StudyMed医師国家試験

肺では燃え、全身では眠る―サルコイドーシスの「免疫学的パラドックス」で検査所見を読み解く

第105回医師国家試験 I問題 第32問

国試問題にチャレンジ

第105回 I問題 第32問

サルコイドーシスでみられる検査所見はどれか。2つ選べ。

  1. a.補体価低下
  2. b.抗核抗体陽性
  3. c.γ-グロブリン増加
  4. d.可溶性免疫複合体増加
  5. e.ツベルクリン反応陰性

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はサルコイドーシスで見られる検査所見を選ぶ問題だ。暗記で片づけたくなるけれど、カギは「細胞性免疫」と「体液性免疫」がそれぞれどうなっているかという病態の理解にある。ここを押さえると、選択肢を理屈で振り分けられるよ。まず、サルコイドーシスがどんな病気か説明できるかな。
医学生医学生
原因不明の非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が、肺やリンパ節、眼、皮膚、心臓などにできる全身性疾患です。病理実習で、結核と違って中心に壊死のない肉芽腫を見ました。
ドクタードクター
その通り。肉芽腫の局所ではCD4陽性T細胞とマクロファージが集まって、免疫反応がとても活発に起きている。だから、てっきり全身の免疫も亢進していると思いがちなんだ。
医学生医学生
肉芽腫ができるくらいなら、T細胞はむしろ元気なんじゃないんですか。
ドクタードクター
そこが面白いところで、局所にリンパ球が動員される結果、末梢血のリンパ球は減り、全身の細胞性免疫はかえって低下する。局所は亢進、全身は低下。これを「免疫学的パラドックス」と呼ぶんだ。さらに、B細胞は刺激されて体液性免疫は相対的に亢進する。
医学生医学生
細胞性免疫が低下するなら、Ⅳ型アレルギーをみるツベルクリン反応が陰性になる、ということですね。
ドクタードクター
正解。ツベルクリン反応は結核菌抗原に対するT細胞主体の遅延型過敏反応だから、細胞性免疫が落ちると、BCG接種歴があっても陰性化しやすい。BCGが広く行われている日本では、本症を疑う手がかりとして重視されてきた所見なんだ。
医学生医学生
体液性免疫の亢進のほうは、γ-グロブリン増加につながりますか。
ドクタードクター
そうだね。B細胞の活性化でポリクローナルな高γ-グロブリン血症が患者のおよそ半数にみられる。この2つが正解だ。では残りの補体価低下、抗核抗体陽性、免疫複合体増加。これらに共通するイメージはあるかな。
医学生医学生
膠原病内科の講義で、SLEのところに全部出てきた気がします。
ドクタードクター
鋭いね。補体価低下は免疫複合体が補体を消費する病態、つまりSLEや急性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、クリオグロブリン血症などでみられる。抗核抗体はSLEや強皮症、Sjögren症候群などの膠原病で陽性になる自己抗体だ。サルコイドーシスは自己抗体やⅢ型アレルギーで起こる病気ではないから、これらは特徴とはいえない。
医学生医学生
でも、サルコイドーシスで「可溶性なんとか」が上がるって、CBTの問題集で見た覚えがあるんですが……。
ドクタードクター
いいところに引っかかったね。上がるのは「可溶性インターロイキン-2受容体」なんだ。活性化したT細胞がIL-2受容体を血中に放出するためで、肉芽腫でのT細胞活性化を反映する。「可溶性免疫複合体」とは別物だから、名前の似た引っかけに注意しよう。
医学生医学生
危なかったです。ほかに覚えておくべき検査所見はありますか。
ドクタードクター
まず胸部画像の両側肺門リンパ節腫脹、つまりBHLが最も特徴的だ。血液では血清ACEとリゾチームの上昇、可溶性IL-2受容体の上昇。気管支肺胞洗浄液ではリンパ球比率が増え、CD4/CD8比が上昇する。さらにガリウムシンチやFDG-PETで病変部に集積する。
医学生医学生
高カルシウム血症も起こるんでしたよね。
ドクタードクター
そう。肉芽腫内のマクロファージが1α-水酸化酵素をもち、活性型ビタミンDを過剰に作るためだ。腎結石や腎機能障害の原因にもなるから見逃さないようにしたい。
医学生医学生
臨床実習で呼吸器内科を回ったとき、眼科からぶどう膜炎で紹介されてきた方が、精査でサルコイドーシスと分かったケースがありました。
ドクタードクター
典型的な経路だね。眼のぶどう膜炎、皮膚の結節性紅斑や皮膚サルコイド、顔面神経麻痺など、肺以外の症状から見つかることも多い。臨床で特に注意したいのは心サルコイドーシスで、房室ブロックや心室性不整脈から突然死につながることがあり、予後を左右する。無症状で臓器障害が軽ければ自然寛解も多く経過観察だが、心・眼・神経病変や進行性の肺病変、高カルシウム血症ではステロイドを考える。なお、ツベルクリン反応陰性は現在の日本の診断基準の検査項目からは外れているけれど、病態を映す所見であることに変わりはないよ。
医学生医学生
「局所で燃えて全身で眠る」と覚えれば、ツ反陰性と高γ-グロブリン血症が自然に出てきますね。
ドクタードクター
いいまとめだ。病態から所見を導けるようになれば、問い方が変わっても対応できるよ。

まとめ

サルコイドーシスは非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が多臓器に生じる疾患で、病変局所ではT細胞性の免疫反応が亢進する一方、全身の細胞性免疫は低下し、体液性免疫は相対的に亢進するという「免疫学的パラドックス」を示します。このため、ツベルクリン反応の陰性化と高γ-グロブリン血症が特徴的な検査所見となります。補体価低下・抗核抗体陽性・免疫複合体増加はSLEなど自己抗体やⅢ型アレルギーが関与する疾患の所見であり、サルコイドーシスで上昇するのは名前の似た可溶性IL-2受容体である点に注意が必要です。BHL、血清ACE・リゾチーム上昇、高カルシウム血症、BALFのCD4/CD8比上昇、Ga/FDG集積もあわせて押さえ、予後を左右する心病変を常に念頭に置きましょう。病態から所見を導く考え方は、似た選択肢による引っかけへの最も確かな対策になります。

解答・解説

正解はc, eです

【テーマ】サルコイドーシスの免疫学的な特徴と、それを反映する検査所見を問う問題である。

病態の要点

サルコイドーシスは、原因不明の非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が肺・リンパ節・眼・皮膚・心臓などの多臓器に形成される全身性疾患である。肉芽腫の局所(肺など)では CD4 陽性 T 細胞(ヘルパー T 細胞)とマクロファージが集積して活発な免疫反応が起きている一方、末梢血ではリンパ球が病変部へ動員されて減少し、全身の細胞性免疫は低下した状態になる(免疫学的パラドックスと呼ばれる)。また、B 細胞が刺激されて体液性免疫は相対的に亢進する。

考え方

この「細胞性免疫の低下」と「体液性免疫の亢進」を押さえれば、前者を反映するツベルクリン反応(Ⅳ型アレルギー=遅延型過敏反応)の陰性化と、後者を反映する高γ-グロブリン血症が選べる。一方、補体価低下・抗核抗体陽性・免疫複合体増加は、全身性エリテマトーデス(SLE)など自己抗体や免疫複合体が関与する疾患(Ⅲ型アレルギー)でみられる所見であり、サルコイドーシスの特徴ではない。サルコイドーシスで増加するのは「可溶性インターロイキン-2 受容体」であり、「可溶性免疫複合体」と取り違えないことも重要である。

選択肢考察

  1. ×a.  補体価低下

    血清補体価(CH50、C3、C4)の低下は、免疫複合体の形成によって補体が消費される疾患、たとえば SLE、急性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎、クリオグロブリン血症などでみられる。サルコイドーシスは補体を消費する病態ではなく、補体価は通常正常である。

  2. ×b.  抗核抗体陽性

    抗核抗体は細胞核の成分に対する自己抗体で、SLE、全身性強皮症、Sjögren 症候群、混合性結合組織病などの膠原病で陽性となる。サルコイドーシスは自己抗体によって起こる疾患ではなく、抗核抗体は通常陰性で、診断的意義もない。

  3. ○c.  γ-グロブリン増加

    サルコイドーシスでは細胞性免疫が低下する一方、B 細胞の活性化により体液性免疫が相対的に亢進し、ポリクローナルな高γ-グロブリン血症が患者のおよそ半数にみられる。γ-グロブリンの増加は、血清アンジオテンシン変換酵素(ACE)やリゾチームの上昇などとともに、疾患活動性の目安になりうる。

  4. ×d.  可溶性免疫複合体増加

    免疫複合体(抗原と抗体の結合物)の増加は、Ⅲ型アレルギーが関与する SLE や血管炎などでみられる所見であり、サルコイドーシスの特徴ではない。サルコイドーシスで増加するのは可溶性インターロイキン-2 受容体(sIL-2R)である。活性化した T 細胞が IL-2 受容体を血中に放出するためで、肉芽腫形成における T 細胞活性化を反映し、診断基準の検査項目にも含まれている。名称が似ているので混同しないようにする。

  5. ○e.  ツベルクリン反応陰性

    ツベルクリン反応は、結核菌抗原に対する T 細胞主体の遅延型過敏反応(Ⅳ型アレルギー)をみる検査である。サルコイドーシスでは末梢の細胞性免疫が低下するため、BCG 接種歴や結核感染歴があっても反応が陰性(陰転化)となることが多い。BCG 接種が広く行われている日本では、ツベルクリン反応陰性は本症を疑う手がかりとして重視されてきた。

サルコイドーシスの主な検査所見

・胸部画像:両側肺門リンパ節腫脹(bilateral hilar lymphadenopathy: BHL)が最も特徴的。肺野にはリンパ路に沿った粒状影などを認める。 ・血液検査:血清 ACE 上昇、リゾチーム上昇、可溶性 IL-2 受容体上昇、高γ-グロブリン血症。高カルシウム血症・高カルシウム尿症(肉芽腫内のマクロファージが 1α-水酸化酵素をもち、活性型ビタミン D を過剰に産生するため)。 ・核医学検査:67Ga シンチグラフィまたは FDG-PET で病変部に集積。 ・気管支肺胞洗浄液(BALF):総細胞数とリンパ球比率の増加、CD4/CD8 比の上昇(3.5 を超える)。 ・細胞性免疫低下:ツベルクリン反応陰性。 ・病理:非乾酪性類上皮細胞肉芽腫(確定診断には組織所見が重要)。

主な臓器病変

肺・胸郭内リンパ節のほか、眼(ぶどう膜炎、特に肉芽腫性前部ぶどう膜炎)、皮膚(結節性紅斑、皮膚サルコイド)、心臓(房室ブロック、心室性不整脈、心不全。突然死の原因となり予後を左右する)、神経(顔面神経麻痺など)がある。

治療

無症状で臓器障害が軽い例は自然寛解も多く経過観察とする。心病変、眼病変、神経病変、進行性の肺病変、高カルシウム血症などでは副腎皮質ステロイドを用いる。

POINT

・サルコイドーシスは「局所の免疫反応亢進」と「全身の細胞性免疫低下」が同時にみられる。 ・細胞性免疫低下 → ツベルクリン反応陰性、体液性免疫亢進 → 高γ-グロブリン血症。 ・血清 ACE・リゾチーム・可溶性 IL-2 受容体の上昇、高カルシウム血症、BHL、Ga/FDG 集積、BALF の CD4/CD8 比上昇を覚える。 ・補体価低下・抗核抗体陽性・免疫複合体増加は SLE などの膠原病でみられる所見。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。