慢性膵炎の3分の2はお酒から―急性膵炎と取り違えない成因の序列
第106回医師国家試験 I問題 第1問
国試問題にチャレンジ
慢性膵炎の成因のうち最も頻度が高いのはどれか。
- a.肥満
- b.胆石
- c.アルコール
- d.Vater乳頭炎
- e.過敏性腸症候群
対話形式の解説
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医学生
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医学生まとめ
慢性膵炎は持続的・反復的な炎症により膵実質の脱落と線維化が進み、外分泌・内分泌機能が徐々に失われる疾患で、わが国の成因はアルコール性がおよそ3分の2を占めて最多、次いで特発性、胆石性の順です。急性膵炎ではアルコールと胆石が二大成因ですが、胆石性は胆石除去で再発を防ぎやすく慢性化しにくいため、慢性膵炎では割合が小さくなります。肥満、Vater乳頭炎、過敏性腸症候群は慢性膵炎の主要な成因ではなく、喫煙は飲酒とは独立した危険因子です。病期が進むと腹痛はむしろ軽減し、脂肪便や膵性糖尿病が前面に出るため、断酒・禁煙を基本に消化酵素薬やインスリンで補い、膵癌の発生にも注意して経過をみます。急性と慢性で成因の比率が異なることを押さえておくと、問診で飲酒歴を重視する意味や長期管理の考え方まで一貫して理解できます。
解答・解説
正解はcです
テーマ
慢性膵炎とは、膵臓に持続的・反復的な炎症が起こり、膵実質の脱落と線維化が進んで、膵臓の働き(消化酵素を分泌する外分泌機能と、インスリンなどを分泌する内分泌機能)が徐々に失われていく疾患である。進行すると膵石(膵管内の石灰化)や膵管の不整な拡張を伴う。
成因の頻度
わが国の全国調査では、成因は多い順に「アルコール性」「特発性(原因を特定できないもの)」「胆石性」となり、アルコール性がおよそ3分の2を占めて圧倒的に多い。特に男性ではアルコール性の割合が高く、女性では特発性の割合が相対的に高い。したがって、選択肢の中で最も頻度が高い成因はアルコールである。
考え方
急性膵炎ではアルコールと胆石が二大成因として並ぶのに対し、慢性膵炎では胆石の占める割合は小さい。急性膵炎と慢性膵炎の成因の違いを区別して覚えておくことが、正答への近道である。
選択肢考察
- ×a. 肥満
肥満は慢性膵炎の成因として挙げられていない。膵炎の成因となる代謝異常は著しい高トリグリセリド血症(主に急性膵炎の原因)であり、肥満そのものではない。なお肥満は急性膵炎を発症した場合に重症化しやすい因子とはされるが、慢性膵炎を引き起こす主要な原因ではない。
- ×b. 胆石
胆石は急性膵炎ではアルコールと並ぶ主要な成因であるが、慢性膵炎の成因としてはアルコール性、特発性に次ぐもので、占める割合は小さい。胆石性膵炎は胆石の除去により再発を防げることが多く、慢性化しにくいためと考えられる。
- ○c. アルコール
わが国の慢性膵炎の成因で最も多いのはアルコールで、全体のおよそ3分の2を占め、特に男性に多い。長期にわたる大量飲酒により、膵液中の蛋白が沈殿して膵管内に蛋白栓や膵石が形成されること、アルコールやその代謝産物が膵腺房細胞を直接傷害すること、膵星細胞が活性化されて線維化が進むことなどが機序として考えられている。喫煙は飲酒とは独立した危険因子であり、進行を早める。
- ×d. Vater乳頭炎
Vater乳頭(十二指腸乳頭)の炎症や狭窄により膵液の流出が妨げられれば膵炎の原因となりうるが、慢性膵炎の成因としてはまれであり、最多ではない。
- ×e. 過敏性腸症候群
過敏性腸症候群は、器質的な異常がないにもかかわらず腹痛と便通異常(下痢や便秘)が慢性的に続く機能性の腸疾患である。膵臓に炎症を起こす疾患ではなく、慢性膵炎の成因とはならない。ただし慢性膵炎の腹痛や下痢と症状が似ることがあり、鑑別の対象にはなる。
慢性膵炎の成因
・アルコール性:最多。男性に多い。 ・非アルコール性:特発性(アルコール性に次いで多い)、胆石性、遺伝性(PRSS1〈カチオニックトリプシノーゲン遺伝子〉、SPINK1などの遺伝子変異)、膵管の形態異常(膵管癒合不全など)、高トリグリセリド血症、副甲状腺機能亢進症(高カルシウム血症)など。 ・自己免疫性膵炎は画像や治療反応性が異なるため、慢性膵炎とは別に扱われる。 ・喫煙は独立した危険因子である。
急性膵炎との比較
・急性膵炎の成因:アルコールと胆石が二大成因(男性はアルコール、女性は胆石が多い)。そのほか内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)後、高トリグリセリド血症、薬剤など。 ・慢性膵炎の成因:アルコールが圧倒的に多く、胆石性は少ない。
病期と症状
・代償期:上腹部痛や背部痛を反復する。飲酒や脂肪の多い食事で誘発されやすい。 ・移行期を経て、非代償期:膵実質の破壊が進むと、腹痛はむしろ軽くなる一方で、外分泌機能不全による脂肪便・下痢・体重減少、内分泌機能不全による糖尿病(膵性糖尿病)が前面に出る。
診断のポイント
膵石(腹部CTやX線での膵の石灰化)や主膵管の不整な拡張などの画像所見、反復する上腹部痛、血中・尿中膵酵素の異常、膵外分泌機能障害などを組み合わせて診断する。
治療の基本
断酒と禁煙が最も重要である。疼痛には鎮痛薬を用い、外分泌不全には消化酵素薬(高力価パンクレアチン製剤)の補充、膵性糖尿病にはインスリン療法を行う。膵石には内視鏡治療や体外衝撃波結石破砕術(ESWL)が行われる。慢性膵炎は膵癌の危険因子でもある。
POINT
・慢性膵炎の成因はアルコール性が最多(約3分の2)、次いで特発性、胆石性の順。 ・急性膵炎はアルコールと胆石が二大成因であり、慢性膵炎とは成因の比率が異なる。 ・喫煙は独立した危険因子。治療の基本は断酒・禁煙。 ・非代償期には腹痛が軽減し、脂肪便・糖尿病が目立つようになる。
