StudyMed医師国家試験

表皮は0.2 mm―桁の感覚で解く皮膚の厚さ問題

第106回医師国家試験 B問題 第28問

国試問題にチャレンジ

第106回 B問題 第28問

手掌と足底とを除いた平均的なヒト表皮の厚さはどれか。

  1. a.0.0002 mm
  2. b.0.002 mm
  3. c.0.02 mm
  4. d.0.2 mm
  5. e.2.0 mm

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は皮膚の基本構造、特に表皮の厚さを問う知識問題だ。選択肢が10倍刻みで並んでいるから、正確な数字を暗記していなくても、他の構造物の大きさと比べて「桁」を見積もれれば解ける。まず皮膚の3層構造を確認しよう。
医学生医学生
外側から表皮、真皮、皮下組織ですね。組織学実習でH-E染色の皮膚標本をスケッチしました。
ドクタードクター
いいね。そのとき、表皮はどんな上皮だったかな。
医学生医学生
重層扁平上皮で、深いほうから基底層、有棘層、顆粒層、角層でした。手掌と足底には透明層もあります。
ドクタードクター
完璧だ。では厚さはどう見積もる? ヒントは、表皮を作る角化細胞1個の大きさがおよそ10 μm、つまり0.01 mm前後だということ。
医学生医学生
細胞が何層にも重なっているなら、細胞1個分よりずっと厚いはずですね。だとすると0.0002 mmや0.002 mmは明らかに薄すぎます。
ドクタードクター
その通り。0.0002 mmは0.2 μmで細胞内小器官くらいのスケール、0.002 mmは2 μmで赤血球の直径7〜8 μmより小さい。どちらも細胞1個分にすら届かない。
医学生医学生
0.02 mmは20 μmなので、細胞2層分くらいでしょうか。少し迷いますが、薄すぎる気がします。
ドクタードクター
鋭いね。実は0.02 mmは、手掌・足底以外の部位の角層の平均的な厚さに相当する値なんだ。角層は表皮の最外層にすぎず、その下に基底層・有棘層・顆粒層があるから、表皮全体としては薄すぎる。角層と表皮全体を混同させるひっかけだね。
医学生医学生
逆に2.0 mmは、皮膚全体の厚さに近い感じがします。
ドクタードクター
いい感覚だ。2 mm前後は真皮の厚さに相当する。真皮は膠原線維や弾性線維を主体とする結合組織で、皮膚の厚みの大部分を占めるんだ。だから表皮としては厚すぎる。残る0.2 mmが正解で、手掌と足底を除く平均的な表皮の厚さは約0.2 mmとされている。
医学生医学生
細胞1個分よりはるかに厚く、真皮よりは一桁薄い、という位置づけですね。手掌と足底を除くのはなぜですか。
ドクタードクター
手掌・足底は機械的刺激を強く受けるから、角層が非常に厚く約0.5 mmあって、表皮全体で約0.6 mmにもなる。部位による差が大きいので、問題では除外しているんだ。なお、組織学の成書には部位によってもっと薄い値を挙げるものもあるけれど、国内の皮膚科学の標準的な教科書では平均約0.2 mmとされているよ。
医学生医学生
表皮は0.2 mm、角層は0.02 mm、真皮は2 mmと、ちょうど10倍ずつで並ぶと覚えればよさそうです。
ドクタードクター
それが一番実用的な覚え方だね。発展として、表皮には血管がなく、栄養は真皮側からの拡散で届いていることも押さえておこう。基底層で分裂した細胞が角層に達するまで約2週間、そこから剥がれ落ちるまでさらに約2週間、合計約4週間で入れ替わる。これがターンオーバーだ。
医学生医学生
乾癬ではそのターンオーバーが短くなっているんでしたよね。皮膚科の臨床実習で、銀白色の鱗屑が厚く付いている患者さんを見ました。
ドクタードクター
よく覚えているね。ターンオーバーが著しく短縮して、角化が追いつかないまま細胞が積み上がるんだ。ほかにも有棘層の細胞はデスモソームで強く結合していて、ここが自己抗体で障害されると尋常性天疱瘡のような水疱症になる。基底層のメラノサイトや有棘層のランゲルハンス細胞も、色素異常症や接触皮膚炎の理解につながる。
医学生医学生
厚さの数字だけでなく、各層の役割と病気を結びつけて覚えると忘れにくそうです。
ドクタードクター
その通り。皮膚生検の標本を見るときも、正常の厚さや層構造の感覚があってこそ、肥厚や菲薄化といった異常に気づけるんだ。

まとめ

手掌と足底を除いた平均的なヒトの表皮の厚さは約0.2 mmであり、手掌・足底では角層が厚いため約0.6 mmに達します。角化細胞1個が約10 μmであることを基準にすると、細胞1個分に満たない0.0002 mmや0.002 mmは薄すぎ、0.02 mmは角層の厚さ、2.0 mmは真皮の厚さに相当すると判断できます。表皮(0.2 mm)・角層(0.02 mm)・真皮(2 mm)が10倍ずつ並ぶ関係として覚えると、桁を問う問題に強くなります。あわせて表皮の層構造やターンオーバー(約4週間)を押さえておくと、乾癬や天疱瘡など皮膚疾患の病態理解や皮膚生検の読影の土台になります。

解答・解説

正解はdです

皮膚は外側から表皮・真皮・皮下組織の3層からなる。本問は、そのうち最表層の表皮の厚さを問う知識問題である。 表皮は重層扁平上皮であり、深部から基底層・有棘層・顆粒層・角層(手掌・足底ではさらに透明層)が重なっている。手掌と足底を除く一般的な部位での表皮の厚さは平均約0.2 mmとされる。一方、機械的刺激を強く受ける手掌・足底では表皮、とくに角層が厚く、表皮全体で約0.6 mm程度に達する。 桁を選ばせる問題なので、他の構造物の大きさと比べて感覚的に確かめるとよい。表皮を構成する角化細胞(ケラチノサイト)1個の大きさはおよそ10 μm(0.01 mm)前後であり、表皮はこれが何層にも積み重なってできている。したがって表皮の厚さは細胞1個分(0.01 mm程度)よりはるかに厚く、一方で皮膚全体(表皮+真皮で数mm)よりは薄い。この関係から0.2 mmが妥当と判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  0.0002 mm

    0.0002 mmは0.2 μm(200 nm)であり、細胞1個(約10 μm)よりはるかに小さく、細胞内の小器官や基底膜の一部に相当するスケールである。多層の細胞からなる表皮の厚さとしては桁違いに薄すぎる。

  2. ×b.  0.002 mm

    0.002 mmは2 μmであり、赤血球の直径(約7〜8 μm)よりも小さい。角化細胞1個分にも満たない厚さであり、表皮の厚さとしては誤りである。

  3. ×c.  0.02 mm

    0.02 mm(20 μm)は、手掌・足底以外の部位の角層の平均的な厚さに相当する値である。角層は表皮の最外層にすぎず、その下に基底層・有棘層・顆粒層が存在するため、表皮全体の厚さとしては薄すぎる。角層の厚さと表皮全体の厚さを混同しないよう注意する。

  4. ○d.  0.2 mm

    手掌と足底を除いた平均的なヒトの表皮の厚さは約0.2 mmであり、これが正解である。基底層で分裂した角化細胞が、有棘層・顆粒層を経て角層へと分化しながら積み重なって、この厚さを形成している。なお、手掌・足底の表皮はこれより厚く約0.6 mmである。

  5. ×e.  2.0 mm

    2.0 mmは表皮ではなく、真皮の厚さに相当する値である。真皮は膠原線維(コラーゲン)や弾性線維を主体とする結合組織であり、皮膚の厚みの大部分を占め、部位により数mmに及ぶ。表皮の厚さとしては厚すぎる。

皮膚の構造と厚さの目安

・表皮:平均約0.2 mm(手掌・足底では約0.6 mm)。血管を含まず、栄養は真皮側からの拡散で供給される。 ・角層:平均約0.02 mm(手掌・足底では約0.5 mmと非常に厚い)。 ・真皮:約2 mm前後(部位により差が大きい)。乳頭層・網状層に分けられ、膠原線維・弾性線維・血管・神経・付属器を含む。 ・皮下組織:主に脂肪組織からなり、部位や個人差が最も大きい。

表皮の層構造(深部から)

・基底層:1層の円柱状細胞。細胞分裂により新しい角化細胞を供給する。メラノサイトやメルケル細胞も存在する。 ・有棘層:数層〜十数層で表皮の大部分を占める。細胞間はデスモソームで強固に結合し、ランゲルハンス細胞(抗原提示細胞)が存在する。 ・顆粒層:ケラトヒアリン顆粒を含む数層の細胞。 ・透明層:手掌・足底などの厚い角層をもつ部位でのみ明瞭に見られる。 ・角層:核を失った扁平な角質細胞が積み重なり、バリア機能を担う。

表皮のターンオーバー

基底層で生まれた細胞が角層に達するまでに約2週間、角層から剥がれ落ちるまでにさらに約2週間かかり、合計約4週間(おおむね28〜45日)で入れ替わる。乾癬ではこの周期が著しく短縮する。

POINT

・手掌・足底を除く表皮の厚さは平均約0.2 mm、手掌・足底では約0.6 mm。 ・角層は平均約0.02 mm(手掌・足底では約0.5 mm)。 ・真皮は約2 mm前後で、皮膚の厚みの大部分を占める。 ・表皮(0.2 mm)・角層(0.02 mm)・真皮(2 mm)の桁を区別して覚える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。