StudyMed医師国家試験

減るむし歯、増える近視―小学生の健康統計グラフを「桁」と「傾き」で読み解く

第107回医師国家試験 B問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第107回 B問題 第10問

学校保健統計調査における小学生の主な疾病・異常被患率の推移を示す。  ②はどれか。  ただし,①~⑤はa~eのいずれかに該当する。

第107回 B問題 第10問の問題画像
  1. a.心電図異常
  2. b.むし歯(う歯)
  3. c.鼻・副鼻腔疾患
  4. d.(尿)蛋白検出の者
  5. e.裸眼視力1.0未満の者

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は学校保健統計調査のグラフ問題だ。5本の線を選択肢の疾病・異常に当てはめるんだけど、カギは2つ。「どのくらいの割合か(桁)」と「増えているか減っているか(傾き)」。この2つで並べ替えれば自然に答えが出るよ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で出てきた調査ですね。でも数字まで覚えていなくて、正直グラフだけ見ても自信がないです。
ドクタードクター
細かい数字は覚えなくて大丈夫。まずは5つの選択肢を、小学生にどれくらいありふれているかで順番に並べてみよう。一番多いのはどれだと思う?
医学生医学生
むし歯でしょうか。小児歯科の講義で「子どもで最も多い疾患」と習いました。
ドクタードクター
その通り。グラフで飛び抜けて高い線、つまり6割前後の①がむし歯だ。ただ、よく見ると年々下がっているよね。フッ化物配合歯みがき剤の普及や学校での歯科保健指導のおかげで、かつて9割を超えていた時代から一貫して減っているんだ。
医学生医学生
じゃあ2番目に高くて、しかも少しずつ上がっている②は何でしょう。鼻炎かなとも思ったんですが。
ドクタードクター
そこが考えどころ。増えているものを探すと答えが見えてくる。最近の子どもの生活で、何が増えているかな?
医学生医学生
スマホやゲーム、タブレット学習で近くを見る時間が増えていますよね……あ、近視ですか。
ドクタードクター
そう。②は裸眼視力1.0未満の者で、これが正解だ。視力低下の主な原因は近視で、屋外活動の減少と近見作業の増加を背景に長期的に上がり続けている。この問題の時期には3割弱から3割程度へ増えつつ、むし歯に次ぐ2位だった。
医学生医学生
学校の視力検査は「A・B・C・D」で判定されていた記憶があります。
ドクタードクター
370方式と呼ばれる簡易判定だね。1.0、0.7、0.3の視標を使って振り分けるから、1.0未満かどうかがはっきり分かるんだ。では残りの3つ。1割前後で横ばいの③はどうかな。
医学生医学生
鼻・副鼻腔疾患でしょうか。耳鼻咽喉科の臨床実習で、花粉症の小学生がとても多いと聞きました。
ドクタードクター
正解。アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などを含んで、小学生の約1割にみられる。被患率の順位ではむし歯、視力低下に次ぐ3位だ。数%の④と、底にはりついた⑤はどうだろう。
医学生医学生
心電図異常と尿蛋白ですね。どちらも低そうですが、どっちが多いのか迷います。
ドクタードクター
心電図検査は小・中・高の各第1学年で行われ、異常と判定されるのは数%程度。一方、学校検尿で蛋白が出る小学生は1%未満とまれだ。小学生では体位性(起立性)蛋白尿もまだ少なく、中高生より検出率は低い。だから④が心電図異常、⑤が尿蛋白検出の者になる。
医学生医学生
数字を暗記するより、「よくあるものか、まれなものか」で桁をつかむのが大事なんですね。
ドクタードクター
そういうこと。発展知識として、学校段階による違いも押さえておこう。当時、中学・高校では既に裸眼視力1.0未満が1位で、高校生では6割を超えていた。学年が上がるほど近視が進むからだ。さらにその後も視力低下は増え続け、近年は小学生でもむし歯を上回って1位になっている。
医学生医学生
試験では、出題された年代のデータなのか最新の傾向なのかにも注意が必要ですね。
ドクタードクター
その意識は大切だね。臨床でも、学校健診で視力低下を指摘された子は眼科受診につなげることが重要だ。小児期の近視は進行しやすく、強度近視になると将来の網膜剥離や緑内障などのリスクにもつながる。屋外活動を増やす、近くを見る作業の合間に休憩をとるといった生活指導も、予防の観点から注目されているよ。

まとめ

学校保健統計調査は文部科学省が毎年行う基幹統計で、幼児・児童・生徒の発育状態と疾病・異常の被患率を示します。本問の時期の小学生では、むし歯が約6割で最多ながら減少傾向、裸眼視力1.0未満が約3割で2位かつ増加傾向、鼻・副鼻腔疾患が約1割で3位、心電図異常は数%、尿蛋白検出は1%未満でした。グラフ問題では「頻度の桁」と「増減の向き」で選択肢を並べ替えると対応がつき、減るむし歯と増える近視という対照的な動きが上位2本を見分けるポイントです。中学・高校では以前から視力低下が1位で、近年は小学生でもむし歯を上回っており、近視対策は学校保健の重要課題となっています。統計の数字そのものより、その背景にある生活や予防の変化を理解することが、公衆衛生の問題にも小児の健康支援にも役立ちます。

解答・解説

正解はeです

問われていること

学校保健統計調査(文部科学省が毎年実施し、幼稚園から高等学校までの児童・生徒の発育状態と健康状態を明らかにする基幹統計調査)で、小学生の主な疾病・異常の被患率(その疾病・異常があると判定された者の割合)がどの程度の水準にあるかを問う問題である。

グラフの読み取り

図は2005~2009年度の推移で、5本の線は水準が大きく異なる。 ・①:約68%から約60%へ。圧倒的に高いが、年々低下している。 ・②:約26%から約30%へ。2番目に高く、緩やかな増加傾向にある。 ・③:約11~12%でほぼ横ばい。 ・④:約2~3%で低い水準のまま横ばい。 ・⑤:1%未満で、グラフの底にはりついている。

考え方

5つの選択肢を「頻度の桁」で並べると、グラフとの対応がつく。 ・むし歯(う歯):小児で最も多い疾患。ただし、フッ化物の利用や歯みがき指導の普及で長期的に減少している → 高いが低下中の① ・裸眼視力1.0未満:近視の増加により上昇が続いている → 2番目で増加中の② ・鼻・副鼻腔疾患:アレルギー性鼻炎を中心に1割程度 → ③ ・心電図異常:数% → ④ ・尿蛋白検出:1%前後またはそれ未満 → ⑤ したがって、②は裸眼視力1.0未満の者である。 「高いが減少しているう歯」と「増え続けている視力低下」という対照的な動きを押さえておけば、上位2本の区別は容易である。

選択肢考察

  1. ×a.  心電図異常

    ④に当たる。心電図検査は学校保健安全法施行規則により小学校・中学校・高等学校の各第1学年で行われ、異常と判定される者は2~3%程度と低い水準で、年次推移もほぼ横ばいである。約30%の②には当たらない。

  2. ×b.  むし歯(う歯)

    ①に当たる。乳歯はエナメル質が薄く酸に弱いうえ、小児はみがき残しも多いため、う歯は長く小学生の被患率第1位であった。一方、フッ化物配合歯みがき剤の普及や学校での歯科保健指導により、昭和50年代の90%台をピークに一貫して減少している。図でも約68%から約60%へ低下しており、②ではない。

  3. ×c.  鼻・副鼻腔疾患

    ③に当たる。アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)や慢性副鼻腔炎などが含まれ、小学生の約1割にみられる。被患率の順位ではう歯、裸眼視力1.0未満に次ぐ3番目であり、約30%の②には届かない。

  4. ×d.  (尿)蛋白検出の者

    ⑤に当たる。学校検尿(腎疾患の早期発見を目的とする尿検査)で蛋白が検出される小学生は1%未満とまれである。小学生ではまだ体位性(起立性)蛋白尿も少なく、中学・高校生より検出率は低い。

  5. ○e.  裸眼視力1.0未満の者

    ②に当たる。視力低下の主因は近視であり、屋外活動の減少や近くを見る作業(読書、ゲーム、スマートフォン・タブレットの使用など)の増加を背景に、裸眼視力1.0未満の者の割合は長期的に上昇している。図の時期には約26%から約30%へ増えつつ、う歯に次ぐ第2位であった。その後も増加が続き、近年(令和4年度前後)の調査では小学生でもう歯を上回り、第1位となっている。

学校保健統計調査

文部科学省が毎年実施する調査で、健康診断の結果をもとに、5~17歳の幼児・児童・生徒の身長・体重などの発育状態と、疾病・異常の被患率を集計する。統計法上の基幹統計である。

学校段階別の被患率上位(本問の出題当時の傾向)

・幼稚園:①う歯 ②裸眼視力1.0未満 ③鼻・副鼻腔疾患 ・小学校:①う歯 ②裸眼視力1.0未満 ③鼻・副鼻腔疾患 ・中学校:①裸眼視力1.0未満 ②う歯 ③鼻・副鼻腔疾患 ・高等学校:①裸眼視力1.0未満 ②う歯 ③鼻・副鼻腔疾患 学年が上がるほど視力低下の割合が大きくなり、高校生では6割を超える。

最近の動向

・う歯は全学校段階で減少が続いている。 ・裸眼視力1.0未満は上昇が続き、過去最高を更新している。小学校でも近年う歯を上回った。 ・このほか、ぜん息、アトピー性皮膚炎、肥満傾向児なども調査項目に含まれる。

学校健康診断の検査項目の例

・心電図検査:小・中・高の各第1学年 ・尿検査(蛋白・糖など):全学年(幼稚園は糖の検査を省略できる) ・視力検査:全学年(370方式などの簡易判定を用いることが多い) ・歯および口腔の検査:全学年

POINT

・小学生の被患率は、う歯>裸眼視力1.0未満>鼻・副鼻腔疾患の順(本問当時)。 ・う歯は減少傾向、裸眼視力1.0未満は増加傾向で、近年は小学生でも視力低下が第1位となった。 ・中学・高校では以前から裸眼視力1.0未満が第1位。 ・心電図異常は数%、尿蛋白検出は1%前後またはそれ未満と低い。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。