StudyMed医師国家試験

arrhythmiaとanorexiaを取り違えない―語の成り立ちで読み解く症候の医学英語

第106回医師国家試験 C問題 第11問

国試問題にチャレンジ

第106回 C問題 第11問

症候と英語表記の組合せで誤っているのはどれか。

  1. a.黄疸 ―― jaundice
  2. b.けいれん ―― convulsion
  3. c.不整脈 ―― anorexia
  4. d.脱水 ―― dehydration
  5. e.便秘 ―― constipation

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、基本的な症候の日本語と英語の対応を問う問題だ。「誤っているもの」を選ぶ形式だから、一つずつ対応を確かめていけばいい。コツは、単語を丸暗記するのではなく、接頭語や語根に分解して意味を推測することなんだ。
医学生医学生
医学英語の授業で接頭語のリストを配られましたが、正直あまり覚えていません……。とりあえず便秘のconstipationと脱水のdehydrationは見覚えがあります。
ドクタードクター
それで十分な手がかりになるよ。dehydrationを分解してみよう。hydr-は「水」、hydrationは「水分が満たされた状態」で、そこに「取り除く」を意味するde-が付くと「水を失うこと」、つまり脱水になる。輸液で水分を戻すことはrehydrationというね。
医学生医学生
なるほど、de-は「逆向き」なんですね。constipationはどう覚えればいいですか。
ドクタードクター
ラテン語の「押し固める、詰め込む」に由来する語で、排便回数が減ったり出しにくくなったりした状態を指す。対になる下痢はdiarrheaだ。セットで覚えておくと便利だよ。
医学生医学生
黄疸のjaundiceは、実習で消化器内科を回ったときカルテで見ました。icterusと書いてあることもありました。
ドクタードクター
よく見ているね。jaundiceはフランス語で「黄色」を意味するjauneに由来する。ビリルビンが上昇して皮膚や眼球結膜が黄染した状態で、医学用語としてはicterus、形容詞ではictericも使う。ちなみにOSCEの身体診察で、黄疸は眼球結膜、貧血は眼瞼結膜で見ると習ったと思う。
医学生医学生
はい、下まぶたを引いて見るのが貧血で、白目を見るのが黄疸でした。けいれんのconvulsionも正しいですよね。seizureと何が違うんでしょう。
ドクタードクター
convulsionは全身の筋が不随意に強く収縮する発作を指す言葉で、熱性けいれんはfebrile convulsionとかfebrile seizureと書く。seizureはてんかん発作を含む発作全般を表す、より広い語だ。筋の攣縮はspasmで、West症候群のてんかん性スパズムはinfantile spasmsと呼ばれる。
医学生医学生
そうすると残るのは不整脈のanorexiaですね。anorexiaって、anorexia nervosaのanorexiaですよね?
ドクタードクター
その通り。ここで分解の出番だ。an-は否定の接頭語、orexisは「食欲」。つまりanorexiaは「食欲がない」、食欲不振を意味する。精神科で習う神経性やせ症、旧称の神経性食欲不振症がanorexia nervosaだね。
医学生医学生
じゃあ不整脈の正しい英語は……a-とrhythmでarrhythmiaですか。
ドクタードクター
正解。a+rhythm+iaで「リズムがない、乱れている」という意味になる。dysrhythmiaということもある。だから不整脈をanorexiaと対応させたものが誤りで、これが答えだ。どちらも否定のa-/an-で始まるから、見た目で混同しやすいのが出題の狙いだろうね。
医学生医学生
否定の接頭語までは同じで、後ろの語根がrhythmかorexisかで全く違う意味になるんですね。
ドクタードクター
そういうこと。不整脈まわりの英語も整理しておこう。tachy-は「速い」でtachycardiaが頻脈、brady-は「遅い」でbradycardiaが徐脈。心房細動はatrial fibrillation、心室細動はventricular fibrillation、動悸はpalpitationだ。
医学生医学生
循環器内科の実習で「AFでrate controlしてます」と言われて、最初は何のことかわかりませんでした。
ドクタードクター
現場では略語が飛び交うから、元の英語を知っていると理解が早いよ。ほかにもdys-は「異常・困難」でdyspneaが呼吸困難、hemat-は「血液」でhematemesisが吐血、hemoptysisが喀血。めまいもvertigoは回転性、dizzinessは浮動感を含む広い意味と使い分ける。紹介状や論文、電子カルテを読むとき、こうした語の分解が必ず役に立つはずだ。

まとめ

不整脈の英語表記はarrhythmia(a-「ない」+rhythm「リズム」)であり、anorexia(an-「ない」+orexis「食欲」)は食欲不振を意味するため、この組合せが誤りです。黄疸=jaundice(icterus)、けいれん=convulsion/seizure、脱水=dehydration(de-「取り除く」+hydration)、便秘=constipationはいずれも正しい対応です。医学英語の多くはギリシャ語・ラテン語由来の接頭語と語根の組合せでできており、a-/an-、de-、dys-、tachy-、brady-などを知っておくと初見の単語でも意味を推測できます。tachycardia、bradycardia、atrial fibrillationなど関連語もあわせて整理しておくと、カルテや紹介状、論文を読む際の大きな助けになります。

解答・解説

正解はcです

問われていること

日常診療やカルテ、論文で頻繁に目にする基本的な症候の英語表記を問う問題である。「誤っているのはどれか」なので、日本語と英語が対応していない組合せを一つ選ぶ。

考え方

医学英語はギリシャ語・ラテン語由来の接頭語・語根・接尾語の組合せで作られているものが多く、語の成り立ちを分解すると意味を推測しやすい。 ・a-/an-:「〜がない」(否定) ・de-:「取り除く、逆向き」 ・rhythm:「リズム」 → a+rhythm+ia=arrhythmia(リズムの乱れ=不整脈) ・orexis:「食欲」 → an+orexia=anorexia(食欲がない=食欲不振) ・hydr-:「水」 → de+hydration=dehydration(水を失うこと=脱水) このように分解すると、「不整脈」に「anorexia(食欲不振)」を対応させた組合せが誤りであることが分かる。

選択肢考察

  1. ×a.  黄疸 ―― jaundice

    正しい組合せである。jaundiceはフランス語で「黄色」を意味するjauneに由来する語で、血中ビリルビンの上昇により皮膚や眼球結膜が黄染した状態を指す。医学用語としてはicterus(形容詞icteric)も用いられる。黄疸は眼球結膜(白目)で最も早く気づかれ、一方で貧血(anemia)は眼瞼結膜の蒼白で評価する。

  2. ×b.  けいれん ―― convulsion

    正しい組合せである。convulsionは全身の筋が不随意に強く収縮する発作性のけいれんを指し、熱性けいれんはfebrile convulsion(febrile seizureとも)と表記する。英語でけいれんに相当する語にはseizure(てんかん発作などの発作全般)、spasm(筋の攣縮)などもある。乳児期に発症するWest症候群のてんかん性スパズムはinfantile spasmsとよばれる。

  3. ○c.  不整脈 ―― anorexia

    誤った組合せであり、これが正解である。不整脈の英語表記はarrhythmia(またはdysrhythmia)である。anorexiaは否定の接頭語an-と「食欲」を意味するorexisからなる語で、食欲不振(食思不振)を意味する。なお、摂食障害の一つである神経性やせ症(神経性食欲不振症)はanorexia nervosaと表記する。

  4. ×d.  脱水 ―― dehydration

    正しい組合せである。hydrationは「水分を与えること、水分が満たされた状態」を意味し、これに「取り除く」を意味する接頭語de-を付けたdehydrationが脱水を表す。体液量が減少した状態を広く指す語としてはvolume depletion(体液量減少)も用いられる。脱水の治療として輸液を行うことをrehydration(再水和)という。

  5. ×e.  便秘 ―― constipation

    正しい組合せである。constipationはラテン語で「押し固める、詰め込む」を意味する語に由来し、排便回数の減少や排便困難を指す。対になる下痢はdiarrhea(英国式綴りdiarrhoea)である。

不整脈に関連する英語表記

・頻脈:tachycardia(tachy-=速い) ・徐脈:bradycardia(brady-=遅い) ・期外収縮:extrasystole(premature contraction) ・心房細動:atrial fibrillation(AF) ・心房粗動:atrial flutter(AFL) ・心室頻拍:ventricular tachycardia(VT) ・心室細動:ventricular fibrillation(VF) ・房室ブロック:atrioventricular block(AV block) ・心停止:cardiac arrest ・動悸:palpitation

その他の頻出の症候英語

・食欲不振:anorexia ・悪心:nausea ・嘔吐:vomiting ・下痢:diarrhea ・便秘:constipation ・吐血:hematemesis ・下血:melena ・腹痛:abdominal pain ・胸痛:chest pain ・呼吸困難:dyspnea ・咳嗽:cough ・喀血:hemoptysis ・発熱:fever ・浮腫:edema ・貧血:anemia ・黄疸:jaundice(icterus) ・めまい:vertigo(回転性)、dizziness(浮動感を含む広い意味) ・意識障害:disturbance of consciousness ・失神:syncope ・けいれん:convulsion、seizure ・脱水:dehydration

よく使う接頭語

a-/an-(否定)、dys-(異常・困難)、tachy-(速い)、brady-(遅い)、hyper-(過剰)、hypo-(不足)、hemat-/hemo-(血液)

POINT

・不整脈=arrhythmia、anorexia=食欲不振(anorexia nervosa=神経性やせ症)。 ・黄疸=jaundice(icterus)、けいれん=convulsion/seizure、脱水=dehydration、便秘=constipation。 ・接頭語(a-/an-、de-、tachy-、brady-、dys-)を知ると医学英語の意味を推測しやすい。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。