StudyMed医師国家試験

燃えている関節は動かすより守る―関節リウマチ活動期のリハビリテーション

第105回医師国家試験 E問題 第27問

国試問題にチャレンジ

第105回 E問題 第27問

膝関節と手関節とに炎症所見が強い関節リウマチ患者に対するリハビリテーションで適切なのはどれか。

  1. a.速歩訓練
  2. b.短下肢装具の使用
  3. c.関節保護手技の指導
  4. d.床からの立ち上がり訓練
  5. e.他動的手関節可動域訓練

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、関節リウマチのリハビリテーションを「病期」に合わせて選べるかを問う問題だ。カギは「炎症所見が強い」という一言。炎症が燃えさかっている関節に何をしてよくて、何をしてはいけないかを考えよう。
医学生医学生
リハビリというと、とにかく動かして拘縮を防ぐイメージがあります。可動域訓練が正解じゃないんですか。
ドクタードクター
そこがこの問題の落とし穴なんだ。関節リウマチは滑膜の慢性炎症が軟骨や骨を壊していく病気で、炎症が強い時期は関節破壊が最も進みやすい時期でもある。そこへ荷重や強い外力、他動的な運動を加えると、炎症が悪化して破壊や変形を後押ししてしまう。
医学生医学生
じゃあ活動期は、まず安静が基本ということですか。
ドクタードクター
そう、罹患関節の局所安静が原則だ。スプリントなどで良肢位を保ち、拘縮や筋萎縮を防ぐために、痛みの出ない範囲の自動運動や、関節を動かさずに筋だけを収縮させる等尺性運動にとどめる。炎症が落ち着いてから、可動域訓練や筋力強化を段階的に増やしていくんだ。
医学生医学生
そう考えると、他動的な手関節の可動域訓練は活動期にはやりすぎなんですね。
ドクタードクター
その通り。炎症の強い関節を他から動かすと痛みを誘発するうえ、炎症を増悪させるおそれがあるし、脆くなった関節包や靱帯を傷めかねない。可動域の維持は自動運動や自動介助運動で、痛みのない範囲で行うのが基本だ。
医学生医学生
速歩訓練も、膝に炎症があるのに速く歩かせるのはまずそうです。
ドクタードクター
そうだね。歩行では膝に体重の数倍の荷重が繰り返しかかる。速歩ならなおさらだ。床からの立ち上がり訓練はどう思う?
医学生医学生
膝を深く曲げた姿勢から体を持ち上げますし、手を床について支えるので、手関節にも負担がかかりますね。膝と手の両方に悪い。
ドクタードクター
見事な分析だ。だからリウマチの生活指導では、むしろ床からの立ち上がりを避けて、椅子やベッドの生活にすることを勧めるんだよ。では短下肢装具は?
医学生医学生
装具で関節を守るのは良さそうに思えたんですが……。
ドクタードクター
発想は悪くないけれど、短下肢装具は下腿から足部までを覆って足関節を制御する装具で、下垂足などに使うものだ。膝はまたがないし、手関節にも関係しない。局所安静が目的なら、罹患関節に合わせたスプリントを使う必要がある。
医学生医学生
となると残るのは関節保護手技の指導ですね。具体的にはどんなことを教えるんでしょうか。
ドクタードクター
日常生活で関節にかかるストレスを減らす工夫だ。指先でつままずに手のひら全体や前腕で支えて物を持つ、ドアノブや蛇口をレバー式にする、太い柄のスプーンやペンで強く握り込まないようにする、長時間同じ姿勢を続けない、といったことだね。炎症の強い関節に負荷をかけずに行えて、関節破壊の予防にもつながるから、これが正解だ。
医学生医学生
整形外科の実習で、作業療法士さんが患者さんに太い柄のスプーンを試してもらっているのを見ました。あれも関節保護だったんですね。
ドクタードクター
まさにそれ。関節保護手技は活動期に限らず、どの病期でも重要になる。尺側偏位やスワンネック変形、ボタン穴変形といったリウマチ特有の手指変形を進ませない狙いもあるんだ。
医学生医学生
温熱療法はどうですか。物理療法の講義で、関節の痛みには温めるのがいいと習った気がします。
ドクタードクター
慢性期のこわばりには有効なことが多いけれど、急性炎症の強い関節に温熱を加えると炎症を強めるおそれがある。活動期は避けて、必要なら寒冷療法を考える。ここでも「炎症が強いかどうか」で判断が変わるんだ。手すりの設置や洋式トイレへの変更といった生活環境の整備も、病期を問わず大切なアプローチだよ。

まとめ

関節リウマチの炎症活動期は関節破壊が進みやすいため、罹患関節の局所安静を基本とし、スプリントで良肢位を保ちながら、痛みのない範囲の自動運動や等尺性運動で拘縮・筋萎縮を防ぎます。速歩や床からの立ち上がりのような荷重の大きい動作、炎症関節の他動的可動域訓練は炎症と関節破壊を悪化させるため避け、短下肢装具は膝や手関節の保護には役立ちません。一方、関節保護手技の指導は関節に負荷をかけずに行え、手指変形の予防にもつながるため、病期を問わず重要です。炎症が落ち着いたら可動域訓練や筋力強化、温熱療法などを段階的に進めます。「炎症の強さで介入を変える」という考え方は、リウマチに限らず炎症性関節疾患のリハビリテーション全般に通じる基本です。

解答・解説

正解はcです

問題の整理

関節リウマチ(RA:rheumatoid arthritis)で、膝関節と手関節に強い炎症(腫脹・熱感・疼痛)がある、すなわち炎症の活動期にある患者のリハビリテーションとして適切なものを選ぶ問題である。

考え方

RAは滑膜の慢性炎症によって軟骨・骨が破壊されていく疾患であり、炎症が強い時期は関節破壊が最も進みやすい時期でもある。この時期に罹患関節へ体重負荷や強い外力、他動的な運動を加えると、炎症をさらに悪化させ、関節破壊や変形を助長してしまう。そのため、リハビリテーションの方針は病期によって次のように変える。 ・炎症活動期:罹患関節の局所安静を基本とし、スプリント(副子)などで良肢位を保つ。拘縮や筋萎縮を防ぐ目的で、痛みの出ない範囲の自動運動や等尺性運動(関節を動かさずに筋を収縮させる運動)にとどめる。 ・炎症が落ち着いた時期:関節可動域訓練や筋力強化訓練を段階的に増やしていく。 どの時期にも共通して重要なのが、日常生活の動作で関節にかかる負担を減らす工夫、すなわち関節保護手技の指導である。選択肢のうち、炎症の強い膝・手関節に負荷をかけず、かつ関節破壊の予防に役立つものはこれだけである。

選択肢考察

  1. ×a.  速歩訓練

    速く歩く訓練では、歩行時に膝関節へ体重の数倍に相当する荷重が繰り返し加わる。炎症の強い膝関節にこのような負荷をかけると炎症と関節破壊を悪化させるため、活動期には不適切である。

  2. ×b.  短下肢装具の使用

    短下肢装具は下腿から足部までを覆い、足関節の動きを制御・固定する装具で、主に下垂足や足関節の不安定性に用いられる。膝関節をまたがないため、炎症のある膝関節の保護・安静には役立たない。また手関節の保護にも関係しない。RAで局所安静を得る目的なら、罹患関節に合わせたスプリントを用いる(手関節なら手関節用装具など)。

  3. ○c.  関節保護手技の指導

    関節保護手技とは、日常生活動作の中で関節に加わるストレスを減らし、変形や破壊の進行を防ぐための工夫である。例えば、小さな関節ではなく大きな関節や手のひら全体を使って物を持つ、変形を助長する方向(手指の尺側偏位を強める動作など)の力を避ける、太い柄の食器や自助具を使う、長時間同じ姿勢を続けない、といった内容を指導する。関節への負荷をかけずに行え、炎症活動期にも適した介入であるため正しい。

  4. ×d.  床からの立ち上がり訓練

    床からの立ち上がりでは膝関節を深く屈曲した状態から体重を持ち上げる必要があり、膝関節に大きな負担がかかる。さらに手を床について体を支えるため手関節にも荷重が加わる。炎症の強い膝・手関節の両方に負荷をかけるため不適切である。RA患者の生活指導では、むしろ床からの立ち上がりを避ける(椅子やベッドの生活にする)ことが勧められる。

  5. ×e.  他動的手関節可動域訓練

    炎症の強い関節を他動的に動かすと、疼痛を誘発するうえ、関節内の温度上昇や関節液中の白血球増加などを介して炎症を増悪させるおそれがある。また、炎症で脆弱になった関節包や靱帯を損傷しうる。炎症活動期の手関節には安静とスプリントによる良肢位保持を優先し、可動域の維持は痛みのない範囲の自動運動や自動介助運動で行う。他動的な可動域訓練は炎症が落ち着いてから行うべきであり、不適切である。

関節リウマチのリハビリテーションの原則

・炎症活動期:局所安静(スプリント・装具で良肢位保持)、疼痛のない範囲での自動運動・等尺性筋収縮訓練、関節保護手技の指導。温熱療法は炎症を強めるおそれがあるため、急性炎症の強い関節には用いず、必要なら寒冷療法を考える。 ・非活動期(寛解期):関節可動域訓練、筋力強化訓練、歩行訓練、温熱療法などを積極的に行う。 ・全病期:関節保護手技や、自助具・装具の活用、生活環境の整備(椅子・ベッド生活、洋式トイレ、手すり)などの作業療法的な指導が重要である。

関節保護の具体例

・物を持つときは指先でつまむのではなく、手のひら全体や前腕で支える。 ・ドアノブや蛇口はレバー式にする、瓶のふたはオープナーを使うなど、手指への捻じる力を減らす。 ・太い柄のスプーンやペンを使い、強く握り込まなくてもよいようにする。 ・重い物は台車を使うなど、関節への荷重を分散する。

RAで生じやすい変形

手指の尺側偏位、スワンネック変形、ボタン穴変形、母指Z変形などがあり、関節保護手技はこれらの変形の進行予防も目的としている。

POINT

・RAの炎症活動期は関節破壊が進行しやすく、罹患関節の安静が基本である。 ・活動期に荷重運動(速歩、床からの立ち上がり)や他動的可動域訓練は行わない。可動域維持は痛みのない範囲の自動運動や等尺性運動で行う。 ・関節保護手技の指導は病期を問わず重要である。 ・炎症が落ち着いたら関節可動域訓練・筋力強化訓練を段階的に進める。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。