StudyMed医師国家試験

肘・膝・腰の銀白色の鱗屑―乾癬の「同形反応」を見抜く

第115回医師国家試験 F問題 第35問

国試問題にチャレンジ

第115回 F問題 第35問

43歳の男性。腰背部,両肘および両膝の皮疹を主訴に来院した。5年前に発症し,次第に範囲が拡大するため受診した。同部位に鱗屑を伴う境界明瞭な地図状紅斑を認める。両手示指,中指および環指の遠位指節間関節の腫脹を認める。真菌直接鏡検は陰性であった。腰背部の写真を下に示す。  この患者でみられるのはどれか。

第115回 F問題 第35問の問題画像
  1. a.Darier徴候
  2. b.Gottron徴候
  3. c.Köbner現象
  4. d.Leser-Trélat徴候
  5. e.Nikolsky現象

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、慢性に経過する鱗屑性紅斑から疾患を推定し、その疾患でみられる皮膚の「徴候・現象」を選ぶ問題だ。注目してほしいのは、皮疹の好発部位と性状、そして手指の関節症状の3点。まずは皮疹から何を考えるかな。
医学生医学生
鱗屑を伴う境界明瞭な紅斑というと、最初に白癬が頭に浮かびました。
ドクタードクター
鑑別として真っ先に挙げるのは正しい姿勢だよ。環状や地図状の鱗屑性紅斑では、まずKOH法による真菌鏡検で白癬を除外する。今回は鏡検陰性だから、白癬は否定的だ。そのうえで、肘・膝・腰背部という分布を見てみよう。
医学生医学生
どれも服や床とこすれやすい場所ですね。皮膚科の講義で、乾癬は摩擦部位に好発すると習いました。
ドクタードクター
その通り。写真でも、厚い銀白色調の鱗屑を付けた境界明瞭な紅色局面が背部に多発していて、年単位で拡大している。これは尋常性乾癬の典型像なんだ。では、手指の関節所見はどう解釈する?
医学生医学生
DIP関節の腫脹なら、Heberden結節のような変形性関節症も考えてしまいますが……。
ドクタードクター
年齢だけ見ればそれも鑑別には入るね。ただ、乾癬の患者さんにDIP関節炎がある場合は、まず乾癬性関節炎を考える。関節リウマチはPIP・MCP関節が主体でDIPは侵されにくいから、そこも区別のポイントだ。乾癬性関節炎はリウマトイド因子陰性の脊椎関節炎の仲間で、ソーセージ指と呼ばれる指趾炎や付着部炎も特徴だよ。
医学生医学生
乾癬性関節炎とわかったら、あとは乾癬でみられる現象を選べばいいんですね。それならKöbner現象でしょうか。
ドクタードクター
正解。Köbner現象は同形反応ともいい、皮疹のない部分に掻破・摩擦・外傷・手術創などの刺激が加わると、その部位に一致して同じ皮疹が新しく出てくる現象だ。乾癬が摩擦部位に好発するのも、こうした刺激が皮疹を誘発しやすい素地になっていると考えられる。ただし、Köbner現象という言葉は皮疹の分布そのものを指すわけではない点に注意しよう。
医学生医学生
刺激を受けた場所に「新たに」出る、というのが定義なんですね。ほかの選択肢も整理したいです。Gottron徴候は肘や膝にも出るので迷いました。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。Gottron徴候は皮膚筋炎の皮疹で、手指のMCP・PIP関節背面や肘・膝の伸側に角化を伴う紫紅色の紅斑・丘疹が出る。部位は似ているけれど、今回は厚い鱗屑を伴う地図状紅斑とDIP関節腫脹で、筋力低下やヘリオトロープ疹の記載もない。皮膚筋炎は考えにくいね。
医学生医学生
Nikolsky現象は、CBTの勉強で天疱瘡とセットで覚えました。
ドクタードクター
そう、正常に見える皮膚を強くこすると表皮が剥がれてびらんや水疱ができる現象で、表皮細胞間の接着障害を示す。尋常性天疱瘡、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群、中毒性表皮壊死症などでみられる。乾癬では表皮の接着は保たれているから陰性だ。
医学生医学生
Darier徴候は、こすると膨疹が出るものでしたっけ。
ドクタードクター
その通り。肥満細胞症、たとえば色素性蕁麻疹で、褐色の色素斑をこすると肥満細胞が脱顆粒してヒスタミンなどが放出され、発赤と瘙痒を伴う膨疹になる。そしてLeser-Trélat徴候は、短期間に脂漏性角化症が多発・増大する現象で、胃癌などの内臓悪性腫瘍に伴うデルマドロームとして知られている。どちらも今回の慢性の鱗屑性紅斑とは関係がないね。
医学生医学生
「こする」系の徴候が多くて混乱しそうですが、何が起きるかで区別すればいいんですね。膨疹ならDarier、表皮剥離ならNikolsky、同じ皮疹が出るならKöbner。
ドクタードクター
見事な整理だ。発展として、乾癬の三大現象も押さえておこう。Köbner現象に加えて、鱗屑を剥がすと点状出血がみられるAuspitz現象、鱗屑をこすると蝋を削ったように白く剥がれる蝋片現象だ。Auspitz現象は、真皮乳頭の毛細血管が拡張し、その直上の表皮が薄いことを反映している。
医学生医学生
病理実習で、表皮突起の規則的な延長とMunro微小膿瘍を見たのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにそれが乾癬の組織像だね。臨床では、爪の点状陥凹や爪甲剥離がある患者さんは関節炎を合併しやすいので、関節症状を必ず問診してほしい。乾癬性関節炎は関節破壊が進むことがあるため、関節炎を伴う例ではTNF-α阻害薬やIL-17阻害薬、IL-23阻害薬などの生物学的製剤が積極的に検討される。皮膚だけを見て関節を見逃さないことが大切だ。

まとめ

肘・膝・腰背部など摩擦を受けやすい部位に、銀白色の厚い鱗屑を伴う境界明瞭な紅色局面が慢性に拡大し、真菌鏡検が陰性であれば尋常性乾癬を考えます。DIP関節炎を伴う場合は、リウマトイド因子陰性の脊椎関節炎である乾癬性関節炎の合併を疑います。乾癬では、無疹部への刺激で同じ皮疹が生じるKöbner現象(同形反応)がみられ、Auspitz現象・蝋片現象とあわせて三大現象として知られています。Darier徴候は肥満細胞症、Gottron徴候は皮膚筋炎、Leser-Trélat徴候は内臓悪性腫瘍、Nikolsky現象は天疱瘡やTENなどと、徴候と疾患の対応を「何が起きるか」で整理しておくと、皮膚疾患の診断推論に広く役立ちます。

解答・解説

正解はcです

所見の整理

・43歳男性、5年前に発症し徐々に拡大する慢性経過の皮疹 ・部位は腰背部、両肘、両膝:いずれも衣服や床・机との摩擦、圧迫などの機械的刺激を受けやすい場所であり、尋常性乾癬の好発部位と一致する ・皮疹の性状:鱗屑を伴う、境界明瞭な地図状の紅斑(写真では厚い銀白色調の鱗屑を付す紅色局面が背部に多発している) ・両手の示指・中指・環指の遠位指節間(DIP)関節の腫脹:関節炎の存在を示す ・真菌直接鏡検(KOH法)陰性:鱗屑を伴う環状〜地図状紅斑で最も重要な鑑別である体部白癬を否定できる

診断へのプロセス

摩擦部位に好発する、厚い鱗屑を伴う境界明瞭な紅色局面が年単位で拡大している点から、尋常性乾癬が最も考えられる。白癬は鏡検陰性で除外される。さらにDIP関節炎を伴っており、乾癬に合併する関節炎、すなわち乾癬性関節炎(関節症性乾癬)と判断できる。DIP関節が侵されやすい点は、PIP・MCP関節が主体の関節リウマチとの鑑別にも役立つ。

設問の考え方

選択肢はいずれも皮膚科の代表的な「徴候・現象」であり、それぞれがどの疾患と結びつくかを整理しておけば解ける。肘・膝・腰背部のように摩擦を受けやすい部位に皮疹が好発するのは乾癬の特徴であり、外傷部位に一致して同じ皮疹が生じるKöbner現象が起こりやすい素地となる。本問は乾癬に特徴的な現象を選ぶ問題で、その答えがKöbner現象である。なお、Köbner現象とは無疹部に掻破や外傷などの刺激が加わったときに、その部位に一致して新たに同じ皮疹が出現する現象を指し、皮疹の分布そのものを指す言葉ではない点に注意する。

選択肢考察

  1. ×a.  Darier徴候

    肥満細胞症(色素性蕁麻疹など)でみられる。皮疹(褐色の色素斑)をこすると、肥満細胞が脱顆粒してヒスタミンなどが放出され、その部分が発赤し瘙痒を伴う膨疹となる現象である。乾癬ではみられない。

  2. ×b.  Gottron徴候

    皮膚筋炎に特徴的な皮疹で、手指の関節(MCP関節やPIP関節)背面や肘頭・膝蓋などの伸側に生じる、角化(落屑)を伴う紫紅色の紅斑・丘疹である。肘・膝に出る点や関節部の症状がある点で本症例と紛らわしいが、本症例は厚い鱗屑を伴う境界明瞭な地図状紅斑とDIP関節の腫脹であり、筋力低下やヘリオトロープ疹などの記載もないため皮膚筋炎は考えにくい。

  3. ○c.  Köbner現象

    皮疹のない部位に、掻破・摩擦・外傷・手術創・熱傷などの刺激が加わると、その刺激部位に一致して原疾患と同じ皮疹が新たに出現する現象で、同形反応ともいう。尋常性乾癬で代表的にみられる。乾癬では肘・膝・腰部・頭部など物理的刺激を受けやすい部位に皮疹が好発し、日常的な摩擦や外傷がKöbner現象を誘発しやすい。本症例は乾癬(乾癬性関節炎)であり、この現象がみられる。乾癬のほか扁平苔癬、尋常性白斑、サルコイドーシス、ウイルス性疣贅(自家接種による)などでも生じる。

  4. ×d.  Leser-Trélat徴候

    短期間(数か月程度)に脂漏性角化症が多数急速に出現・増大し、しばしば瘙痒を伴う現象である。内臓悪性腫瘍、とくに胃癌などの消化器腺癌に伴うデルマドローム(内臓疾患の皮膚症状)として知られ、肺癌などの他の腺癌や悪性リンパ腫に伴う報告もある。本症例の慢性の鱗屑性紅斑とは関係がない。

  5. ×e.  Nikolsky現象

    一見正常な皮膚を指で強くこすると、表皮が容易に剥がれてびらんや水疱を生じる現象で、表皮細胞間の接着が障害されていることを示す。尋常性天疱瘡、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)、中毒性表皮壊死症(TEN)、表皮水疱症などでみられる。乾癬では表皮の接着は保たれており、陰性である。

尋常性乾癬の概要

表皮角化細胞の過剰な増殖(ターンオーバーの著明な短縮)と、IL-23/IL-17系を中心とした免疫異常による慢性炎症性角化症である。日本では男性に多く、中年での発症が多い。肥満、喫煙、飲酒、感染、ストレス、特定の薬剤などが増悪因子となる。

皮疹の特徴

・境界明瞭でやや隆起した紅色局面に、厚い銀白色の鱗屑が付着する ・好発部位:頭部、肘頭、膝蓋、腰臀部など摩擦を受けやすい部位 ・爪病変:点状陥凹、爪甲剥離、爪甲下角質増殖など(関節炎合併例で頻度が高い)

乾癬でみられる現象

・Köbner現象(同形反応):無疹部への刺激で同じ皮疹が出現する ・Auspitz現象:鱗屑を剥がすと点状の出血がみられる。真皮乳頭の毛細血管が拡張し、その直上の表皮が薄くなっているためである ・蝋片現象(ろうへん現象):鱗屑をこすると蝋を削ったように白く細かく剥がれる

病理所見

表皮突起の規則的な延長(表皮肥厚)、不全角化、顆粒層の減少、角層内の好中球の集簇(Munro微小膿瘍)、真皮乳頭の血管拡張など。

乾癬性関節炎

乾癬患者の一部(約1〜2割程度とされる)に合併する血清反応陰性脊椎関節炎の一つで、リウマトイド因子は通常陰性である。DIP関節炎、指趾全体が腫れる指趾炎(ソーセージ指)、付着部炎、仙腸関節炎・脊椎炎などが特徴で、関節破壊が進行することがある。

治療

外用療法(ステロイド外用薬、活性型ビタミンD3外用薬、両者の配合剤)、光線療法(ナローバンドUVBなど)、内服療法(アプレミラスト、シクロスポリン、メトトレキサート、レチノイドなど)、生物学的製剤(TNF-α阻害薬、IL-17阻害薬、IL-23阻害薬など)を重症度に応じて組み合わせる。関節炎を伴う例では関節破壊を防ぐため、生物学的製剤が積極的に用いられる。

主な皮膚の徴候・現象と疾患の対応

・Köbner現象:乾癬、扁平苔癬、尋常性白斑など ・Auspitz現象:乾癬 ・Darier徴候:肥満細胞症 ・Nikolsky現象:天疱瘡、SSSS、TEN ・Gottron徴候:皮膚筋炎 ・Leser-Trélat徴候:内臓悪性腫瘍 ・針反応(パテルギー):Behçet病

POINT

・摩擦部位(肘・膝・腰臀部・頭部)に好発する、銀白色の厚い鱗屑を伴う境界明瞭な紅色局面は尋常性乾癬 ・鱗屑性紅斑では真菌鏡検で白癬を除外する ・乾癬にDIP関節炎を伴えば乾癬性関節炎(リウマトイド因子陰性) ・乾癬の三大現象:Köbner現象、Auspitz現象、蝋片現象 ・徴候と疾患の対応(Darier=肥満細胞症、Gottron=皮膚筋炎、Leser-Trélat=内臓悪性腫瘍、Nikolsky=天疱瘡・SSSS・TEN)を整理しておく

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。