3歳児健診に「レントゲン」はない―母子保健法が定める健診項目を整理する
第120回医師国家試験 C問題 第16問
国試問題にチャレンジ
3歳児健康診査の項目に含まれないのはどれか。
- a.身体発育状況
- b.言語障害の有無
- c.歯の異常の有無
- d.胸部エックス線撮影
- e.予防接種の実施状況
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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ドクターまとめ
3歳児健康診査は1歳6か月児健診とともに母子保健法第12条で市町村に実施が義務づけられた健診で、項目は施行規則に定められています。身体発育、栄養、歯・口腔、眼、耳鼻咽喉、精神発達、言語障害、予防接種の実施状況、育児上の問題など、いずれも問診・計測・診察で評価する内容であり、胸部エックス線撮影は含まれません。有病率の低い無症状集団への画像検査は、偽陽性の増加や被曝・費用に見合う利益が乏しく、スクリーニングとして適さないためです。眼と耳鼻咽喉の項目は3歳児健診にだけあり、弱視や難聴を感受性期のうちに見つける意義があります。健診項目を「なぜその年齢で、その方法で見るのか」という視点で理解すると、母子保健の制度とスクリーニングの原則を同時に整理できます。
解答・解説
正解はdです
問われていること
3歳児健康診査(3歳児健診)は、母子保健法第12条に基づき市町村が実施しなければならない法定健診である。対象は満3歳を超え満4歳に達しない幼児で、乳幼児健診のなかでも1歳6か月児健診と並んで市町村に実施が義務づけられている。
健診項目の決まり方
健診で確認する項目は母子保健法施行規則に列挙されている。3歳児健診の項目は次のとおりである。 1. 身体発育状況 2. 栄養状態 3. 脊柱および胸郭の疾病・異常の有無 4. 皮膚の疾病の有無 5. 眼の疾病・異常の有無 6. 耳、鼻および咽頭の疾病・異常の有無 7. 歯および口腔の疾病・異常の有無 8. 四肢運動障害の有無 9. 精神発達の状況 10. 言語障害の有無 11. 予防接種の実施状況 12. 育児上問題となる事項 13. その他の疾病・異常の有無
考え方
これらは問診、計測、診察、保護者からの聞き取り、母子健康手帳の記録の確認などで評価する項目であり、画像検査は含まれていない。無症状の幼児全員に胸部エックス線撮影を行っても、放射線被曝に見合うだけの利益がない。したがって含まれないのは胸部エックス線撮影である。
選択肢考察
- ×a. 身体発育状況
健診項目に含まれる。身長・体重・頭囲(必要に応じて胸囲)を計測し、乳幼児身体発育曲線(パーセンタイル曲線)に当てはめて評価する。低身長、体重増加不良、肥満などをみつけ、成長ホルモン分泌不全や甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、栄養の問題、ネグレクト(養育放棄)などの手がかりにする。
- ×b. 言語障害の有無
健診項目に含まれる。3歳ごろには三語文(多語文)を話し、自分の名前や年齢を言え、簡単な質問に答えられるようになるのが目安である。語彙の少なさ、文として話せないこと、言葉の理解の遅れ、構音(発音)の誤り、吃音(どもり)などを確認する。言葉の遅れは難聴、知的能力障害(知的障害)、自閉スペクトラム症などの手がかりとなるため、精神発達の状況の評価とあわせて行う。
- ×c. 歯の異常の有無
健診項目に含まれる(歯および口腔の疾病・異常の有無)。3歳ごろには乳歯20本がほぼ生えそろうため、歯科医師がう蝕(むし歯)の有無と数、不正咬合、口腔軟組織の異常などを診察する。あわせて歯みがきや間食について保健指導を行う。3歳児のう蝕有病率は地域の歯科保健を評価する指標としても使われている。
- ○d. 胸部エックス線撮影
健診項目に含まれないので、これが正解である。施行規則が定める項目は診察・計測・問診で評価するものばかりで、胸部エックス線撮影は含まれない。無症状の幼児全員に撮影しても、結核などの胸部疾患はまれなので見つかる人数が少なく、偽陽性が増える。そのうえ放射線被曝が加わり、費用に見合う効果もないため、スクリーニングとして適さない。胸郭の異常は視診・触診で確認する(項目3)。
- ×e. 予防接種の実施状況
健診項目に含まれる。母子健康手帳の記録をみて、年齢までに受けるべき定期予防接種(Hib〈インフルエンザ菌b型〉、小児用肺炎球菌、B型肝炎、5種混合〈DPT-IPV-Hib〉またはDPT-IPV、BCG、MR〈麻疹風疹混合〉、水痘、日本脳炎など)が済んでいるかを確認する。未接種があれば接種を勧める。
乳幼児健診の法的位置づけ
・母子保健法第12条:1歳6か月児健診(満1歳6か月を超え満2歳に達しない幼児)と3歳児健診(満3歳を超え満4歳に達しない幼児)は、市町村に実施が義務づけられている。 ・同法第13条:上記以外の乳児健診(3〜4か月児健診など)は、市町村が必要に応じて行う。
1歳6か月児健診との違い
1歳6か月児健診の項目は3歳児健診とほぼ同じだが、「眼の疾病・異常の有無」と「耳、鼻および咽頭の疾病・異常の有無」は3歳児健診にだけある。3歳になると本人の協力が得られるので、視力検査や聴力検査を行いやすい。 ・視覚:弱視(屈折異常や斜視が原因になる)は、視覚の感受性期のうちに見つけて治療しないと視力が十分に育たない。近年は、屈折検査機器(フォトスクリーナー)を用いた検査を導入する市町村が増えている。 ・聴覚:家庭で行う聞こえのアンケートやささやき声の検査などで、滲出性中耳炎や軽度〜中等度の難聴を見つける。 ・実施要綱にもとづき、尿検査(腎疾患のスクリーニング)を行う市町村も多い。
健診の担い手
医師(小児科)、歯科医師、保健師、管理栄養士、心理職などが分担して行い、発達の遅れや育児不安、児童虐待のおそれなどがあれば、地域の支援や医療機関につなげる。
POINT
・3歳児健診と1歳6か月児健診は母子保健法第12条に基づく市町村の義務である。 ・健診項目は施行規則に定められ、問診・計測・診察で評価する内容ばかりで、画像検査(胸部エックス線撮影)は含まれない。 ・眼(視覚)と耳鼻咽喉(聴覚)の項目は3歳児健診にだけある。 ・予防接種の実施状況、言語障害、歯・口腔、精神発達、育児上の問題も健診項目である。
