StudyMed医師国家試験

青い数珠を焼くな、切るな―食道静脈瘤に選ぶべき内視鏡治療

第104回医師国家試験 G問題 第6問

国試問題にチャレンジ

第104回 G問題 第6問

上部消化管内視鏡写真を別に示す。  内視鏡治療として最も適切なのはどれか。

第104回 G問題 第6問の問題画像
  1. a.凝固
  2. b.クリッピング
  3. c.硬化療法
  4. d.切除
  5. e.レーザー

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、上部消化管内視鏡の画像から病変を判読し、それに合った内視鏡治療を選ぶ問題だ。ポイントは「どんな病変か」と「その病変にどの手技が適するか」の対応関係。まずは画像の読み取りから始めよう。
医学生医学生
食道に沿って、青っぽい数珠のような盛り上がりが何本か縦に走っているように見えます。
ドクタードクター
その通り。食道の長軸方向に沿って青白色から青色調の数珠状・結節状の隆起が複数条ある。これは粘膜の下で拡張・蛇行した静脈がそのまま盛り上がって見えているもので、食道静脈瘤の典型像だ。潰瘍の露出血管や腫瘍のような限局した病変ではなく、縦に走る静脈性の隆起という点が判読の決め手になる。
医学生医学生
消化器内科の実習で、肝硬変の患者さんの内視鏡で見たことがあります。門脈圧亢進症の合併症でしたよね。
ドクタードクター
そうだね。肝硬変などで門脈圧が上がると、門脈血が左胃静脈、いわゆる胃冠状静脈などの側副血行路を通って食道粘膜下の静脈に流れ込み、その静脈が拡張・蛇行して静脈瘤になる。破裂すると大量吐血で命に関わるから、出血時の止血だけでなく、破裂リスクが高いものには予防的治療も行う。
医学生医学生
破裂リスクが高いというのは、どうやって判断するんですか。
ドクタードクター
内視鏡所見で、形態の大きさ、色調、発赤所見を見る。形態は細く直線的なF1、連珠状のF2、結節状で太いF3に分けられ、太いもの、青色調のもの、ミミズ腫れ様やチェリーレッドスポットといった発赤所見、いわゆるred color signを伴うものは危険が高い。では治療を考えよう。止血といえば、どんな手技を思い浮かべるかな。
医学生医学生
胃潰瘍の出血ならクリッピングや熱凝固ですよね。静脈瘤でも出血点を挟めば止まりそうな気がしますが。
ドクタードクター
そこが落とし穴だ。クリッピングは潰瘍の露出血管からの動脈性出血などに用いる方法で、静脈瘤は壁の薄い太い静脈が何本も走っているから、クリップで挟んでも血流を遮断できず、裂けて出血を悪化させうる。熱凝固も同じで、潰瘍やAGMLの出血点を焼く方法だから、太い静脈の集まりを焼いても閉塞させられず、粘膜損傷からかえって大出血を招くおそれがある。
医学生医学生
では切除はどうでしょう。病変ごと取ってしまえば、という発想は危ないですか。
ドクタードクター
かなり危険だね。EMRやESDといった切除は早期癌や腺腫などの腫瘍性病変に対する治療だ。静脈瘤を切れば拡張した静脈を直接傷つけることになり、制御困難な大出血を来すから禁忌と考えていい。レーザーも、切除困難な腫瘍の焼灼や狭窄の開通に用いられてきた方法で、静脈瘤の一次治療には使わない。
医学生医学生
消去法でいくと硬化療法が残りますね。具体的には何をするんですか。
ドクタードクター
内視鏡的硬化療法、EISは、静脈瘤の中にオレイン酸モノエタノールアミンなどの硬化剤を、あるいは静脈瘤の周囲にポリドカノールを注入して、血栓形成と線維化で静脈瘤とその供血路を閉塞させる治療だ。もう一つの柱が内視鏡的静脈瘤結紮術、EVLで、ゴムバンドで静脈瘤を縛って壊死・脱落させる。選択肢の中でこれらに当たるのは硬化療法なので、これが正解になる。
医学生医学生
EISとEVLはどう使い分けるんでしょうか。
ドクタードクター
EISは供血路まで閉塞できるので再発が比較的少ない一方、発熱、胸痛、食道潰瘍や狭窄、硬化剤による溶血に伴う腎障害などの合併症があり、高度の肝障害や腎障害がある人では適応を慎重に判断する。EVLは手技が簡便で全身への影響が少なく緊急止血に向くが、供血路が残るため再発しやすい。両者を組み合わせることもあるんだ。
医学生医学生
そういえば、レーザーやアルゴンプラズマ凝固が静脈瘤治療の話で出てきた記憶もあるんですが。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。EISやEVLで静脈瘤を消失させた後、残った細い血管網をなくして再発を防ぐ目的で、粘膜を焼灼する地固め療法として使われることがある。ただあくまで追加の処置で、最初から静脈瘤そのものを治療する手段ではない。
医学生医学生
潰瘍出血には凝固やクリッピング、腫瘍には切除、静脈瘤にはEISかEVL、と病変ごとに手技を対応させて覚えるんですね。
ドクタードクター
その整理が大事だ。臨床での注意点も押さえておこう。破裂時はまず輸液・輸血で循環動態を安定させ、内視鏡で止血できないときは一時的にSengstaken-Blakemoreチューブでバルーン圧迫止血を行う。胃の孤立性静脈瘤ではシアノアクリレート系組織接着剤の注入やB-RTOが選ばれ、門脈圧そのものを下げる治療として非選択的β遮断薬やTIPSも知られている。肝硬変の患者さんを診るときは、定期的な内視鏡で静脈瘤の形態や発赤所見を確認し、破裂前に手を打つ姿勢が求められるよ。

まとめ

食道の長軸に沿って走る青色調の数珠状・結節状隆起は食道静脈瘤の典型像で、主に肝硬変などによる門脈圧亢進症で側副血行路の静脈が拡張・蛇行して生じます。内視鏡治療の標準は、硬化剤を注入して静脈瘤と供血路を閉塞させる内視鏡的硬化療法(EIS)と、ゴムバンドで結紮する内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)の2本柱です。熱凝固やクリッピングは潰瘍などの非静脈瘤性出血、切除やレーザーは腫瘍に対する治療であり、静脈瘤を切除すると大出血を招くため禁忌です。形態が大きい、青色調、発赤所見を伴う静脈瘤は破裂リスクが高く予防的治療の適応となるため、病変と手技の対応を整理し、破裂前に介入する視点を持つことが臨床で重要です。

解答・解説

正解はcです

画像の読み取り

内視鏡像では、食道の長軸方向に沿って走る青白色〜青色調の数珠状・結節状の隆起が認められる。粘膜下の拡張・蛇行した静脈がそのまま盛り上がって見えるもので、食道静脈瘤の典型像である。潰瘍底の露出血管や腫瘍性病変のような限局性病変ではなく、「縦走する複数条の静脈性隆起」である点が判読の決め手となる。

背景となる病態

食道静脈瘤は、主に肝硬変などによる門脈圧亢進症の結果、門脈血が左胃静脈(胃冠状静脈)などの側副血行路を経て食道粘膜下の静脈へ流れ込み、その静脈が拡張・蛇行して生じる。破裂すると大量吐血を来し致死的となりうるため、破裂例の止血だけでなく、発赤所見(red color sign)を伴うなど破裂リスクの高い静脈瘤に対する予防的治療も行われる。

設問の考え方

内視鏡治療は「どの病変に、どの手技を用いるか」の対応で整理する。静脈瘤は太い静脈そのものが病変であるため、血管内(あるいは血管周囲)に硬化剤を注入して血管を閉塞させる内視鏡的硬化療法(EIS)か、ゴムバンドで静脈瘤を縛って壊死・脱落させる内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)が標準である。選択肢のうちこれに当たるのは硬化療法である。潰瘍出血に用いる凝固やクリッピング、腫瘍に用いる切除やレーザーとは適応が異なる。

選択肢考察

  1. ×a.  凝固

    高周波電流やアルゴンプラズマ凝固(APC)、ヒータープローブなどによる熱凝固は、胃・十二指腸潰瘍や急性胃粘膜病変(AGML)からの出血点を焼灼して止血する方法である。拡張した太い静脈の集合である静脈瘤を熱で焼いても閉塞させることはできず、かえって粘膜損傷から大出血を招くおそれがあるため、静脈瘤の一次治療には用いない。

  2. ×b.  クリッピング

    クリッピングは金属製のクリップで出血血管を把持・圧迫する止血法で、主に消化性潰瘍の露出血管からの動脈性出血や、内視鏡的切除後の創部閉鎖などに用いる。静脈瘤は壁の薄い太い静脈が数条にわたって走行しており、クリップで挟んでも血流を遮断できず、裂けて出血を増悪させうるため適応とならない。

  3. ○c.  硬化療法

    内視鏡的硬化療法(EIS: endoscopic injection sclerotherapy)は、静脈瘤内にオレイン酸モノエタノールアミン(EO)などの硬化剤を、あるいは静脈瘤周囲にポリドカノール(AS)を注入し、血栓形成・線維化によって静脈瘤とその供血路を閉塞させる治療である。内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)と並ぶ食道静脈瘤の標準的内視鏡治療であり、破裂時の緊急止血にも破裂予防にも用いられる。供血路まで閉塞できるため再発が比較的少ない一方、手技の侵襲はEVLより大きく、高度肝障害例などでは施行が制限される。

  4. ×d.  切除

    内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などの切除は、早期癌や腺腫などの腫瘍性病変に対して行う治療である。静脈瘤を切除すれば拡張した静脈を直接損傷することになり、制御困難な大出血を来すため禁忌である。

  5. ×e.  レーザー

    レーザー焼灼は、切除困難な腫瘍の焼灼や腫瘍による狭窄の開通などに用いられてきた方法で、静脈瘤の一次治療には用いない。なお、EISやEVLで静脈瘤を消失させた後、残存する細い血管網をなくして再発を防ぐ目的で、アルゴンプラズマ凝固法やレーザーによる粘膜の焼灼(地固め療法)が追加されることはあるが、最初から静脈瘤そのものを治療する手段ではない。

食道静脈瘤の内視鏡所見

記載には、占居部位(上部・中部・下部食道)、形態(F1: 直線的で細い、F2: 連珠状で中等度、F3: 結節状・腫瘤状で太い)、基本色調(白色・青色)、発赤所見(red color sign: ミミズ腫れ様、チェリーレッドスポット、血マメ様など)、出血所見、粘膜所見を用いる。形態が大きいもの、青色調のもの、発赤所見を伴うものは破裂の危険が高く、予防的治療の適応となる。

EISとEVLの比較

・EIS(内視鏡的硬化療法): 硬化剤を注入して静脈瘤と供血路を閉塞させる。再発が少ないが、発熱、胸痛、食道潰瘍・狭窄、硬化剤による腎障害(溶血に伴うヘモグロビン尿)などの合併症があり、高度の肝機能障害や腎機能障害例では慎重に適応を判断する。 ・EVL(内視鏡的静脈瘤結紮術): 静脈瘤をゴムバンド(Oリング)で結紮して壊死・脱落させる。手技が簡便で全身への影響が少なく、緊急止血に用いやすいが、供血路が残るため再発しやすい。 ・両者を組み合わせたり、治療後にAPCなどで地固めを行ったりすることもある。

内視鏡治療以外

破裂時には循環動態の安定化(輸液・輸血)とともに、止血が困難な場合はSengstaken-Blakemore(S-B)チューブによるバルーン圧迫止血を一時的に行う。胃静脈瘤(特に孤立性の穹窿部静脈瘤)ではシアノアクリレート系組織接着剤の注入やバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)が選択される。門脈圧を下げる治療として、非選択的β遮断薬や経頸静脈的肝内門脈大循環シャント術(TIPS)なども知られる。

主な内視鏡治療と適応の整理

・熱凝固、クリッピング、純エタノールや高張ナトリウム-エピネフリン液(HSE)の局注: 潰瘍出血などの非静脈瘤性出血 ・EMR、ESD: 早期癌、腺腫などの腫瘍 ・EIS、EVL: 食道・胃静脈瘤 ・内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST): 総胆管結石 ・ステント留置: 悪性狭窄(食道癌など) ・バルーン拡張術: 良性狭窄、アカラシアなど

POINT

・食道長軸に沿った青色調の数珠状・結節状隆起は食道静脈瘤である。 ・食道静脈瘤の内視鏡治療は硬化療法(EIS)と結紮術(EVL)の2本柱である。 ・凝固・クリッピングは潰瘍などの出血、切除・レーザーは腫瘍に対する治療であり、病変と手技の対応を整理しておく。 ・静脈瘤の切除は大出血を招くため禁忌である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。