StudyMed医師国家試験

眉・頬・あごが語るホルモン異常―顔貌から先端巨大症と成長ホルモンを読み解く

第105回医師国家試験 E問題 第28問

国試問題にチャレンジ

第105回 E問題 第28問

顔面の写真を別に示す。  この疾患で異常値となるのはどれか。

第105回 E問題 第28問の問題画像
  1. a.成長ホルモン
  2. b.抗利尿ホルモン
  3. c.黄体形成ホルモン
  4. d.甲状腺刺激ホルモン
  5. e.副腎皮質刺激ホルモン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は顔写真1枚から内分泌疾患を推定して、どのホルモンが異常になるかを答える問題だ。注目してほしいのは「顔のどの部分が、どう変わっているか」。単に太っている、むくんでいる、ではなく、骨格そのものが変わっているかどうかがカギになるよ。
医学生医学生
眉の上の骨がせり出して、下あごも前に出ていて、鼻や唇が厚ぼったい印象です。骨と軟部組織の両方が大きくなっている感じがします。
ドクタードクター
よく観察できているね。眉弓部・頬骨・下顎の突出に、鼻や口唇の肥大。これは先端巨大症に特有の顔貌なんだ。では、この病気の原因になるホルモンは何だろう。
医学生医学生
内分泌の講義で、成長ホルモンの過剰と習いました。でも成人なら身長はもう伸びないですよね。
ドクタードクター
そこが大事なポイント。骨端線が閉じる前に成長ホルモン、つまりGHが過剰になると身長がどんどん伸びて下垂体性巨人症になる。閉じた後だと縦には伸びないから、骨の膜性骨化や軟部組織の肥厚が進んで、顔貌の変化や手足の肥大として現れるんだ。原因の大部分は下垂体のGH産生腺腫だよ。
医学生医学生
GHが直接骨を大きくするんですか。
ドクタードクター
主役はむしろIGF-1だね。GHが肝臓などに働いてインスリン様成長因子-1、IGF-1をつくらせ、それが骨・軟骨・軟部組織の増殖を促す。だから正解は成長ホルモンで、この疾患では高値になる。ただGHは脈動的に分泌されるから、1回測っただけでは評価しにくい。
医学生医学生
だから診断ではブドウ糖負荷試験をするんでしたね。CBTの勉強で、普通は血糖が上がるとGHが抑制される、と覚えました。
ドクタードクター
その通り。75g経口ブドウ糖負荷試験でGHが正常のように抑制されないこと、そしてGHの作用を反映するIGF-1が年齢・性別の基準範囲より高いことを確認する。MRIで下垂体腺腫も確認しよう。では他の選択肢も見ていこう。抗利尿ホルモンはどうかな。
医学生医学生
下垂体後葉から出るホルモンで、足りなければ尿崩症、多すぎればSIADHで低ナトリウム血症ですよね。顔つきが変わる病気ではない気がします。
ドクタードクター
正解。水の調節の異常で、特徴的な顔貌変化はない。次は黄体形成ホルモン。実はこれは少しひっかけで、腺腫が大きいと正常下垂体を圧迫したり、高プロラクチン血症を合併したりして、LHなどのゴナドトロピンが下がり月経異常や性機能低下を起こすことがある。
医学生医学生
えっ、それなら異常値になることもあるんですね。
ドクタードクター
そう、ただしあくまで二次的な変化で、この疾患を特徴づける異常値ではない。設問は「この疾患で異常値となる」代表的なホルモンを聞いているから、GHを選ぶのが筋だよ。甲状腺刺激ホルモンと副腎皮質刺激ホルモンはどうだろう。
医学生医学生
内分泌の病気には顔貌でわかるものが多いですよね。甲状腺機能低下症だと顔がむくんで眉毛の外側が抜ける、Cushing病だと満月様顔貌でした。
ドクタードクター
よく整理できているね。Basedow病なら眼球突出や眼裂開大、Addison病ならACTH上昇に伴う皮膚や口腔粘膜の色素沈着。どれも今回のような骨格の突出・肥大とは違う。顔貌を見て責任ホルモンと結びつける練習は国試でも臨床でも役に立つよ。
医学生医学生
内科の実習で、靴のサイズが合わなくなったという患者さんの話を聞きました。それも同じ病気のサインですか。
ドクタードクター
まさにそう。指輪や靴が合わなくなる、発汗過多、頭痛、手根管症候群、睡眠時無呼吸も典型的だ。腺腫が視交叉を圧迫すれば両耳側半盲も起こる。そして臨床で特に大切なのが合併症。GHにはインスリン拮抗作用があるから耐糖能異常や糖尿病、それに高血圧や心肥大、大腸ポリープ・大腸癌も多く、これらが生命予後を左右するんだ。
医学生医学生
治療は手術でしょうか。
ドクタードクター
第一選択は鼻腔から到達する経蝶形骨洞手術だ。取り切れない場合や手術が難しい場合は、ソマトスタチンアナログ、GH受容体拮抗薬のペグビソマント、ドパミン作動薬などの薬物療法や放射線療法を組み合わせる。顔貌の変化はゆっくり進むから、本人も家族も気づきにくい。昔の写真と見比べてみるのが診断のきっかけになることもあるよ。

まとめ

眉弓部・頬骨・下顎の突出、鼻や口唇の肥大といった顔貌は先端巨大症に特徴的で、骨端線閉鎖後に成長ホルモン(GH)が過剰分泌されることで生じ、原因の大部分は下垂体GH産生腺腫です。GHはIGF-1を介して骨・軟部組織を増殖させ、診断では血中GH・IGF-1の高値と、75g経口ブドウ糖負荷試験でGHが抑制されないことを確認します。LHなどの低下は腺腫の圧迫による二次的変化であり、抗利尿ホルモン、TSH、ACTHの異常はそれぞれ尿崩症・SIADH、甲状腺疾患、Cushing病・Addison病など別の顔貌や病態と結びつきます。治療は経蝶形骨洞手術が第一選択で、糖尿病・高血圧・心疾患・大腸腫瘍といった合併症の管理も予後に直結します。内分泌疾患の特徴的顔貌を責任ホルモンと対応させて覚えることは、外来での気づきと早期診断につながります。

解答・解説

正解はaです

問題の整理

顔面の写真のみが示され、そこから疾患を推定して、異常値を示すホルモンを答える問題である。提示された顔貌は、眉弓部(眉の上の骨の張り出し)・頬骨・下顎の突出、鼻や口唇の肥大といった、顔の骨格と軟部組織が全体に大きく粗くなった特徴をもつ。これは先端巨大症に特有の顔貌(先端巨大症様顔貌)である。

考え方

先端巨大症は、骨端線が閉じた成人で成長ホルモン(GH:growth hormone)が過剰に分泌されることにより起こる。原因の大部分は下垂体のGH産生腺腫である。過剰なGHは肝臓などでインスリン様成長因子-1(IGF-1:insulin-like growth factor-1)の産生を促し、IGF-1が骨・軟骨・軟部組織の増殖を引き起こす。骨端線が閉じた後なので身長は伸びず、骨の膜性骨化や軟部組織の肥厚によって顔貌の変化や手足の肥大が生じる(骨端線閉鎖前に発症すると高身長となり、下垂体性巨人症と呼ばれる)。 したがって、この疾患で異常(高値)を示す代表的なホルモンは成長ホルモンである。内分泌疾患には特徴的な顔貌を示すものが多く、顔貌から疾患と責任ホルモンを結びつけられるようにしておくことが重要である。

選択肢考察

  1. ○a.  成長ホルモン

    先端巨大症はGHの過剰分泌によって生じ、血中GHは高値となる。GHは脈動的に分泌され単回測定では評価しにくいため、診断では75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)でGHが正常のように抑制されないこと(奇異性上昇を示すこともある)と、GHの作用を反映するIGF-1が年齢・性別の基準範囲を超えて高値であることを確認する。写真の眉弓部・頬骨・下顎の突出、鼻や口唇の肥大はGH・IGF-1過剰による典型的な変化であり、正しい。

  2. ×b.  抗利尿ホルモン

    抗利尿ホルモン(ADH、バソプレシン)は下垂体後葉から分泌され、腎集合管での水再吸収を促す。分泌不足で中枢性尿崩症(多尿・口渇)、過剰で抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH:低Na血症)となるが、いずれも特徴的な顔貌変化は起こさない。先端巨大症で異常値となる代表的なホルモンではなく誤りである。

  3. ×c.  黄体形成ホルモン

    黄体形成ホルモン(LH)は性腺機能を調節する下垂体前葉ホルモンであり、その異常で本問のような顔貌変化は生じない。なお、先端巨大症の原因となる下垂体腺腫が大きいと正常下垂体を圧迫したり、合併する高プロラクチン血症の影響を受けたりして、LHなどのゴナドトロピンが低下し月経異常や性機能低下をきたすことがある。しかしこれは二次的な変化であり、この疾患を特徴づける異常値はGHである。

  4. ×d.  甲状腺刺激ホルモン

    甲状腺刺激ホルモン(TSH)の異常を伴う甲状腺疾患にも特徴的な顔貌がある。原発性甲状腺機能低下症(TSH高値)では眼瞼や顔面の粘液水腫性浮腫、眉毛外側の脱落、無表情な顔つきがみられ、Basedow病(TSH低値)では眼球突出や眼裂開大がみられる。しかし、いずれも骨格の肥大を伴う写真の顔貌とは異なり、誤りである。

  5. ×e.  副腎皮質刺激ホルモン

    副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の過剰(Cushing病など)ではコルチゾール過剰により顔に脂肪が沈着し、丸く赤ら顔の満月様顔貌となる。一方、Addison病(原発性慢性副腎皮質機能低下症)ではコルチゾール低下に反応してACTHが上昇し、皮膚や口腔粘膜の色素沈着がみられる。いずれも写真のような骨格の突出・肥大とは異なるので誤りである。

先端巨大症の主な症候

・顔貌の変化:眉弓部・頬骨・下顎の突出(下顎前突による咬合不全)、鼻・口唇の肥大、巨大舌 ・四肢末端の肥大:手足の容積の増大(指輪や靴のサイズが合わなくなる) ・その他:発汗過多、頭痛、手根管症候群、睡眠時無呼吸症候群、変形性関節症 ・腫瘍の圧迫による症状:両耳側半盲などの視野障害、他の下垂体ホルモンの低下 ・合併症:耐糖能異常・糖尿病(GHにはインスリン拮抗作用がある)、高血圧、心肥大・心筋症、大腸ポリープ・大腸癌。これらが生命予後を左右する。

診断

・血中GH高値とIGF-1高値(年齢・性別の基準範囲に照らして評価) ・75g OGTTでGHが正常域まで抑制されない ・MRIで下垂体腺腫を確認する

治療

第一選択は経蝶形骨洞手術(鼻腔を経由して下垂体腺腫を摘出する手術)である。手術で治癒しない場合や手術困難例には、ソマトスタチンアナログ(オクトレオチド、ランレオチドなど)、GH受容体拮抗薬(ペグビソマント)、ドパミン作動薬などの薬物療法や放射線療法を行う。

内分泌疾患と特徴的な顔貌

・先端巨大症:眉弓部・下顎の突出、鼻・口唇の肥大(GH過剰) ・Cushing症候群:満月様顔貌、赤ら顔(コルチゾール過剰) ・甲状腺機能低下症:顔面浮腫、眉毛外側の脱落、無表情 ・Basedow病:眼球突出、眼裂開大 ・偽性副甲状腺機能低下症(Albright遺伝性骨異栄養症を伴う型):円形顔貌、低身長、第4・5中手骨の短縮

POINT

・眉弓部・頬骨・下顎の突出、鼻・口唇の肥大 → 先端巨大症 → GH過剰(大部分は下垂体GH産生腺腫)。 ・診断ではGH・IGF-1高値と、75g OGTTでGHが抑制されないことを確認する。 ・糖尿病・高血圧・心疾患・大腸腫瘍などの合併症に注意する。 ・内分泌疾患の特徴的顔貌(満月様顔貌、粘液水腫顔貌、眼球突出など)を責任ホルモンと対応させて整理しておく。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。