StudyMed医師国家試験

JICAは「1対1」、国連機関は「みんなで」―国際協力の二国間と多国間を整理する

第106回医師国家試験 E問題 第17問

国試問題にチャレンジ

第106回 E問題 第17問

主に二国間の国際協力を推進する機関はどれか。

  1. a.ILO〈国際労働機関〉
  2. b.JICA〈国際協力機構〉
  3. c.UNAIDS〈国連合同エイズ計画〉
  4. d.UNICEF〈国連児童基金〉
  5. e.WHO〈世界保健機関〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は国際保健医療協力の枠組みを問う問題だ。着眼点はひとつ、「二国間協力」と「多国間協力」の違いを理解しているかどうか。選択肢に並ぶ機関がそれぞれどちらの担い手か、整理していこう。
医学生医学生
公衆衛生の講義で出てきましたが、二国間と多国間の違いがいまひとつはっきりしません。
ドクタードクター
政府開発援助、いわゆるODAを中心とした国際協力は大きく2つの形に分かれる。二国間協力は、援助する国と受ける国が直接取り決めを結んで、技術協力や資金協力を行う形。多国間協力は、多くの国が加盟したり拠出したりしている国際機関を通じて行う協力で、日本は分担金や拠出金を出して参加するんだ。
医学生医学生
つまり日本が相手国と直接やりとりするか、国際機関を経由するか、ということですね。
ドクタードクター
その通り。では日本で二国間協力を担う機関はどれだと思う?
医学生医学生
JICAでしょうか。大学の国際保健の特別講義で、海外協力隊に参加していた先生が話してくれました。
ドクタードクター
正解。JICA、国際協力機構は外務省所管の独立行政法人で、日本のODAのうち二国間援助を一元的に実施している。専門家の派遣や研修員の受け入れといった技術協力、円借款などの有償資金協力、無償資金協力、そして海外協力隊の派遣が柱だ。保健医療分野でも母子手帳の普及などの母子保健、感染症対策、保健システム強化に取り組んでいる。
医学生医学生
母子手帳は日本発の仕組みが海外に広がった例として聞いたことがあります。では、WHOも保健分野で各国を支援していますが、こちらは多国間なんですよね。
ドクタードクター
そう。WHOは1948年に設立された国際連合の専門機関で、本部はジュネーブ。国際保健規則の運用やパンデミック対応、ICDの作成、たばこ規制枠組条約などの国際基準づくりを担う。加盟国全体の枠組みで動くから、多国間協力の代表格だね。
医学生医学生
UNICEFも国連の基金なので多国間ですね。予防接種の普及に関わっていると習いました。
ドクタードクター
その通り。UNICEFは開発途上国や紛争・災害下にある子どもの保健、栄養、教育、水と衛生を支援し、子どもの権利条約の普及にも取り組んでいる。UNAIDSはHIV/エイズ対策のための計画で、WHOやUNICEF、UNDP、世界銀行など複数の国連機関が共同で運営している。これも多国間だ。
医学生医学生
ILOは労働の機関なので、医療とは少し離れている印象でした。
ドクタードクター
確かに保健の機関ではないけれど、労働安全衛生という点で医療と深く関わるよ。ILOは1919年設立で現在は国連の専門機関。政府・使用者・労働者の三者構成が特徴で、労働時間や児童労働の禁止などの国際労働基準を条約や勧告の形で定めている。もちろん多国間協力の機関だ。
医学生医学生
「国連」や「国際機関」とつくものは多国間、日本の政府系機関は二国間、と整理すればいいんですね。
ドクタードクター
その覚え方で十分戦える。発展知識として、協力とは別に、研究や情報を交換する「国際交流」もあって、これも日米医学協力計画のような二国間と、国際機関を介した多国間に分けられる。また、国際赤十字・赤新月社運動や国境なき医師団のようなNGOは、政府から独立した立場で人道支援を行う。
医学生医学生
災害時に海外へ派遣される国際緊急援助隊も、どこかの機関が関わっているんですか。
ドクタードクター
いい質問だね。国際緊急援助隊の派遣事務もJICAが担っている。将来、臨床医として海外の医療支援に関わる道を考えるなら、JICAの専門家派遣やWHOなど国際機関での勤務、NGOでの活動と、それぞれ立場や枠組みが違うことを知っておくと進路選びにも役立つよ。

まとめ

国際協力は、援助する国と受ける国が直接取り決めて行う二国間協力と、国際機関を通じて行う多国間協力に大別されます。日本の二国間協力を一元的に担うのはJICA(国際協力機構)で、技術協力、有償・無償資金協力、海外協力隊の派遣などを通じて、母子保健や感染症対策など保健医療分野でも活動しています。一方、WHO、UNICEF、UNAIDS、ILOはいずれも国際連合に関係する国際機関であり、加盟国全体の枠組みで活動する多国間協力の担い手です。「国連・国際機関は多国間、日本の政府系機関は二国間」と整理すると判断しやすく、NGOや国際緊急援助隊など関連組織の位置づけもあわせて押さえておくと、国際保健の全体像が見えてきます。

解答・解説

正解はbです

国際保健医療協力の枠組みを「二国間」と「多国間」に分けて理解しているかを問う一般問題である。 政府開発援助〈ODA〉を中心とする国際協力は、次の二つの形に大別される。 ・二国間協力: 援助する国(日本)と援助を受ける国が直接取り決めを結び、技術協力や資金協力を行う形。日本では主に独立行政法人である国際協力機構〈JICA〉が実施を担う。 ・多国間協力: 多数の国が加盟・拠出する国際機関(国際連合の専門機関や基金・計画など)を通じて行う協力。日本は分担金や拠出金を出すことで参加する。 選択肢のうち、ILO、UNAIDS、UNICEF、WHOはいずれも国際連合と関係する国際機関であり、加盟国全体の枠組みで活動する多国間協力の担い手である。日本という一つの国が相手国と直接協力を行う機関はJICAのみである。「国連」「国際機関」と名のつくものは多国間、日本の政府機関は二国間、と整理するとよい。

選択肢考察

  1. ×a.  ILO〈国際労働機関〉

    多国間協力の機関である。ILOは1919年に設立され、現在は国際連合の専門機関となっている。政府・使用者・労働者の三者の代表が参加する(三者構成)という特徴をもち、労働時間、労働安全衛生、児童労働の禁止などに関する国際労働基準を条約や勧告の形で定め、労働者の労働条件の改善と健康の保護を図る。

  2. ○b.  JICA〈国際協力機構〉

    主に二国間協力を推進する機関である。JICAは日本の外務省所管の独立行政法人で、日本のODAのうち二国間援助を一元的に実施している。専門家の派遣や研修員の受け入れなどの技術協力、円借款(有償資金協力)、無償資金協力、海外協力隊(旧青年海外協力隊)の派遣などを通じて、相手国と直接協力する。保健医療分野でも、母子保健(母子手帳の普及など)、感染症対策、保健システムの強化などの事業を行っている。

  3. ×c.  UNAIDS〈国連合同エイズ計画〉

    多国間協力の機関である。UNAIDSはHIV/エイズ対策を世界規模で進めるため1996年に活動を開始した計画で、WHO、UNICEF、UNDP〈国連開発計画〉、世界銀行など複数の国連機関が共同で運営している。各国のエイズ対策の支援、情報の収集・発信、対策目標の提唱などを行う。

  4. ×d.  UNICEF〈国連児童基金〉

    多国間協力の機関である。UNICEFは1946年に設立された国際連合の基金で、開発途上国や紛争・災害下にある子どもの保健・栄養・教育・水と衛生などを支援し、予防接種の普及にも大きな役割を果たしている。また「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」の普及にも取り組んでいる。

  5. ×e.  WHO〈世界保健機関〉

    多国間協力の機関である。WHOは1948年に設立された保健分野の国際連合の専門機関で、本部はジュネーブにある。感染症対策(国際保健規則〈IHR〉の運用、パンデミック対応)、国際疾病分類〈ICD〉の作成、たばこ規制枠組条約などの国際基準・規範の策定、各国の保健システム強化の支援など、保健医療全般を扱う。

国際保健医療協力の整理

・多国間協力: WHO、UNICEF、UNAIDS、ILO、UNDP〈国連開発計画〉、UNFPA〈国連人口基金〉、世界銀行など、国際機関を通じた協力 ・二国間協力: 日本ではJICAが実施するODA(技術協力、有償資金協力、無償資金協力)

国際交流との区別

協力(援助)とは別に、国同士が研究や情報を交換する「国際交流」もあり、これも多国間(国際機関を介した共同研究など)と二国間(日米医学協力計画など)に分けられる。

その他の関連組織

・国際赤十字・赤新月社運動: 紛争や災害時の人道支援を行う(国家機関ではない)。 ・NGO〈非政府組織〉: 国境なき医師団など、政府から独立して活動する民間団体。 ・日本の国際緊急援助隊(医療チームなど)の派遣事務もJICAが担っている。

POINT

・国際協力は二国間協力と多国間協力に分けられる。 ・日本の二国間協力(ODAの技術協力・資金協力)を担うのはJICA〈国際協力機構〉である。 ・WHO、UNICEF、UNAIDS、ILOなど国連関連の国際機関は多国間協力を担う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。