StudyMed医師国家試験

トイレが近いのはなぜ?―「尿量」と「膀胱の器」で解く頻尿の原因

第105回医師国家試験 F問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第105回 F問題 第14問

頻尿の原因で誤っているのはどれか。

  1. a.尿崩症
  2. b.肥満症
  3. c.膀胱炎
  4. d.糖尿病
  5. e.前立腺肥大症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は頻尿の原因として当てはまらないものを選ぶ問題だ。暗記で片づけることもできるけれど、頻尿を「なぜ回数が増えるのか」という仕組みから整理すると、迷わず解けるようになる。まず、頻尿の定義は覚えているかな。
医学生医学生
昼間に8回以上、それと夜中に排尿のために1回以上起きるのが夜間頻尿、でしたよね。
ドクタードクター
その通り。では、排尿回数は何で決まると思う?
医学生医学生
えっと……膀胱がどれだけ溜められるか、でしょうか。
ドクタードクター
半分正解。排尿回数は「1日尿量 ÷ 1回排尿量」で決まる。だから頻尿の原因は、1日尿量が増える「多尿」と、1回排尿量が減る「膀胱側の問題」の2つに大別できるんだ。
医学生医学生
割り算で考えると、分子が増えるか分母が減るか、ということですね。すっきりしました。
ドクタードクター
そう。この枠組みに選択肢を当てはめていこう。まず尿崩症はどちらかな。
医学生医学生
生理学の講義で習いました。ADHが出ない中枢性か、腎臓がADHに反応しない腎性かで、尿を濃縮できなくなります。薄い尿が大量に出るので多尿のほうです。
ドクタードクター
完璧だね。1回排尿量が正常でも、尿量自体が多いから回数が増えて頻尿・夜間頻尿になる。口渇や多飲を伴うのも特徴だ。糖尿病はどうだろう。
医学生医学生
糖尿病も多尿ですよね。血糖が高いと尿に糖が出て、浸透圧利尿になるからでしょうか。
ドクタードクター
正解。血糖が腎の糖排泄閾値、およそ160〜180mg/dLを超えると尿糖が出て、ブドウ糖が浸透圧物質として水の再吸収を妨げる。さらに糖尿病では、合併症の神経因性膀胱や尿路感染症も頻尿の原因になりうる。次は分母側、膀胱炎だ。
医学生医学生
膀胱炎は炎症で膀胱が刺激されるから、少し溜まっただけで尿意が出るということですか。
ドクタードクター
その通り。粘膜の炎症で知覚が過敏になり、1回排尿量が減る。頻尿・排尿痛・尿混濁が典型で、急性単純性膀胱炎では通常発熱しない。発熱があれば腎盂腎炎などの上部尿路感染を疑おう。では前立腺肥大症は?
医学生医学生
泌尿器科の実習で、夜何度もトイレに起きるという高齢男性の患者さんを担当しました。でも、出口が狭くなるなら尿が出にくくなる排尿症状のほうがメインな気がして、頻尿とどうつながるのか少し疑問でした。
ドクタードクター
いい疑問だね。出口が閉塞すると、それに対抗して排尿筋が過活動になり膀胱が過敏になる。さらに出し切れずに残尿が増えるから、実質的に溜められる量が減るんだ。だから前立腺肥大症では尿勢低下などの排尿症状と、頻尿・夜間頻尿などの蓄尿症状の両方がみられる。
医学生医学生
なるほど。そうすると残る肥満症は、尿量も膀胱容量も直接は変えないので、頻尿の原因とはいえないということですね。
ドクタードクター
正解。肥満症には尿量を増やす作用も、膀胱容量を減らしたり膀胱を過敏にしたりする直接の機序もない。だからこれが「誤っているもの」になる。ただし、肥満は腹圧の上昇を介して腹圧性尿失禁の危険因子になることは覚えておこう。
医学生医学生
尿が漏れるのと、回数が多いのは別の症状なんですね。つい混同してしまいそうです。
ドクタードクター
そこは区別が大切だね。なお、肥満と過活動膀胱症状や夜間頻尿との関連を示す疫学研究もあるけれど、頻尿を直接説明する病態生理をもつのは他の4つ、という整理で考えるといい。
医学生医学生
実際の外来では、多尿型か膀胱型かはどうやって見分けるんですか。
ドクタードクター
役に立つのが排尿日誌だ。排尿した時刻と1回排尿量を記録してもらうと、1日尿量と1回排尿量が分かって、どちらの型かが見えてくる。多尿型なら尿糖や尿浸透圧を調べ、尿崩症か糖尿病か心因性多飲かを考える。心因性多飲なら水制限で尿が濃縮される点が尿崩症との違いだ。
医学生医学生
夜だけ尿量が多い場合はどう考えればいいですか。
ドクタードクター
夜間多尿といって、心不全、高齢者でADH分泌の日内変動が弱くなること、就寝前の飲水過多などでみられる。ほかにも過活動膀胱、間質性膀胱炎、膀胱結石や膀胱癌、妊娠子宮や骨盤内腫瘤による圧迫など、頻尿の原因は幅広い。だからこそ「尿量」と「1回排尿量」の2軸で整理しておくと、どんな症例にも応用が利くんだ。

まとめ

頻尿は昼間8回以上の排尿や夜間に排尿のため起きる状態で、排尿回数は「1日尿量÷1回排尿量」で決まるため、原因は多尿と1回排尿量の減少に大別して考えると整理しやすくなります。尿崩症(ADH作用不全による低張尿)と糖尿病(浸透圧利尿)は多尿による頻尿、膀胱炎(粘膜炎症による知覚過敏)と前立腺肥大症(排尿筋過活動と残尿増加)は1回排尿量の減少による頻尿をきたします。肥満症はそれ自体で尿量を増やしたり膀胱容量を減らしたりする直接の機序をもたず、頻尿の原因とはいえませんが、腹圧性尿失禁の危険因子である点は区別して押さえておきましょう。臨床では排尿日誌で1日尿量と1回排尿量を把握し、多尿型か膀胱容量減少型かを見極めることが鑑別の第一歩です。病態生理から症状を組み立てる考え方は、暗記に頼らず未知の選択肢にも対応できる力につながります。

解答・解説

正解はbです

頻尿とは排尿回数が多すぎるという訴えであり、一般に昼間8回以上、または夜間に排尿のため1回以上起きる(夜間頻尿)状態を指す。1日の排尿回数は「1日尿量 ÷ 1回排尿量」で決まるため、頻尿の原因は次の2つに大別して考えると整理しやすい。 1. 1日尿量が増える(多尿):1日尿量が成人でおおむね3,000mL(または40mL/kg)を超える状態。尿崩症、糖尿病(浸透圧利尿)、心因性多飲、利尿薬の使用など。 2. 1回排尿量が減る:膀胱の容量や伸展性の低下、知覚過敏、残尿の増加など。膀胱炎、前立腺肥大症、過活動膀胱、間質性膀胱炎、膀胱結石・膀胱癌、神経因性膀胱、骨盤内腫瘤や妊娠子宮による圧迫など。 この枠組みに当てはめると、尿崩症と糖尿病は1に、膀胱炎と前立腺肥大症は2に該当し、いずれも頻尿を説明できる。肥満症はそれ自体で尿量を増やしたり膀胱容量を減らしたりする機序をもたず、頻尿の原因とはいえない。本問は「誤っているもの」を選ぶ否定型である。

選択肢考察

  1. ×a.  尿崩症

    尿崩症は、下垂体後葉からのADH(抗利尿ホルモン、バソプレシン)の分泌が低下する中枢性尿崩症、または腎集合管がADHに反応しない腎性尿崩症により、尿を濃縮できなくなる病態である。低張な尿が大量に出る(多尿)ため、1回排尿量が正常でも排尿回数が増え、頻尿や夜間頻尿となる。口渇・多飲を伴う。頻尿の原因として正しく、誤りではない。

  2. ○b.  肥満症

    肥満症は、肥満(BMI 25以上)に肥満に起因する健康障害を合併するか、その合併が予測される内臓脂肪蓄積を伴い、減量を要する病態である。肥満そのものには尿量を増やす作用も、膀胱容量を減らしたり膀胱を過敏にしたりする直接の機序もなく、頻尿の原因とはいえない。なお肥満は腹圧の上昇を介して腹圧性尿失禁の危険因子となるが、これは尿が漏れる症状であって頻尿の原因とは区別される。したがって誤っているものとしてこれが正解である。

  3. ×c.  膀胱炎

    膀胱炎では膀胱粘膜の炎症によって知覚が過敏となり、尿があまり溜まっていない段階でも強い尿意が生じるため、1回排尿量が少なくなり頻尿となる。頻尿・排尿痛・尿混濁(膿尿)が典型的な症状で、血尿や残尿感を伴うこともある。急性単純性膀胱炎では通常発熱をきたさず、発熱があれば腎盂腎炎などの上部尿路感染を疑う。頻尿の原因として正しく、誤りではない。

  4. ×d.  糖尿病

    糖尿病で血糖値が腎の糖排泄閾値(約160〜180mg/dL)を超えると、尿中に排泄されたブドウ糖が浸透圧物質として水の再吸収を妨げ、浸透圧利尿により多尿となる。その結果、排尿回数が増えて頻尿となる。脱水による口渇・多飲も伴う。また糖尿病の合併症である神経因性膀胱や尿路感染症も頻尿の原因となりうる。頻尿の原因として正しく、誤りではない。

  5. ×e.  前立腺肥大症

    前立腺肥大症では、肥大した前立腺による膀胱出口部の閉塞(下部尿路閉塞)が生じ、これに対抗するため膀胱の排尿筋が過活動となって膀胱が過敏になる。さらに尿が出し切れず残尿が増えるため、実質的に1回排尿量が減る。こうした機序で頻尿、特に夜間頻尿は前立腺肥大症の代表的な症状(蓄尿症状)である。頻尿の原因として正しく、誤りではない。

下部尿路症状の分類

・蓄尿症状:昼間頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、尿失禁など ・排尿症状:尿勢低下、尿線途絶、排尿遅延、腹圧排尿など ・排尿後症状:残尿感、排尿後尿滴下 前立腺肥大症では蓄尿症状と排尿症状の両方がみられる。

頻尿の原因の整理

1. 多尿によるもの ・中枢性尿崩症、腎性尿崩症:低張尿(尿浸透圧が低い) ・糖尿病:浸透圧利尿(尿糖陽性) ・心因性多飲症:飲水過剰による。水制限で尿は濃縮される ・利尿薬、高カルシウム血症、低カリウム血症(腎の尿濃縮力低下) 2. 1回排尿量の減少によるもの ・炎症・刺激:膀胱炎、間質性膀胱炎、膀胱結石、膀胱癌(特に上皮内癌) ・過活動膀胱:尿意切迫感を必須とし、頻尿や夜間頻尿を伴う症候群 ・残尿の増加:前立腺肥大症、神経因性膀胱 ・外部からの圧迫:妊娠子宮、子宮筋腫、骨盤内腫瘍 3. 心因性頻尿:器質的な異常がなく、覚醒時や緊張時に頻尿を訴える

鑑別の手順

排尿日誌(時刻と1回排尿量を記録)をつけると、1日尿量と1回排尿量が分かり、多尿型か膀胱容量減少型かを区別できる。夜間の尿量が多い夜間多尿は、心不全、高齢者の抗利尿ホルモン分泌の日内変動の低下、就寝前の飲水過多などでみられる。

POINT

・頻尿は「多尿(1日尿量の増加)」と「1回排尿量の減少」に分けて考える。 ・尿崩症(ADH作用不全)と糖尿病(浸透圧利尿)は多尿による頻尿をきたす。 ・膀胱炎(膀胱の知覚過敏)と前立腺肥大症(排尿筋過活動・残尿)は1回排尿量の減少による頻尿をきたす。 ・肥満は腹圧性尿失禁の危険因子だが、頻尿の直接の原因ではない。 ・排尿日誌は頻尿の病態の鑑別に有用である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。