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最初に駆けつける五つ星の抗体―初感染の早期防御を担うIgM

第106回医師国家試験 B問題 第30問

国試問題にチャレンジ

第106回 B問題 第30問

初感染の早期に産生され,感染防御に有効なのはどれか。

  1. a.IgA
  2. b.IgD
  3. c.IgE
  4. d.IgG
  5. e.IgM

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は免疫学の基本、免疫グロブリンのクラスごとの役割を問う問題だ。着眼点は「初感染」と「早期」という2つの言葉。病原体に初めて出会ったとき、B細胞がどんな順番で抗体を作るのかを思い出せれば答えにたどり着ける。まず、感染防御の主役といえばどの抗体を思い浮かべるかな。
医学生医学生
血中に一番多いのはIgGなので、感染防御ならIgGかなと思いました。
ドクタードクター
感染防御の中心という意味ではその通りなんだ。でも問題は「初感染の早期」。一次免疫応答で、病原体の抗原を認識したナイーブB細胞が活性化して形質細胞になると、最初に分泌するのはIgMなんだよ。IgGやIgA、IgEは、ヘルパーT細胞の助けを受けてクラススイッチが起きてから作られる。
医学生医学生
クラススイッチは、重鎖の定常領域の遺伝子を組み換えて抗体のクラスを変える仕組みでしたね。基礎の免疫学の講義で、AIDという酵素が出てきたのを覚えています。
ドクタードクター
よく覚えているね。その組換えや親和性成熟には時間がかかるから、一次応答ではIgMがおよそ1週間前後で先に上がり、特異的IgGは遅れて上昇する。だから初感染の早期に働く抗体はIgMが正解だ。
医学生医学生
でも、早く出てきても防御に役立たないと意味がないですよね。IgMはそれほど強いんですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。IgMは5量体で、抗原結合部位が10か所ある。一つ一つの親和性は低くても、まとめて結合するので結合活性、いわゆるavidityが高い。病原体を効率よく凝集させ、補体の古典経路を最も強力に活性化できる。親和性成熟したIgGが揃うまでのつなぎとして、とても理にかなった構造なんだ。
医学生医学生
なるほど、質より数で勝負する抗体なんですね。ではIgGが遅れて出てくるとして、ほかの抗体はどうでしょう。IgAも粘膜で最初に病原体と出会うので早そうに思えます。
ドクタードクター
確かにIgAは粘膜免疫の主役で、分泌型IgAはJ鎖で結ばれた2量体に分泌成分がついた形で、唾液や涙、母乳、特に初乳に多く含まれる。病原体の粘膜への付着を防ぐ大事な抗体だ。ただしIgAもクラススイッチを経て作られるので、初感染の最初期に出てくる抗体ではないんだ。
医学生医学生
IgEはアレルギーの抗体ですよね。CBTの勉強でⅠ型アレルギーの機序をまとめました。
ドクタードクター
そう。IgEは血中で最も少なく、肥満細胞や好塩基球の高親和性IgE受容体に結合している。そこに抗原が結合するとヒスタミンなどが放出されるのがⅠ型アレルギーだ。寄生虫の防御にも関わるけれど、初感染の早期防御の主役ではない。IgDは血中にはごく微量で、主にナイーブB細胞の表面にIgMと一緒に抗原受容体として並んでいる。分泌されて防御する抗体ではないね。
医学生医学生
整理すると、一次応答の先陣はIgM、主力はIgG、粘膜はIgA、アレルギーと寄生虫はIgE、B細胞の受容体はIgD、ということですね。
ドクタードクター
その通り。ここで二次応答との違いも押さえておこう。同じ抗原に再び出会うと、記憶B細胞がすぐに反応して、親和性の高いIgGが短期間に大量に作られる。ワクチンの追加接種はこの原理を利用しているんだ。
医学生医学生
臨床実習の小児科で、麻疹や風疹の抗体価を調べるときにIgMとIgGを分けて測っていたのは、この違いを見ていたんですね。
ドクタードクター
まさにそう。特異的IgMが陽性なら、1回の採血でも最近の初感染を示唆する。IgGだけで判断するなら、急性期と回復期のペア血清で抗体価が4倍以上上がっているかを見る必要がある。さらに臨床で重要なのが先天感染の診断だ。胎盤を通過できる抗体はIgGだけで、大きな5量体のIgMは通らない。
医学生医学生
ということは、新生児の血液に病原体特異的なIgMがあれば、それはお母さんからもらったものではなく……
ドクタードクター
胎児自身が作ったもの、つまり子宮内で感染したことを示唆する。先天性風疹症候群やサイトメガロウイルスの先天感染を疑うときに使われる考え方だ。逆に新生児の特異的IgGは母体由来の可能性があるので、それだけでは先天感染とは言えない点に注意しよう。
医学生医学生
抗体の構造や産生の順番が、そのまま検査の解釈につながっているんですね。
ドクタードクター
そういうこと。基礎の免疫学は臨床検査を読み解く土台になる。ちなみにIgGには4つのサブクラスがあって、補体をほとんど活性化しないIgG4の高値と組織浸潤を特徴とするIgG4関連疾患のような病態もある。抗体のクラスやサブクラスの性質を知っておくと、病態の理解が一段深まるよ。

まとめ

病原体に初めて感染した一次免疫応答では、ナイーブB細胞がまずIgMを産生し、クラススイッチと親和性成熟を経た特異的IgGはそれより遅れて上昇します。IgMは5量体で抗原結合部位が10か所あり、結合活性が高く補体の古典経路を強力に活性化するため、初感染の早期防御を担います。IgGは血中最多で胎盤を通過する唯一の抗体、IgAは粘膜免疫と初乳、IgEはⅠ型アレルギーと寄生虫防御、IgDはB細胞表面の抗原受容体と、各クラスの役割を対比して整理しておきましょう。特異的IgM陽性は急性初感染を、臍帯血や新生児血の特異的IgM陽性は先天感染を示唆するなど、抗体産生の順番と構造の知識は血清診断の解釈に直結します。

解答・解説

正解はeです

本問は、病原体に初めて感染したとき(一次免疫応答)に、最も早く現れて感染防御に働く抗体のクラスを問うている。

一次免疫応答の流れ

病原体が初めて侵入すると、その抗原を認識したナイーブB細胞が活性化され、形質細胞へと分化して抗体を分泌する。B細胞が最初に産生する抗体はIgMである。その後、ヘルパーT細胞の助けを受けてクラススイッチ(重鎖定常領域の遺伝子組換え)が起こり、IgG・IgA・IgEが産生されるようになる。このため一次応答では、IgMが感染後およそ1週間前後で先に上昇し、特異的IgGはそれより遅れて上昇する。

IgMが早期防御に有効な理由

IgMは5量体であり、抗原結合部位を10か所もつため、個々の結合力(親和性)は低くても全体としての結合力(結合活性、avidity)が高い。病原体を効率よく凝集させ、補体の古典経路を最も強力に活性化するため、クラススイッチと親和性成熟が完了する前の初期段階の防御を担う。 以上から、初感染の早期に産生され感染防御に有効なのはIgMである。

選択肢考察

  1. ×a.  IgA

    IgAは粘膜免疫の主役である。血清中では主に単量体だが、気道・消化管などの粘膜面や唾液・涙・母乳(特に初乳)には、J鎖で結ばれた2量体に分泌成分が付いた分泌型IgAとして存在し、病原体の粘膜への付着・侵入を防ぐ。ただしIgAはクラススイッチを経て作られる抗体であり、初感染の最初期に産生されるものではない。なお、クラミジアなどでは特異的IgA抗体の検出が活動性感染の指標として用いられることがある。

  2. ×b.  IgD

    IgDは血中濃度がごく低く、主に成熟したナイーブB細胞の表面にIgMとともに抗原受容体として発現している。B細胞の活性化シグナルの伝達に関わるほか、好塩基球に結合してその活性化に関与するとの報告もあるが、生体内での役割にはなお不明な点が多い。初感染時に分泌されて防御を担う抗体ではない。

  3. ×c.  IgE

    IgEは血清中の濃度が最も低い免疫グロブリンである。肥満細胞や好塩基球の表面にある高親和性IgE受容体(FcεRI)に結合し、抗原が結合すると細胞からヒスタミンなどが放出される。これがⅠ型(即時型)アレルギーの機序である。寄生虫感染の防御にも関与するが、初感染の早期に産生される抗体ではない。臨床ではアレルゲン特異的IgEの測定が原因アレルゲンの同定に用いられる。

  4. ×d.  IgG

    IgGは血清中で最も量の多い免疫グロブリンであり、感染防御の中心となる抗体である。しかしクラススイッチを経て産生されるため、一次応答ではIgMより遅れて上昇する(二次応答では速やかに大量産生される)。また、胎盤を通過できる唯一の免疫グロブリンであり、母体から移行したIgGが胎児・新生児期の感染防御を担う。「初感染の早期」という条件には当てはまらない。

  5. ○e.  IgM

    IgMはB細胞が最初に産生する抗体であり、初感染の早期に抗原特異的IgMが速やかに現れる。5量体で抗原結合部位が10か所あるため結合活性が高く、病原体の凝集や補体の古典経路の活性化に優れ、クラススイッチしたIgGが十分に増えるまでの防御を担う。特異的IgGはこれより遅れて上昇する。この性質から、特異的IgMの検出は最近の初感染(急性感染)を示す血清診断にも利用される。

免疫グロブリン5クラスの整理

・IgG:血清中で最多。単量体。胎盤通過性あり(唯一)。二次応答の主体。オプソニン作用、補体活性化、中和作用をもつ。IgG1〜IgG4の4つのサブクラスがある。 ・IgA:分泌型は2量体(J鎖・分泌成分を含む)。粘膜免疫の主体。初乳に多く含まれ、新生児の消化管を守る。 ・IgM:5量体(J鎖を含む)で分子量が最大。一次応答で最初に産生される。補体活性化能が最も強い。分子が大きく胎盤を通過しない。 ・IgD:血中にはごく微量。ナイーブB細胞表面の抗原受容体。 ・IgE:血中で最少。肥満細胞・好塩基球に結合し、Ⅰ型アレルギーと寄生虫防御に関与する。

一次応答と二次応答

一次応答:潜伏期が長く、IgMが先行し、IgGは遅れて少量産生される。 二次応答(同じ抗原への再曝露):記憶B細胞が速やかに反応し、親和性の高いIgGが短期間に大量に産生される。ワクチンの追加接種(ブースター)はこの原理を利用している。

臨床応用:ペア血清と特異的IgM

急性期と回復期の血清で特異的IgG抗体価が4倍以上上昇すれば、最近の感染と判断できる(ペア血清)。また、特異的IgMが陽性であれば、単一の血清でも初感染の急性期を示唆する。胎児はIgMを通さない胎盤の性質から、臍帯血や新生児血中に病原体特異的IgMが検出されれば、胎児自身が産生したもの、すなわち先天感染を示唆する。

IgG4の特殊性

IgG4は補体活性化能がほとんどなく、Fab部分を別のIgG4分子と交換する性質(Fab-arm exchange)のため大きな免疫複合体を作りにくく、免疫反応を抑制的に調節する抗体と考えられている。一方、血清IgG4高値とIgG4陽性形質細胞の組織浸潤・線維化を特徴とするIgG4関連疾患が知られ、1型自己免疫性膵炎、硬化性胆管炎、涙腺・唾液腺炎、尿細管間質性腎炎などを呈する。

POINT

・初感染(一次応答)で最初に産生される抗体はIgMであり、特異的IgGはその後に遅れて上昇する。 ・IgMは5量体で結合活性と補体活性化能が高く、早期防御に適する。 ・特異的IgM陽性は急性初感染、臍帯血・新生児血の特異的IgM陽性は先天感染を示唆する。 ・胎盤通過性はIgGのみ、粘膜免疫・初乳はIgA、Ⅰ型アレルギーはIgE、B細胞表面受容体はIgD。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。