StudyMed医師国家試験

その出血は「月経」か「警告」か―不正性器出血から子宮体癌を見抜く

第104回医師国家試験 H問題 第8問

国試問題にチャレンジ

第104回 H問題 第8問

不正性器出血をきたす可能性が最も高いのはどれか。

  1. a.子宮体癌
  2. b.子宮筋腫
  3. c.子宮内膜炎
  4. d.子宮内膜症
  5. e.子宮腺筋症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、婦人科の代表的な疾患それぞれについて「主にどんな症状で現れるか」を整理する問題だ。キーワードは不正性器出血。まずこの言葉の定義を確認しておこう。不正性器出血とは、正常な月経以外の時期に性器から出血することを指すんだ。
医学生医学生
月経の量が多い、というのも不正出血に入るんでしょうか。
ドクタードクター
そこは区別が必要だね。月経の量が多すぎるのは過多月経、月経時の強い痛みは月経困難症と呼び、どちらも不正性器出血とは別の症状として扱う。この3つをきちんと分けると、選択肢がすっきり整理できるよ。
医学生医学生
なるほど。そう考えると、子宮筋腫や子宮腺筋症は過多月経のイメージが強いです。
ドクタードクター
いい整理だ。この問題は「各疾患が不正性器出血を起こす確率が最も高いのはどれか」と読むのが妥当で、疾患ごとの代表的な症状を思い浮かべれば答えが見えてくる。では、不正性器出血が初発症状であり、しかも最も多い症状でもある疾患はどれだと思う?
医学生医学生
子宮体癌ですね。産婦人科の講義で「閉経後の出血を見たら体癌を疑え」と繰り返し言われました。
ドクタードクター
正解。子宮体癌の大部分は子宮内膜から発生する内膜癌で、癌が子宮の内腔に露出し、組織がもろく壊死しやすいため、早い段階から出血するんだ。症状のある患者の約9割が不正性器出血を訴えるとされている。はっきりした出血ではなく、少量の血液が混じった水っぽい帯下、つまり血性帯下として気づかれることもあるよ。
医学生医学生
好発年齢は閉経後の50〜60歳代でしたよね。でも閉経前なら体癌は考えなくていいですか。
ドクタードクター
そこは油断しないでほしい。閉経前でも、月経周期と関係のない出血が続くなら本症を否定する必要がある。子宮頸癌や機能性子宮出血も不正出血を起こすから、症状だけでは区別できず、子宮内膜の細胞診・組織診で確定するんだ。では子宮筋腫はどうかな。
医学生医学生
筋腫は性成熟期に多い良性腫瘍で、過多月経とそれによる鉄欠乏性貧血が典型です。ただ、粘膜下筋腫だと不正出血も起こしそうな気がします。
ドクタードクター
鋭いね。内腔に突き出す粘膜下筋腫、特に子宮口から腟へ飛び出す筋腫分娩では不正出血を起こすことがある。ただ筋腫全体でみると、多くは無症状で検診で偶然見つかるし、不正出血の頻度は子宮体癌より明らかに低い。ほかに大きな腫瘤による頻尿や便秘などの圧迫症状、不妊も押さえておこう。
医学生医学生
子宮内膜症と子宮腺筋症は、名前が似ていていつも混乱します。
ドクタードクター
どちらも子宮内膜に似た組織が本来と違う場所で増える病気だけど、場所が違う。子宮内膜症は卵巣やダグラス窩、骨盤腹膜など子宮の外で増殖し、主な症状は月経困難症、慢性骨盤痛、性交痛、排便痛、不妊だ。病変が腹腔内にあるから、出血が性器出血として外に出てくることは少ない。一方の子宮腺筋症は子宮の筋層の中に入り込み、子宮がびまん性に大きく硬くなって、年齢とともに強まる月経困難症と過多月経を起こす。
医学生医学生
どちらも月経に連動した症状が中心で、月経と無関係な出血は典型ではない、ということですね。子宮内膜炎はどうでしょう。
ドクタードクター
子宮内膜炎は感染性の炎症で、流産や分娩の後、子宮内の器具操作、IUDの使用、クラミジアや淋菌などの上行感染がきっかけになる。主な症状は下腹部痛、発熱、膿性や悪臭のある帯下だ。少量の出血を起こすことはあるけれど、不正出血が中心の症状になる頻度は高くない。
医学生医学生
疾患ごとに「出血」「痛み」「量」のどれが主役かを考えると整理しやすいですね。
ドクタードクター
その通り。最後に臨床での注意点だ。不正性器出血を診たら、性成熟期の女性ではまず妊娠の可能性を確認する。流産、異所性妊娠、絨毛性疾患を見逃さないためだ。そのうえで腫瘍性病変、炎症、ホルモンバランスの乱れによる機能性子宮出血などを順に考える。子宮頸癌はHPV感染が主な原因で、体癌より若い年齢に多く、性交後出血で気づかれやすいのが特徴だよ。
医学生医学生
体癌の危険因子はエストロゲンへの長期曝露でしたよね。肥満や未経産、遅い閉経などが挙がると覚えています。
ドクタードクター
よく覚えているね。ほかにエストロゲン単独のホルモン補充療法、タモキシフェンの使用、多嚢胞性卵巣症候群、糖尿病、高血圧、リンチ症候群もある。こうした背景のある女性の閉経後出血では、経腟超音波で子宮内膜の厚さを評価し、内膜細胞診・組織診へ進むのが基本の流れだ。

まとめ

不正性器出血は正常な月経以外の時期に起こる性器出血であり、過多月経や月経困難症とは区別して考えます。子宮体癌では癌が内腔に露出してもろく出血しやすいため、不正性器出血が初発かつ最も多い症状となり、特に閉経後の出血では必ず本症を疑って子宮内膜の細胞診・組織診を行います。子宮筋腫は過多月経と貧血・圧迫症状、子宮腺筋症は月経困難症と過多月経、子宮内膜症は月経困難症・骨盤痛・不妊、子宮内膜炎は下腹部痛・発熱・帯下が主な症状です。実際の診療では、まず妊娠の可能性を確認したうえで、腫瘍・炎症・機能性出血を鑑別していきます。疾患ごとに「主役となる症状」を整理しておくことは、婦人科の問診と鑑別診断の基礎になります。

解答・解説

正解はaです

不正性器出血とは、正常な月経以外の時期に性器(主に子宮)から出血することをいう。月経の量が多すぎる「過多月経」や、月経時の強い痛みである「月経困難症」とは別の症状として区別する。 本問は、「不正性器出血を訴える患者で、原因として多い疾患はどれか」という意味にも読める。しかし実際に問われているのは、「各疾患のうち、不正性器出血という症状を起こす確率が最も高いのはどれか」と解釈するのが妥当である。そう読むと、疾患ごとに代表的な症状を思い浮かべればよい。 ・子宮体癌: 不正性器出血が初発症状であり、しかも最も多い症状である ・子宮筋腫: 過多月経、過多月経による貧血、腫瘤による圧迫症状 ・子宮内膜炎: 下腹部痛、発熱、帯下の増加 ・子宮内膜症: 月経困難症、慢性骨盤痛、性交痛、不妊 ・子宮腺筋症: 月経困難症、過多月経 子宮体癌では、癌が子宮内膜から発生して内腔に露出し、組織がもろく壊死しやすいため、早い段階から出血する。症状のある子宮体癌患者の大多数(約9割)が不正性器出血を訴えるとされる。出血の頻度が最も高いのは子宮体癌である。

選択肢考察

  1. ○a.  子宮体癌

    子宮体癌(大部分は子宮内膜から発生する子宮内膜癌)の最も多い症状であり、しかも初発症状になりやすいのが不正性器出血である。好発年齢は50~60歳代で、閉経後の女性に多い。閉経後の性器出血は子宮体癌を必ず考えなければならない危険信号である。はっきりした出血ではなく、少量の血液が混じった水っぽい帯下(血性帯下)として気づかれることもある。閉経前であっても、月経周期と関係のない出血が続く場合には本症を否定する必要がある。子宮頸癌や機能性子宮出血も不正出血を起こすため、症状だけでは区別できない。子宮内膜の細胞診・組織診で診断を確定する。

  2. ×b.  子宮筋腫

    子宮筋腫は子宮の平滑筋から生じる良性腫瘍で、性成熟期の女性に非常に多い。代表的な症状は過多月経と、それに伴う鉄欠乏性貧血である。ほかに、大きくなった腫瘤による頻尿・便秘などの圧迫症状、月経困難症、不妊がある。内腔に突き出す粘膜下筋腫、特に子宮口から膣へ飛び出す筋腫分娩では、不正出血を起こすことがある。しかし筋腫全体でみると、不正出血を起こす頻度は子宮体癌より明らかに低い。多くの筋腫は無症状で、検診で偶然見つかる。

  3. ×c.  子宮内膜炎

    子宮内膜炎は子宮内膜に起こる感染性の炎症である。流産・分娩の後、子宮内の器具操作、子宮内避妊具(IUD)の使用、性感染症(クラミジア、淋菌など)の上行感染がきっかけとなる。主な症状は下腹部痛、発熱、膿性または悪臭のある帯下である。月経以外の時期に少量の出血を起こすことはあるが、不正性器出血が中心の症状となる頻度は高くない。

  4. ×d.  子宮内膜症

    子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が子宮の外(卵巣、ダグラス窩、骨盤の腹膜など)で増殖し、月経周期に合わせて出血・炎症を繰り返す疾患である。主な症状は、月経のたびに強くなる月経困難症、慢性骨盤痛、性交痛、排便痛、不妊である。病変が子宮の内腔ではなく腹腔内にあるため、性器出血という形で出血が外に出てくることは少ない。不正性器出血はこの疾患の典型的な症状ではない。

  5. ×e.  子宮腺筋症

    子宮腺筋症は、子宮内膜に似た組織が子宮の筋層の中に入り込んで増殖する疾患である。子宮はびまん性に大きく硬くなる。主な症状は、年齢とともに強くなる月経困難症と過多月経である。過多月経による貧血もよくみられる。症状は月経に関連したものが主体であり、月経と関係のない不正性器出血を起こす頻度は高くない。

不正性器出血の主な原因

・妊娠に関連するもの: 流産、異所性妊娠、絨毛性疾患。性成熟期の女性ではまず妊娠の可能性を確認する ・腫瘍性病変: 子宮頸癌(性交後出血が特徴的)、子宮体癌、子宮頸管ポリープ、子宮内膜ポリープ、粘膜下筋腫 ・炎症: 子宮頸管炎、子宮内膜炎、萎縮性腟炎(閉経後) ・機能性子宮出血: 器質的な病変がなく、ホルモンバランスの乱れ(無排卵など)で起こる。思春期と更年期に多い ・その他: 外傷、血液凝固異常、抗凝固薬、ホルモン薬の使用

子宮体癌の要点

・好発: 50~60歳代、閉経後 ・危険因子: エストロゲンに長く曝されること(肥満、未経産、遅い閉経、エストロゲン単独のホルモン補充療法、タモキシフェンの使用、多嚢胞性卵巣症候群)、糖尿病、高血圧、リンチ症候群 ・症状: 不正性器出血(特に閉経後)、血性帯下 ・検査: 経腟超音波検査で子宮内膜の厚さを評価し、内膜細胞診・内膜組織診で確定する ・子宮頸癌との違い: 子宮頸癌はヒトパピローマウイルス(HPV)感染が主な原因である。発症年齢は子宮体癌より若く、性交後出血で気づかれることが多い

各疾患の代表的な症状

・子宮筋腫: 過多月経、貧血、圧迫症状 ・子宮腺筋症: 月経困難症、過多月経 ・子宮内膜症: 月経困難症、骨盤痛、不妊 ・子宮内膜炎: 下腹部痛、発熱、帯下

POINT

・子宮体癌の初発症状であり、最も多い症状は不正性器出血である ・閉経後の性器出血をみたら、まず子宮体癌を疑い、子宮内膜の細胞診・組織診を行う ・子宮筋腫と子宮腺筋症は過多月経、子宮内膜症は月経困難症と不妊が主な症状である ・「不正性器出血」「過多月経」「月経困難症」は別の症状として区別する

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。