StudyMed医師国家試験

左上の角をめざせ―ROC曲線で見抜く「本当に使える検査」

第105回医師国家試験 F問題 第11問

国試問題にチャレンジ

第105回 F問題 第11問

ある疾患を診断する5つの検査の臨床的有用性を比較した図を示す。  最も有用な検査はどれか。

第105回 F問題 第11問の問題画像
  1. a.
  2. b.
  3. c.
  4. d.
  5. e.

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、ある疾患を診断する5つの検査の性能を、1枚のグラフから比べる問題だ。描かれているのはROC曲線。軸が何を表しているか、そして「理想の検査」がグラフ上のどこに来るかがわかれば、すぐに答えにたどり着けるよ。まず軸から確認しよう。
医学生医学生
縦軸が感度、横軸が「1-特異度」ですよね。公衆衛生の講義で習いましたが、横軸がなぜ特異度そのものではないのか、いまだにピンときていません。
ドクタードクター
そこを整理しておこう。感度は病気のある人のうち検査で陽性になる割合、特異度は病気のない人のうち陰性になる割合だ。1-特異度は、病気のない人が誤って陽性と判定される割合、つまり偽陽性率になる。縦軸は「当てたい人をどれだけ拾えたか」、横軸は「巻き込んではいけない人をどれだけ巻き込んだか」と考えるとわかりやすい。
医学生医学生
なるほど、縦は高いほどよくて、横は小さいほどよい、ということですね。
ドクタードクター
その通り。では、曲線そのものは何を表しているかな。
医学生医学生
1つの検査なのに、点ではなく線になっているのが不思議です。
ドクタードクター
いい疑問だね。検査値が連続量だと、どこから陽性とするかの境界、カットオフ値を自由に動かせる。基準を甘くすれば感度は上がるが偽陽性も増えて右上へ、厳しくすれば偽陽性は減るが感度も下がって左下へ動く。そのカットオフ値ごとの点を結んだ軌跡がROC曲線なんだ。
医学生医学生
感度と特異度はトレードオフだと習いましたが、それを1本の線で見せているわけですね。じゃあ理想の検査は、感度100%で偽陽性率0%、つまり左上の角ですか。
ドクタードクター
正解。曲線が左上の角に近いほど、同じ偽陽性率でより高い感度が得られる、つまり病気のある人とない人をよく見分けられる検査だ。これを数値化したのが曲線下面積、AUCで、完全な検査なら1.0になる。一方、左下と右上を結ぶ対角線上はAUC 0.5で、くじ引きと同じく判別能がない。
医学生医学生
そうすると、図で一番左上に張り出している曲線、立ち上がりが急なものが正解でしょうか。
ドクタードクター
その通り。その検査は偽陽性率が低い段階で感度が急に上がり、偽陽性率10〜20%程度で感度がおおむね8割を超えている。偽陽性を抑えながら多くの患者を拾えるから、5つの中でAUCが最大で、最も有用だ。2番目の曲線も対角線よりしっかり上に凸で判別能は良好だけれど、どの偽陽性率で比べても感度が最良の曲線を下回るから、首位にはなれない。
医学生医学生
真ん中あたりの曲線は、高い感度を得ようとすると偽陽性をかなり許容しないといけない形ですね。
ドクタードクター
そう、中程度の判別能にとどまる。さらに対角線に近い曲線は、感度を上げると偽陽性率もほぼ同じだけ増えてしまうので、AUCは0.5を少し上回る程度。判別能は低い。
医学生医学生
最後の1本は対角線より下にありますが、これはくじ引きより悪いということですか。
ドクタードクター
そういうこと。どのカットオフ値でも感度が偽陽性率を下回っていて、AUCは0.5未満だ。理屈のうえでは陽性・陰性の判定を逆にすれば使える場合もあるけれど、この図の検査としては最下位と評価する。結局、「左上に近い順=AUCの大きい順」に並べればいいんだ。
医学生医学生
もう一つ気になるのは、ROC曲線で検査を比べられるのはわかったとして、実際のカットオフ値はどう決めるんでしょうか。
ドクタードクター
よく使われるのは、曲線上で左上の角に最も近い点や、「感度+特異度-1」で表されるYouden指数が最大になる点だ。ただし、見逃すと重大な疾患では、あえて感度を優先した点を選ぶこともある。基準値を健常者の95%範囲で機械的に決めるだけでは、臨床的に適切とは限らないんだ。
医学生医学生
臨床実習で、救急の先生が「除外したいときは感度の高い検査を使え」とおっしゃっていたのとつながりました。
ドクタードクター
いい結びつけだね。感度が高い検査で陰性なら除外に、特異度が高い検査で陽性なら確定に役立つ。最後に注意点をひとつ。ROC曲線は有病率に左右されない感度と特異度から描くので、検査そのものの性能比較に向いている。一方で陽性的中率・陰性的中率は有病率によって変わるから、同じ検査でも外来と健診とでは「陽性」の重みが違うことを覚えておこう。

まとめ

ROC曲線は縦軸に感度、横軸に1-特異度(偽陽性率)をとり、カットオフ値を動かしたときの感度と偽陽性率の組を結んだ曲線です。理想の検査は左上の角(感度100%・偽陽性率0%)に位置し、曲線が左上に近く曲線下面積(AUC)が大きいほど判別能の高い有用な検査といえます。対角線上はAUC 0.5で判別能がなく、対角線より下はそれ以下と評価します。最適なカットオフ値は左上の角に最も近い点やYouden指数が最大の点がよく用いられますが、疾患の重大性に応じて感度を優先することもあります。有病率に影響されない感度・特異度と、有病率で変わる的中率の違いを理解しておくことは、検査結果を臨床で正しく解釈する土台になります。

解答・解説

正解はaです

図の読み取り

縦軸が感度、横軸が「1-特異度」(偽陽性率)のグラフであり、5つの検査それぞれについてROC曲線(receiver operating characteristic curve、受信者動作特性曲線)が描かれている。ROC曲線は、ある検査の陽性・陰性を分ける境界値(カットオフ値)を少しずつ動かしたときの感度と偽陽性率の組を順に結んだものである。カットオフ値を甘くすると感度は上がるが偽陽性も増えて右上へ、厳しくすると偽陽性は減るが感度も下がって左下へ移動する。

評価の考え方

理想的な検査は感度100%・特異度100%(偽陽性率0%)であり、グラフでは左上の角(横軸0、縦軸1)にあたる。曲線が左上の角に近づくほど、同じ偽陽性率でより高い感度が得られる、すなわち病気のある人とない人をよく判別できる検査である。これを数値で表したのが曲線下面積(area under the curve:AUC)で、完全な検査では1.0、まったく判別能のない検査(くじ引きと同じ)では左下と右上を結ぶ対角線上となり0.5である。 図では、a が立ち上がりが最も急で左上の角に最も近く、AUCが最大である。以下 b → c → d の順に曲線は対角線に近づき、e は対角線より下に位置している。したがって最も有用な検査は a である。

選択肢考察

  1. ○a.  

    偽陽性率が低い段階(図の左端付近)ですでに感度が急上昇し、偽陽性率10〜20%程度で感度はおおむね80%以上に達している。曲線全体が左上の角に最も近く、曲線下面積(AUC)は5つの中で最大である。偽陽性を少なく抑えたまま多くの患者を拾い上げられる判別能の高い検査であり、最も臨床的に有用である。

  2. ×b.  

    対角線より十分上に凸となる滑らかな曲線で、判別能は比較的良好であり、c・d・eよりは優れている。しかし立ち上がりはaより緩やかで、同じ偽陽性率で比べると感度はaより常に低い。AUCもaより小さいため、最も有用とはいえない。

  3. ×c.  

    対角線よりは上にあるが、偽陽性率の低い領域での感度の上がり方が鈍く、高い感度を得るためには偽陽性をかなり許容しなければならない。AUCはa・bより小さく、中程度の判別能にとどまる。

  4. ×d.  

    曲線が対角線に近く、感度を上げると偽陽性率もほぼ同じように増えてしまう。AUCは0.5をやや上回る程度と考えられ、病気の有無を判別する能力は低い。

  5. ×e.  

    曲線が対角線より下にあり、どのカットオフ値でも感度が偽陽性率を下回っている。AUCは0.5未満で、この基準のまま用いるとくじ引きよりも判別が悪い。5つの中で最も有用性の低い検査である(なお理論上は陽性・陰性の判定を逆にすれば判別に使える場合もあるが、図の検査としては最下位と評価する)。

感度・特異度の定義

・感度:疾患のある人のうち検査が陽性となる割合(真陽性 ÷ 疾患あり全体)。感度が高い検査は見逃し(偽陰性)が少なく、陰性であれば疾患を除外しやすい(除外診断に有用)。 ・特異度:疾患のない人のうち検査が陰性となる割合(真陰性 ÷ 疾患なし全体)。特異度が高い検査は偽陽性が少なく、陽性であれば疾患を確定しやすい(確定診断に有用)。 ・1-特異度:疾患のない人が誤って陽性と判定される割合で、偽陽性率と呼ぶ。

感度と特異度のトレードオフ

検査値が連続量の場合、カットオフ値を下げて陽性の範囲を広げれば感度は上がるが特異度は下がり(偽陽性が増える)、逆に上げれば特異度は上がるが感度は下がる(偽陰性が増える)。両者を同時に高めることは一般にできない。検査の基準値を健常者の95%範囲で機械的に決めるだけでは臨床的に適切とは限らず、対象疾患の重大性や見逃した場合の不利益を考慮してカットオフ値を設定する必要がある。

ROC曲線の使い方

・複数の検査の比較:AUCが大きい(曲線が左上に寄る)ほど判別能が高い。AUCはおおむね、0.9以上で高い、0.7〜0.9で中等度、0.5〜0.7で低い判別能と解釈される。 ・最適なカットオフ値の決定:曲線上で左上の角に最も近い点、あるいは「感度+特異度-1」(Youden指数)が最大となる点がよく用いられる。見逃しが重大な疾患では感度を優先した点を選ぶこともある。 ・ROC曲線は疾患の有病率に影響されない感度・特異度から描かれるため、検査そのものの性能比較に適している。一方、陽性的中率・陰性的中率は有病率によって変化する。

POINT

・ROC曲線:縦軸=感度、横軸=1-特異度(偽陽性率)で、カットオフ値を変化させたときの軌跡 ・左上の角(感度1、偽陽性率0)が理想の検査 ・曲線が左上に近いほど、曲線下面積(AUC)が大きいほど有用な検査 ・対角線(AUC 0.5)は判別能なし、対角線より下はそれ以下 ・最適カットオフ値は左上の角に最も近い点(Youden指数最大の点)

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。