StudyMed医師国家試験

入れ替えられた「らしさ」を見抜け―原発性免疫不全症候群の決め手となる所見

第105回医師国家試験 D問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第105回 D問題 第15問

原発性免疫不全症候群と所見の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.慢性肉芽腫症 ―― 好中球遊走能低下
  2. b.DiGeorge症候群 ―― 新生児テタニー
  3. c.Wiskott-Aldrich症候群 ―― 運動失調
  4. d.Chédiak-Higashi症候群 ―― ペルオキシダーゼ陽性巨大顆粒
  5. e.X連鎖無ガンマグロブリン血症 ―― アデノシンデアミナーゼ欠損

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、原発性免疫不全症候群の代表的な疾患と、その病気らしさを示す所見を結びつける問題だ。紛らわしい疾患の所見がわざと入れ替えて並べてあるから、「その所見は本来どの疾患のものか」を一つずつ確かめるのがコツになる。まず、原発性免疫不全症をどう整理して覚えている?
医学生医学生
免疫学の講義では、障害される細胞ごとに分けると習いました。好中球、B細胞、T細胞、それからT細胞とB細胞の両方、という分け方です。
ドクタードクター
その整理が一番使える。好中球の異常に慢性肉芽腫症やChédiak-Higashi症候群、B細胞の異常にX連鎖無ガンマグロブリン血症、T細胞の異常にDiGeorge症候群、両方の異常に重症複合免疫不全症やWiskott-Aldrich症候群が入る。そこに、免疫不全以外の随伴所見を重ねて覚えるんだ。では慢性肉芽腫症から。好中球の遊走能低下、で合っているかな。
医学生医学生
好中球の病気なので、動きも悪くなりそうな気がします。
ドクタードクター
そこが引っかけだね。慢性肉芽腫症はNADPHオキシダーゼの異常で、活性酸素を作れない病気だ。好中球は感染部位にちゃんと遊走し、菌も正常に貪食できる。ところが、取り込んだ菌を殺せない。障害されているのは殺菌能で、遊走能は保たれているんだ。
医学生医学生
だからカタラーゼ陽性菌に弱いんですね。菌が自分の過酸化水素を分解してしまうから、宿主はそれを借りて殺菌することもできない。
ドクタードクター
その理解で正しい。黄色ブドウ球菌やSerratia、Aspergillusなどに重い感染を繰り返し、肉芽腫を作る。診断にはNBT還元試験やDHR試験を使う。好中球の働きは遊走、貪食、殺菌の3段階で考えると、どこが壊れているか整理しやすいよ。
医学生医学生
次はDiGeorge症候群と新生児テタニーですね。小児科実習で22q11.2欠失のお子さんを担当したとき、新生児期に低カルシウム血症で痙攣したと聞きました。
ドクタードクター
まさにその通りで、これは正しい組合せだ。DiGeorge症候群では第3・第4咽頭嚢の発生が障害される。第3咽頭嚢からは胸腺と下副甲状腺、第4咽頭嚢からは上副甲状腺ができるから、胸腺低形成によるT細胞減少と、副甲状腺低形成による低カルシウム血症が同時に起こる。神経や筋の興奮性が高まって、テタニーや痙攣として見つかることが多いんだ。
医学生医学生
心奇形や口蓋裂もあって、CATCH22と覚えました。
ドクタードクター
いいね。円錐動脈幹の異常、つまりFallot四徴症や大動脈弓離断などが代表的だ。では、Wiskott-Aldrich症候群と運動失調はどうだろう。
医学生医学生
運動失調というと、毛細血管拡張性運動失調症の方だった気がします。名前に入っていますし。
ドクタードクター
正解。Wiskott-Aldrich症候群はX連鎖劣性で男児に起こり、三主徴は湿疹、小型血小板を伴う血小板減少、易感染性だ。IgMが低くIgAやIgEが高いことが多い。運動失調を伴うのは毛細血管拡張性運動失調症で、ATM遺伝子の異常により小脳失調、眼球結膜の毛細血管拡張、IgAやIgG2の低下、AFP高値などを示す。
医学生医学生
Chédiak-Higashi症候群の巨大顆粒は、血液学の実習で末梢血スメアの写真を見た記憶があります。
ドクタードクター
それが本症で最も特徴的な所見で、この組合せも正しい。LYST遺伝子の異常でリソソーム関連の顆粒が融合して巨大化し、好中球などにペルオキシダーゼ陽性の巨大顆粒が見える。顆粒の中身を貪食胞にうまく届けられないから殺菌能が落ち、遊走能も低下する。メラノソームも異常になるので部分白子症を伴うのも特徴だ。
医学生医学生
最後のX連鎖無ガンマグロブリン血症とアデノシンデアミナーゼ欠損は、どちらもB細胞に関係しそうで紛らわしいです。
ドクタードクター
ここも入れ替えだね。X連鎖無ガンマグロブリン血症の原因はBTKの異常で、プレB細胞から成熟B細胞への分化が止まり、すべての免疫グロブリンが低下する。T細胞は正常だ。母親由来のIgGが減る生後6か月頃から細菌感染を繰り返す。一方、ADA欠損は重症複合免疫不全症の原因の一つで、プリン代謝の中間産物がリンパ球に溜まって、T細胞・B細胞・NK細胞がそろって減ってしまう。
医学生医学生
つまり、正しいのはDiGeorge症候群と新生児テタニー、Chédiak-Higashi症候群と巨大顆粒の2つですね。ほかの3つは、遊走能低下はChédiak-Higashi側、運動失調は毛細血管拡張性運動失調症、ADA欠損はSCIDと、別の疾患の所見だった。
ドクタードクター
完璧な整理だ。臨床的な発展も少し話そう。Chédiak-Higashi症候群は経過中に血球貪食性リンパ組織球症に似た促進期に移行することがあり、根治には造血幹細胞移植が必要になる。SCIDも乳児期早期から重い感染を起こし、移植が治療の柱だ。ADA欠損症では酵素補充療法や遺伝子治療という選択肢もある。
医学生医学生
X連鎖無ガンマグロブリン血症は、免疫グロブリンの補充でしたね。
ドクタードクター
そう、定期的な免疫グロブリン補充が基本になる。それから臨床で大事なのは、乳児期から重症感染や反復感染、特殊な病原体による感染が続く子どもを見たら、免疫不全を疑う視点を持つことだ。易感染性に加えて、湿疹や血小板減少、低カルシウム血症、色素の薄さといった随伴所見が診断の大きな手がかりになるよ。

まとめ

原発性免疫不全症候群は、好中球・B細胞・T細胞・T細胞とB細胞の両方、という障害部位ごとに整理し、各疾患に特有の随伴所見を重ねて覚えると混乱しにくくなります。DiGeorge症候群は第3・第4咽頭嚢の発生異常で胸腺と副甲状腺が低形成となり、低カルシウム血症による新生児テタニーを起こします。Chédiak-Higashi症候群ではペルオキシダーゼ陽性の巨大顆粒、部分白子症、殺菌能と遊走能の低下がみられます。一方、慢性肉芽腫症は遊走能が保たれ殺菌能が低下する疾患で、運動失調は毛細血管拡張性運動失調症、ADA欠損はSCIDの原因であり、X連鎖無ガンマグロブリン血症はBTK異常によるB細胞欠損です。反復感染に加えて随伴所見に気づけることが、早期診断と移植や補充療法などの適切な治療につながります。

解答・解説

正解はb, dです

原発性免疫不全症候群(先天的な遺伝子異常によって免疫系のどこかが働かなくなる疾患群)について、代表的な疾患とその特徴的な所見を正しく結びつけられるかを問う問題である。 原発性免疫不全症は、障害される免疫の担い手ごとに整理すると覚えやすい。 ・好中球(食細胞)の異常:慢性肉芽腫症、Chédiak-Higashi症候群、白血球接着不全症など ・B細胞(液性免疫・抗体産生)の異常:X連鎖無ガンマグロブリン血症など ・T細胞(細胞性免疫)の異常:DiGeorge症候群など ・T細胞とB細胞の両方の異常:重症複合免疫不全症(SCID)、Wiskott-Aldrich症候群、毛細血管拡張性運動失調症など さらに各疾患には、免疫不全以外に「その病気らしさ」を示す随伴所見がある。DiGeorge症候群の低カルシウム血症、Chédiak-Higashi症候群の巨大顆粒と部分白子症、Wiskott-Aldrich症候群の湿疹と血小板減少、毛細血管拡張性運動失調症の小脳失調などである。本問では、よく似た名前や似た病態の疾患の所見が入れ替えて並べられており、それぞれの所見が本来どの疾患のものかを見抜くことが解答の鍵となる。

選択肢考察

  1. ×a.  慢性肉芽腫症 ―― 好中球遊走能低下

    誤り。慢性肉芽腫症(CGD)は、食細胞の NADPH オキシダーゼ(活性酸素を作る酵素複合体)の構成蛋白に遺伝子異常があり、スーパーオキシドや過酸化水素などの活性酸素を産生できない疾患である。好中球は感染部位へ正常に遊走し、細菌を正常に貪食できるが、貪食した菌を殺菌できない。つまり障害されているのは「殺菌能」であり、「遊走能」は保たれている。 自らカタラーゼを持つ菌(黄色ブドウ球菌、Serratia、Burkholderia、Aspergillus などの真菌)は、菌自身が作る過酸化水素を分解してしまうため、宿主が活性酸素を作れないと殺菌が成立せず、重い感染や肉芽腫形成を繰り返す。診断には NBT(ニトロブルーテトラゾリウム)還元試験や、フローサイトメトリーによる DHR(ジヒドロローダミン)試験が用いられる。好中球の遊走能が低下する代表的疾患は、白血球接着不全症や Chédiak-Higashi 症候群である。

  2. ○b.  DiGeorge症候群 ―― 新生児テタニー

    正しい。DiGeorge症候群は、多くが染色体 22q11.2 領域の微細欠失によって起こり、胎生期の第3・第4咽頭嚢の発生が障害される。第3咽頭嚢からは胸腺と下副甲状腺が、第4咽頭嚢からは上副甲状腺が生じるため、胸腺低形成(T細胞の減少による細胞性免疫不全)と副甲状腺低形成が同時に起こる。 副甲状腺ホルモン(PTH)が不足すると低カルシウム血症となり、神経・筋の興奮性が高まって、新生児期にテタニー(手足のけいれん性の筋収縮)や痙攣として発症することが多い。したがって、新生児テタニーは DiGeorge 症候群を疑うきっかけとなる代表的所見である。

  3. ×c.  Wiskott-Aldrich症候群 ―― 運動失調

    誤り。Wiskott-Aldrich症候群(WAS)は WAS 遺伝子の異常による X 連鎖劣性遺伝の疾患で、男児に発症する。三主徴は「湿疹」「血小板減少(血小板が小さいことが特徴)」「易感染性」である。T細胞とB細胞の両方の機能が障害され、血清 IgM の低下と IgA・IgE の上昇がみられることが多い。自己免疫疾患や悪性リンパ腫の合併も多い。運動失調は WAS の所見ではない。 運動失調を伴う免疫不全症は、毛細血管拡張性運動失調症(ataxia-telangiectasia、Louis-Bar 症候群)である。この疾患は、小脳性の運動失調、眼球結膜などの毛細血管拡張、IgA や IgG2 の低下を特徴とする。

  4. ○d.  Chédiak-Higashi症候群 ―― ペルオキシダーゼ陽性巨大顆粒

    正しい。Chédiak-Higashi症候群は、リソソームへの蛋白輸送を調節する LYST 遺伝子の異常による常染色体劣性遺伝の疾患である。リソソームやそれに関連する顆粒が異常に融合して巨大化するため、好中球などの細胞質内にペルオキシダーゼ陽性の巨大顆粒がみられる。これが本症の最も特徴的な検査所見である。 好中球は細菌を貪食できるが、顆粒の内容物を貪食胞へうまく送り込めないため殺菌能が低下する。好中球の遊走能も低下する。メラノソーム(メラニン色素を作る顆粒)も異常になるため、部分白子症(皮膚・毛髪・眼の色素が薄い状態)を伴う。NK細胞の機能低下、出血傾向、末梢神経障害などもみられる。経過中に血球貪食性リンパ組織球症に似た「促進期」に移行することがあり、根治には造血幹細胞移植が必要である。

  5. ×e.  X連鎖無ガンマグロブリン血症 ―― アデノシンデアミナーゼ欠損

    誤り。X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA、Bruton 型無ガンマグロブリン血症)の原因は、B細胞の分化に必要な Bruton 型チロシンキナーゼ(BTK)の遺伝子異常である。プレB細胞から成熟B細胞への分化が止まるため、末梢血の成熟B細胞がほとんどなく、すべてのクラスの免疫グロブリンが著しく低下する。T細胞は正常である。母体から移行した IgG が減る生後6か月頃から、肺炎球菌やインフルエンザ菌などによる細菌感染を繰り返す。治療は免疫グロブリンの定期補充である。 アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損は、常染色体劣性遺伝の重症複合免疫不全症(SCID)の原因の一つである。ADA が欠けると、プリン代謝の中間産物(デオキシアデノシンや dATP)がリンパ球内に蓄積してリンパ球を傷害し、T細胞・B細胞・NK細胞がいずれも減少する。

主な原発性免疫不全症の整理

・重症複合免疫不全症(SCID):T細胞の分化が障害され、B細胞機能も失われる。原因は X 連鎖の共通γ鎖(IL-2 受容体γ鎖)異常が最多で、ADA 欠損、RAG1/2 異常などがある。乳児期早期から重症感染症を起こし、造血幹細胞移植が必要である。ADA 欠損症では酵素補充療法や遺伝子治療も行われる。 ・DiGeorge症候群:22q11.2 欠失症候群。心奇形(Fallot 四徴症、大動脈弓離断、総動脈幹症などの円錐動脈幹異常)、特異顔貌、胸腺低形成、口蓋裂、低カルシウム血症を合併する。これらの頭文字から CATCH22 と覚えられる。 ・X連鎖無ガンマグロブリン血症:BTK 異常。成熟B細胞が欠如し、すべての免疫グロブリンが低下する。細菌感染のほか、エンテロウイルス感染が重症化しやすい。 ・Wiskott-Aldrich症候群:X 連鎖劣性。湿疹、小型血小板を伴う血小板減少、易感染性が三主徴。IgM 低下、IgA・IgE 上昇。 ・毛細血管拡張性運動失調症:ATM 遺伝子異常(常染色体劣性)。小脳失調、毛細血管拡張、IgA・IgG2 低下、血清 AFP 高値、放射線への高感受性、悪性腫瘍の高率な合併がみられる。 ・慢性肉芽腫症:NADPH オキシダーゼ異常。X 連鎖型(gp91phox をコードする CYBB 遺伝子の異常)が最多。殺菌能が低下するが、遊走能・貪食能は正常である。NBT 試験・DHR 試験で診断する。 ・Chédiak-Higashi症候群:LYST 異常(常染色体劣性)。巨大顆粒、部分白子症、殺菌能と遊走能の低下、NK 細胞機能低下を示す。 ・白血球接着不全症:CD18(β2 インテグリン)などの異常により好中球が血管外へ出られず、遊走能が低下する。臍帯脱落遅延、膿を作らない感染症、著明な好中球増多が特徴である。

好中球機能の段階と障害疾患

遊走(感染部位へ移動)→ 貪食(菌を取り込む)→ 殺菌(活性酸素や顆粒の酵素で殺す)の順に進む。 ・遊走の障害:白血球接着不全症、Chédiak-Higashi症候群、高 IgE 症候群など ・殺菌の障害:慢性肉芽腫症(活性酸素が作れない)、Chédiak-Higashi症候群(顆粒の機能異常)、ミエロペルオキシダーゼ欠損症(多くは無症状)

POINT

・DiGeorge症候群:第3・第4咽頭嚢の発生異常 → 胸腺低形成(T細胞減少)+副甲状腺低形成(低カルシウム血症・新生児テタニー)。22q11.2 欠失。 ・Chédiak-Higashi症候群:ペルオキシダーゼ陽性巨大顆粒、部分白子症、殺菌能・遊走能の低下。 ・慢性肉芽腫症:殺菌能が低下するが、遊走能・貪食能は正常。カタラーゼ陽性菌・真菌に易感染性。 ・運動失調を伴う免疫不全は毛細血管拡張性運動失調症であり、Wiskott-Aldrich症候群ではない(WAS は湿疹・血小板減少・易感染性)。 ・ADA 欠損は SCID の原因。XLA は BTK 異常による B 細胞欠損。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。