StudyMed医師国家試験

乳突洞のとなりの小さな輪―側頭骨CTで外側半規管を見つける

第105回医師国家試験 G問題 第17問

国試問題にチャレンジ

第105回 G問題 第17問

側頭骨高分解能CTの軸位断像を別に示す。  矢印で示すものはどれか。

第105回 G問題 第17問の問題画像
  1. a.蝸牛基底回転
  2. b.外側半規管
  3. c.顔面神経管
  4. d.蝸牛窓
  5. e.前庭

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は側頭骨の高分解能CTで、内耳や中耳の構造を同定する問題だ。カギは2つ。画像の向きを正しくつかむこと、そしてこの断面が内耳のどの高さで切れているかを見極めることだよ。
医学生医学生
CTの解剖問題は苦手です。側頭骨は骨だらけで、どこが何なのか分からなくなってしまいます。
ドクタードクター
最初はみんなそうだよ。まず向きから決めよう。この画像は片側の側頭骨を拡大したもので、上が前方、耳介の軟部組織が写っている側が外側、反対側が頭蓋内つまり内側になる。外側寄りには蜂の巣のように空気を含んだ乳突蜂巣と乳突洞が広がっていて、その内側の緻密な錐体骨の中に骨迷路が埋まっているんだ。
医学生医学生
解剖実習で錐体骨を削ったとき、内耳がとても硬い骨の中に隠れていて驚きました。
ドクタードクター
そうだよね。では矢印を見てみよう。乳突洞のすぐ内側に、中心に骨の島をもつ小さなリング状の構造がある。これが何に見えるかな。
医学生医学生
渦巻きっぽいので、蝸牛でしょうか。
ドクタードクター
惜しいけれど、そこがよくある誤解なんだ。外側半規管はほぼ水平面に沿って走っているから、軸位断でその走行面に近い高さを切ると、中央に骨島を囲んだ輪っかとして写る。しかも外側半規管は3本の半規管の中で最も外側に張り出していて、乳突洞のすぐ隣に位置する。だから矢印は外側半規管だ。
医学生医学生
水平に走る管を水平に切るから輪になる、ということですね。では蝸牛はどこに写るんですか。
ドクタードクター
蝸牛、特にいちばん下の回転である基底回転は、外側半規管の断面よりも下のスライスで、前庭の前方に弧状に見えてくる。蝸牛窓、つまり正円窓も基底回転が鼓室に開く部分だから、同じく下方の断面で描出される。このスライスにはどちらも写っていないんだ。
医学生医学生
前庭はどうでしょう。半規管とつながっているから、場所が近そうです。
ドクタードクター
いい着眼点だ。前庭は骨迷路の中央にある楕円形の腔で、卵形嚢と球形嚢を含む。この断面では、外側半規管のリングのすぐ内側に低吸収の腔として隣接している。つまり近くにはあるけれど、矢印が指しているのはその外側に張り出した輪のほうなんだ。
医学生医学生
顔面神経管も中耳の近くを通るので迷いました。
ドクタードクター
顔面神経は内耳道から迷路部、膝部を経て鼓室部となり、外側半規管の下方を前から後ろへ走ってから、第2膝部で下に曲がって乳突部となり、茎乳突孔に出る。この高さでは鼓室部が細い管として見えることはあっても、リング状にはならないよ。
医学生医学生
上から順に、上半規管、外側半規管と前庭、内耳道と顔面神経、蝸牛と正円窓、という並びを覚えておけばいいんですね。
ドクタードクター
その通り。断面ごとの見え方を頭に入れておくと、どの高さか分かるだけで候補がぐっと絞れる。そして外側半規管は臨床的にもとても重要なんだ。真珠腫性中耳炎では、乳突洞側に張り出した外側半規管の骨が破壊されて瘻孔ができやすい。
医学生医学生
耳鼻科の臨床実習で、外耳道を加圧するとめまいや眼振が出る瘻孔症状の話を聞きました。それがこれなんですね。
ドクタードクター
まさにそれ。だから術前CTでは外側半規管の骨壁、顔面神経管、耳小骨の破壊をしっかり評価する。顔面神経が外側半規管の下を走ることは、中耳手術で神経を守るための大事な目印にもなるんだ。
医学生医学生
解剖の知識が、そのまま手術の安全につながるんですね。
ドクタードクター
そうなんだ。側頭骨HRCTは、ほかにも内耳奇形、耳硬化症、側頭骨骨折の診断に使われる。半規管は回転加速度、前庭の耳石器は直線加速度や重力、蝸牛は聴覚、という機能もセットで覚えておくと、画像と症状が結びつきやすくなるよ。

まとめ

側頭骨高分解能CTの軸位断では、まず画像の向き(前後・内外側)をつかみ、次にその断面が内耳のどの高さかを判断することが部位同定の基本です。外側半規管はほぼ水平に走るため、その高さの軸位断では中央に骨島をもつリング状構造として乳突洞のすぐ内側に描出され、その内側に前庭が隣接します。蝸牛基底回転や蝸牛窓はこれより下方の断面に写り、顔面神経管の鼓室部は外側半規管の下方を走る細い管として認められます。外側半規管は真珠腫性中耳炎による瘻孔の好発部位で、瘻孔症状の原因となるため、術前CTでの評価が欠かせません。上から「上半規管→外側半規管・前庭→内耳道・顔面神経→蝸牛・正円窓」という断面の並びを押さえることが、画像診断と耳科手術の理解の土台になります。

解答・解説

正解はbです

【テーマ】側頭骨高分解能CT(HRCT)の軸位断像で、内耳・中耳の構造を同定する問題である。

画像の読み方

側頭骨CTの軸位断は、眼窩下縁と外耳孔上縁を結ぶ線(Reid基準線)に平行な断面で撮影されることが多い。本画像は片側の側頭骨を拡大したもので、画像の上が前方、右端に耳介の軟部組織がみえることから画像の右側が外側(耳介側)、左側が内側(頭蓋内・脳側)である。外側寄りには蜂巣状に含気した乳突蜂巣と鼓室洞(乳突洞)が広がり、その内側の緻密な錐体骨の中に内耳(骨迷路)が埋まっている。

矢印の構造

矢印は、乳突洞のすぐ内側に位置する、中心に骨の島をもつ小さなリング状の構造を指している。これは、水平面にほぼ沿って走る外側半規管が、その走行面に近い高さで切られたときの典型的な像である。外側半規管は半規管の中で最も外側(鼓室・乳突洞側)に張り出しており、その内側には低吸収の腔として前庭が隣接する。したがって矢印は外側半規管を示す。

断面の高さの判断

外側半規管がリング状に描出される断面は、内耳の中でも比較的上方のレベルである。蝸牛(特に基底回転)や蝸牛窓(正円窓)はこれより下方の断面で描出されるため、本スライスでは確認できない。側頭骨CTでは、上から順に『上半規管 → 外側半規管・前庭 → 内耳道・顔面神経 → 蝸牛・正円窓』という断面ごとの見え方を押さえておくと、部位の同定がしやすくなる。

選択肢考察

  1. ×a.  蝸牛基底回転

    蝸牛は前庭の前内側に位置し、渦巻き状(約2回転半)の骨管である。その最下部の回転が基底回転であり、外側半規管がリング状にみえる断面よりも下方のスライスで、前庭の前方に弧状の構造として描出される。本スライスは外側半規管のレベルであり、矢印の位置(乳突洞の内側)にも一致しないため誤りである。

  2. ○b.  外側半規管

    正しい。外側半規管(水平半規管)は3つの半規管の中で最も外側に位置し、乳突洞(鼓室洞)に向かって張り出している。その走行面に沿った軸位断では、中央に骨の島を囲むリング状の骨迷路として描出され、内側には前庭(卵形嚢を含む)が連続する。矢印はまさにこのリング状構造を指している。外側半規管は真珠腫性中耳炎で骨破壊(瘻孔)を生じやすい部位であり、瘻孔症状(外耳道の加圧でめまい・眼振が誘発される)の原因となるため、CTでの同定は臨床的にも重要である。

  3. ×c.  顔面神経管

    顔面神経管(ファロピウス管)は、内耳道から迷路部、膝部(膝神経節)を経て鼓室部となり、外側半規管の下方を前方から後方へ走行した後、第2膝部で下方へ向きを変えて乳突部(垂直部)となり茎乳突孔に至る。外側半規管レベルの軸位断では、その前外側寄りに鼓室部の細い管として認められることがあるが、リング状の構造ではなく、矢印の構造とは異なる。

  4. ×d.  蝸牛窓

    蝸牛窓(正円窓)は蝸牛基底回転の鼓室階が中耳腔(鼓室内側壁)に開く部分で、第二鼓膜により閉じられている。蝸牛基底回転と同様に外側半規管のレベルより下方の断面で描出されるため、本スライスには写っておらず、誤りである。

  5. ×e.  前庭

    前庭は骨迷路の中央部に位置する楕円形の腔で、前方で蝸牛、後方で3つの半規管とつながり、内部に耳石器である卵形嚢と球形嚢を含む。本スライスでは、矢印の示すリング状構造(外側半規管)の内側に隣接する低吸収の腔として認められるが、矢印そのものは前庭ではなく、その外側に張り出した半規管を指している。

内耳(骨迷路)の構造

・蝸牛:聴覚を担う。約2回転半の骨管で、基底回転・中回転・頂回転からなる。基底回転ほど高音、頂回転ほど低音を感受する。 ・前庭:卵形嚢と球形嚢(耳石器)を含み、直線加速度や重力(頭の傾き)を感知する。 ・半規管:前(上)・後・外側(水平)の3本が互いにほぼ直交し、回転加速度を感知する。膨大部にある膨大部稜が感覚受容器である。

側頭骨CT軸位断の主な描出レベル(上から下)

・上半規管のレベル:弓状隆起の下に上半規管が点状・弧状にみえる。 ・外側半規管・前庭のレベル:外側半規管がリング状に、その内側に前庭がみえる。乳突洞・上鼓室、耳小骨(ツチ骨頭・キヌタ骨体)も同じ付近で描出される。 ・内耳道のレベル:内耳道、前庭、顔面神経迷路部・膝部、蝸牛上部がみえる。 ・蝸牛のレベル:蝸牛の各回転、正円窓(蝸牛窓)、下鼓室がみえる。

臨床との関連

・真珠腫性中耳炎:外側半規管瘻孔、顔面神経管の骨破壊、耳小骨破壊などをCTで評価する。 ・内耳奇形(Mondini型など)、耳硬化症、側頭骨骨折(縦骨折・横骨折)でも側頭骨HRCTが診断に用いられる。 ・顔面神経は鼓室部で外側半規管の下方を走るため、中耳手術の際の重要な指標となる。

POINT

・外側半規管は軸位断でリング状(中央に骨島)に写り、乳突洞の内側、前庭の外側に位置する。 ・蝸牛(基底回転)と蝸牛窓は外側半規管より下方のスライスで描出される。 ・前庭は骨迷路の中央にあり、卵形嚢・球形嚢を含む。 ・外側半規管は真珠腫による瘻孔の好発部位であり、瘻孔症状の原因となる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。