はがすと出血、こすると発疹―人名の「現象」で読み解く尋常性乾癬
第104回医師国家試験 I問題 第4問
国試問題にチャレンジ
尋常性乾癬でみられるのはどれか。2つ選べ。
- a.Auspitz現象
- b.Darier徴候
- c.Köbner現象
- d.Leser-Trélat徴候
- e.Nikolsky現象
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
尋常性乾癬は表皮角化細胞の過剰増殖と免疫異常による慢性炎症性疾患で、境界明瞭な紅斑に銀白色の鱗屑を伴う局面が刺激を受けやすい伸側に好発します。真皮乳頭の延長と乳頭上表皮の菲薄化、毛細血管の拡張を背景に、鱗屑をはがすと点状出血がみられるのがAuspitz現象、無疹部への刺激で同じ皮疹が生じるのがKöbner現象で、後者は扁平苔癬や尋常性白斑などでもみられます。Darier徴候は肥満細胞症、Nikolsky現象は天疱瘡・SSSS・TEN、Leser-Trélat徴候は内臓悪性腫瘍を示唆する所見です。人名のついた現象を病態と対応させて理解しておくと、皮膚所見から疾患を推論する力が身につき、乾癬性関節炎など全身合併症への目配りにもつながります。
解答・解説
正解はa, cです
皮膚科では、人名を冠した「現象」や「徴候」が特定の疾患と強く結びついており、用語の意味と対応する疾患をセットで覚えておく必要がある。 尋常性乾癬は、表皮の角化細胞が異常に速く増殖する(表皮のターンオーバーが正常の約4週間から数日程度に短縮する)慢性炎症性皮膚疾患である。境界明瞭な紅斑の上に銀白色で厚い鱗屑がのった局面が、肘・膝の伸側、頭部、腰臀部など刺激を受けやすい部位に好発する。 この病態から説明できる所見が2つある。 ・表皮が薄く延長した真皮乳頭の直上まで迫り、乳頭内の毛細血管が拡張しているため、鱗屑をはがすと点状に出血する(Auspitz現象)。 ・外的刺激が病変の誘因となるため、無疹部をこすったり傷つけたりすると、そこに新たな皮疹が生じる(Köbner現象)。 残りの選択肢は、肥満細胞症(Darier徴候)、内臓悪性腫瘍に伴う脂漏性角化症の多発(Leser-Trélat徴候)、表皮内水疱や表皮剝離を来す疾患(Nikolsky現象)に対応する所見であり、尋常性乾癬とは結びつかない。
選択肢考察
- ○a. Auspitz現象
Auspitz現象は、乾癬の鱗屑を無理にはがしたときに点状の出血がみられる現象である。乾癬では表皮突起と真皮乳頭がともに下方・上方へ延長し、真皮乳頭の直上の表皮(乳頭上表皮)が薄くなっている。そのうえ乳頭内の毛細血管は拡張・蛇行しているため、鱗屑をはがすとわずかな外力で血管が傷つき出血する。尋常性乾癬に特徴的な所見であり、正しい。
- ×b. Darier徴候
Darier徴候は、肥満細胞症(色素性蕁麻疹)でみられる所見である。褐色の色素斑をこすると、その部位だけが膨疹となって赤く盛り上がる。皮膚に集積した肥満細胞が機械的刺激で脱顆粒し、ヒスタミンなどが放出されるためである。尋常性乾癬ではみられないので誤り。なお、角化異常症のDarier病(毛包性角化症)とは名前が似ているが別の概念である。
- ○c. Köbner現象
Köbner現象(同形反応)は、皮疹のない正常にみえる皮膚をこする・引っかく・傷つけるなどの刺激を加えると、その刺激に一致して元の疾患と同じ皮疹が新たに生じる現象である。尋常性乾癬で代表的にみられ、肘や膝など機械的刺激を受けやすい部位に皮疹が好発することや、掻破痕に沿って線状に皮疹が並ぶことの説明にもなる。ほかに扁平苔癬、尋常性白斑、青年性扁平疣贅などでも陽性となる。尋常性乾癬でみられる所見であり、正しい。
- ×d. Leser-Trélat徴候
Leser-Trélat徴候は、脂漏性角化症(老人性疣贅)が短期間のうちに急激に多発し、しばしば瘙痒を伴う現象で、胃癌などの内臓悪性腫瘍の合併を示唆するデルマドローム(内臓疾患を反映する皮膚症状)である。腫瘍が産生する増殖因子の関与が考えられている。尋常性乾癬ではみられないので誤り。
- ×e. Nikolsky現象
Nikolsky現象は、一見正常な皮膚を指でこすると表皮が容易にはがれたり水疱が生じたりする現象である。表皮細胞どうしの接着が障害されていることを示し、尋常性天疱瘡・落葉状天疱瘡、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)、中毒性表皮壊死症(TEN)などで陽性となる。一方、表皮下水疱を来す水疱性類天疱瘡では通常陰性である。尋常性乾癬ではみられないので誤り。
尋常性乾癬の概要
・病態: 表皮角化細胞の過剰増殖と、IL-23/Th17系を中心とする免疫異常が関与する慢性炎症性疾患。 ・皮疹: 境界明瞭な紅斑上に銀白色の厚い鱗屑を伴う局面。肘頭・膝蓋・頭部・腰臀部などの伸側や刺激部位に好発する。 ・病理組織: 錯角化(角層に核が残る)、顆粒層の消失、表皮突起の規則的な延長、角層下の好中球の集簇(Munro微小膿瘍)、真皮乳頭の毛細血管拡張。 ・合併症: 爪の点状陥凹・爪甲剝離、乾癬性関節炎、メタボリックシンドロームとの関連。 ・治療: 副腎皮質ステロイド外用薬、活性型ビタミンD3外用薬、紫外線療法(ナローバンドUVBなど)、内服薬(シクロスポリン、レチノイドのエトレチナート、PDE4阻害薬のアプレミラスト)、重症例では生物学的製剤(TNF-α、IL-17、IL-23を標的とする抗体製剤など)。
皮膚科の主な現象・徴候の整理
・Auspitz現象: 鱗屑をはがすと点状出血 → 尋常性乾癬 ・Köbner現象(同形反応): 無疹部への刺激で同じ皮疹が出現 → 尋常性乾癬、扁平苔癬、尋常性白斑、青年性扁平疣贅など ・Darier徴候: 色素斑をこすると膨疹 → 肥満細胞症(色素性蕁麻疹) ・Nikolsky現象: 正常皮膚をこすると表皮剝離・水疱 → 天疱瘡、SSSS、TENなど ・Leser-Trélat徴候: 脂漏性角化症の急激な多発 → 内臓悪性腫瘍 ・針反応(pathergy): 針を刺した部位に膿疱・紅斑 → Behçet病
その他の皮膚科検査法
・硝子圧法: ガラス板で皮疹を圧迫し、紅斑(血管拡張によるため退色する)と紫斑(血管外への出血のため退色しない)を区別する。 ・皮膚描記法: 皮膚をこすった部位が膨疹になるもの(隆起性皮膚描記症)は蕁麻疹、白くなるもの(白色皮膚描記症)はアトピー性皮膚炎でみられる。
POINT
・尋常性乾癬でみられるのはAuspitz現象(鱗屑をはがすと点状出血)とKöbner現象(無疹部の刺激で皮疹出現)である。 ・Darier徴候は肥満細胞症、Nikolsky現象は天疱瘡・SSSS・TEN、Leser-Trélat徴候は内臓悪性腫瘍を示唆する。 ・Köbner現象は乾癬のほか扁平苔癬、尋常性白斑、青年性扁平疣贅でもみられる。
