StudyMed医師国家試験

はがすと出血、こすると発疹―人名の「現象」で読み解く尋常性乾癬

第104回医師国家試験 I問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第104回 I問題 第4問

尋常性乾癬でみられるのはどれか。2つ選べ。

  1. a.Auspitz現象
  2. b.Darier徴候
  3. c.Köbner現象
  4. d.Leser-Trélat徴候
  5. e.Nikolsky現象

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は皮膚科でおなじみの、人の名前がついた「現象」や「徴候」を問う問題だ。名前だけを丸暗記すると混乱するけれど、それぞれが「どんな病態を反映しているか」と結びつければ忘れにくくなる。まずは尋常性乾癬がどんな病気か、確認しておこうか。
医学生医学生
肘や膝に、銀白色の鱗屑がのった赤い局面ができる病気ですよね。
ドクタードクター
その通り。本質は表皮の角化細胞が異常に速く増えることで、正常なら約4週間かかる表皮のターンオーバーが数日程度にまで短縮している。そこにIL-23とTh17を中心とした免疫の異常が関わる、慢性の炎症性疾患なんだ。
医学生医学生
病理実習で、表皮突起が規則正しく下に伸びている標本を見ました。錯角化やMunro微小膿瘍も特徴でしたね。
ドクタードクター
よく覚えているね。その組織像がそのまま所見を説明してくれる。表皮突起が伸びるのと同時に真皮乳頭も上に伸び、乳頭の真上の表皮はとても薄くなる。しかも乳頭の中の毛細血管は拡張して蛇行している。この状態で鱗屑を無理にはがすと、どうなると思う?
医学生医学生
薄い表皮のすぐ下に血管があるので、傷ついて出血しそうです。
ドクタードクター
まさにそれがAuspitz現象。鱗屑をはがすと点状に出血する現象で、尋常性乾癬に特徴的な所見だ。組織の構造から理屈で説明できるのがポイントだよ。もう一つ、乾癬でみられる現象があるけれど、わかるかな。
医学生医学生
Köbner現象でしょうか。でも、何が起きる現象だったか少しあいまいです。
ドクタードクター
Köbner現象は同形反応とも呼ばれ、皮疹のない正常に見える皮膚をこすったり、引っかいたり、傷つけたりすると、その刺激に一致して元の病気と同じ皮疹が新しく出てくる現象だ。乾癬が肘や膝など刺激を受けやすい場所にできやすいことや、引っかき傷に沿って線状に皮疹が並ぶことも、これで説明できる。
医学生医学生
だから伸側に好発するんですね。Köbner現象は乾癬だけの所見ですか。
ドクタードクター
いや、乾癬が代表だけど、扁平苔癬、尋常性白斑、青年性扁平疣贅などでも陽性になる。ここはよく問われるからセットで覚えておこう。では残りの選択肢も見ていこう。Darier徴候はどうかな。
医学生医学生
名前が似ているので、角化異常症のDarier病と関係があるのかと思っていました。
ドクタードクター
そこはよくある混同だね。Darier徴候は肥満細胞症、つまり色素性蕁麻疹の所見で、褐色の色素斑をこするとその部分だけが膨疹になって赤く盛り上がる。皮膚に集まった肥満細胞が刺激で脱顆粒し、ヒスタミンなどが出るためだ。Darier病、別名毛包性角化症とは別の概念だよ。
医学生医学生
Nikolsky現象は、皮膚をこすると表皮がはがれるものでしたね。天疱瘡の講義で習いました。
ドクタードクター
その通り。表皮細胞同士の接着が壊れていることを示す所見で、尋常性天疱瘡や落葉状天疱瘡、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群、中毒性表皮壊死症などで陽性になる。表皮下に水疱ができる水疱性類天疱瘡では通常陰性なので、鑑別にも役立つんだ。
医学生医学生
Leser-Trélat徴候は、内臓の癌を疑うサインだったと思います。
ドクタードクター
正解。脂漏性角化症が短期間に急に多発し、しばしば痒みを伴うもので、胃癌などの内臓悪性腫瘍の合併を示唆するデルマドロームだ。腫瘍がつくる増殖因子の関与が考えられている。
医学生医学生
整理すると、乾癬はAuspitzとKöbner、Darierは肥満細胞症、Nikolskyは表皮内水疱や表皮剝離の病気、Leser-Trélatは内臓悪性腫瘍ですね。
ドクタードクター
完璧だ。似た対応として、Behçet病の針反応も一緒に覚えておくといい。臨床の話もしておこう。乾癬は爪の点状陥凹や爪甲剝離、乾癬性関節炎を合併することがあり、メタボリックシンドロームとの関連も指摘されている。皮膚だけでなく全身を診る視点が大切なんだ。
医学生医学生
治療はステロイドの外用薬が中心でしょうか。
ドクタードクター
軽症ではステロイドや活性型ビタミンD3の外用薬が基本で、ナローバンドUVBなどの紫外線療法、シクロスポリンやアプレミラストなどの内服も使われる。重症例ではTNF-α、IL-17、IL-23を標的とする生物学的製剤が登場して、治療成績は大きく向上した。それから、Köbner現象があるので、患者さんには皮疹を強くこすったり引っかいたりしないよう伝えることも日常診療では大事だよ。

まとめ

尋常性乾癬は表皮角化細胞の過剰増殖と免疫異常による慢性炎症性疾患で、境界明瞭な紅斑に銀白色の鱗屑を伴う局面が刺激を受けやすい伸側に好発します。真皮乳頭の延長と乳頭上表皮の菲薄化、毛細血管の拡張を背景に、鱗屑をはがすと点状出血がみられるのがAuspitz現象、無疹部への刺激で同じ皮疹が生じるのがKöbner現象で、後者は扁平苔癬や尋常性白斑などでもみられます。Darier徴候は肥満細胞症、Nikolsky現象は天疱瘡・SSSS・TEN、Leser-Trélat徴候は内臓悪性腫瘍を示唆する所見です。人名のついた現象を病態と対応させて理解しておくと、皮膚所見から疾患を推論する力が身につき、乾癬性関節炎など全身合併症への目配りにもつながります。

解答・解説

正解はa, cです

皮膚科では、人名を冠した「現象」や「徴候」が特定の疾患と強く結びついており、用語の意味と対応する疾患をセットで覚えておく必要がある。 尋常性乾癬は、表皮の角化細胞が異常に速く増殖する(表皮のターンオーバーが正常の約4週間から数日程度に短縮する)慢性炎症性皮膚疾患である。境界明瞭な紅斑の上に銀白色で厚い鱗屑がのった局面が、肘・膝の伸側、頭部、腰臀部など刺激を受けやすい部位に好発する。 この病態から説明できる所見が2つある。 ・表皮が薄く延長した真皮乳頭の直上まで迫り、乳頭内の毛細血管が拡張しているため、鱗屑をはがすと点状に出血する(Auspitz現象)。 ・外的刺激が病変の誘因となるため、無疹部をこすったり傷つけたりすると、そこに新たな皮疹が生じる(Köbner現象)。 残りの選択肢は、肥満細胞症(Darier徴候)、内臓悪性腫瘍に伴う脂漏性角化症の多発(Leser-Trélat徴候)、表皮内水疱や表皮剝離を来す疾患(Nikolsky現象)に対応する所見であり、尋常性乾癬とは結びつかない。

選択肢考察

  1. ○a.  Auspitz現象

    Auspitz現象は、乾癬の鱗屑を無理にはがしたときに点状の出血がみられる現象である。乾癬では表皮突起と真皮乳頭がともに下方・上方へ延長し、真皮乳頭の直上の表皮(乳頭上表皮)が薄くなっている。そのうえ乳頭内の毛細血管は拡張・蛇行しているため、鱗屑をはがすとわずかな外力で血管が傷つき出血する。尋常性乾癬に特徴的な所見であり、正しい。

  2. ×b.  Darier徴候

    Darier徴候は、肥満細胞症(色素性蕁麻疹)でみられる所見である。褐色の色素斑をこすると、その部位だけが膨疹となって赤く盛り上がる。皮膚に集積した肥満細胞が機械的刺激で脱顆粒し、ヒスタミンなどが放出されるためである。尋常性乾癬ではみられないので誤り。なお、角化異常症のDarier病(毛包性角化症)とは名前が似ているが別の概念である。

  3. ○c.  Köbner現象

    Köbner現象(同形反応)は、皮疹のない正常にみえる皮膚をこする・引っかく・傷つけるなどの刺激を加えると、その刺激に一致して元の疾患と同じ皮疹が新たに生じる現象である。尋常性乾癬で代表的にみられ、肘や膝など機械的刺激を受けやすい部位に皮疹が好発することや、掻破痕に沿って線状に皮疹が並ぶことの説明にもなる。ほかに扁平苔癬、尋常性白斑、青年性扁平疣贅などでも陽性となる。尋常性乾癬でみられる所見であり、正しい。

  4. ×d.  Leser-Trélat徴候

    Leser-Trélat徴候は、脂漏性角化症(老人性疣贅)が短期間のうちに急激に多発し、しばしば瘙痒を伴う現象で、胃癌などの内臓悪性腫瘍の合併を示唆するデルマドローム(内臓疾患を反映する皮膚症状)である。腫瘍が産生する増殖因子の関与が考えられている。尋常性乾癬ではみられないので誤り。

  5. ×e.  Nikolsky現象

    Nikolsky現象は、一見正常な皮膚を指でこすると表皮が容易にはがれたり水疱が生じたりする現象である。表皮細胞どうしの接着が障害されていることを示し、尋常性天疱瘡・落葉状天疱瘡、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)、中毒性表皮壊死症(TEN)などで陽性となる。一方、表皮下水疱を来す水疱性類天疱瘡では通常陰性である。尋常性乾癬ではみられないので誤り。

尋常性乾癬の概要

・病態: 表皮角化細胞の過剰増殖と、IL-23/Th17系を中心とする免疫異常が関与する慢性炎症性疾患。 ・皮疹: 境界明瞭な紅斑上に銀白色の厚い鱗屑を伴う局面。肘頭・膝蓋・頭部・腰臀部などの伸側や刺激部位に好発する。 ・病理組織: 錯角化(角層に核が残る)、顆粒層の消失、表皮突起の規則的な延長、角層下の好中球の集簇(Munro微小膿瘍)、真皮乳頭の毛細血管拡張。 ・合併症: 爪の点状陥凹・爪甲剝離、乾癬性関節炎、メタボリックシンドロームとの関連。 ・治療: 副腎皮質ステロイド外用薬、活性型ビタミンD3外用薬、紫外線療法(ナローバンドUVBなど)、内服薬(シクロスポリン、レチノイドのエトレチナート、PDE4阻害薬のアプレミラスト)、重症例では生物学的製剤(TNF-α、IL-17、IL-23を標的とする抗体製剤など)。

皮膚科の主な現象・徴候の整理

・Auspitz現象: 鱗屑をはがすと点状出血 → 尋常性乾癬 ・Köbner現象(同形反応): 無疹部への刺激で同じ皮疹が出現 → 尋常性乾癬、扁平苔癬、尋常性白斑、青年性扁平疣贅など ・Darier徴候: 色素斑をこすると膨疹 → 肥満細胞症(色素性蕁麻疹) ・Nikolsky現象: 正常皮膚をこすると表皮剝離・水疱 → 天疱瘡、SSSS、TENなど ・Leser-Trélat徴候: 脂漏性角化症の急激な多発 → 内臓悪性腫瘍 ・針反応(pathergy): 針を刺した部位に膿疱・紅斑 → Behçet病

その他の皮膚科検査法

・硝子圧法: ガラス板で皮疹を圧迫し、紅斑(血管拡張によるため退色する)と紫斑(血管外への出血のため退色しない)を区別する。 ・皮膚描記法: 皮膚をこすった部位が膨疹になるもの(隆起性皮膚描記症)は蕁麻疹、白くなるもの(白色皮膚描記症)はアトピー性皮膚炎でみられる。

POINT

・尋常性乾癬でみられるのはAuspitz現象(鱗屑をはがすと点状出血)とKöbner現象(無疹部の刺激で皮疹出現)である。 ・Darier徴候は肥満細胞症、Nikolsky現象は天疱瘡・SSSS・TEN、Leser-Trélat徴候は内臓悪性腫瘍を示唆する。 ・Köbner現象は乾癬のほか扁平苔癬、尋常性白斑、青年性扁平疣贅でもみられる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。