その血圧、本当に正しい?―カフの巻き方とKorotkoff音で押さえる測定の基本
第106回医師国家試験 F問題 第11問
国試問題にチャレンジ
上腕での血圧測定の手技で正しいのはどれか。
- a.上腕は肩の高さに保つ。
- b.マンシェットの遠位端が肘窩に重なるように巻く。
- c.ゴム嚢の中央部で上腕動脈を圧迫するように巻く。
- d.患者が痛くないように減圧は素早く行う。
- e.Korotkoff音の消失する時点を収縮期血圧とする。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
上腕での聴診法による血圧測定では、測定部位を心臓の高さに保ち、カフの下端を肘窩の2〜3cm上にして、ゴム嚢の中央が上腕動脈の真上に来るように巻くことが基本です。触診で拍動消失圧を確認してその20〜30mmHg上まで加圧し、1拍あたり2〜3mmHg程度でゆっくり減圧して、Korotkoff音の出現点を収縮期血圧、消失点を拡張期血圧とします。腕が心臓より高い、減圧が速い、カフが細すぎる、聴診間隙を見逃すといった要因はいずれも測定誤差につながります。日常的な手技だからこそ、各手順の根拠を理解しておくことが正確な診療と高血圧診断の基盤になります。
解答・解説
正解はcです
上腕での聴診法による血圧測定(水銀血圧計やアネロイド血圧計を用いる方法)の基本手技を問う問題である。正確な測定のためのポイントは、(1)測定部位(カフ)を心臓の高さに合わせること、(2)適切なサイズのカフを正しい位置に巻くこと、(3)適切な速度で加圧・減圧すること、(4)Korotkoff(コロトコフ)音の出現と消失から収縮期・拡張期血圧を正しく読むこと、の4点に整理できる。 標準的な手順は次のとおりである。座位で数分安静にした後、上腕を心臓の高さ(胸骨中央〜第4肋間付近)に置く。ゴム嚢(カフ内部の空気袋)の中央が上腕動脈の真上に来るように、カフの下端を肘窩より2〜3cm上にして、指が1〜2本入る程度の締め具合で巻く。まず橈骨動脈を触れながら加圧して拍動が消える圧を確認し、そこからさらに20〜30mmHg程度上まで加圧する。聴診器は肘窩の上腕動脈上に当て、1拍ごとに2〜3mmHg程度のゆっくりした速度で減圧し、Korotkoff音が聞こえ始めた点を収縮期血圧、消失した点を拡張期血圧とする。 この手順と照らし合わせると、ゴム嚢の中央部で上腕動脈を圧迫するというcだけが正しい記述である。
選択肢考察
- ×a. 上腕は肩の高さに保つ。
測定部位は心臓(右心房)の高さに保つのが原則である。測定部位が心臓より高いと静水圧の分だけ血圧は低く、低いと高く測定される(高さ約10cmの差で7〜8mmHg程度変化する)。座位で上腕を肩の高さまで挙げると心臓より高くなり、血圧が過小評価されるため誤りである。
- ×b. マンシェットの遠位端が肘窩に重なるように巻く。
マンシェット(カフ)は、その下端が肘窩より2〜3cm程度中枢側(肩側)に位置するように巻く。肘窩はKorotkoff音を聴取するために聴診器を当てる場所であり、カフが重なっていると聴診器を正しく当てられず、カフ自体が擦れる雑音も入りやすい。また肘を曲げたときにカフがずれて正確な圧迫ができなくなるため誤りである。
- ○c. ゴム嚢の中央部で上腕動脈を圧迫するように巻く。
カフの中にはゴム嚢(空気袋)が入っており、実際に動脈を圧迫しているのはこのゴム嚢である。ゴム嚢の中央を上腕の内側を走る上腕動脈の真上に合わせることで、カフ圧が動脈に均一に伝わり、カフ内の圧と動脈を閉塞させる圧が一致する。中央がずれると動脈を十分に圧迫するのにより高い圧が必要となり、血圧が高めに測定される原因となる。したがって正しい。
- ×d. 患者が痛くないように減圧は素早く行う。
加圧は速やかに行ってよいが、減圧は1拍あたり2〜3mmHg程度の速度でゆっくり行う必要がある。減圧が速すぎると、Korotkoff音が出現・消失した瞬間の圧を正確に読み取れず、収縮期血圧は低めに、拡張期血圧は高めに誤読されやすい。患者の苦痛への配慮は、必要以上に高く加圧しない(触診で拍動消失圧を確認し、その20〜30mmHg上までにとどめる)ことで行うべきであり、減圧を速めるのは誤りである。
- ×e. Korotkoff音の消失する時点を収縮期血圧とする。
カフ圧を下げていき、Korotkoff音が初めて聞こえ始めた時点(第1点)が収縮期血圧、音が消失した時点(第5点)が拡張期血圧である。音の消失を収縮期血圧とするのは誤りである。なお、妊婦、大動脈弁閉鎖不全症、甲状腺機能亢進症、貧血などで音が0mmHg近くまで消失しない場合は、音が急に小さくなる点(第4点)を拡張期血圧として用いることがある。
Korotkoff音のスワン(Swan)分類
第1点:清明な音が聞こえ始める(収縮期血圧) 第2点:雑音様の音に変わる 第3点:再び大きく明瞭な音になる 第4点:音が急に弱く、こもった音になる 第5点:音が消失する(拡張期血圧) 第1点と第3点の間で一時的に音が聞こえなくなる現象を聴診間隙(auscultatory gap)といい、高血圧や動脈硬化のある人でみられる。これを収縮期血圧と取り違えないためにも、最初に触診法で拍動消失圧を確認してから加圧することが勧められる。
カフの大きさ
・ゴム嚢の幅は上腕周囲長の約40%、長さは上腕周囲長の約80%以上とされる。標準的な成人ではゴム嚢の幅約13cm、長さ22〜24cm程度のものが用いられる。 ・上腕周囲に比べて幅の狭いカフを使うと、動脈を閉塞させるのに高い圧が必要となり、血圧は実際より高く測定される。逆に広すぎるカフでは低めに測定される。肥満者には大きいカフ、小児には小児用カフを用いる。
その他の測定誤差の要因
・まくり上げた袖が上腕をきつく締め付けていると、正しい測定の妨げとなり血圧が低く測定されやすい。 ・触診法(橈骨動脈の拍動再出現点を読む方法)では収縮期血圧しか測定できず、聴診法より低めの値となる。 ・会話、喫煙・カフェイン摂取直後、寒冷、尿意、背もたれなしの座位、足を組むなどは血圧を上昇させる。 ・初回は左右両腕で測定し、左右差(10mmHg以上)があれば高い側の値を採用し、鎖骨下動脈狭窄などを疑う。
POINT
・測定部位は心臓の高さ。高すぎると低く、低すぎると高く測定される。 ・カフ下端は肘窩の2〜3cm上、ゴム嚢の中央を上腕動脈上に置く。 ・触診で拍動消失圧を確かめ、その20〜30mmHg上まで加圧。 ・減圧は1拍あたり2〜3mmHgとゆっくり。 ・Korotkoff音の出現点=収縮期血圧、消失点=拡張期血圧。 ・幅の狭いカフでは血圧が高く出る。
