十二指腸閉鎖はどの症候群?―染色体異常と合併奇形の「定番ペア」を整理する
第106回医師国家試験 I問題 第2問
国試問題にチャレンジ
症候と原疾患の組合せで誤っているのはどれか。
- a.十二指腸閉鎖症 ―― Turner症候群
- b.心奇形 ―― 18 trisomy
- c.全前脳胞症 ―― 13 trisomy
- d.腟欠損 ―― Mayer-Rokitansky-Küster症候群
- e.低身長 ―― Down症候群
対話形式の解説
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ドクターまとめ
十二指腸閉鎖症はDown症候群(21トリソミー)と関連が深く、double bubble signや羊水過多とともに覚えておくべき組合せであり、Turner症候群の代表的な合併奇形は大動脈縮窄症・大動脈二尖弁や馬蹄腎です。18トリソミーでは心奇形がほぼ必発、13トリソミーでは前脳の分割障害である全前脳胞症が代表的で、Mayer-Rokitansky-Küster-Hauser症候群はMüller管の発生異常により腟・子宮が欠損し、卵巣は正常なため二次性徴を伴う原発性無月経を呈します。低身長のように複数の症候群に共通する症候もあるため、「特異性の高い奇形と症候群のペア」と「共通しやすい症候」を分けて整理することが大切です。こうした整理は、一つの奇形をきっかけに背景の症候群を疑い、他の合併症を系統的に検索するという臨床の思考にそのままつながります。
解答・解説
正解はaです
テーマ
染色体異常症や先天異常症候群と、それぞれに特徴的な症候(合併奇形)の対応を問う問題である。「誤っているのはどれか」という形式なので、組合せとして成り立たないものを一つ選ぶ。
考え方
代表的な症候群ごとに「特徴的な合併症」を整理しておくと解きやすい。 ・Down症候群(21トリソミー):低身長、特徴的顔貌、先天性心疾患(心内膜床欠損症など)、十二指腸閉鎖症、Hirschsprung病、白血病など ・18トリソミー(Edwards症候群):ほぼ全例にみられる心奇形、胎児発育不全、手指の重なり(overlapping finger)、揺り椅子状の足底など ・13トリソミー(Patau症候群):全前脳胞症、口唇口蓋裂、多指症、小眼球症、心奇形など ・Turner症候群(45,X など):低身長、翼状頸、外反肘、原発性無月経、大動脈縮窄症、大動脈二尖弁、馬蹄腎など ・Mayer-Rokitansky-Küster(-Hauser)症候群:腟欠損と子宮の欠損・痕跡化 このうち十二指腸閉鎖症と強く結びつくのはDown症候群であり、Turner症候群との組合せは誤りである。
選択肢考察
- ○a. 十二指腸閉鎖症 ―― Turner症候群
組合せとして誤っている。十二指腸閉鎖症は、胎生期に一時的に充実性となった十二指腸内腔の再開通が障害されることで生じ、その患児の約3分の1程度にDown症候群を合併するとされるほど、Down症候群と関連が深い。一方、Turner症候群はX染色体の全部または一部の欠失(45,Xやモザイクなど)による疾患で、低身長、翼状頸、外反肘、性腺形成不全による原発性無月経・二次性徴欠如が主な症状であり、合併奇形としては大動脈縮窄症や大動脈二尖弁などの心血管奇形、馬蹄腎などの腎奇形が代表的である。十二指腸閉鎖症は特徴的な合併症ではない。
- ×b. 心奇形 ―― 18 trisomy
組合せとして正しい。18トリソミー(Edwards症候群)では心奇形がほぼ必発で、心室中隔欠損症、動脈管開存症、心房中隔欠損症などが多い。心奇形の重症度が生命予後を大きく左右し、多くは乳児期早期に死亡する。ほかに胎児発育不全、手指の重なり、揺り椅子状の足底、小顎などを特徴とする。
- ×c. 全前脳胞症 ―― 13 trisomy
組合せとして正しい。全前脳胞症は、胎生早期に前脳(終脳)が左右の大脳半球に分かれる過程が障害される脳の奇形である。脳の正中構造の形成異常に伴い、単眼症、眼間狭小、鼻の形成異常、正中の口唇口蓋裂など顔面正中部の奇形を合併しやすい。13トリソミー(Patau症候群)に高頻度に認められる代表的な奇形である。13トリソミーはほかに口唇口蓋裂、多指症、小眼球症、頭皮欠損、心奇形などを伴い、生命予後は不良である。
- ×d. 腟欠損 ―― Mayer-Rokitansky-Küster症候群
組合せとして正しい。Mayer-Rokitansky-Küster-Hauser症候群は、胎生期のMüller管(子宮・卵管・腟上部のもととなる管)の発生異常により、腟の欠損と子宮の欠損または痕跡子宮を生じる疾患である。染色体は46,XXで卵巣は正常に存在するため、二次性徴は正常に発来するが、月経がみられない(原発性無月経)ことを契機に見つかることが多い。腎・尿路奇形や骨格異常を伴うことがある。
- ×e. 低身長 ―― Down症候群
組合せとして正しい。Down症候群(21トリソミー)では低身長が特徴の一つである。ほかに眼裂斜上、内眼角贅皮、扁平な鼻根部、短頭などの特徴的な顔貌、筋緊張低下、知的障害(程度には個人差がある)、先天性心疾患(心内膜床欠損症、心室中隔欠損症など)、消化管奇形(十二指腸閉鎖症、Hirschsprung病、鎖肛など)、甲状腺機能低下症、白血病などを合併しやすい。なお、低身長はTurner症候群やPrader-Willi症候群でも代表的な症状である。
主な染色体異常症の整理
・21トリソミー(Down症候群):最も頻度の高い常染色体異常。母体年齢の上昇とともに頻度が増す。心内膜床欠損症、十二指腸閉鎖症、Hirschsprung病、環軸椎不安定性、甲状腺機能低下症、白血病(一過性骨髄異常増殖症を含む)、早期のAlzheimer型認知症など。 ・18トリソミー(Edwards症候群):女児に多い。心奇形(ほぼ必発)、胎児発育不全、手指の重なり、揺り椅子状足底、小顎、後頭部突出。予後不良。 ・13トリソミー(Patau症候群):全前脳胞症、口唇口蓋裂、小眼球症、多指症、頭皮欠損、心奇形。予後不良。 ・Turner症候群(45,Xなど):低身長、翼状頸、外反肘、盾状胸、原発性無月経(性腺形成不全)、大動脈縮窄症・大動脈二尖弁、馬蹄腎、リンパ浮腫(新生児期の手足の浮腫)。低身長に成長ホルモン、二次性徴誘導にエストロゲン補充を行う。知能は通常正常である。 ・Klinefelter症候群(47,XXY):高身長、女性化乳房、小さい精巣、無精子症。
十二指腸閉鎖症
・羊水過多(胎児期)、生後早期からの胆汁性嘔吐(閉塞部位がVater乳頭より肛門側の場合が多い)が典型である。 ・腹部単純X線写真で、拡張した胃と十二指腸球部に空気がたまるdouble bubble signがみられる。 ・Down症候群のほか、輪状膵、腸回転異常症、心奇形を合併することがある。
Müller管の発生異常
Müller管からは卵管、子宮、腟の上部が発生する。Mayer-Rokitansky-Küster-Hauser症候群はその形成不全である。卵巣はMüller管由来ではないため正常に存在し、女性ホルモンは分泌される。原発性無月経の鑑別として、Turner症候群(性腺形成不全、低身長を伴う)や、アンドロゲン不応症(46,XY、腟は盲端、子宮なし、精巣あり)、処女膜閉鎖症・腟横中隔(月経血の貯留により周期的な腹痛を伴う)と区別する。
POINT
・十二指腸閉鎖症 → Down症候群(double bubble sign、羊水過多)。 ・Turner症候群 → 低身長、翼状頸、外反肘、原発性無月経、大動脈縮窄症・大動脈二尖弁、馬蹄腎。 ・18トリソミー → 心奇形ほぼ必発、手指の重なり、揺り椅子状足底。 ・13トリソミー → 全前脳胞症、口唇口蓋裂、多指症。 ・Mayer-Rokitansky-Küster-Hauser症候群 → 腟欠損・子宮欠損、卵巣は正常で二次性徴あり、原発性無月経。
