若者の脳出血の陰に潜む血管の塊―脳動静脈奇形はこうして発症する
第105回医師国家試験 I問題 第37問
国試問題にチャレンジ
脳血管造影写真側面像を別に示す。 この疾患の初発症状として多くみられるのはどれか。3つ選べ。

- a.頭痛
- b.振戦
- c.片麻痺
- d.結膜充血
- e.けいれん
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
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ドクターまとめ
脳血管造影で、nidus、拡張した流入動脈、早期に描出される流出静脈(early venous filling)を認めれば脳動静脈奇形(AVM)と診断できます。AVMは動脈と静脈が毛細血管を介さず直接つながる先天性の血管奇形で、20〜40歳代に多く、若年者の脳出血の重要な原因です。初発症状は出血が最多で、くも膜下出血や脳室内出血では頭痛・嘔吐、脳内出血では片麻痺などの局所症状を呈し、次いで皮質近傍の病変によるけいれん発作が多くみられます。振戦はParkinson病や本態性振戦、結膜充血は拍動性眼球突出・血管雑音とともに頸動脈海綿静脈洞瘻の症状であり、AVMの典型的な初発症状ではありません。病態から症状を導く考え方は、若年者の脳卒中やてんかんの鑑別にそのまま役立ちます。
解答・解説
正解はa, c, eです
画像の読み取り
脳血管造影の側面像では、動脈相の早い時期から異常な血管の塊(nidus:ナイダス)が描出され、そこへ流れ込む太い流入動脈(feeder)と、nidusから早期に描出される拡張した流出静脈(drainer)がみられる。正常では動脈相の後に毛細血管相を経て静脈が写るが、毛細血管床を介さずに動脈と静脈が直接つながる短絡があるため、静脈が異常に早く写る(early venous filling)。これらから脳動静脈奇形(arteriovenous malformation:AVM)と診断できる。
AVMとは
AVMは胎生期の血管形成異常により、脳内で動脈と静脈が毛細血管を介さずに直接吻合した先天性の血管奇形である。好発年齢は20〜40歳代と若年成人で、若年者の脳出血の重要な原因となる。
初発症状の考え方
AVMの症状は大きく次の3つの機序から生じる。 1. 出血:初発症状として最も多く(約半数以上)、脳内出血・くも膜下出血・脳室内出血をきたす。くも膜下出血や脳室内出血では髄膜刺激症状として頭痛・嘔吐がおこり、脳実質内出血では血腫による局所神経症状(片麻痺・失語・視野障害など)が出現する。 2. けいれん発作:出血に次いで多い初発症状で(約20〜30%)、大脳皮質に近い病変で生じやすい。nidus周囲の脳組織のグリオーシスや盗血による虚血が発作焦点となる。 3. その他:出血を伴わない慢性頭痛(片頭痛様のこともある)や、盗血現象(steal phenomenon:短絡に血流を奪われて周囲の脳が虚血に陥る現象)による進行性の神経脱落症状など。 したがって、初発症状として多いのは頭痛・片麻痺・けいれんであり、錐体外路症状や眼症状はAVMの典型的な初発症状ではない。
選択肢考察
- ○a. 頭痛
AVMの初発症状で最も多いのは出血である。nidusが破綻してくも膜下出血や脳室内出血をおこすと、髄膜刺激症状として突然の強い頭痛と嘔吐が出現する。また脳内出血の血腫による頭蓋内圧亢進でも頭痛を生じる。出血を伴わなくとも、片頭痛様の慢性頭痛で発見されることもある。よって頭痛は代表的な初発症状である。
- ×b. 振戦
振戦は大脳基底核や小脳の障害でみられる不随意運動で、初発症状として典型的なのはParkinson病(片側上肢の安静時振戦で始まることが多い)や本態性振戦である。AVMは大脳皮質・皮質下に好発し、出血・けいれんで発症するのが典型であり、振戦で初発することはまれである。
- ○c. 片麻痺
AVMが脳実質内に出血すると、血腫が錐体路(運動野や内包など)を障害して反対側の片麻痺をきたす。若年者の脳内出血ではAVMを必ず鑑別に挙げる。出血がなくても、盗血現象による周囲脳の虚血やnidusの圧迫によって片麻痺などの局所神経症状が徐々に現れることがある。よって片麻痺は初発症状として多い。
- ×d. 結膜充血
結膜充血は、内頸動脈と海綿静脈洞の間に短絡が生じる頸動脈海綿静脈洞瘻(carotid-cavernous fistula:CCF)の特徴的症状である。CCFでは眼静脈に動脈血が逆流するため、拍動性眼球突出・結膜充血(浮腫)・眼窩部の血管雑音が3主徴となり、外傷を契機とすることが多い。脳実質内のAVMではみられない。
- ○e. けいれん
けいれん発作は出血に次いで多いAVMの初発症状で、約20〜30%にみられる。皮質近傍のAVMで生じやすく、nidus周囲のグリオーシスやヘモジデリン沈着、盗血による虚血が発作の焦点となる。Jackson型など部分発作(焦点発作)が多いが、全般化した強直間代発作で受診することもある。若年発症で抗てんかん薬の効きにくいてんかんや、局所神経症状を伴うてんかんではAVMを疑って画像検査を行う。
AVMの画像診断
・脳血管造影:nidus、拡張した流入動脈、早期に描出される流出静脈(early venous filling)が確定診断の根拠となる。 ・CT:出血時は高吸収域。非出血時は石灰化を伴う不整な等〜高吸収域として写ることがある。 ・MRI:T1・T2強調像で血流の速い血管が無信号域(flow void)として蜂の巣状に描出される。
重症度分類(Spetzler-Martin分類)
手術リスクの評価に用いる。nidusの大きさ(3cm未満:1点、3〜6cm:2点、6cm超:3点)、周囲脳の機能的重要性(eloquent areaなら1点)、流出静脈の型(深部静脈への流出があれば1点)の合計でgrade I〜Vに分類する。
治療
・開頭による摘出術(根治的) ・定位放射線治療(ガンマナイフなど):小型・深部病変に適し、閉塞まで数年を要する ・血管内治療(塞栓術):単独または摘出術・放射線治療の前処置として行う ・けいれんには抗てんかん薬を用いる
鑑別すべき血管病変
・頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF):拍動性眼球突出・結膜充血・血管雑音 ・硬膜動静脈瘻:耳鳴(拍動性)、静脈還流障害による症状 ・海綿状血管腫:脳血管造影で描出されない(angiographically occult)。MRIのポップコーン様所見 ・もやもや病:両側内頸動脈終末部の狭窄と異常側副血行路。小児は虚血、成人は出血で発症
POINT
・AVMは動脈と静脈が毛細血管を介さず直接つながる先天性血管奇形で、20〜40歳代に好発する。 ・初発症状は出血(頭痛・意識障害・片麻痺など)が最多、次いでけいれん発作。 ・脳血管造影でnidus・拡張した流入動脈・早期に描出される流出静脈が特徴。 ・結膜充血・拍動性眼球突出・血管雑音は頸動脈海綿静脈洞瘻の3主徴。 ・振戦はParkinson病や本態性振戦の症状で、AVMの初発症状ではない。
