骨遠位端(茎状突起の上方)を叩く。反応は肘の屈曲。主にC6(C5〜C6)、橈骨神経。 ・上腕三頭筋反射: 上肢を肘で屈曲して垂らし、肘頭の直上の三頭筋腱を叩く。反応は肘の伸展。主にC7(C6〜C8)、橈骨神経。
下肢の主な腱反射
・膝蓋腱反射: L3〜L4(主にL4)、大腿神経。 ・アキレス腱反射: S1(L5〜S2)、脛骨神経。
腱反射の評価
反射は通常、消失(−)、低下(±)、正常(+)、やや亢進(2+)、亢進(3+)、著明亢進(クローヌスを伴う、4+)などで記載し、左右差に注意する。亢進は錐体路(上位運動ニューロン)障害、低下・消失は反射弓(感覚神経、脊髄前角細胞、運動神経、筋)の障害を示唆する。反射が出にくいときは、歯を食いしばる、両手を組んで引っ張る(Jendrassik法)などの増強法を用いる。
臨床での応用
頸椎症性神経根症や頸髄症の高位診断に用いられる。例えば、二頭筋反射・腕橈骨筋反射が低下し、三頭筋反射が亢進していれば、C5〜C6レベルの病変が疑われる。腕橈骨筋を叩いたときに肘屈曲が起こらず手指屈曲だけが起こる現象(逆転橈骨反射)もC5〜C6病変を示唆する。
POINT
・二頭筋反射は、肘を軽く屈曲させ、肘窩の二頭筋腱上に置いた検者の母指を叩く。反応は肘の屈曲で、主にC5。 ・腱反射は筋を弛緩させ、腱を適度に伸ばした肢位で叩くことが必要。肘を伸展したままでは適切に評価できない。 ・腕橈骨筋反射は主にC6、上腕三頭筋反射は主にC7。
