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星形の血管地図を読み解く―MRAで迷わないWillis動脈輪の見分け方

第105回医師国家試験 B問題 第6問

国試問題にチャレンジ

第105回 B問題 第6問

頭部MRAを別に示す。  矢印で示す血管はどれか。

第105回 B問題 第6問の問題画像
  1. a.椎骨動脈
  2. b.内頸動脈
  3. c.脳底動脈
  4. d.後大脳動脈
  5. e.中大脳動脈

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は頭部MRAで血管の名前を答える問題だ。画像は頭のてっぺんから見下ろした軸位像で、中央にWillis動脈輪が星のような形で写っている。見分けるコツは「位置」と「走る方向」。まず、画像の向きを確認しよう。
医学生医学生
上が顔の側、下が後頭部の側ですよね。左右はCTと同じで、画像の右が患者さんの左でしょうか。
ドクタードクター
その通り。左右の確認は画像を読むときの基本の習慣だ。では、Willis動脈輪を前から順にたどってみよう。前方の正中を前へ並んで走るのは何かな。
医学生医学生
前大脳動脈です。解剖学の講義で、前交通動脈が左右をつないでいると習いました。
ドクタードクター
そう。そして前外側では内頸動脈の終末部から中大脳動脈が分かれて、ほぼ真横、シルビウス裂の方向へ走る。後方の正中には脳底動脈があって、その先端で左右の後大脳動脈に分かれるんだ。矢印は画像の右側、つまり患者の左側で、輪の後方正中から後外側へ伸びる血管を指している。
医学生医学生
後ろの正中から外側へ伸びているので、中大脳動脈かと思いかけました。横に伸びる太い血管というイメージがあったので。
ドクタードクター
そこがよくある迷いどころだね。中大脳動脈は輪の前外側から、ほぼ水平に真横へ出る。一方で矢印の血管は後方正中を起点に、中脳を回り込むように後外側へ向かう。起点の位置も走る方向も違うんだ。
医学生医学生
脳底動脈の先端から分かれて後ろ外側へ走るなら、後大脳動脈ですね。
ドクタードクター
正解。これは左の後大脳動脈だ。後頭葉や側頭葉の内側下面、視床の一部を灌流している。ほかの選択肢も確認しておこう。脳底動脈はどうして違うかな。
医学生医学生
脳底動脈は1本だけで、正中にありますよね。矢印は正中から外れた枝を指しているので違うと思います。
ドクタードクター
その通り。脳底動脈は左右の椎骨動脈が合流してできた1本の血管で、橋の腹側正中を上行する。では椎骨動脈は?
医学生医学生
椎骨動脈は鎖骨下動脈から出て、大後頭孔から入ってくるので、もっと下の方に写るはずです。
ドクタードクター
よく覚えているね。延髄の腹側で合流して脳底動脈になるから、Willis動脈輪よりも尾側にある構造だ。輪から後外側へ伸びる血管とは合わない。内頸動脈はどうだろう。
医学生医学生
内頸動脈は輪の前外側で前大脳動脈と中大脳動脈に分かれるので、後ろではないですね。
ドクタードクター
そう。まとめると、軸位MRAでは前方正中が前大脳動脈、真横が中大脳動脈、後方正中の起点から後外側が後大脳動脈。この3つの走行パターンを頭に入れておけば、多くの画像問題に対応できる。
医学生医学生
脳神経内科を回ったとき、後大脳動脈の梗塞で視野が欠けた患者さんを担当しました。灌流域がわかると症状とつながりますね。
ドクタードクター
いい経験をしたね。後大脳動脈の閉塞では反対側の同名半盲が起こり、黄斑回避を伴うことがある。中大脳動脈なら上肢や顔面優位の片麻痺、優位半球なら失語、前大脳動脈なら下肢優位の麻痺、というふうに、血管と症状を結びつけて覚えておきたい。
医学生医学生
MRAは造影剤を使わないんですよね。脳ドックでよく使われると聞きました。
ドクタードクター
そう。主にTOF法で流れてくる血液の信号を利用するから、造影剤も放射線被曝も不要だ。脳動脈瘤や主幹動脈の狭窄・閉塞のスクリーニングに広く使われている。ただ、乱流や遅い血流では信号が落ちて、狭窄を実際より強く見せることがある点には注意しよう。それから、Willis動脈輪は構成血管の低形成や欠損といったバリエーションが多く、完全な輪をつくる人はむしろ少ないとされる。
医学生医学生
脳動脈瘤が多いのも、前交通動脈や内頸動脈と後交通動脈の分岐部、中大脳動脈の分岐部など、輪のまわりでしたね。
ドクタードクター
その通り。だから血管の名前と位置関係を正確に把握することが、動脈瘤や脳梗塞を診断する第一歩になるんだ。

まとめ

頭部MRAの軸位像では、中央にWillis動脈輪が星形に描出され、前方正中へ走るのが前大脳動脈、前外側から真横へ走るのが中大脳動脈、後方正中の脳底動脈先端から後外側へ走るのが後大脳動脈です。本問の矢印は輪の後方から患者の左後外側へ伸びる血管であり、左後大脳動脈と判断できます。脳底動脈は正中の1本、椎骨動脈はさらに尾側、内頸動脈は輪の前外側に位置する点で区別します。後大脳動脈は後頭葉などを灌流し、閉塞すると対側の同名半盲を生じるなど、血管と灌流域・症状を結びつけて理解することが大切です。MRAは造影剤不要で脳動脈瘤や血管狭窄のスクリーニングに広く用いられており、血管の位置関係を読む力は神経診療の基礎になります。

解答・解説

正解はdです

画像の読み方

提示されているのは頭部MRA(磁気共鳴血管撮影:造影剤を使わずに血流信号から血管像を描出するMRI撮像法)を頭頂側から見下ろした軸位像である。画像の上が前(顔側)、下が後(後頭部側)、向かって左が患者の右、右が患者の左と表示されている。

Willis動脈輪の位置関係

画像中央にはWillis動脈輪(大脳動脈輪)が星形に描出されている。構成を前方から順に整理すると次のようになる。 ・前方正中:左右の前大脳動脈(ACA)が並んで前方へ走る。 ・前外側:左右の内頸動脈(ICA)の終末部から中大脳動脈(MCA)が外側(側頭葉・シルビウス裂方向)へほぼ真横に走る。 ・後方正中:脳底動脈(BA)が下方(尾側)から上行し、その先端(脳底動脈先端部)で左右の後大脳動脈(PCA)に分岐する。 ・PCAは中脳の周囲を回り込むように後外側へ向かい、後頭葉・側頭葉内側下面へ走行する。

矢印の血管

矢印は画像の右側(患者の左側)、Willis動脈輪の後方正中部から後外側へ向かって伸びる血管を指している。脳底動脈の先端から分かれて後頭葉方向へ後外側に走る走行は、左の後大脳動脈に一致する。外側へ真横に走る中大脳動脈とは走行方向が異なり、正中にある脳底動脈とも位置が異なる。

考え方

軸位MRAでは「前方正中=ACA」「真横=MCA」「後方正中の起点から後外側=PCA」という走行方向で見分けるのが基本である。また、左右の表示(画像の右が患者の左)を確認する習慣をつけるとよい。

選択肢考察

  1. ×a.  椎骨動脈

    椎骨動脈は鎖骨下動脈から分岐し、頸椎横突孔を上行して大後頭孔から頭蓋内に入り、延髄の腹側で左右が合流して脳底動脈となる。Willis動脈輪よりも尾側(下方)に位置するため、Willis動脈輪レベルの軸位像では輪の後方正中よりさらに下の構造であり、輪から後外側へ伸びる矢印の血管とは一致しない。

  2. ×b.  内頸動脈

    内頸動脈は頭蓋内では海綿静脈洞を経て、Willis動脈輪の前外側で前大脳動脈と中大脳動脈に分かれる。軸位像では動脈輪の前外側、MCAとACAの分岐部付近に位置し、矢印が示す後外側へ走る血管とは位置が異なる。

  3. ×c.  脳底動脈

    脳底動脈は左右の椎骨動脈が合流してできる1本の血管で、橋の腹側正中を上行する。軸位像ではWillis動脈輪の後方正中に位置し、その先端から左右のPCAが分岐する。矢印は正中ではなく、そこから後外側へ分かれた枝を指しているため脳底動脈ではない。

  4. ○d.  後大脳動脈

    後大脳動脈は脳底動脈の先端から左右に分岐し、後交通動脈を介して内頸動脈系と連絡したのち、中脳(大脳脚)を取り巻くように後外側へ走行して後頭葉・側頭葉内側下面・視床などを灌流する。矢印の血管はWillis動脈輪の後方正中から患者の左後外側へ伸びており、左後大脳動脈の走行に一致する。

  5. ×e.  中大脳動脈

    中大脳動脈は内頸動脈の終末枝で、動脈輪の前外側からほぼ真横(外側)へ向かいシルビウス裂に入り、大脳半球外側面の広範囲を灌流する。画像では輪の前外側から左右に水平に伸びる太い血管がMCAであり、後外側へ向かう矢印の血管とは走行方向が異なる。

Willis動脈輪の構成

前交通動脈、左右の前大脳動脈(A1部)、左右の内頸動脈、左右の後交通動脈、左右の後大脳動脈(P1部)で構成される輪状の吻合路である。内頸動脈系(前方循環)と椎骨脳底動脈系(後方循環)、さらに左右をつなぐ側副血行路として機能する。ただし、いずれかの構成血管の低形成・欠損などの破格(バリエーション)は多く、完全な輪を形成する例はむしろ少数とされる。

主な灌流域

・前大脳動脈:前頭葉・頭頂葉の内側面(下肢の運動野・感覚野を含む)。 ・中大脳動脈:大脳半球外側面の大部分(上肢・顔面の運動野・感覚野、優位半球の言語野)。レンズ核線条体動脈を分枝し、基底核・内包も灌流する。 ・後大脳動脈:後頭葉(一次視覚野)、側頭葉内側下面、視床の一部。閉塞すると対側の同名半盲(黄斑回避を伴うことがある)などを生じる。 ・椎骨脳底動脈系:脳幹、小脳、後大脳動脈領域。

MRAの特徴

MRAは主にTOF(time of flight)法により、流入する血液の信号を利用して血管を描出するため、造影剤も放射線被曝も不要で低侵襲である。そのため脳ドックでのスクリーニングや、脳動脈瘤・主幹動脈の狭窄・閉塞の評価に広く用いられ、従来のカテーテルによる脳血管撮影を行う機会は減ってきている。ただし、乱流や遅い血流で信号が低下し、狭窄を過大評価することがある点には注意が必要である。

脳動脈瘤の好発部位

前交通動脈、内頸動脈-後交通動脈分岐部、中大脳動脈分岐部に多く、いずれもWillis動脈輪周辺の分岐部である。MRAで血管の名称と位置を把握することは、脳動脈瘤や脳梗塞の診断の前提となる。

POINT

・軸位MRAでは、前方正中へ走るのが前大脳動脈、外側へ真横に走るのが中大脳動脈、後方正中の脳底動脈先端から後外側へ走るのが後大脳動脈である。 ・脳底動脈は左右の椎骨動脈が合流してでき、その先端で左右の後大脳動脈に分かれる。 ・画像の左右表示(画像の右が患者の左)を必ず確認する。 ・MRAは造影剤不要・非侵襲で、脳動脈瘤や脳血管狭窄・閉塞のスクリーニングに有用である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。