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7つの骨でできた四角錐―名前にだまされない眼窩の骨学

第105回医師国家試験 E問題 第39問

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第105回 E問題 第39問

眼窩を形成するのはどれか。3つ選べ。

  1. a.頬骨
  2. b.鼻骨
  3. c.下顎骨
  4. d.蝶形骨
  5. e.口蓋骨

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、眼窩をつくる骨を問う解剖の問題だ。眼窩は眼球や外眼筋、視神経を収める四角錐状のくぼみで、7つの骨で構成されている。単に名前を並べるより、上壁・外側壁・下壁・内側壁の壁ごとに整理すると取りこぼしがなくなるよ。まず、思いつく骨を挙げてみてくれるかな。
医学生医学生
解剖学実習で頭蓋骨を触りましたが、前頭骨、上顎骨、頬骨くらいしかすぐには出てきません。
ドクタードクター
そこまでは多くの人が言える。残りは蝶形骨、篩骨、涙骨、口蓋骨だ。合わせて前頭骨・蝶形骨・篩骨・涙骨・上顎骨・頬骨・口蓋骨の7つになる。では壁ごとに見ていこう。外側壁はどの骨だと思う?
医学生医学生
こめかみ側なので、頬骨でしょうか。
ドクタードクター
正解。外側壁の前部は頬骨、後部は蝶形骨の大翼がつくる。頬骨は眼窩縁の外側から下外側、そして下壁の外側部にも加わっている。だから頬骨は眼窩を形成する骨だね。
医学生医学生
蝶形骨は頭蓋底の真ん中にある骨ですよね。眼窩のずいぶん奥にあるイメージです。
ドクタードクター
その奥こそが大事なんだ。蝶形骨は眼窩後方の大部分を占めていて、小翼が上壁の後部をつくり、そこに視神経管がある。大翼は外側壁の後部、体部は内側壁の最後部に加わる。小翼と大翼の隙間が上眼窩裂で、動眼神経・滑車神経・眼神経・外転神経などが通るんだ。
医学生医学生
上眼窩裂は神経解剖でよく出てきました。眼球運動にかかわる神経がまとめて通る場所ですね。
ドクタードクター
そう。次に下壁、つまり眼窩底を見よう。主体は上顎骨で、外側に頬骨、そして最後部に口蓋骨の眼窩突起がわずかに顔を出している。
医学生医学生
口蓋骨って口の天井の骨ですよね。名前からして眼窩とは無関係だと思って、外してしまいそうでした。
ドクタードクター
まさにそこが落とし穴。口蓋骨はL字型で、水平板が硬口蓋の後部をつくり、そこから垂直板が上へ伸びている。その上端の眼窩突起が眼窩底の後端に達するんだ。面積は小さいけれど、7つの骨の一つに数えられる。
医学生医学生
逆に鼻骨は眼のすぐ内側にあるので、内側壁をつくっていそうに思えます。
ドクタードクター
そう感じるのは自然だけど、鼻骨は鼻すじの上部をつくる骨で、眼窩の壁には加わらない。内側壁は前から上顎骨の前頭突起、涙骨、篩骨の眼窩板、蝶形骨体の順に並んでいて、鼻骨はそのさらに前内側に位置している。
医学生医学生
下顎骨は顎関節をつくる骨なので、さすがに眼窩とは離れすぎていますね。
ドクタードクター
その通り。下顎骨は上顎骨を隔てて眼窩から大きく離れているので関与しない。つまり選択肢のうち眼窩をつくるのは、頬骨、蝶形骨、口蓋骨の3つだ。
医学生医学生
上壁が前頭骨と蝶形骨小翼、外側壁が頬骨と蝶形骨大翼、下壁が上顎骨・頬骨・口蓋骨、内側壁が上顎骨・涙骨・篩骨・蝶形骨、という整理ですね。
ドクタードクター
完璧だ。臨床的に特に大事なのは、内側壁の篩骨眼窩板と下壁の上顎骨がとても薄いこと。眼球に鈍的外力が加わって眼窩内圧が上がると、ここが折れる。これが眼窩吹き抜け骨折だ。
医学生医学生
救急科の臨床実習で、ボールが眼に当たって上を見ると二重に見えるという患者さんがいました。
ドクタードクター
まさに典型だね。下直筋が骨折部に挟まると上転障害と複視が出るし、眼窩下神経が傷つくと頬部の知覚低下も起こる。また篩骨眼窩板は紙様板とも呼ばれるほど薄いので、篩骨洞炎が眼窩に波及して眼窩蜂巣炎を起こすこともある。骨の構造を知っていると、こうした病態も自然に理解できるよ。

まとめ

眼窩は前頭骨・蝶形骨・篩骨・涙骨・上顎骨・頬骨・口蓋骨の7つの骨で構成され、壁ごとに上壁(前頭骨・蝶形骨小翼)、外側壁(頬骨・蝶形骨大翼)、下壁(上顎骨・頬骨・口蓋骨眼窩突起)、内側壁(上顎骨前頭突起・涙骨・篩骨眼窩板・蝶形骨体)と整理すると覚えやすくなります。鼻骨は眼窩に近接しますが壁には加わらず、下顎骨も関与しない一方、口蓋骨は名前に反して眼窩突起で眼窩底の最後部に関わる点が要注意です。蝶形骨には視神経管と上眼窩裂があり、眼球運動にかかわる神経の通り道として重要です。内側壁と下壁は薄く、眼窩吹き抜け骨折による複視や頬部知覚低下、篩骨洞炎からの眼窩蜂巣炎の背景になります。骨の配置を壁ごとに理解しておくことは、外傷や炎症の病態を読み解く臨床の土台になります。

解答・解説

正解はa, d, eです

眼窩(がんか)は眼球・外眼筋・視神経・脂肪組織などを収める骨のくぼみで、頭蓋骨と顔面骨の境界に位置する四角錐状の空間である。底面が前方の眼窩口、頂点が後方の視神経管付近にあたる。 眼窩の骨壁は、前頭骨・蝶形骨・篩骨(しこつ)・涙骨・上顎骨・頬骨・口蓋骨の7つの骨で構成される。本問はこの7つを覚えているかを問うものである。選択肢のうち該当するのは頬骨・蝶形骨・口蓋骨の3つである。 迷いやすいのは次の2点である。 ・鼻骨は眼窩のすぐ内側、鼻根部にあるため関係しそうに見えるが、眼窩の壁にはならない(内側壁の前部をつくるのは上顎骨の前頭突起と涙骨である)。 ・口蓋骨は「口の天井の骨」という名前から眼窩と無関係に思えるが、上方に伸びた眼窩突起が眼窩下壁の最後部にわずかに顔を出している。 壁ごとにどの骨が関わるかを整理しておくと、7つを取りこぼさずに思い出せる。

選択肢考察

  1. ○a.  頬骨

    頬骨は眼窩の外側壁と下壁の外側部をつくる。外側壁の前部は頬骨の眼窩面、後部は蝶形骨の大翼で構成され、眼窩縁の外側から下外側も頬骨が担う。したがって眼窩を形成する骨である。

  2. ×b.  鼻骨

    鼻骨は左右一対の細長い骨で、鼻背(鼻すじ)の上部を形づくる。眼窩の内側に近接するが、眼窩の壁そのものには加わらない。内側壁の前部は上顎骨の前頭突起と涙骨がつくっており、鼻骨はそのさらに前内側に位置する。

  3. ×c.  下顎骨

    下顎骨は顔面の最下部にあり、下歯列を支え、側頭骨と顎関節をつくる骨である。眼窩からは上顎骨を隔てて大きく離れており、眼窩の形成には関与しない。

  4. ○d.  蝶形骨

    蝶形骨は頭蓋底の中央にある骨で、眼窩の後方の大部分を占める。小翼は上壁の後部をつくり視神経管を含み、大翼は外側壁の後部をつくる。小翼と大翼の間の隙間が上眼窩裂で、動眼神経・滑車神経・眼神経(三叉神経第1枝)・外転神経などが通る。体部は内側壁の最後部にも加わる。眼窩の形成に欠かせない骨である。

  5. ○e.  口蓋骨

    口蓋骨はL字型の骨で、水平板が硬口蓋の後部をつくり、そこから垂直板が上方へ伸びる。垂直板の上端には眼窩突起があり、これが眼窩下壁(眼窩底)の最後部の小さな領域を占める。関与する面積は小さいが、眼窩を形成する7つの骨の一つに数えられる。

眼窩を構成する骨(壁別)

・上壁(眼窩上壁):前頭骨の眼窩部、蝶形骨小翼 ・外側壁:頬骨、蝶形骨大翼 ・下壁(眼窩底):上顎骨、頬骨、口蓋骨の眼窩突起 ・内側壁:上顎骨の前頭突起、涙骨、篩骨の眼窩板(紙様板)、蝶形骨体

眼窩の主な孔・裂

・視神経管:蝶形骨小翼にある。視神経と眼動脈が通る。 ・上眼窩裂:蝶形骨の大翼と小翼の間。動眼神経・滑車神経・眼神経・外転神経・上眼静脈が通る。 ・下眼窩裂:蝶形骨大翼と上顎骨の間。上顎神経の枝である眼窩下神経・頬骨神経などが通る。

臨床との関連

・眼窩の内側壁(篩骨の紙様板)と下壁(上顎骨)は薄く、眼球に鈍的外力が加わると眼窩内圧が上昇してこれらが骨折しやすい。これを眼窩吹き抜け骨折(blowout fracture)といい、下直筋や内直筋の絞扼による眼球運動障害と複視、眼窩下神経障害による頬部の知覚低下などを生じる。 ・篩骨の紙様板は非常に薄いため、篩骨洞炎が眼窩内に波及して眼窩蜂巣炎を起こすことがある。 ・涙骨と上顎骨がつくる涙嚢窩には涙嚢が収まり、鼻涙管を経て下鼻道に開口する。

POINT

・眼窩は7つの骨(前頭骨・蝶形骨・篩骨・涙骨・上顎骨・頬骨・口蓋骨)で構成される。 ・鼻骨・下顎骨・側頭骨は眼窩を構成しない。 ・口蓋骨は眼窩突起で眼窩底の最後部に関与する(名前にだまされない)。 ・蝶形骨小翼に視神経管、大翼と小翼の間に上眼窩裂がある。 ・内側壁(紙様板)と下壁は薄く、吹き抜け骨折の好発部位である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。