StudyMed医師国家試験

胃の中の白いリング―内視鏡像で見抜く「胃瘻」という栄養ルート

第105回医師国家試験 H問題 第17問

国試問題にチャレンジ

第105回 H問題 第17問

治療手技に関連した写真を別に示す。  行われた治療はどれか。

第105回 H問題 第17問の問題画像
  1. a.食道静脈瘤結紮術
  2. b.食道ステント留置
  3. c.胆道ドレナージ
  4. d.クリッピング
  5. e.胃瘻造設

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は内視鏡写真から、どんな治療が行われたかを読み取る問題だ。考えるポイントは2つ。「ここは消化管のどこか」と「写っている人工物は何か」。この2つを押さえれば、選択肢は自然に絞れるよ。
医学生医学生
まず場所ですね。内腔がかなり広くて、粘膜が平坦に広がっているように見えます。
ドクタードクター
いい着眼点だ。食道なら細い管腔が奥へ続くし、十二指腸なら絨毛のせいで細かな顆粒状の粘膜に見える。広い内腔に平らな赤みのある粘膜が広がっているこの写真は、胃の中と判断できる。
医学生医学生
そして粘膜から白いリング状のものが飛び出していますね。真ん中に穴があって、中に色のついた部品も見えます。
ドクタードクター
それが答えの鍵だ。これは経皮内視鏡的胃瘻造設術、PEGで留置された胃瘻カテーテルの内部ストッパー、バンパーと呼ばれる部分なんだ。カテーテルは腹壁と胃壁を貫いて体外に出ていて、胃の内側をこのバンパーで、体表側を外部ストッパーで挟んで抜けないように固定している。
医学生医学生
臨床実習で神経内科を回ったとき、ALSの患者さんのお腹にチューブが出ていたのを見ました。中はこうなっているんですね。
ドクタードクター
そう、外から見えるのはチューブやボタンだけだから、内視鏡像と結びつけておくのは大事だよ。では、ほかの治療ならどんな像になるかを確認しよう。食道静脈瘤結紮術はどうかな。
医学生医学生
EVLは静脈瘤を吸引してゴムのOリングをかける治療でした。リングつながりで一瞬迷いました。
ドクタードクター
迷うのはわかる。でもEVL直後は、細い食道の中に、Oリングで絞られて球状に盛り上がった静脈瘤が見える。場所が食道で、リングは静脈瘤の根元を締めている小さなゴムだ。今回のように胃粘膜から開口部のある白いバンパーが突き出す像とは違う。
医学生医学生
食道ステントなら、金属の網目が見えるはずですよね。
ドクタードクター
その通り。切除不能な食道癌の狭窄などに使う金属メッシュの筒だから、管腔に沿って網目状の構造が全周性に見える。局所的なバンパーとは形がまるで違う。次は胆道ドレナージ。
医学生医学生
十二指腸乳頭から胆管にチューブを入れるので、十二指腸の中で乳頭からチューブが出ている像になる、ということでしょうか。
ドクタードクター
正解。ERBDやENBDでは十二指腸下行部の乳頭部にチューブが見え、粘膜も絨毛で顆粒状だ。最後のクリッピングは?
医学生医学生
消化器内科の実習で、出血性潰瘍に銀色のクリップをかけるのを見学しました。細長い金属がつまんでいる感じでした。
ドクタードクター
まさにそれ。潰瘍底や露出血管に銀色の細長い金属クリップが刺さった像になる。白いリング状の構造物とは形も材質も違うね。
医学生医学生
場所が胃で、人工物が白いバンパー状なら胃瘻、と結びつければいいんですね。
ドクタードクター
そういうこと。発展として、胃瘻の適応も押さえておこう。消化管は使えるけれど経口摂取が難しい患者、たとえば脳卒中後の嚥下障害、ALSなどの神経変性疾患、頭頸部腫瘍の患者が代表的だ。経腸栄養が4週間未満と見込まれるなら経鼻胃管、それ以上なら胃瘻や腸瘻を考える。
医学生医学生
腸が使えるなら静脈栄養より経腸栄養を優先する、とCBTの勉強で覚えました。
ドクタードクター
その原則が背景にあるんだ。悪性腫瘍による消化管閉塞に対して胃内を減圧する目的で造ることもある。一方、内視鏡が通らない咽頭・食道の狭窄、胃と腹壁の間に肝臓や横行結腸が挟まって穿刺経路がとれない場合、大量腹水、補正できない出血傾向では、造設が難しいか禁忌になる。
医学生医学生
造った後の合併症で気をつけることはありますか。
ドクタードクター
創部感染、出血、腹膜炎、事故抜去、誤嚥性肺炎などがある。特徴的なのがバンパー埋没症候群で、外部ストッパーをきつく締めすぎるなどして内部ストッパーが胃壁の中に埋もれてしまう状態だ。カテーテルが回らない、栄養剤が入りにくい、といった変化があれば疑う。日々のケアでカテーテルが軽く回るか確認するのはそのためなんだ。
医学生医学生
胃瘻は「造って終わり」ではなく、その後の管理まで含めた治療なんですね。
ドクタードクター
その通り。造設の適応を本人や家族とよく話し合うことも含めて、栄養管理の大切な選択肢だよ。

まとめ

内視鏡で胃内の広い内腔に、中央に開口部をもつ白いバンパー状の人工物が粘膜から突出していれば、経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)で留置された胃瘻カテーテルの内部ストッパーと判断できます。EVLでは食道内にOリングで結紮された球状の静脈瘤、食道ステントでは網目状の金属構造、胆道ドレナージでは十二指腸乳頭から出るチューブ、クリッピングでは潰瘍底などに刺さった銀色の金属クリップが見られ、「部位」と「人工物の形」で区別できます。胃瘻は消化管機能は保たれているが経口摂取が困難な患者に対する長期(おおむね4週間以上)の経腸栄養路で、脳卒中後の嚥下障害や神経変性疾患などが代表的な適応です。合併症として創部感染や事故抜去、誤嚥性肺炎、バンパー埋没症候群などがあり、造設後の管理も重要です。代表的な内視鏡治療の典型像を区別できることは、消化器診療だけでなく病棟や在宅での患者管理にも役立ちます。

解答・解説

正解はeです

画像の読み取り

提示されているのは上部消化管内視鏡の画像である。視野の大部分を、広く平坦に広がる赤みを帯びた粘膜が占めている。管腔が細く続く食道や、絨毛による細かな顆粒状の粘膜を示す十二指腸とは様子が異なり、この広い内腔と粘膜の性状から、観察部位は胃内と判断できる。粘膜の一点からは白色のリング状(バンパー状)の人工物が突出しており、その中央には開口部と、内部のカテーテル部品と思われる着色された構造がのぞいている。周囲の粘膜には軽度の発赤が散在するのみで、潰瘍・静脈瘤・狭窄などの病変は見られない。

何の器具か

胃壁に密着して胃内に固定されている白色のバンパー状の構造物は、経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG:percutaneous endoscopic gastrostomy)で留置される胃瘻カテーテルの内部ストッパー(胃内固定板)である。カテーテルは腹壁と胃壁を貫いて体外へ出ており、胃内側はこの内部ストッパーで、体表側は外部ストッパーで固定され、抜けないようになっている。

考え方

本問は、内視鏡で観察される代表的な治療後の所見を実際に見たことがあるか、また見たときにどの手技と結び付けられるかを問う問題である。各選択肢の手技で見られる特徴的な所見(結紮のOリング、金属メッシュのステント、十二指腸乳頭からのチューブ、金属製のクリップ)と、本画像の所見(胃内の白いバンパー型ストッパー)を照らし合わせれば、胃瘻造設が選べる。

選択肢考察

  1. ×a.  食道静脈瘤結紮術

    内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL:endoscopic variceal ligation)は、食道の静脈瘤を内視鏡先端のデバイスに吸引し、小さなゴム製のOリングをかけて血流を遮断する治療である。施行直後の画像では、狭い管腔状の食道内に、Oリングで絞られて球状に盛り上がった静脈瘤が見える。本画像は胃内であり、静脈瘤もOリングも認めないため誤りである。

  2. ×b.  食道ステント留置

    食道ステントは、切除不能な食道癌などによる狭窄や食道気管瘻に対し、金属メッシュ(しばしば被覆膜付き)でできた筒を狭窄部に留置して内腔を確保する治療である。内視鏡では管腔に沿って網目状の金属構造が全周性に見える。本画像の構造物は胃粘膜に局所的に存在する白いバンパー状の物体で、網目状のステントではないため誤りである。

  3. ×c.  胆道ドレナージ

    内視鏡的胆道ドレナージ(ERBD:endoscopic retrograde biliary drainage、ENBD:endoscopic nasobiliary drainage など)では、十二指腸乳頭から胆管内へチューブ(プラスチックステントや経鼻チューブ)を挿入する。内視鏡では十二指腸下行部の乳頭部からチューブが出ている像となり、十二指腸粘膜には絨毛による細かな顆粒状の性状が見られる。本画像は胃内であり乳頭もチューブも見えないため誤りである。

  4. ×d.  クリッピング

    内視鏡的クリッピングは、胃・十二指腸潰瘍の露出血管からの出血などに対し、金属製の小さなクリップで血管や組織をつまんで止血する方法である。内視鏡では、潰瘍底や粘膜に銀色の細長い金属クリップが刺さっている像となる。本画像の白いリング状の構造物はクリップとは形状も材質も異なるため誤りである。

  5. ○e.  胃瘻造設

    広い胃内腔の粘膜面から、中央に開口部をもつ白いバンパー型の構造物が突出している。これは経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)で留置された胃瘻カテーテルの内部ストッパーであり、カテーテルが胃壁・腹壁を貫いて体外へ通じている状態を示す。内部ストッパーが胃内側からカテーテルを固定することで抜去を防いでいる。したがって行われた治療は胃瘻造設である。

経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)の概要

・目的:経口摂取が困難または不十分だが消化管の機能は保たれている患者に、長期(おおむね4週間以上)の経腸栄養路を確保する。脳血管障害後の嚥下障害、神経変性疾患(筋萎縮性側索硬化症など)、頭頸部の腫瘍などが代表的な対象である。減圧目的(悪性腫瘍による消化管閉塞に対する胃内減圧)で造設されることもある。 ・方法:内視鏡を胃内に入れて送気し胃を膨らませ、腹壁側から光や指圧で穿刺部位を確認して、腹壁から胃内へ穿刺しカテーテルを留置する。主な手技としてpull法・push法(口からカテーテルを引き込む方法)と、introducer法(腹壁から直接挿入する方法)がある。 ・カテーテルの種類:胃内側の固定具にはバンパー型とバルーン型が、体外側には外部に管が出るチューブ型と皮膚面に留まるボタン型がある。本問の画像はバンパー型の内部ストッパーである。 ・主な合併症:創部感染、出血、腹膜炎、カテーテルの逸脱・事故抜去、誤嚥性肺炎、バンパー埋没症候群(内部ストッパーが胃壁内に埋もれる状態)など。 ・禁忌・注意:内視鏡が通過できない咽頭・食道の狭窄、胃と腹壁の間に他の臓器(肝臓・横行結腸)が介在して穿刺経路が確保できない場合、大量腹水、補正できない出血傾向などでは造設困難または禁忌となる。

経腸栄養路の選択

経腸栄養の期間が短期(おおむね4週間未満)と見込まれる場合は経鼻胃管が、長期と見込まれる場合は胃瘻(または腸瘻)が選択される。腸が使えるなら静脈栄養より経腸栄養を優先するのが原則である。

他選択肢の内視鏡所見の整理

・EVL:食道内にOリングで結紮された球状の静脈瘤 ・食道ステント:食道内腔に網目状の金属ステント ・胆道ドレナージ:十二指腸乳頭から出るチューブ ・クリッピング:潰瘍底などに刺さった金属製クリップ

POINT

・胃内に見える白いバンパー(リング)状の人工物は、PEGの胃瘻カテーテルの内部ストッパーである。 ・胃瘻は、消化管は使えるが経口摂取が困難な患者に対する長期(約4週間以上)の経腸栄養路である。 ・代表的な内視鏡治療(EVL、ステント、胆道ドレナージ、クリッピング、PEG)の典型的な内視鏡像を区別できるようにしておく。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。