StudyMed医師国家試験

食べられるのに殺せない―好中球の異常で起こる慢性肉芽腫症

第109回医師国家試験 B問題 第16問

国試問題にチャレンジ

第109回 B問題 第16問

好中球の異常によるのはどれか。

  1. a.慢性肉芽腫症
  2. b.DiGeorge症候群
  3. c.毛細血管拡張性失調症
  4. d.Wiskott-Aldrich症候群
  5. e.X連鎖無ガンマグロブリン血症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、原発性免疫不全症を「免疫のどの担い手が壊れているか」で分類できるかを問う問題だ。食細胞、T細胞、B細胞、補体という4つの柱を思い浮かべて、各疾患をそこに振り分けていこう。まず、好中球の役割は何だったかな。
医学生医学生
細菌や真菌を貪食して殺菌する、食細胞の代表ですよね。
ドクタードクター
その通り。好中球やマクロファージは病原体を取り込んだあと、細胞内で活性酸素を使って殺菌する。この殺菌のしくみに欠陥があるのが慢性肉芽腫症だ。
医学生医学生
名前に「肉芽腫」と付いているので、結核のようなT細胞の病気かと思っていました。
ドクタードクター
そう勘違いしやすいね。慢性肉芽腫症は、食細胞のNADPHオキシダーゼの構成分子が遺伝的に欠損していて、スーパーオキシドや過酸化水素などの活性酸素を作れない。貪食はできるのに中で殺せないから、処理しきれない病原体を囲い込むように肉芽腫ができるんだ。
医学生医学生
食べられるのに消化できない、というイメージですね。どんな菌に弱くなるんですか。
ドクタードクター
黄色ブドウ球菌などのカタラーゼ陽性菌と、アスペルギルスなどの真菌だ。カタラーゼ陽性菌は自分が作る過酸化水素を分解してしまうので、食細胞が菌由来の過酸化水素を利用できず殺菌できない、と理解しておくといい。だから好中球の異常による疾患として、慢性肉芽腫症が正解になる。
医学生医学生
DiGeorge症候群は、22q11.2欠失で胸腺ができにくい病気でしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。第3・第4咽頭嚢由来の組織の発生が障害されて、胸腺低形成によるT細胞の分化障害、つまり細胞性免疫不全が起こる。副甲状腺の低形成による低カルシウム血症でのテタニーや、円錐動脈幹異常などの先天性心疾患も伴う。
医学生医学生
発生学の講義で咽頭嚢の由来を覚えさせられたのが、ここでつながりました。
ドクタードクター
基礎の知識が臨床で生きる好例だね。では毛細血管拡張性失調症はどうだろう。
医学生医学生
神経内科の講義で、小脳失調と眼球結膜の毛細血管拡張が出てくる病気として習いました。免疫はどこが障害されるんでしょう。
ドクタードクター
DNA修復に関わるATM遺伝子の異常による常染色体劣性遺伝疾患で、T細胞機能低下とIgAやIgG2の低下が起こる。T細胞とB細胞の両方が障害される複合型免疫不全に分類されるんだ。悪性リンパ腫などの悪性腫瘍や放射線高感受性を伴い、血清AFP高値が診断の手がかりになる。
医学生医学生
Wiskott-Aldrich症候群は血小板減少、湿疹、易感染性の三主徴ですね。血小板の病気なら、好中球の異常も含まれそうな気がします。
ドクタードクター
WASPは血球系に広く発現するから迷うのはわかる。でも免疫不全の主体はT細胞機能の障害と抗体産生の異常、特に多糖体抗原への反応低下やIgM低値で、好中球の異常として分類される疾患ではない。小型血小板を伴う血小板減少も特徴だよ。
医学生医学生
X連鎖無ガンマグロブリン血症は、BTKの異常でB細胞が成熟できない病気だったと思います。
ドクタードクター
正解。末梢血B細胞がほぼ欠如し、すべての免疫グロブリンが著減する。母体由来のIgGが減る生後数か月以降に、肺炎球菌やインフルエンザ菌などの莢膜をもつ化膿菌で反復感染を起こすのが典型だ。
医学生医学生
障害部位ごとにかかりやすい病原体が違うんですね。T細胞ならウイルスやカンジダ、ニューモシスチス、B細胞なら化膿菌、食細胞ならカタラーゼ陽性菌と真菌、という整理でいいでしょうか。
ドクタードクター
その整理でばっちりだ。後期補体欠損なら髄膜炎菌などのナイセリア属も加えておこう。発展として、食細胞の異常にはほかに、CD18の異常で好中球が組織へ遊走できない白血球接着不全症や、巨大顆粒と部分白子症を伴うChédiak-Higashi症候群もある。慢性肉芽腫症の診断では、DHR試験やNBT還元試験で好中球の活性酸素産生能を評価する。
医学生医学生
治療はどうするんですか。
ドクタードクター
ST合剤や抗真菌薬の予防投与、インターフェロンγ投与が行われ、根治的には造血幹細胞移植が選択肢になる。遺伝形式は約3分の2がX連鎖のgp91phox異常で、残りは常染色体劣性だ。臨床では、ブドウ球菌の深部膿瘍やアスペルギルス感染を繰り返す子どもを診たら、食細胞機能の異常を一度は考えることが大切だよ。

まとめ

原発性免疫不全症は、食細胞・T細胞・B細胞・補体のどこが障害されるかで分類すると整理しやすくなります。慢性肉芽腫症は好中球やマクロファージのNADPHオキシダーゼ異常により活性酸素を産生できず、貪食した病原体を殺菌できないため、カタラーゼ陽性菌や真菌による反復感染と肉芽腫形成をきたす食細胞の異常です。DiGeorge症候群は胸腺低形成によるT細胞異常、毛細血管拡張性失調症とWiskott-Aldrich症候群はT・B両方が障害される複合型免疫不全、X連鎖無ガンマグロブリン血症はBTK異常によるB細胞欠如です。障害部位とかかりやすい病原体の対応を押さえておくと、反復感染の患者を前にしたときに、どの免疫系を調べるべきかを素早く判断できます。

解答・解説

正解はaです

原発性免疫不全症(生まれつき免疫系の一部に欠陥がある疾患群)を、障害される免疫の担い手ごとに分類できるかを問う問題である。 免疫系の構成要素は大きく次のように整理できる。 ・食細胞系:好中球・単球/マクロファージ。細菌や真菌を貪食して殺菌する。 ・細胞性免疫:T細胞が中心。ウイルス・真菌・細胞内寄生菌への防御を担う。 ・液性免疫:B細胞とそこから産生される抗体(免疫グロブリン)。化膿菌などへの防御を担う。 ・補体系:抗体や病原体表面で活性化し、溶菌やオプソニン化を行う。 選択肢に並ぶ疾患について、「どの細胞・どの分子に異常があるか」を思い浮かべれば、好中球(食細胞)の機能異常に当たるのは慢性肉芽腫症のみであり、他はT細胞、B細胞、あるいはその両方の異常による疾患であると判断できる。

選択肢考察

  1. ○a.  慢性肉芽腫症

    慢性肉芽腫症〈chronic granulomatous disease:CGD〉は、好中球やマクロファージなどの食細胞がもつNADPHオキシダーゼの構成分子に遺伝的欠損があり、スーパーオキシドや過酸化水素などの活性酸素を産生できない疾患である。食細胞は細菌を貪食することはできるが、細胞内で殺菌できないため、カタラーゼ陽性菌(黄色ブドウ球菌など)や真菌(アスペルギルスなど)による重症・反復感染と、処理しきれない病原体を囲い込む肉芽腫形成をきたす。まさに好中球の殺菌機能異常による疾患であり、正解である。

  2. ×b.  DiGeorge症候群

    DiGeorge症候群は、多くが染色体22q11.2の微細欠失によって胎生期の第3・第4咽頭嚢(鰓弓)由来組織の発生が障害される疾患である。胸腺の低形成によりT細胞の分化・成熟が障害され、細胞性免疫不全をきたす。副甲状腺の低形成による低カルシウム血症(テタニー)、円錐動脈幹異常などの先天性心疾患、特徴的顔貌を伴う。障害されるのはT細胞であり、好中球の異常ではない。

  3. ×c.  毛細血管拡張性失調症

    毛細血管拡張性失調症〈ataxia telangiectasia〉は、DNA損傷の検知・修復に関わるATM遺伝子の異常による常染色体劣性遺伝疾患である。小脳失調(幼児期から進行)、眼球結膜や皮膚の毛細血管拡張、易感染性を特徴とし、悪性リンパ腫などの悪性腫瘍や放射線高感受性も伴う。免疫面では胸腺低形成によるT細胞機能低下と、IgA・IgG2などの低下による液性免疫の障害がみられ、T細胞・B細胞双方の異常による複合型免疫不全に分類される。好中球の異常ではない。なお血清AFP(α-フェトプロテイン)高値が診断の手がかりとなる。

  4. ×d.  Wiskott-Aldrich症候群

    Wiskott-Aldrich症候群は、細胞骨格(アクチン重合)の制御に関わるWASPをコードする遺伝子の異常によるX連鎖劣性遺伝疾患である。血小板減少(小型血小板を伴う)、湿疹、易感染性が三主徴である。WASPは血球系細胞に広く発現するが、免疫不全の主体はT細胞機能の障害と抗体産生の異常(特に多糖体抗原に対する反応低下、IgM低値)であり、好中球の異常によって分類される疾患ではない。

  5. ×e.  X連鎖無ガンマグロブリン血症

    X連鎖無ガンマグロブリン血症〈Bruton型無γグロブリン血症〉は、B細胞の分化・成熟に必須のブルトン型チロシンキナーゼ〈BTK〉の遺伝子変異による疾患である。プレB細胞から成熟B細胞への分化が止まるため末梢血B細胞がほぼ欠如し、IgG・IgA・IgMすべての免疫グロブリンが著減する。母体由来IgGが減少する生後数か月以降に、肺炎球菌やインフルエンザ菌などの化膿菌による反復感染で発症する。液性免疫(B細胞)の異常であり、好中球の異常ではない。

原発性免疫不全症の分類と代表疾患

・食細胞の異常:慢性肉芽腫症(活性酸素産生障害)、白血球接着不全症(接着分子CD18の異常で好中球が組織へ遊走できない)、Chédiak-Higashi症候群(巨大顆粒、部分白子症)、重症先天性好中球減少症など ・細胞性免疫(T細胞)の異常:DiGeorge症候群 ・液性免疫(B細胞・抗体)の異常:X連鎖無ガンマグロブリン血症、分類不能型免疫不全症、選択的IgA欠損症など ・複合型免疫不全(T・B両方):重症複合型免疫不全症〈SCID〉、毛細血管拡張性失調症、Wiskott-Aldrich症候群など ・補体の異常:C1インヒビター欠損症(遺伝性血管性浮腫)、後期補体成分(C5〜C9)欠損によるナイセリア感染症など

障害部位と感染しやすい病原体の対応

・食細胞異常:黄色ブドウ球菌などのカタラーゼ陽性菌、アスペルギルスなどの真菌 ・T細胞異常:ウイルス、真菌(カンジダ、ニューモシスチス)、細胞内寄生菌 ・B細胞異常:肺炎球菌・インフルエンザ菌などの莢膜をもつ化膿菌、エンテロウイルス ・後期補体欠損:髄膜炎菌などのナイセリア属

遺伝形式の整理

・X連鎖劣性が多いもの:X連鎖無ガンマグロブリン血症、Wiskott-Aldrich症候群、慢性肉芽腫症(約2/3がX連鎖のgp91phox異常、残りは常染色体劣性)、SCID(最多はX連鎖のγc鎖異常だが常染色体劣性型もある) ・常染色体劣性:毛細血管拡張性失調症 ・DiGeorge症候群:22q11.2欠失の多くは新生突然変異で、遺伝する場合は常染色体優性の形式をとる

慢性肉芽腫症の検査

好中球の活性酸素産生能を、ジヒドロローダミン〈DHR〉試験(フローサイトメトリー)やニトロブルーテトラゾリウム〈NBT〉還元試験で評価する。治療ではST合剤・抗真菌薬の予防投与、インターフェロンγ投与、根治的には造血幹細胞移植が行われる。

POINT

・慢性肉芽腫症=食細胞(好中球・マクロファージ)のNADPHオキシダーゼ異常→活性酸素が作れず殺菌できない ・DiGeorge症候群=胸腺低形成によるT細胞異常(+低Ca血症・心奇形) ・毛細血管拡張性失調症=ATM異常、T・B両方の障害、小脳失調・毛細血管拡張・AFP高値 ・Wiskott-Aldrich症候群=WASP異常、血小板減少・湿疹・易感染の三主徴 ・X連鎖無ガンマグロブリン血症=BTK異常、B細胞欠如で全免疫グロブリン低下

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。