膵臓の「もう一つの顔」を測る―内分泌機能検査と紛らわしい検査たち
第106回医師国家試験 G問題 第14問
国試問題にチャレンジ
膵内分泌機能検査はどれか。
- a.BT-PABA試験
- b.pHモニタリング
- c.経口ブドウ糖負荷試験
- d.α1−アンチトリプシン法
- e.indocyanine green〈ICG〉試験
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
膵臓には消化酵素を分泌する外分泌機能と、膵島からインスリンやグルカゴンを分泌する内分泌機能があり、膵内分泌機能の代表的な検査は血糖値とインスリン値の推移をみる75 g経口ブドウ糖負荷試験です。BT-PABA試験はキモトリプシン活性を尿中PABA排泄率でみる膵外分泌機能検査であり、24時間pHモニタリングは胃食道逆流症、便中α1-アンチトリプシンクリアランスは蛋白漏出性胃腸症、ICG試験は肝予備能の評価に用いられます。内分泌機能はグルカゴン負荷試験やCペプチド、外分泌機能はセクレチン試験や便中エラスターゼでも評価できます。慢性膵炎では外分泌機能不全が先行し、進行すると膵性糖尿病をきたしてグルカゴン分泌も低下するため、血糖が不安定になりやすい点が臨床上重要です。検査名ではなく「何を測り、どの臓器のどの機能をみるか」で整理することが、検査問題全般を確実に解く力につながります。
解答・解説
正解はcです
膵臓には、2つの働きがある。一つは消化酵素(トリプシン、キモトリプシン、アミラーゼ、リパーゼなど)と重炭酸イオンを膵管から十二指腸へ分泌する「外分泌機能」である。もう一つは、膵島(ランゲルハンス島)からホルモンを血中に分泌する「内分泌機能」である。膵島ではα細胞がグルカゴン、β細胞がインスリン、δ細胞がソマトスタチンを分泌する。 膵内分泌機能検査とは、主にβ細胞のインスリン分泌能と、その結果としての耐糖能(血糖を正常範囲に保つ能力)を評価する検査である。代表は経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)である。一方、外分泌機能検査の代表はBT-PABA試験(PFD試験)やセクレチン試験である。 選択肢には、膵臓以外の臓器を評価する検査も混ざっている。「その検査で何を測り、どの臓器の、どの機能を評価するのか」を一つずつ対応させれば、正解は経口ブドウ糖負荷試験に絞られる。
選択肢考察
- ×a. BT-PABA試験
誤り。膵外分泌機能検査である(PFD試験:pancreatic function diagnostant test とも呼ばれる)。BT-PABA(N-ベンゾイル-L-チロシル-p-アミノ安息香酸)を経口投与すると、小腸内で膵液中のキモトリプシンにより分解される。分解で生じたPABA(p-アミノ安息香酸)は吸収されて尿中に排泄される。一定時間(通常6時間)の尿中PABA排泄率を測ることで、キモトリプシンの活性、すなわち膵外分泌能を間接的に評価する。慢性膵炎などの外分泌機能不全では排泄率が低下する。なお、腸管での吸収障害、肝障害、腎障害でも排泄率が低くなりうる点に注意する。
- ×b. pHモニタリング
誤り。24時間食道pHモニタリングのことで、胃食道逆流症(GERD)の診断・評価に用いる。経鼻的に細いカテーテルを留置し、下部食道内のpHを24時間連続して記録する。pH 4未満となる時間の割合などから、酸の逆流の程度を評価する。症状と逆流の時間的な関連もわかる。近年は、非酸性の逆流も検出できる多チャンネルインピーダンス・pHモニタリングも用いられる。膵機能とは関係しない。
- ○c. 経口ブドウ糖負荷試験
正しい。経口ブドウ糖負荷試験(OGTT: oral glucose tolerance test)は、空腹時に75 gのブドウ糖を経口摂取させる検査である。負荷前と負荷後30分・60分・120分などに採血して、血糖値と血中インスリン値の推移をみる。これにより、膵β細胞のインスリン分泌能と耐糖能を評価できる。膵内分泌機能検査の代表である。 判定: 空腹時血糖126 mg/dL以上または2時間値200 mg/dL以上で糖尿病型とする。空腹時110 mg/dL未満かつ2時間値140 mg/dL未満で正常型とする。どちらにも属さないものを境界型とする。また、負荷後30分のインスリン増加量を血糖増加量で割った値をインスリン分泌指数(insulinogenic index)という。これが0.4未満であれば、インスリンの初期分泌が低下していると判断する。 慢性膵炎や膵切除後では、膵島が破壊・減少してインスリン分泌が低下し、膵性糖尿病(膵内分泌機能不全)を生じる。その評価にOGTTが有用である。
- ×d. α1−アンチトリプシン法
誤り。糞便中α1-アンチトリプシン(α1-AT)クリアランス試験のことで、蛋白漏出性胃腸症の診断に用いる。α1-ATは肝臓で合成される血漿蛋白(トリプシンなどの蛋白分解酵素を阻害する物質)である。消化管内でほとんど分解されずに便中に出てくるため、便中の量が消化管へ漏れ出た血漿蛋白の目安になる。血中濃度と便中排泄量からクリアランスを計算し、増加していれば、消化管からの蛋白漏出があると判断する。α1-ATは急性期蛋白でもあり、炎症時には血中濃度が上昇する。膵機能検査ではない。
- ×e. indocyanine green〈ICG〉試験
誤り。肝予備能(肝細胞の機能と肝血流)を評価する検査である。インドシアニングリーン(ICG)という色素0.5 mg/kgを静注する。ICGは肝細胞に取り込まれ、抱合を受けずに胆汁中へ排泄される。15分後に血中に残っている割合(ICG R15)を測定し、基準値は10%未満である。肝硬変などで肝予備能が低下すると、ICG R15は高値となる。肝切除の術前に、切除可能な範囲を決める指標として重要である。体質性黄疸の一つであるRotor症候群や、ICGの取り込み障害でも高値となる。
膵機能検査の整理
〈外分泌機能検査〉 ・BT-PABA試験(PFD試験): キモトリプシン活性を尿中PABA排泄率でみる。 ・セクレチン試験: セクレチン刺激後に十二指腸液を採取し、膵液量、重炭酸塩濃度、アミラーゼ排出量を測定する。外分泌機能検査の標準とされてきた。 ・便中脂肪定量、便中エラスターゼ1、便中キモトリプシン測定など。 〈内分泌機能検査〉 ・経口ブドウ糖負荷試験(75 g OGTT): 血糖値とインスリン値の推移をみる。 ・グルカゴン負荷試験: 負荷前後の血中Cペプチドの増加でインスリン分泌能をみる。 ・空腹時血中Cペプチド、24時間尿中Cペプチド、HbA1cなど。
慢性膵炎と膵機能不全
慢性膵炎では、膵実質が線維化により徐々に破壊される。多くの場合、外分泌機能不全が先に現れ、脂肪便、体重減少、脂溶性ビタミン欠乏をきたす。進行すると内分泌機能不全も加わり、膵性糖尿病となる。膵性糖尿病ではインスリンだけでなくグルカゴンの分泌も低下するため、低血糖を起こしやすく、血糖が不安定になりやすい(いわゆるブリットル型)。
選択肢の検査と対象疾患
・24時間pHモニタリング → 胃食道逆流症 ・α1-ATクリアランス → 蛋白漏出性胃腸症 ・ICG試験 → 肝予備能(肝硬変、肝切除の術前評価)
POINT
・膵内分泌機能の評価: 75 g OGTT(血糖値とインスリン値)、グルカゴン負荷試験(Cペプチド) ・膵外分泌機能の評価: BT-PABA試験(キモトリプシン活性)、セクレチン試験 ・pHモニタリングは胃食道逆流症、α1-ATクリアランスは蛋白漏出性胃腸症、ICG試験は肝予備能の検査である。 ・慢性膵炎では外分泌機能不全が先行し、進行すると膵性糖尿病(内分泌機能不全)をきたす。
