StudyMed医師国家試験

「目的」から法律が見える―公費医療と根拠法の対応を整理する

第106回医師国家試験 B問題 第29問

国試問題にチャレンジ

第106回 B問題 第29問

公費医療とその根拠となる法律の組合せで正しいのはどれか。

  1. a.医療扶助 ―― 介護保険法
  2. b.結核医療 ―― 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律〈感染症法〉
  3. c.自立支援医療 ―― 高齢者の医療の確保に関する法律〈高齢者医療確保法〉
  4. d.措置入院 ―― 生活保護法
  5. e.養育医療 ―― 児童福祉法

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は公衆衛生の定番、公費医療とその根拠法の組合せを問う問題だ。丸暗記に頼ると混乱しやすいけれど、「その制度は何のためにあるのか」という目的から考えると、法律がすっと結びつくようになる。まず、公費医療とはそもそも何か説明できるかな。
医学生医学生
医療保険ではなく、税金で医療費の全部か一部を負担する制度、ですよね。公衆衛生の講義で一覧表を配られましたが、正直ごちゃごちゃでした。
ドクタードクター
その理解で十分。日本は国民皆保険だけど、感染症のまん延防止のような社会防衛、生活困窮者や障害者への福祉、母子の健全育成、戦傷病者や被爆者への国家補償、難病対策といった特定の目的のために、個別の法律が公費負担を定めているんだ。では結核医療から考えよう。結核の公費医療の目的は何だと思う?
医学生医学生
患者本人のためでもありますが、周りに広げないため、つまり社会防衛ですね。でも結核は昔、結核予防法という独立した法律があった気がします。
ドクタードクター
よく知っているね。結核予防法は2007年に廃止されて感染症法に統合され、結核は二類感染症に位置づけられた。だから現在、結核の公費医療は感染症法に規定されている。外来中心の一般患者の医療費の一部負担と、感染させるおそれのある患者への入院勧告に伴う入院医療費の公費負担、この二本立てだ。今回はこれが正しい組合せになる。
医学生医学生
結核予防法のイメージが残っていると、つい迷いそうです。では医療扶助と介護保険法はどうですか。「扶助」と「介護」で何となくつながりそうに見えました。
ドクタードクター
そこが引っかけだね。医療扶助は生活保護法に定められた8種類の扶助の一つで、生活保護受給者の医療を原則として現物給付で行う。生活保護法には介護扶助もあるので、そこで介護という言葉と混ざりやすい。介護保険法は、要介護・要支援認定に基づいて介護サービスを社会保険方式で給付する法律で、医療扶助とは関係ない。
医学生医学生
措置入院と生活保護法の組合せも、根拠法が入れ替わっている感じですね。措置入院は精神保健福祉法だったと思います。
ドクタードクター
その通り。臨床実習で精神科を回ったなら聞いたことがあると思うけど、措置入院は自傷他害のおそれがある精神障害者について、2名以上の精神保健指定医の診察結果が一致したときに、都道府県知事の権限で行う入院だ。行政の命令による入院だから医療費は公費で負担される。目的は精神障害者の医療と保護、そして社会防衛だね。
医学生医学生
精神科実習で、任意入院・医療保護入院・措置入院の違いを指導医の先生に何度も確認されました。では自立支援医療と高齢者医療確保法は?
ドクタードクター
自立支援医療の根拠法は障害者総合支援法だ。中身は3種類で、18歳以上の身体障害者が対象の更生医療、18歳未満の身体に障害のある児童が対象の育成医療、そして精神通院医療。以前は身体障害者福祉法・児童福祉法・精神保健福祉法に分かれていたものが、障害者自立支援法、現在の障害者総合支援法にまとめられた。高齢者医療確保法は、後期高齢者医療制度や特定健診・特定保健指導を定める法律で、別物だ。
医学生医学生
自立支援医療は更生医療と育成医療の2つだと思っていました。精神通院医療も入るんですね。
ドクタードクター
そこは見落としやすいポイントだね。うつ病や統合失調症で通院を続ける患者さんの自己負担軽減として、実臨床でもよく使われている制度だよ。最後に養育医療と児童福祉法はどうかな。
医学生医学生
子どもの医療だから児童福祉法、と考えたくなりますが……違うんですよね。
ドクタードクター
そう、養育医療の根拠法は母子保健法だ。入院して養育が必要な未熟児、たとえば出生体重2,000g以下の児などの医療費を公費で給付する。紛らわしいのは、児童福祉法にも小児慢性特定疾病医療費の支給などの公費医療があること。未熟児は母子保健法、小児慢性特定疾病は児童福祉法と、セットで区別しておこう。
医学生医学生
整理すると、医療扶助は生活保護法、結核は感染症法、措置入院は精神保健福祉法、自立支援医療は障害者総合支援法、養育医療は母子保健法ですね。
ドクタードクター
完璧だ。発展として、指定難病の特定医療費は難病法、原爆被爆者の医療は被爆者援護法、予防接種による健康被害の救済は予防接種法、と根拠法が分かれていることも押さえておきたい。それから公費医療には、戦傷病者や被爆者の認定疾病のように国家補償的な性格から全額公費のものと、医療保険をまず使って残りの自己負担を公費が補う「保険優先」のものがある。結核の一般医療や自立支援医療は後者だ。
医学生医学生
生活保護の方は国民健康保険から外れるので、医療扶助が医療費の大部分を担うんですよね。
ドクタードクター
その通り。臨床では、患者さんが使える公費制度を知っているかどうかで、治療を続けられるかが変わることもある。医療ソーシャルワーカーと連携して制度を紹介できるのも、医師の大切な役割だよ。

まとめ

公費医療は、医療保険とは別に税財源で医療費を負担する制度で、社会防衛・福祉・母子保健・国家補償・難病対策などの目的ごとに根拠法が定められています。結核医療は2007年の結核予防法廃止以降、感染症法に規定されており、本問の正しい組合せです。医療扶助は生活保護法、措置入院は精神保健福祉法、自立支援医療(更生医療・育成医療・精神通院医療)は障害者総合支援法、未熟児の養育医療は母子保健法が根拠で、児童福祉法の小児慢性特定疾病医療費と混同しないことが重要です。制度の目的から根拠法を結びつけて理解しておくと、試験対策だけでなく、患者さんの経済的負担を軽減する制度を臨床で活用する力にもつながります。

解答・解説

正解はbです

公費医療(公費負担医療)とは、医療費の全部または一部を、医療保険ではなく国や地方公共団体の公費(税財源)で負担する制度である。日本では国民皆保険のもとで医療保険が医療費の中心を担っているが、それとは別に、特定の目的に応じて個別の法律が公費負担を定めている。 公費医療が設けられる目的は、おおまかに次のように整理できる。 ・社会防衛:感染症のまん延防止(結核医療、感染症入院医療)、自傷他害のおそれがある精神障害者の入院(措置入院) ・福祉・生活保障:生活困窮者への医療(医療扶助)、障害者への医療(自立支援医療) ・母子・児童の健全育成:未熟児への医療(養育医療)、小児慢性特定疾病への医療 ・国家補償・健康被害救済:戦傷病者、原爆被爆者、公害健康被害、予防接種健康被害など ・難病対策:指定難病に対する特定医療費 本問はそれぞれの公費医療と根拠法を正しく対応させられるかを問うものである。各制度の「目的」を理解しておくと、根拠法を推測しやすい。例えば結核医療は感染拡大防止という社会防衛が目的であるから感染症法、措置入院は精神障害者の医療と保護が目的であるから精神保健福祉法、というように考える。

選択肢考察

  1. ×a.  医療扶助 ―― 介護保険法

    誤りである。医療扶助の根拠法は生活保護法である。生活保護法には、生活扶助・教育扶助・住宅扶助・医療扶助・介護扶助・出産扶助・生業扶助・葬祭扶助の8種類の扶助が定められており、医療扶助はそのひとつとして、生活保護受給者の医療を原則として現物給付(医療そのものの提供)で行う。生活保護受給者への介護サービスも、介護保険法ではなく生活保護法の介護扶助で賄われる部分がある点と混同しないようにする。介護保険法は、要介護・要支援状態にある高齢者などへの介護サービスを社会保険方式で給付する法律であり、医療扶助とは無関係である。

  2. ○b.  結核医療 ―― 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律〈感染症法〉

    正しい組合せである。結核はかつて結核予防法で規定されていたが、平成19年(2007年)に結核予防法が廃止されて感染症法に統合され、結核は二類感染症に位置づけられた。これにより結核に対する公費医療も感染症法に規定されている。感染症法第37条の2では、一般の結核患者(主に外来治療)の適正な医療に要する費用の一部を公費で負担することが定められている。また、他者に感染させるおそれのある結核患者には入院勧告が行われ、その入院医療費は感染症法第37条に基づき公費負担の対象となる(患者の所得に応じた自己負担あり)。

  3. ×c.  自立支援医療 ―― 高齢者の医療の確保に関する法律〈高齢者医療確保法〉

    誤りである。自立支援医療の根拠法は障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)である。自立支援医療は、心身の障害を除去・軽減するための医療費の自己負担を軽減する制度で、次の3種類からなる。 ・更生医療:18歳以上の身体障害者が対象 ・育成医療:18歳未満の身体に障害のある児童が対象 ・精神通院医療:通院による継続的な治療が必要な精神疾患患者が対象 これらは以前、身体障害者福祉法・児童福祉法・精神保健福祉法に分かれて規定されていたが、平成18年(2006年)施行の障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)に統合された。一方、高齢者医療確保法は、75歳以上などを対象とする後期高齢者医療制度や、40〜74歳を対象とする特定健康診査・特定保健指導を定める法律である。

  4. ×d.  措置入院 ―― 生活保護法

    誤りである。措置入院の根拠法は精神保健福祉法(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)であり、第29条に規定されている。措置入院は、精神障害のために自身を傷つけまたは他人に害を及ぼすおそれ(自傷他害のおそれ)がある者について、2名以上の精神保健指定医の診察結果が一致した場合に、都道府県知事(または政令指定都市の市長)の権限で行われる強制入院である。行政の命令による入院であるため、その医療費は公費で負担される(患者の所得に応じた自己負担あり)。生活保護法は生活困窮者の最低限度の生活保障を目的とする法律であり、措置入院とは関係がない。

  5. ×e.  養育医療 ―― 児童福祉法

    誤りである。養育医療の根拠法は母子保健法(第20条)である。養育医療は、入院して養育を受ける必要がある未熟児(出生体重2,000 g以下の者や、生活力が特に薄弱で一定の症状を示す者など)に対して、その医療に要する費用を公費で給付する制度である。児童福祉法に基づく公費医療としては、小児慢性特定疾病医療費の支給や、結核にかかっている児童への療育の給付などがあり、養育医療と混同しやすいので注意する。

主な公費医療と根拠法の整理

・医療扶助、介護扶助:生活保護法 ・結核医療(一般患者の医療、入院勧告患者の医療)、一類・二類感染症や新感染症などの入院医療:感染症法 ・措置入院、緊急措置入院:精神保健福祉法 ・自立支援医療(更生医療・育成医療・精神通院医療):障害者総合支援法 ・養育医療(未熟児):母子保健法 ・小児慢性特定疾病医療費、療育の給付:児童福祉法 ・指定難病の特定医療費:難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法) ・原爆被爆者の医療:原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(被爆者援護法) ・戦傷病者の療養:戦傷病者特別援護法 ・予防接種による健康被害の救済:予防接種法 ・心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療:心神喪失者等医療観察法

公費医療と医療保険の関係

公費医療には、医療費の全額を公費で負担するもの(国家補償的性格の強い戦傷病者、原爆被爆者の認定疾病など)と、医療保険を優先して適用し、残る自己負担分の全部または一部を公費で負担するもの(結核の一般医療、自立支援医療など)がある。後者を「保険優先」という。生活保護受給者は原則として国民健康保険の適用から除外されるため、医療扶助が医療費の大部分を担う。

介護保険法と高齢者医療確保法

・介護保険法:市町村(特別区を含む)が保険者となり、65歳以上の第1号被保険者と40〜64歳の医療保険加入者である第2号被保険者を対象に、要介護・要支援認定に基づいて介護サービスを給付する。 ・高齢者医療確保法:旧老人保健法を改正・改称したもので、後期高齢者医療制度と特定健康診査・特定保健指導を定める。

POINT

・結核医療は、結核予防法の廃止(2007年)以降、感染症法に規定されている。 ・医療扶助は生活保護法、措置入院は精神保健福祉法、自立支援医療は障害者総合支援法、養育医療は母子保健法。 ・自立支援医療は更生医療・育成医療・精神通院医療の3種類。 ・養育医療(母子保健法)と小児慢性特定疾病医療費(児童福祉法)を混同しない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。