StudyMed医師国家試験

膵に散らばる白い粒―慢性膵炎は「形・外分泌・内分泌」の3本柱で評価せよ

第104回医師国家試験 G問題 第41問

国試問題にチャレンジ

第104回 G問題 第41問

39歳の男性。腹痛を主訴に来院した。10年前からたびたび腹痛発作で通院加療を受けている。来院時の腹部造影CT(A)(B)を別に示す。  診断に有用なのはどれか。3つ選べ。

第104回 G問題 第41問の問題画像
  1. a.胃液検査
  2. b.BT-PABA試験
  3. c.pHモニタリング
  4. d.経口ブドウ糖負荷試験〈OGTT〉
  5. e.磁気共鳴胆管膵管撮影〈MRCP〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、長年くり返す腹痛と腹部造影CTから疾患を見抜き、その評価に役立つ検査を選ぶ問題だ。ポイントは2つ。CTで何が写っているかを読み取ること、そしてその病気が膵臓のどんな機能を壊していくかを考えることだ。まずCTを見て、何に気づいたかな。
医学生医学生
膵臓の頭部から体尾部にかけて、白い点状の影がたくさんあります。石灰化でしょうか。
ドクタードクター
その通り。膵実質や膵管に沿って多発する石灰化、つまり膵石だね。膵に一致した石灰化は慢性膵炎に特徴的で、日本の診断基準でも確診所見の一つに数えられている。10年来の腹痛発作は、慢性膵炎の急性増悪をくり返してきたと考えると筋が通る。
医学生医学生
消化器内科の講義で、慢性膵炎の成因はアルコールが一番多いと習いました。この方も飲酒歴を聞きたくなりますね。
ドクタードクター
いい姿勢だね。問題文に飲酒歴はないけれど、中年男性で膵石を伴う慢性膵炎ならまずアルコール性を考えて問診する。さて、慢性膵炎は膵臓に炎症が続いて実質が線維化し、脱落していく病気だ。膵臓の仕事を思い出すと、どんな障害が起こりそうかな。
医学生医学生
消化酵素を出す外分泌と、インスリンを出す内分泌の両方がやられそうです。
ドクタードクター
そう。そこに膵管や実質の形の変化を加えた「形態・外分泌・内分泌」の3本柱で評価するのが慢性膵炎の基本なんだ。まず形態から。磁気共鳴胆管膵管撮影、MRCPはどう役立つと思う?
医学生医学生
MRIで膵管を描き出す検査ですよね。でも造影剤なしで本当に膵管が見えるのか、ちょっと不思議でした。
ドクタードクター
T2強調像では膵液や胆汁のような水分が高信号になるから、造影剤なしで胆管と膵管が浮かび上がるんだ。慢性膵炎では主膵管の不規則な拡張や狭窄、分枝膵管の拡張、膵管内の結石による陰影欠損などが見える。ERCPと違って非侵襲的で、ERCP後膵炎の心配がないのも大きな利点だ。
医学生医学生
次は外分泌ですね。BT-PABA試験は名前だけ覚えていて、中身はあやふやです。
ドクタードクター
CBTでも狙われやすいから整理しよう。BT-PABAという合成ペプチドを飲ませると、小腸で膵酵素のキモトリプシンに分解されてPABAになり、吸収されて尿中に出てくる。だから尿中PABA排泄率を測れば、膵のキモトリプシン分泌能を間接的に評価できる。慢性膵炎で外分泌が落ちると排泄率が下がるわけだ。
医学生医学生
なるほど、酵素がちゃんと働いたかを尿で確かめる仕組みなんですね。じゃあ内分泌の評価が経口ブドウ糖負荷試験ですか。
ドクタードクター
その通り。線維化がランゲルハンス島にまで及ぶとインスリン分泌が落ちて、膵性糖尿病になる。75gのブドウ糖を飲んで血糖とインスリンの推移を見るOGTTで、この内分泌機能の低下を評価できるんだ。
医学生医学生
残りの胃液検査とpHモニタリングは、膵臓とは関係なさそうに見えます。
ドクタードクター
そうだね。胃液検査は胃酸分泌量を測る検査で、ガストリノーマによるZollinger-Ellison症候群の評価などに使う。24時間食道pHモニタリングは胃酸の逆流を調べる検査で、胃食道逆流症、特に内視鏡でびらんのない非びらん性逆流症の評価に用いる。どちらも膵の形や機能は反映しない。
医学生医学生
形態をMRCP、外分泌をBT-PABA試験、内分泌をOGTTで見る、という3つの組み合わせが正解ですね。
ドクタードクター
完璧だ。発展知識として臨床経過も押さえておこう。初期は腹痛と急性増悪をくり返すけれど、膵の破壊が進んだ非代償期にはかえって腹痛が軽くなり、代わりに脂肪便や体重減少、膵性糖尿病が前面に出てくることがある。
医学生医学生
痛みが減ったからよくなった、とは限らないんですね。治療はどうなりますか。
ドクタードクター
基本は禁酒と禁煙。外分泌不全には高力価の消化酵素薬、膵性糖尿病にはインスリン療法を行う。ここで注意したいのが、膵性糖尿病ではグルカゴン分泌も落ちているから、インスリン治療中に低血糖を起こしやすく、しかも遷延しやすいことだ。膵石や膵管狭窄にはESWLや内視鏡治療、手術が選ばれることもあるし、慢性膵炎は膵癌の危険因子でもあるから、長期的な経過観察が欠かせない。
医学生医学生
臨床実習で糖尿病の患者さんを診るときも、背景に膵臓の病気がないか意識してみます。

まとめ

膵に一致した多発石灰化(膵石)は慢性膵炎に特徴的な画像所見で、反復する腹痛発作は急性増悪を示唆します。慢性膵炎は膵実質の線維化・脱落によって、膵管や実質の形態変化、外分泌機能低下、内分泌機能低下が進む疾患であり、MRCPで形態を、BT-PABA試験(尿中PABA排泄率)で外分泌を、OGTTで内分泌を評価します。胃液検査はZollinger-Ellison症候群、食道pHモニタリングは胃食道逆流症の検査で、膵の評価には用いません。非代償期には腹痛がむしろ軽減し、脂肪便や膵性糖尿病が目立つこと、膵性糖尿病はグルカゴン分泌低下のため低血糖を起こしやすいことも臨床上重要です。「形態・外分泌・内分泌」の3本柱で考える習慣は、慢性膵炎の診断から治療方針の決定までを一貫して理解する助けになります。

解答・解説

正解はb, d, eです

所見の整理

・39歳の男性で、10年前から腹痛発作を繰り返している:慢性的に再燃する腹部疾患を考える。 ・腹部造影CT:膵体尾部(A)と膵頭部(B)に、膵実質や膵管に沿った多発性の石灰化(膵石)を認める。

診断

膵に一致する石灰化は慢性膵炎に特徴的な画像所見であり、慢性膵炎の診断基準では確診所見の一つとされる。長年繰り返してきた腹痛発作は、慢性膵炎の急性増悪(再燃)と考えられる。飲酒歴は示されていないが、若年〜中年の男性で膵石を伴う慢性膵炎の成因として最も多いのはアルコールである。

設問の考え方

慢性膵炎は、膵臓の持続的な炎症によって膵実質が線維化・脱落し、膵管の不整や膵石が形成される疾患である。進行すると次の3方向から評価が必要となる。 ①膵管・実質の形態変化:MRCPなどの画像検査で評価する ②外分泌機能の低下(消化酵素の分泌低下→脂肪便・体重減少):膵外分泌機能検査(BT-PABA試験など)で評価する ③内分泌機能の低下(インスリン分泌低下→膵性糖尿病):OGTTなどで評価する したがって、形態・外分泌・内分泌のそれぞれを調べる検査が有用である。胃酸分泌や食道の酸逆流を調べる検査は、慢性膵炎の診断には関係しない。

選択肢考察

  1. ×a.  胃液検査

    胃液検査は胃酸の分泌量を測定する検査で、ガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)による胃酸過剰分泌を来すZollinger-Ellison症候群の評価などに用いる。膵の形態や膵外分泌・内分泌機能を反映しないため、慢性膵炎の診断には役立たない。

  2. ○b.  BT-PABA試験

    BT-PABA試験(PFD試験)は膵外分泌機能検査である。合成ペプチドBT-PABA(N-ベンゾイル-L-チロシル-パラアミノ安息香酸)を内服させる。これは小腸内で膵酵素のキモトリプシンにより分解されてPABA(パラアミノ安息香酸)となり、吸収されて尿中に排泄される。そこで尿中PABA排泄率を測定すると、膵のキモトリプシン分泌能を間接的に評価できる。慢性膵炎で外分泌機能が低下すると排泄率が低下するため、診断や重症度評価に有用である。

  3. ×c.  pHモニタリング

    24時間食道pHモニタリングは、食道下部にpHセンサーを留置して胃酸の逆流の頻度や時間を測定する検査である。胃食道逆流症〈GERD〉の診断、特に内視鏡でびらんを認めない非びらん性逆流症の評価に用いる。慢性膵炎の診断には用いない。

  4. ○d.  経口ブドウ糖負荷試験〈OGTT〉

    慢性膵炎が進行して膵実質が線維化すると、ランゲルハンス島も障害され、インスリン分泌が低下する。その結果、耐糖能異常や糖尿病(膵性糖尿病)が生じる。OGTT(75 gのブドウ糖を内服させ、血糖値とインスリン値の推移をみる検査)は、この膵内分泌機能の低下を評価するのに有用である。膵性糖尿病ではグルカゴン分泌も低下するため、インスリン治療中に低血糖を起こしやすく、遷延しやすいという特徴がある。

  5. ○e.  磁気共鳴胆管膵管撮影〈MRCP〉

    MRCPは、T2強調像で膵液や胆汁などの水分が高信号に写る性質を利用し、造影剤を使わずに胆管・膵管を描出するMRI検査である。慢性膵炎では、主膵管の不規則な拡張や狭窄、分枝膵管の不規則な拡張、膵管内の結石(陰影欠損として描出)などがみられ、形態診断に有用である。内視鏡的逆行性胆管膵管造影〈ERCP〉と違って非侵襲的であり、ERCP後膵炎の危険がない。

慢性膵炎の概要

膵臓に持続的な炎症が起こり、膵実質の脱落と線維化によって、膵外分泌機能・内分泌機能が不可逆的に低下していく疾患である。男性に多く、成因はアルコール性が最多である。ほかに特発性、遺伝性(PRSS1、SPINK1遺伝子変異など)、高脂血症などがある。喫煙も危険因子となる。

臨床経過

・代償期:反復する上腹部痛・背部痛が主体で、急性増悪を繰り返す。 ・移行期を経て非代償期へ:膵の破壊が進むと、腹痛はかえって軽減することがある。代わりに消化吸収障害(脂肪便、体重減少)と膵性糖尿病が前面に出る。

診断に用いる主な検査

・画像検査:腹部超音波、CT(膵石・膵石灰化、膵管拡張、膵萎縮)、MRCP、超音波内視鏡〈EUS〉、ERCP ・血液・尿検査:急性増悪時は血中・尿中の膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1など)が上昇する。非代償期には膵酵素が低値となることがある。 ・膵外分泌機能検査:BT-PABA試験など ・膵内分泌機能検査:OGTT、HbA1c、血中Cペプチドなど

診断基準の要点

日本の慢性膵炎臨床診断基準では、特徴的な画像所見が最も重視される。CTで膵管内の結石または膵全体に分布する複数ないしびまん性の石灰化を認めれば、確診所見となる。これに特徴的な組織所見、反復する上腹部痛、膵酵素値の異常、膵外分泌障害、大量飲酒歴などを組み合わせて診断する。

治療

禁酒・禁煙が基本である。疼痛にはNSAIDsなどの鎮痛薬を用いる。外分泌不全には高力価の消化酵素薬を、膵性糖尿病にはインスリン療法を行う。膵石や膵管狭窄に対しては、体外衝撃波結石破砕術〈ESWL〉、内視鏡的治療、外科手術(膵管空腸側々吻合術など)が選択される。慢性膵炎は膵癌の危険因子でもある。

POINT

・膵に一致した石灰化(膵石)は慢性膵炎の確診所見である ・慢性膵炎の評価は「形態」「外分泌」「内分泌」の3本柱  形態:MRCP、EUS、ERCP、CT  外分泌:BT-PABA試験(尿中PABA排泄率の低下)  内分泌:OGTT(膵性糖尿病。低血糖を起こしやすい) ・胃液検査はZollinger-Ellison症候群、pHモニタリングはGERDの検査

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。