StudyMed医師国家試験

真夜中の前半に歩き出す子ども―睡眠構造で解く夢中遊行症

第106回医師国家試験 I問題 第25問

国試問題にチャレンジ

第106回 I問題 第25問

入眠後2~3時間で出現することが多いのはどれか。

  1. a.せん妄
  2. b.悪夢障害
  3. c.夢中遊行症
  4. d.ナルコレプシー
  5. e.睡眠覚醒スケジュール障害

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は「入眠後2〜3時間」という時間帯がキーワードの問題だ。睡眠の中身は一晩中均一ではなく、時間帯によって深い眠りが多いか、レム睡眠が多いかが変わる。その分布と、各睡眠障害がどの睡眠段階で起こるかを結びつけられるかがポイントになる。
医学生医学生
睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠が約90分周期で繰り返す、というのは生理学の講義で習いました。
ドクタードクター
そう、一晩に4〜5回繰り返す。ノンレム睡眠は深さでN1・N2の浅い睡眠と、N3の深睡眠、いわゆる徐波睡眠に分けられる。昔の分類ではステージ1〜4で、ステージ3と4が徐波睡眠にあたる。ここで大事なのは、一晩の中での偏りだ。
医学生医学生
明け方に夢をよく見るので、レム睡眠は後半に多いイメージがあります。
ドクタードクター
その感覚は正しい。レム睡眠は後半になるほど1回が長くなり、明け方に多い。逆に徐波睡眠は入眠直後の1〜2周期、睡眠の前半1/3に集中する。7〜8時間眠るとすると、入眠後2〜3時間はちょうど徐波睡眠が最も多い時間帯だ。
医学生医学生
ということは、深いノンレム睡眠から起こる異常を選べばいいんですね。それが夢中遊行症でしょうか。
ドクタードクター
正解。夢中遊行症、つまり睡眠時遊行症は、徐波睡眠から不完全に目覚めた状態で起き上がって歩き回るものだ。数分から十数分ほど続き、その間は呼びかけへの反応が乏しく、翌朝本人はほとんど覚えていない。小児に多く、成長とともに自然に消えることが多い。睡眠不足や発熱、ストレスが誘因になる。
医学生医学生
脳の一部は眠ったまま、体だけ動いているような状態ですね。小児科実習で、夜中に叫んで起きるのに朝は覚えていない子の話を聞きましたが、あれも同じ仲間ですか。
ドクタードクター
それは睡眠時驚愕症、夜驚症だね。夢中遊行症と同じく徐波睡眠からの覚醒障害で、睡眠前半に突然叫んで起き上がり、強い恐怖の表情や頻脈・発汗を示す。なだめても反応が乏しく、翌朝覚えていない。では悪夢障害との違いはわかるかな。
医学生医学生
怖い夢で目が覚めるなら、夜驚症とほとんど同じように思えます。
ドクタードクター
そこが典型的な引っかけだ。悪夢障害はレム睡眠中に起こるから睡眠後半の明け方に多い。そして目覚めるとすぐ意識がはっきりして、夢の内容を詳しく語れる。前半・健忘ならノンレム系、後半・内容を語れるならレム系と整理するといい。
医学生医学生
ナルコレプシーもレム睡眠が関係していたと思うのですが、時間帯はどうなりますか。
ドクタードクター
ナルコレプシーの特徴は、寝入ってすぐにレム睡眠が現れる入眠時レム睡眠期だ。だから入眠時幻覚や睡眠麻痺、いわゆる金縛りは寝入りばなに起こる。主症状は日中の耐えがたい眠気と、笑いや驚きで脱力する情動脱力発作で、視床下部のオレキシン神経の脱落が原因とされる。入眠後2〜3時間に特有の症状が出る病気ではない。
医学生医学生
せん妄も夜に多いと精神科の講義で習いました。夜間せん妄という言葉もありますよね。
ドクタードクター
確かにせん妄は夕方から夜に悪化しやすい。でもこれは身体疾患や薬剤などで起こる意識障害で、意識レベルが変動しながら幻視や興奮を伴うものだ。睡眠段階と結びついた現象ではないから、睡眠時随伴症とは別物と考えよう。
医学生医学生
睡眠覚醒スケジュール障害は、そもそも眠る時間帯がずれる病気なので違いますね。
ドクタードクター
その通り。体内時計と社会の時間が合わなくなる概日リズム睡眠・覚醒障害で、極端な夜型で朝起きられない睡眠相後退型などがある。問題は眠る時間帯のずれであって、入眠後の特定の時間に出る症状ではない。
医学生医学生
整理すると、前半の徐波睡眠に夢中遊行症と夜驚症、後半のレム睡眠に悪夢障害、寝入りばなのレム睡眠にナルコレプシーの症状、ということですね。
ドクタードクター
完璧だ。発展として、レム睡眠行動障害も押さえておこう。本来レム睡眠中は抗重力筋の緊張が消えているが、それが保たれず、夢の内容どおりに大声を出したり手足を激しく動かしたりする。睡眠後半に多く、中高年男性に多い。
医学生医学生
Parkinson病の前駆症状になると神経内科で聞きました。
ドクタードクター
よく覚えているね。Parkinson病やLewy小体型認知症などαシヌクレイノパチーに先行することが知られているから、高齢者の寝言や夜間の暴力的な動きを単なる寝相として片づけず、神経変性疾患の手がかりとして意識しておくことが大切だよ。

まとめ

睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠が約90分周期で繰り返されますが、深いノンレム睡眠(徐波睡眠)は睡眠前半1/3に集中し、レム睡眠は明け方に多くなります。そのため入眠後2〜3時間に多いのは、徐波睡眠からの不完全な覚醒で起こる夢中遊行症や夜驚症で、いずれも小児に多く翌朝の記憶がないのが特徴です。一方、悪夢障害やレム睡眠行動障害はレム睡眠に関連して睡眠後半に起こり、ナルコレプシーでは入眠時レム睡眠により入眠時幻覚や睡眠麻痺が生じます。せん妄や概日リズム睡眠・覚醒障害は睡眠段階に結びつく現象ではありません。睡眠構造の時間的分布と各疾患の発生段階を結びつけて理解しておくと、睡眠障害の鑑別や、レム睡眠行動障害を手がかりにした神経変性疾患の早期発見にも役立ちます。

解答・解説

正解はcです

本問は、睡眠に関連する異常が睡眠のどの段階で生じやすいかを問う問題である。

睡眠構造の基本

睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠からなり、両者が約90分の周期(睡眠周期)で一晩に4〜5回繰り返される。ノンレム睡眠は深さにより段階分けされ、現在の国際的な判定基準(米国睡眠医学会:AASM)ではN1・N2(浅い睡眠)とN3(深睡眠、徐波睡眠)に分ける。かつてはステージ1〜4の4段階に分類され、ステージ3と4が深睡眠(徐波睡眠)に相当していた。 一晩の中での分布には偏りがある。深いノンレム睡眠(徐波睡眠)は入眠直後の1〜2周期、すなわち睡眠の前半1/3に集中し、明け方に近づくほど少なくなる。逆にレム睡眠は睡眠後半ほど1回の持続が長くなり、明け方に多い。

考え方

入眠後2〜3時間は、成人の睡眠時間を7〜8時間とするとその最初の1/3にあたり、徐波睡眠が最も多い時間帯である。したがって、徐波睡眠からの不完全な覚醒によって起こる睡眠時随伴症(ノンレム睡眠からの覚醒障害)を選べばよい。これに該当するのが夢中遊行症(睡眠時遊行症)であり、同じ群に睡眠時驚愕症(夜驚症)がある。一方、悪夢障害やレム睡眠行動障害はレム睡眠に関連し、睡眠後半に多い。

選択肢考察

  1. ×a.  せん妄

    せん妄は、身体疾患、薬剤、アルコール離脱などを原因として急性に生じる意識障害で、軽度の意識混濁を基盤に、幻覚(特に幻視)、錯覚、不安・恐怖、精神運動興奮などを伴う。意識レベルが短時間のうちに変動することが特徴である。夕方から夜間に出現・増悪しやすく「夜間せん妄」と呼ばれることもあるが、これは睡眠段階に結びついた現象ではなく、睡眠中の特定の時間帯に起こる睡眠時随伴症とは異なる。

  2. ×b.  悪夢障害

    悪夢障害は、生命や安全を脅かされるような強い恐怖や不安を伴う夢を繰り返し見て、目覚める病態である。レム睡眠中に生じるため、レム睡眠が多くなる睡眠の後半(明け方)に起こりやすい。目覚めた後は速やかに意識が清明となり、夢の内容を詳しく思い出せる点で、ノンレム睡眠から起こり健忘を残す夜驚症や夢中遊行症と区別される。

  3. ○c.  夢中遊行症

    夢中遊行症(睡眠時遊行症)は、深いノンレム睡眠(徐波睡眠、N3。旧分類のステージ3・4)から不完全に覚醒した状態で、起き上がって歩き回るなどの行動をとるものである。徐波睡眠は睡眠の前半1/3に多いため、入眠後およそ2〜3時間以内に出現することが多い。エピソードは通常数分から十数分程度で、その間は呼びかけへの反応が乏しく、翌朝本人は出来事をほとんど覚えていない(健忘)。小児に多く、成長とともに自然に消退することが多い。睡眠不足、発熱、ストレスが誘因となる。

  4. ×d.  ナルコレプシー

    ナルコレプシーは過眠症の代表的疾患で、日中の耐えがたい眠気と居眠り(睡眠発作)、情動脱力発作(笑いや驚きなどの強い感情を契機に抗重力筋の脱力が起こる)、入眠時幻覚、睡眠麻痺(いわゆる金縛り)を特徴とする。入眠直後にレム睡眠が出現する(入眠時レム睡眠期:SOREMP)ことが特徴で、入眠時幻覚や睡眠麻痺はこの寝入りばなのレム睡眠に関連する。視床下部のオレキシン(ヒポクレチン)神経の脱落が原因とされる。入眠後2〜3時間に特有の症状が出る疾患ではない。

  5. ×e.  睡眠覚醒スケジュール障害

    睡眠覚醒スケジュール障害(概日リズム睡眠・覚醒障害)は、体内時計(概日リズム)と外界の24時間周期や社会生活上の時間帯とが合わなくなり、望ましい時刻に眠れず・起きられない状態である。睡眠相後退型(極端な夜型で朝起きられない)、睡眠相前進型、非24時間睡眠・覚醒型、交代勤務型、時差型などがある。睡眠をとる時間帯のずれが問題であり、入眠後の特定の時間に出現する症状ではない。

睡眠段階と関連する睡眠障害

深いノンレム睡眠(徐波睡眠、睡眠前半に多い):夢中遊行症(睡眠時遊行症)、睡眠時驚愕症(夜驚症)、錯乱性覚醒。いずれも小児に多く、エピソードの記憶がない。 レム睡眠(睡眠後半に多い):悪夢障害、レム睡眠行動障害。 入眠時のレム睡眠(ナルコレプシーなど):入眠時幻覚、睡眠麻痺。

夜驚症

睡眠前半に突然叫び声をあげて起き上がり、強い恐怖の表情、頻脈・発汗などの自律神経症状を示す。なだめても反応が乏しく、翌朝覚えていない。悪夢障害は目覚めて夢の内容を語れる点で区別される。

レム睡眠行動障害(RBD)

本来レム睡眠中に保たれる骨格筋の脱力(筋緊張消失)が障害され、夢の内容に沿って大声を出したり手足を激しく動かしたりする。中高年の男性に多く、Parkinson病やLewy小体型認知症などのαシヌクレイノパチーの前駆症状となることが知られている。治療にはクロナゼパムなどが用いられる。

レム睡眠の特徴

急速眼球運動(rapid eye movement)、覚醒時に似た低振幅の混合周波数脳波と鋸歯状波、抗重力筋の緊張消失がみられ、鮮明な夢を見ることが多い。

POINT

・徐波睡眠(深いノンレム睡眠)は睡眠の前半1/3に多く、レム睡眠は後半(明け方)に多い。 ・入眠後2〜3時間に多いのは、徐波睡眠から生じる夢中遊行症と夜驚症である。いずれも小児に多く、翌朝の記憶がない。 ・悪夢障害とレム睡眠行動障害はレム睡眠に関連し、睡眠後半に多い。 ・ナルコレプシーでは入眠時レム睡眠により入眠時幻覚・睡眠麻痺が起こる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。