StudyMed医師国家試験

出生証明書はどの法律?―「健康を守る」母子保健法と「身分を記録する」戸籍法

第105回医師国家試験 B問題 第2問

国試問題にチャレンジ

第105回 B問題 第2問

母子保健法に規定されていないのはどれか。

  1. a.母子健康手帳の交付
  2. b.妊婦健康診査
  3. c.出生証明書の交付
  4. d.未熟児養育医療
  5. e.3歳児健康診査

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、母子保健に関わる制度がどの法律に基づいているかを見分ける問題だ。着眼点は法律の目的。母子保健法は妊産婦と乳幼児の健康の保持・増進を目的とした法律で、1965年に制定された。この目的に合うかどうかで選択肢を見ていこう。
医学生医学生
どれも妊娠や出産に関係するものばかりなので、全部母子保健法に入っていそうに見えます。
ドクタードクター
そう見えるのがこの問題のねらいだね。覚え方のコツは、妊娠から幼児期までを時系列で並べること。妊娠したら、まず何をする?
医学生医学生
市町村に妊娠の届出をして、母子健康手帳をもらいます。産婦人科の実習で、妊婦さんが手帳を持って健診に来ていました。
ドクタードクター
その通り。妊娠の届出と母子健康手帳の交付は母子保健法に定められている。手帳には妊娠経過、出産の状況、乳幼児の健診や予防接種の記録が一冊にまとまっていて、妊娠期から幼児期までの一貫した健康記録になる。妊婦健康診査も同じく母子保健法で、市町村は妊産婦に健康診査を行うか受診を勧奨しなければならないとされている。
医学生医学生
妊婦健診で見つけたいのは、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などですよね。
ドクタードクター
そうだね。胎児発育の異常の早期発見も大切な目的だ。公費の受診券も市町村が交付している。ちなみに「健診」は健康状態を全般的に確認するもの、「検診」は特定の病気を見つけるもの、と区別されるから用語にも注意しよう。では出生後に進もう。小さく生まれた赤ちゃんへの支援は?
医学生医学生
NICUを見学したときに、未熟児養育医療という制度で医療費が支援されると聞きました。これも母子保健法ですか。
ドクタードクター
正解。出生体重2,500g未満の低出生体重児が生まれたら保護者が届け出ること、そして入院して養育が必要な未熟児に養育医療を給付することが母子保健法に定められている。以前は都道府県などの事務だったけれど、2013年度から市町村に権限が移譲されて、今は届出先も実施主体も市町村だ。
医学生医学生
幼児期だと、3歳児健康診査がありますね。小児科の講義で、1歳6か月児健診とセットで出てきました。
ドクタードクター
その2つは母子保健法で市町村に実施が義務づけられた健診だ。3歳児健診では身体発育、精神発達、視覚、聴覚、歯科などを評価して、発達障害や弱視、難聴の早期発見につなげる。ここまで並べると、残った出生証明書の交付だけが仲間外れになるんだけど、どの法律だと思う?
医学生医学生
出生届に付けるものなので……医師法でしょうか。医師が書く書類なので。
ドクタードクター
惜しい。医師法には、診察や出産に立ち会った医師は出生証明書などの交付を正当な理由なく拒めない、という交付義務の規定がある。ただ、出生届とそれに添付する出生証明書そのものの手続きを定めているのは戸籍法だ。出生届は子の戸籍をつくるための身分登録の手続きだから、健康の保持・増進を目的とする母子保健法の範囲外になる。
医学生医学生
なるほど、「健康を守る事業」なのか「身分を登録する手続き」なのか、で分ければいいんですね。
ドクタードクター
その整理で完璧だ。実務的なことも押さえておこう。出生届の用紙は左側が届書、右側が出生証明書になっている。出生証明書は出産に立ち会った人が、医師、助産師、その他の者の順で作成する。届出は原則として父または母が、出生の日から14日以内に市区町村長へ出す。国外で生まれた場合は3か月以内だ。
医学生医学生
死亡届は7日以内でしたよね。CBTの勉強で、14日と7日を混同しないように覚えました。
ドクタードクター
いいね。死亡届も戸籍法で、死亡診断書または死体検案書を添えて7日以内。妊娠12週以降の死産は、死産の届出に関する規程に基づいて死産証書などを添えて7日以内に届け出る。人工妊娠中絶や不妊手術は母体保護法、乳幼児の定期接種は予防接種法と、似た領域でも法律が分かれていることを意識しておこう。
医学生医学生
研修医になったら出生証明書や死亡診断書を実際に書く立場になるので、根拠法も含めて覚えておきます。
ドクタードクター
それが一番大事だ。書類の不備は戸籍の手続きに直結するから、記載は丁寧に。また最近は産後ケア事業が市町村の努力義務として法律に位置づけられるなど、母子保健法は妊娠期から子育て期までの切れ目のない支援へと広がっている。ご家族に使える制度を案内できると、臨床の現場でも頼りにされるよ。

まとめ

母子保健法は妊産婦と乳幼児の健康の保持・増進を目的とする法律で、妊娠の届出と母子健康手帳の交付、妊婦健康診査、低出生体重児の届出、未熟児養育医療、1歳6か月児・3歳児健康診査などを定めており、多くの事業の実施主体は市町村です。一方、出生届とそれに添付する出生証明書は子の身分を登録するための手続きであり、戸籍法に規定されています(出生後14日以内に市区町村へ届出)。医師法は医師の証明書交付義務を、母体保護法は人工妊娠中絶などを、予防接種法は定期接種を定めるなど、母子に関わる制度は複数の法律にまたがっています。「健康を守る事業」か「身分を記録する手続き」かという法律の目的に着目すると見分けやすく、臨床で書類作成や制度案内を行う際の基礎知識にもなります。

解答・解説

正解はcです

母子保健法は、母性(妊産婦など)と乳幼児の健康の保持・増進を目的とし、そのために保健指導・健康診査・医療などの措置を定めた法律である(1965年制定)。本問は、選択肢に挙げられた制度がどの法律に基づくものかを区別できるかを問うている。 母子保健法の主な規定は、時系列(妊娠→出産→新生児・乳児→幼児)に沿って整理すると覚えやすい。 ・妊娠期:妊娠の届出、母子健康手帳の交付、妊産婦の健康診査・保健指導 ・出生後:低出生体重児の届出、新生児・未熟児の訪問指導、未熟児養育医療 ・幼児期:1歳6か月児健康診査、3歳児健康診査 一方、出生届と、それに添付する出生証明書は、人の身分関係(戸籍)を登録するための手続であり、戸籍法に規定されている。したがって、母子保健法に規定されていないのは出生証明書の交付である。 このように、「保健(健康の保持・増進)に関する事業」は母子保健法、「身分登録に関する届出」は戸籍法、という法律の目的の違いに着目すると判断しやすい。

選択肢考察

  1. ×a.  母子健康手帳の交付

    母子保健法に規定されている。妊娠した者は市町村長に妊娠の届出を行い、市町村はその者に母子健康手帳を交付する。手帳には妊娠経過、出産の状況、乳幼児の健康診査・予防接種の記録などが一冊にまとめられ、妊娠期から幼児期までの一貫した健康記録として活用される。

  2. ×b.  妊婦健康診査

    母子保健法に規定されている。市町村は必要に応じて妊産婦に健康診査を行い、または受診を勧奨しなければならないとされている。妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、胎児発育の異常などを早期に発見するための健診であり、公費による受診券(補助)も市町村が交付している。なお、用語は「健診(健康診査)」であり、特定の疾患を見つける「検診」とは区別される。

  3. ○c.  出生証明書の交付

    母子保健法ではなく戸籍法に規定されているため、これが正解である。出生届の用紙は左側が届書、右側が出生証明書になっており、出生証明書は出産に立ち会った者が、医師、助産師、その他の者の優先順位で作成する。届出義務者(原則として父または母)は、出生証明書を添付した出生届を、出生の日から14日以内(国外で出生した場合は3か月以内)に市区町村長へ提出しなければならない。出生届は子の戸籍を作るための身分登録手続であり、健康の保持・増進を目的とする母子保健法の範囲外である。

  4. ×d.  未熟児養育医療

    母子保健法に規定されている。出生時体重が2,500g未満の低出生体重児が生まれたときは、保護者がその旨を届け出ることが定められている。さらに、養育のために病院・診療所への入院が必要な未熟児に対して、その養育に必要な医療(養育医療)を給付する(または医療費を支給する)ことが定められている。かつては都道府県・保健所設置市・特別区の事務であったが、2013年度から市町村に権限が移譲され、現在は低出生体重児の届出先も養育医療の実施主体も市町村である。

  5. ×e.  3歳児健康診査

    母子保健法に規定されている。市町村は、満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児(1歳6か月児健康診査)と、満3歳を超え満4歳に達しない幼児(3歳児健康診査)に対して健康診査を行わなければならない。この2つは法律で市町村に実施が義務付けられた健診である。3歳児健康診査では身体発育、精神発達、視覚・聴覚、歯科などを評価し、発達障害や弱視、難聴などの早期発見につなげる。

母子保健法の主な規定(実施主体は原則として市町村)

・保健指導:妊産婦、配偶者、乳幼児の保護者に対する保健指導 ・健康診査:1歳6か月児健康診査・3歳児健康診査(実施義務)、その他の妊産婦・乳幼児の健康診査(必要に応じて実施) ・妊娠の届出と母子健康手帳の交付 ・新生児の訪問指導、妊産婦の訪問指導、未熟児の訪問指導 ・低出生体重児(2,500g未満)の届出 ・未熟児養育医療の給付 ・産後ケア事業(2019年改正で市町村の努力義務として法定化) ・母子健康包括支援センター(子育て世代包括支援センター)の設置(2016年改正で法定化。2024年度からは児童福祉法上の子ども家庭総合支援拠点と統合され、こども家庭センターとして再編)

母子保健に関連する他の法律

・戸籍法:出生届(出生証明書を添付、14日以内)、死亡届(死亡診断書・死体検案書を添付、7日以内) ・医師法:出生証明書・死亡診断書などの交付義務(診察・立ち会った医師は正当な理由なく交付を拒めない) ・死産の届出に関する規程:妊娠12週以降の死産は死産証書(死胎検案書)を添えて7日以内に届け出る ・母体保護法:人工妊娠中絶、不妊手術、受胎調節の実地指導 ・児童福祉法:助産施設への入所、小児慢性特定疾病医療費の支給、乳児家庭全戸訪問事業など ・予防接種法:乳幼児の定期予防接種

POINT

・母子保健法:妊娠の届出、母子健康手帳、妊産婦・乳幼児の健康診査(1歳6か月児・3歳児健診は市町村の義務)、訪問指導、低出生体重児の届出、未熟児養育医療 ・出生証明書・出生届は戸籍法(出生後14日以内に市区町村へ) ・「健康の保持・増進のための事業」か「身分登録の手続」かで法律を見分ける ・現在、母子保健事業の多くは市町村が実施主体である(未熟児養育医療も2013年度から市町村へ移譲)

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。