StudyMed医師国家試験

その視線、患者さんは見ています―「腕時計を見る」が会話を止める理由

第107回医師国家試験 C問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第107回 C問題 第5問

医療面接で患者の話を聴いている間の振舞いとして,患者の発話を妨げる可能性が高いのはどれか。

  1. a.うなずく。
  2. b.顎を触る。
  3. c.相づちを打つ。
  4. d.腕時計を見る。
  5. e.髪の毛を触る。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医療面接で、話を聴いている最中の医師の振舞いが患者さんにどう伝わるかを考える問題だ。ポイントは、言葉以外のメッセージ、つまり非言語的コミュニケーション。その仕草が「どうぞ続けてください」と伝えるのか、「早く終わってほしい」と伝えるのか、という軸で考えてみよう。
医学生医学生
OSCEの医療面接の練習で、うなずきや相づちは大事だと繰り返し言われました。この2つは話を促す側ですよね。
ドクタードクター
その通り。うなずきや「ええ」「そうですか」といった相づちは、「あなたの話を聴いていますよ」「理解していますよ」というサインになる。これは促し、英語でfacilitationと呼ばれる傾聴の基本技法で、患者さんは安心して話を続けられるんだ。
医学生医学生
ただ、相づちを打ちすぎると、かえって急かしているように見えないか気になります。
ドクタードクター
鋭いね。話にかぶせるように「はいはい」と連発すると、確かに急かしている印象になる。相づちは患者さんのペースに合わせるのが大切だ。でも適切に使えば、発話を妨げるどころか後押しする技法だよ。では、話の途中で医師が腕時計に目をやったら、患者さんはどう感じるだろう。
医学生医学生
「この先生、時間を気にしているな」と思いそうです。自分が患者だったら、話を短くまとめなきゃと焦ると思います。
ドクタードクター
まさにそこが正解の理由だ。腕時計を見る動作は「早く終わらせたい」というメッセージとして受け取られやすく、患者さんは遠慮して話を切り上げたり、本当に伝えたかった症状や不安を言い出せなくなったりする。しかも時計を見る瞬間は患者さんから視線を外すことになるから、関心がないという印象まで強めてしまう。だから患者さんの発話を妨げる可能性が高いのは、腕時計を見ることなんだ。
医学生医学生
顎や髪の毛を触るのも、あまり良い印象ではない気がします。これも妨げにならないんですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。望ましい態度ではないのは確かだ。髪を触るのは癖として出やすく、落ち着きがない、清潔感に欠けるといった印象を与えうる。顎に手を当てるのは、考え込んでいる様子として受け取られることが多い。ただ、どちらも「話をやめてほしい」「急いでいる」という明確なメッセージにはなりにくい。だから好ましくはないけれど、発話を妨げる可能性が高いとまではいえない、という位置づけだ。
医学生医学生
「感じが悪い仕草」と「話を止めさせる仕草」は分けて考える必要があるんですね。
ドクタードクター
そう、その区別がこの問題の肝だよ。ここで医療面接の目的もおさらいしておこう。診断に必要な情報を集めること、良好な医師-患者関係を築くこと、そして説明や教育で治療への動機づけをすること。どれも患者さんが話しやすい雰囲気が前提になる。
医学生医学生
臨床実習で総合診療科を回ったとき、指導医の先生が最初に「今日はどうされましたか」と聞いて、しばらく黙って聴いていたのが印象的でした。
ドクタードクター
それは開放型質問から入って、沈黙も上手に使っていたんだね。患者さんが考えをまとめている間はすぐに口を挟まずに待つ。ほかにも、患者さんの言葉の一部を繰り返す、聞いた内容を要約して確認する、「それはおつらかったですね」と感情を受け止める共感、といった技法がある。
医学生医学生
座る位置や姿勢にも決まりがありましたよね。真正面より斜めのほうがいいと習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。真正面で向き合うと緊張しやすいので、90度前後の位置に座ると和らぎやすい。視線は適度に合わせて見つめすぎず、やや前傾姿勢で、腕や脚は組まない。逆に腕組みやふんぞり返った姿勢、ペン回しは威圧的・無関心な印象を与えるし、話の途中で遮る、閉鎖型質問を矢継ぎ早に重ねる、否定や説教をするのも発話を妨げる態度だ。
医学生医学生
電子カルテの画面ばかり見ているのも、腕時計と同じような印象になりそうです。
ドクタードクター
その通りで、実際の外来ではこれが一番起こりやすい落とし穴かもしれない。記録は大事だけれど、患者さんが大事な話をしているときはキーボードから手を離して顔を向ける。時間が限られている場面でも、時計を盗み見るのではなく、「今日は〇分ほどお時間をいただけます」と最初に伝えておくほうが、患者さんも安心して話せるんだ。
医学生医学生
忙しいときほど、自分の仕草が相手にどう映るかを意識しないといけませんね。

まとめ

医療面接では、表情・視線・姿勢・仕草といった非言語的コミュニケーションが患者の話しやすさを大きく左右します。うなずきや相づちは「聴いている」ことを伝える促しの技法で発話を後押ししますが、話の途中で腕時計を見ると「早く終わらせたい」「関心がない」という印象を与え、患者が話を切り上げたり不安を言い出せなくなったりします。顎や髪を触る癖は好ましくはないものの、発話を直接止めるメッセージにはなりにくい点で区別されます。開放型質問、沈黙、繰り返し、要約、共感といった技法や、座る位置・姿勢への配慮とあわせて身につけることで、必要な情報を引き出し、信頼関係を築く面接が可能になります。忙しい臨床現場ほど、自分の何気ない仕草が患者にどう伝わるかを意識することが大切です。

解答・解説

正解はdです

医療面接では、言葉そのもの(言語的コミュニケーション)だけでなく、表情・視線・姿勢・身振り・声の調子といった非言語的コミュニケーションが、患者の話しやすさに大きく影響する。医師は何気なくしている仕草であっても、患者はそこから「自分の話に関心をもってくれているか」「急がされていないか」を敏感に読み取る。 本問は、話を聴いている最中の医師の振舞いのうち、患者の発話を妨げる可能性が高いものを選ぶ問題である。考え方の軸は、その仕草が患者に「話を続けてよい」というメッセージを送るのか、それとも「早く終わってほしい」「関心がない」というメッセージを送るのかである。うなずきや相づちは前者の代表であり、発話を促進する。一方、腕時計を見る動作は、時間を気にしている、面接を切り上げたがっているという印象を与え、患者は遠慮して話を短く切り上げたり、言いたいことを言えなくなったりしやすい。顎や髪を触る仕草は、望ましい態度とはいえないが、それ自体が「話をやめてほしい」という明確なメッセージにはなりにくい。

選択肢考察

  1. ×a.  うなずく。

    うなずきは「あなたの話を聴いている」「理解している」ことを伝える代表的な非言語的メッセージであり、患者が安心して話を続けられるよう促す効果がある。発話を促進する促し(facilitation)の技法の一つであり、妨げにはならない。

  2. ×b.  顎を触る。

    顎に手を当てる仕草は、考え込んでいる様子として受け取られることが多い。落ち着きのない印象を与えないよう面接中は控える方がよいが、時間や関心の欠如を直接示す動作ではなく、患者の発話を妨げる可能性が高いとはいえない。

  3. ×c.  相づちを打つ。

    「はい」「ええ」「そうですか」などの相づちは、聴き手が話に注意を向けていることを示し、話の続きを促す。うなずきと並んで、医療面接で推奨される傾聴の基本的な技法であり、発話を妨げるものではない。ただし、話の途中で被せるように多用すると急かしている印象になるため、患者のペースに合わせることが大切である。

  4. ○d.  腕時計を見る。

    話の途中で腕時計に目をやると、患者は「医師は時間を気にしている」「早く終わらせたいのだ」と受け取りやすい。その結果、患者は遠慮して話を切り上げたり、本当に伝えたかった症状や不安を言い出せなくなったりする。同時に患者から視線を外すことにもなり、関心の欠如という印象を強める。このように、時間を気にする仕草は患者の発話を妨げる可能性が高い振舞いであり、本問の正解である。

  5. ×e.  髪の毛を触る。

    髪の毛を触る仕草は癖として出やすく、落ち着きがない、あるいは清潔感に欠ける印象を与えうるため、望ましい態度ではない。しかし、患者に対して「話をやめてほしい」「急いでいる」というメッセージを明確に送る動作ではなく、発話を妨げる可能性が高いとはいえない。

医療面接の目的

医療面接には、①診断に必要な情報を集める、②良好な医師-患者関係を築く、③患者に説明・教育を行い治療への動機づけをする、という三つの目的がある。どの目的を果たすうえでも、患者が話しやすい雰囲気をつくることが前提となる。

傾聴を促す技法

・開放型質問(open-ended question):「今日はどうされましたか」のように、患者が自由に答えられる質問から始める。 ・促し(facilitation):うなずき、相づち、「それで?」「もう少し詳しく教えてください」などで話の続きを促す。 ・繰り返し:患者の言葉の一部をそのまま返し、話を深める。 ・沈黙:患者が考えをまとめている間、すぐに口を挟まず待つ。 ・要約・確認:聞いた内容をまとめて伝え、誤解がないか確認する。 ・共感:患者の感情を言葉にして受け止める(「それはおつらかったですね」)。

望ましい非言語的態度

・適度に視線を合わせる(見つめ過ぎない)。 ・患者と正面で向き合い過ぎず、90度前後の位置に座ると緊張が和らぎやすい。 ・やや前傾姿勢で、腕や脚を組まない。 ・電子カルテやパソコン画面ばかり見ない。

発話を妨げやすい態度

・時計を見る、書類や画面ばかり見るなど、時間や関心の欠如を示す仕草 ・話の途中で遮る、次々と閉鎖型質問を重ねる ・腕組み、ふんぞり返った姿勢、ペンを回すなど、威圧的・無関心な印象を与える態度 ・否定・批判・説教をする

POINT

・医療面接では非言語的コミュニケーションが患者の話しやすさを大きく左右する。 ・うなずき・相づちは発話を促す「促し」の技法である。 ・腕時計を見るなど時間を気にする仕草は、「早く終わらせたい」という印象を与え、患者の発話を妨げる。 ・顎や髪を触る癖は好ましくはないが、発話を直接妨げる振舞いとはいいにくい。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。