StudyMed医師国家試験

聞かれなければ話さない―システムレビューで「言い忘れ」を拾い上げる

第105回医師国家試験 H問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第105回 H問題 第15問

医療面接におけるシステムレビュー〈review of systems〉で正しいのはどれか。

  1. a.時系列に沿って順序よく病歴聴取を行う。
  2. b.既往歴について患者の言葉で体系的に話してもらう。
  3. c.論文のエビデンスを体系的にまとめて患者に提示する。
  4. d.医療面接の最後に聴取した病歴について要約を述べる。
  5. e.主訴と関係のない症状を含め臓器系統別にくまなく病歴を聴取する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医療面接の技法のひとつ、システムレビュー(review of systems、ROS)の定義を問う問題だ。医療面接にはいくつもの要素があるから、それぞれの役割を区別できるかどうかが着眼点になる。まず、医療面接ではどんな順番で何を聴くか、思い出してみよう。
医学生医学生
OSCEの練習では、導入のあと主訴、現病歴、既往歴、家族歴、生活歴と進めて、最後に要約しました。
ドクタードクター
よく覚えているね。その流れの中で、生活歴などのあとに入るのがシステムレビューだ。全身症状、皮膚、頭頸部、呼吸器、循環器、消化器、泌尿生殖器、筋骨格系、神経、精神などの臓器系統ごとに、症状の有無を一つずつ確認していく。
医学生医学生
主訴と関係なさそうな症状まで聞くんですか。患者さんに「なんでそんなこと聞くの」と思われそうです。
ドクタードクター
そう感じるのは自然だけど、そこにこそ意味がある。患者さんは、自分で重要でないと思った症状を自分からは話さないことが多い。系統立てて尋ねれば、医師の聞き忘れも患者の言い忘れも防げるんだ。
医学生医学生
なるほど。関節痛で受診した人に皮疹や口内炎があったら、膠原病を考えるきっかけになりますね。
ドクタードクター
まさにその例だ。一見別の問題に見える症状が同じ全身疾患の一部だったり、主訴とは別に対処すべき病気の手がかりだったりする。得られた陽性・陰性の情報は、鑑別診断を見直す材料にもなる。だから主訴と関係のない症状も含めて臓器系統別にくまなく聴取する、というのがROSの定義そのものなんだ。
医学生医学生
時系列に沿って順序よく聴取する、というのも正しそうに聞こえたんですが。
ドクタードクター
それは主に現病歴の話だね。発症から現在までの流れを時間軸で整理するのが現病歴の基本だ。実際の患者さんは思いつく順に話すことが多いから、開いた質問で自由に話してもらい、医師が時系列に並べ直して確認する。ROSの軸は「時間」ではなく「臓器系統」という点が違う。
医学生医学生
既往歴を患者さんの言葉で体系的に話してもらう、というのはどうですか。
ドクタードクター
これも違う。まずROSが確認するのは既往歴ではなく、現在や最近の症状だ。それに、ROSでは「咳はありますか」「むくみはありますか」のように医師が具体的な症状を挙げて尋ねる閉じた質問が中心になる。患者さんの言葉で語ってもらうのは、主訴や現病歴を開いた質問で聴く場面で大切にすることだね。
医学生医学生
開いた質問と閉じた質問の使い分けが、場面によって逆になるんですね。論文のエビデンスを提示する、というのは明らかに別物でしょうか。
ドクタードクター
そう、これは病歴聴取ではなく、根拠に基づく医療やインフォームド・コンセントで利益と不利益を説明する場面の話だ。大事なことではあるけれど、ROSとは無関係だね。
医学生医学生
面接の最後に要約を述べる、もOSCEで必ずやりましたが、これもROSではないと。
ドクタードクター
その通り。要約は聴取した内容をまとめて患者さんに確認する技法で、誤解や聞き漏らしを修正でき、患者さんも「わかってもらえた」と安心できる。ROSも面接の後半に行うことが多いから混同しやすいけれど、別の手順だ。
医学生医学生
臨床実習の総合内科で、入院患者さんの病歴を取るときにROSのチェックリストを渡されました。外来ではあまりやっていなかった気がします。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。時間の限られた外来で毎回すべての系統を確認するのは難しいから、入院時や初診時の包括的な評価で行うことが多い。全身の身体診察と並行して確認したり、問診票で事前に一部を聞いておいたりする工夫もある。
医学生医学生
網羅的に聞くぶん、ただの作業にならないよう注意も必要そうですね。
ドクタードクター
そう、大切なのは「拾い上げた情報を鑑別にどう生かすか」を意識することだ。たとえば体重減少や寝汗といった全身症状が出てきたら、悪性腫瘍や結核なども頭に置き直す。チェックリストを埋めることが目的ではなく、見落としを防ぐ安全網として使う、という意識を持っておこう。

まとめ

システムレビュー(ROS)とは、主訴と関係のない症状も含めて、全身症状・皮膚・呼吸器・循環器・消化器・神経・精神などの臓器系統別に、症状の有無を網羅的に確認する病歴聴取の方法です。患者は重要でないと思った症状を自発的に話さないことが多いため、ROSによって聞き漏らしや言い忘れを防ぎ、全身疾患の手がかりや主訴とは別の問題に気づくことができます。ROSは閉じた質問が中心で、開いた質問から始めて時系列に整理する現病歴、面接の終盤に行う要約、EBMに基づく情報提供とは役割が異なります。外来では時間の制約から入院時や初診時に行われることが多く、問診票や身体診察との併用も有用です。医療面接の各要素の目的を区別して理解することは、OSCEだけでなく臨床での見落とし防止にも直結します。

解答・解説

正解はeです

医療面接では、主訴、現病歴、既往歴、家族歴、生活歴(喫煙・飲酒・職業など)、薬歴・アレルギー歴などを順に聴取する。システムレビュー(review of systems、ROS)はこれらに加えて行うもので、全身症状(発熱・体重変化・倦怠感など)、皮膚、頭頸部、呼吸器、循環器、消化器、泌尿生殖器、筋骨格系、神経、精神、内分泌、血液などの臓器系統ごとに、症状の有無を一つずつ確認していく方法である。 ROSの目的は次の3点にまとめられる。 1. 聞き漏らしの防止:患者は自分が重要でないと思った症状を自発的には話さないことが多い。系統立てて尋ねることで、医師側の聞き忘れも患者側の言い忘れも防げる。 2. 主訴と無関係に見える所見の拾い上げ:一見別の問題に見える症状が、実は同じ全身疾患の一部であったり(例:関節痛で受診した患者の皮疹や口内炎)、主訴とは別に対処すべき疾患の手がかりになったりする。 3. 鑑別診断の見直し:得られた陰性・陽性の情報を、鑑別診断の確からしさの評価に利用する。 ROSでは「〜はありませんか」と具体的な症状を一つずつ尋ねる閉じた質問(closed question、はい・いいえで答えられる質問)が中心となる。主訴や現病歴を開いた質問で自由に語ってもらう部分とは性格が異なる点を押さえておく。以上から、「主訴と関係のない症状を含め、臓器系統別にくまなく聴取する」ことがROSの定義にあたる。他の選択肢は医療面接や診療の他の要素(現病歴の整理、患者中心の聴取、情報提供、要約)を述べたものである。

選択肢考察

  1. ×a.  時系列に沿って順序よく病歴聴取を行う。

    これは主に現病歴の聴取・整理に関する記述であり、ROSの説明ではない。実際には患者は思いつく順に話すことが多く、最初から時系列どおりに聴取できるとは限らない。開いた質問で自由に話してもらった内容を、医師が発症から現在までの時間の流れに沿って整理し、患者に確認したうえで記録するのが現病歴の基本である。ROSの特徴は「時間軸」ではなく「臓器系統」を軸にして網羅的に確認する点にある。

  2. ×b.  既往歴について患者の言葉で体系的に話してもらう。

    ROSの説明ではない。ROSは既往歴ではなく、現在ある(または最近の)症状の有無を臓器系統ごとに確認するものであり、医師が具体的な症状を挙げて尋ねる閉じた質問が主体となる。患者の言葉で語ってもらうことは主訴・現病歴の聴取では重視されるが、得られた情報は必要に応じて医学用語に置き換えて整理し、診療録に記載する。「体系的に話してもらう」ことを患者に求めるのも現実的ではない。

  3. ×c.  論文のエビデンスを体系的にまとめて患者に提示する。

    病歴聴取の方法ではなく、根拠に基づく医療(EBM)やインフォームド・コンセントの際の情報提供に関する記述である。検査や治療について説明し同意を得る場面では、エビデンスに基づいた利益・不利益を患者にわかりやすく伝えることが大切だが、これはシステムレビューとは無関係である。

  4. ×d.  医療面接の最後に聴取した病歴について要約を述べる。

    要約(summarization)は医療面接の重要な技法であるが、ROSそのものではない。面接の終盤に聴取内容をまとめて患者に確認すると、誤解や聞き漏らしを修正でき、診療録の正確さが高まる。また、患者は自分の話が理解されたと感じ安心や信頼関係につながる。ROSは面接の後半に行われることが多いが、要約とは別の手順である。

  5. ○e.  主訴と関係のない症状を含め臓器系統別にくまなく病歴を聴取する。

    ROSの定義そのものである。全身症状、皮膚、頭頸部、呼吸器、循環器、消化器、泌尿生殖器、筋骨格、神経、精神などの系統ごとに、主訴と関連がなさそうな症状も含めて有無を網羅的に確認する。これにより、医師の聞き漏らしや患者の言い忘れを防ぎ、主訴の背景にある全身疾患や、主訴とは別に対応が必要な問題に気づくことができる。

医療面接の主な構成

1. 導入:挨拶、自己紹介、患者確認、面接の目的の説明 2. 主訴:受診の主な理由を患者の言葉で聴く 3. 現病歴:開いた質問から始め、発症時期・部位・性状・程度・経過・増悪寛解因子・随伴症状などを焦点を絞った質問・閉じた質問で補う 4. 既往歴・薬歴・アレルギー歴 5. 家族歴 6. 生活歴・社会歴(喫煙、飲酒、職業、生活環境、旅行歴など) 7. システムレビュー 8. 解釈モデル(患者自身が病気をどう考えているか)・受療行動・希望の確認 9. 要約と確認、面接の締めくくり

質問法の種類

・開いた質問(open-ended question):「どうされましたか」など自由に答えられる。情報量が多く、患者中心の面接に不可欠。 ・焦点を絞った質問(focused question):「痛みについてもう少し教えてください」など話題を限定しつつ自由に答えられる。 ・閉じた質問(closed question):「熱はありますか」など、はい・いいえで答えられる。確認やROSに適する。 ・多重質問(一度に複数を尋ねる)や誘導質問は避ける。

ROSの実際

時間に制約のある日常の外来診療ですべての系統を毎回確認するのは難しく、入院時の病歴聴取や初診時の包括的な評価で行われることが多い。入院時の全身の身体診察と並行して確認すると効率がよい。問診票でROSの一部を事前に確認する方法も用いられる。

POINT

・ROS(システムレビュー)=主訴と無関係な症状も含め、臓器系統別に網羅的に症状の有無を確認すること。 ・目的:聞き漏らし・言い忘れの防止、全身疾患や別の問題の発見。 ・閉じた質問が中心。現病歴は時系列で、主訴・現病歴は開いた質問から。 ・要約は面接の終盤の技法、エビデンス提示はEBM・インフォームド・コンセントの要素であり、ROSとは別。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。