StudyMed医師国家試験

健康診断はなぜ保険が効かない?―「治療」と「予防」で分ける公的医療保険の基本

第105回医師国家試験 B問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第105回 B問題 第1問

我が国の公的医療保険について正しいのはどれか。

  1. a.国民健康保険法と国民年金法とで規定される。
  2. b.健康診断は給付の対象外である。
  3. c.医療給付は現金給付で行われる。
  4. d.保険料は一律同額である。
  5. e.任意加入である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は我が国の公的医療保険の仕組みを問う問題だ。押さえるべき軸は4つ。根拠となる法律、給付の対象、給付の方法、そして保険料と加入のしかた。この4本柱を整理できれば、選択肢は自然に絞れるよ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で社会保障制度をやったんですが、年金と医療保険がごちゃごちゃになってしまって……。
ドクタードクター
そこは多くの人がつまずくところだね。まず社会保険は、医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労働者災害補償保険の5分野に分かれていて、それぞれ別の法律で定められている。では、医療保険の根拠法は何だと思う?
医学生医学生
国民健康保険法は確実に医療保険ですよね。国民年金法も「国民」が付いているので、セットなのかと思いました。
ドクタードクター
名前が似ているから引っかかりやすいけれど、国民年金法は老齢・障害・死亡に対する年金給付を定めた法律で、医療保険とは別物だ。医療保険の中心は、会社員や公務員などの被用者を対象とする健康保険法や各種共済組合法と、自営業者や無職の人などを対象とする国民健康保険法。そして75歳以上は高齢者の医療の確保に関する法律に基づく後期高齢者医療制度に入る。
医学生医学生
では加入はどうでしょう。民間の保険みたいに選べるわけではないですよね。
ドクタードクター
その通り。日本は1961年に国民皆保険を達成していて、国内に住所がある人は必ずいずれかの公的医療保険に加入する強制加入だ。例外として生活保護の受給者は国民健康保険から外れ、医療は医療扶助でまかなわれる。だから任意加入という記述は誤りだね。
医学生医学生
保険料も、病院実習で患者さんが「収入が減ったのに保険料が高い」と話していたのを思い出しました。人によって違うんですよね。
ドクタードクター
よく覚えていたね。保険料は負担能力に応じて決まる応能負担が基本だ。被用者保険なら標準報酬月額に保険料率を掛け、事業主と本人がおおむね折半する。国民健康保険は所得割に均等割や平等割などを組み合わせて市町村ごとに算定され、低所得者には軽減措置もある。一律同額ではないよ。
医学生医学生
窓口で払う3割負担とかとは別の話ですか。
ドクタードクター
そう、そこは混同しないように。窓口の一部負担金の割合は年齢などで決まる自己負担の話で、毎月納める保険料とは別の概念だ。次に給付の方法。病院を受診したとき、患者さんは何を受け取っていると思う?
医学生医学生
医療費の一部を払って、残りを後から保険者が払い戻してくれる……いや、窓口で3割しか払わないので、お金をもらっているわけではないですね。
ドクタードクター
いいところに気づいた。診察・投薬・処置・入院といった医療そのものを提供するのが原則で、これを現物給付という。残りの費用は医療機関が審査支払機関を通じて保険者に請求する。現金給付になるのは、傷病手当金、出産手当金、出産育児一時金、高額療養費、やむを得ず保険証なしで受診したときの療養費などに限られる。
医学生医学生
ということは、残る健康診断が給付の対象外というのが正解ですね。でも、健診も病院でやるのに保険が効かないのは少し意外です。
ドクタードクター
医療保険の療養の給付は、病気やけがの診断・治療が対象なんだ。症状のない人に早期発見や予防目的で行う健康診断は治療に当たらないから、原則として自費になる。同じ理由で、人間ドック、予防接種、正常な妊娠・分娩、美容目的の医療も対象外だ。
医学生医学生
でも特定健診は保険者がやっていると習いました。あれは保険給付ではないんですか。
ドクタードクター
鋭い質問だね。特定健康診査・特定保健指導は40〜74歳を対象に、高齢者の医療の確保に関する法律で保険者に実施が義務づけられているけれど、これは保険者の保健事業であって、療養の給付とは別枠だ。職場の定期健康診断は労働安全衛生法に基づいて事業者の負担で行われる。仕事中や通勤中のけがが労災保険の対象になるのも、医療保険とは別制度という点で覚えておくといい。
医学生医学生
正常分娩が対象外だから、出産育児一時金という現金給付で支えているわけですね。
ドクタードクター
その通り、つながりが見えてきたね。臨床では、患者さんから「この検査は保険が効くの?」と聞かれることがよくある。症状があって診断のために行う検査なら保険診療、無症状で健診目的なら自費、という線引きを理解しておくと説明に困らない。自己負担が高額になったときに上限を超えた分が戻る高額療養費制度も、患者さんの経済的な不安に応えるうえで知っておきたい知識だ。

まとめ

我が国の公的医療保険は、被用者向けの健康保険法や共済組合法、地域住民向けの国民健康保険法、75歳以上の後期高齢者医療制度などから成り、国民皆保険のもとで強制加入となっています。給付は医療そのものを提供する現物給付が原則で、傷病手当金や出産育児一時金、高額療養費などは現金給付です。保険料は所得に応じた応能負担で、窓口の一部負担割合とは別の概念です。療養の給付は病気やけがの治療が対象であり、健康診断や予防接種、正常分娩、美容目的の医療は対象外で、特定健診は保険者の保健事業、職場健診は労働安全衛生法と別の枠組みで行われます。制度の線引きを理解しておくことは、試験対策だけでなく、患者さんに費用や手続きを説明する場面でも役立ちます。

解答・解説

正解はbです

問われているテーマ

我が国の公的医療保険制度の基本的な仕組み、すなわち「根拠となる法律」「給付の対象と方法」「保険料の決まり方」「加入のしかた」を問う問題である。

押さえるべき骨格

・根拠法: 会社員・公務員などの被用者とその扶養家族は健康保険法や各種共済組合法など(被用者保険)、自営業者・無職者などは国民健康保険法(地域保険)、75歳以上の者は高齢者の医療の確保に関する法律(後期高齢者医療制度)に基づいて保険に加入する。年金制度は別の法律で定められた別の社会保険である。 ・加入: 国民皆保険であり、生活保護受給者(医療扶助で対応)などを除き、国内に住所を有する者は必ずいずれかの公的医療保険に加入する強制加入である。 ・給付の対象: 病気やけがの診断・治療(療養の給付)が中心である。病気でない状態への予防的サービスである健康診断や、正常な妊娠・分娩は療養の給付の対象とならない。 ・給付の方法: 医療そのもの(診察・薬剤・処置・入院など)を提供する現物給付が原則であり、患者は窓口で一部負担金を支払う。 ・保険料: 所得(報酬)に応じて決まる応能負担が基本である。 以上の原則に照らして各選択肢を検討すると、健康診断が医療保険の給付(療養の給付)の対象外であるとする記述が正しい。

選択肢考察

  1. ×a.  国民健康保険法と国民年金法とで規定される。

    公的医療保険の中心となる法律は、被用者を対象とする健康保険法と、地域住民を対象とする国民健康保険法である(このほか各種共済組合法、船員保険法、高齢者の医療の確保に関する法律がある)。国民年金法は老齢・障害・死亡に対する年金給付を定めた年金保険の法律であり、医療保険を規定するものではない。

  2. ○b.  健康診断は給付の対象外である。

    医療保険の療養の給付は、疾病や負傷に対する診察・検査・投薬・処置・手術・入院などを対象とする。症状のない人に対して病気の早期発見や予防を目的に行う健康診断は「治療」に当たらないため、保険給付の対象外であり、原則として自費となる。なお、医療保険者は特定健康診査・特定保健指導(40〜74歳対象、高齢者の医療の確保に関する法律に基づく)を実施する義務を負うが、これは保険者の保健事業として行われるもので、療養の給付とは別の枠組みである。職場の定期健康診断は労働安全衛生法に基づき事業者の負担で実施される。

  3. ×c.  医療給付は現金給付で行われる。

    医療給付(療養の給付)は、保険医療機関で医療サービスそのものを提供する現物給付が原則である。患者は一部負担金のみを窓口で支払い、残りは医療機関が審査支払機関を通じて保険者に請求する。現金給付は、傷病手当金、出産手当金、出産育児一時金、埋葬料、高額療養費、やむを得ず保険証なしで受診した場合などの療養費といった限られた給付で行われる。

  4. ×d.  保険料は一律同額である。

    保険料は負担能力に応じて定められる。被用者保険では標準報酬月額・標準賞与額に保険料率を掛けて算出し、事業主と被保険者が原則折半で負担する。国民健康保険の保険料(税)は、所得に応じた所得割と、世帯・加入者数に応じた均等割・平等割などを組み合わせて市町村ごとに算定され、低所得者には軽減措置がある。したがって一律同額ではない。なお、窓口での一部負担金の割合(原則3割、義務教育就学前2割、70〜74歳2割、75歳以上1割など)は保険料とは別の概念である。

  5. ×e.  任意加入である。

    我が国は1961年に国民皆保険を達成しており、すべての国民がいずれかの公的医療保険に加入することが法律上義務づけられている(強制加入)。例外として生活保護受給者は国民健康保険の適用から除外され、医療は生活保護の医療扶助で賄われる。

公的医療保険の種類

・被用者保険(職域保険)  健康保険: 組合管掌健康保険(主に大企業、健康保険組合が運営)、全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ、主に中小企業)  共済組合: 国家公務員・地方公務員・私立学校教職員  船員保険 ・国民健康保険(地域保険): 自営業者、農林水産業者、退職者、無職者など。都道府県と市町村が共同で運営するほか、同業種による国民健康保険組合もある。 ・後期高齢者医療制度: 75歳以上(一定の障害がある65歳以上を含む)。都道府県単位の後期高齢者医療広域連合が運営する。

一部負担金(窓口負担)の割合

・義務教育就学前: 2割 ・義務教育就学後〜69歳: 3割 ・70〜74歳: 2割(現役並み所得者は3割) ・75歳以上: 1割(一定以上の所得者は2割、現役並み所得者は3割) 自己負担が高額になった場合は、高額療養費制度により所得に応じた上限額を超えた分が払い戻される。多くの自治体は子どもの医療費に独自の助成を行っている。

保険給付の主な内容

・現物給付: 療養の給付、入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、訪問看護療養費(制度上は費用の支給だが、医療機関が代理受領するため実質的に現物給付として扱われる) ・現金給付: 療養費、高額療養費、傷病手当金(被用者保険)、出産手当金(被用者保険)、出産育児一時金、埋葬料(葬祭費)

保険給付の対象とならない主なもの

健康診断・人間ドック、予防接種(予防接種法に基づく定期接種は別の公費制度)、正常な妊娠・分娩(出産育児一時金で経済的に支援)、美容整形、業務上・通勤途上の傷病(労働者災害補償保険の対象)。

社会保険の5分野

医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労働者災害補償保険。それぞれ別の法律で定められている。

POINT

・公的医療保険の主な根拠法は健康保険法(被用者)と国民健康保険法(地域住民)であり、75歳以上は後期高齢者医療制度に加入する。 ・国民皆保険(1961年達成)で強制加入である。 ・療養の給付は現物給付が原則で、傷病手当金・出産育児一時金などは現金給付である。 ・保険料は所得に応じて決まる(応能負担)。 ・健康診断、正常分娩、予防接種、美容目的の医療は保険給付の対象外である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。