StudyMed医師国家試験

鏡ひとつで声帯を覗く―耳鼻科診察器具の見分け方

第104回医師国家試験 F問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第104回 F問題 第1問

頭頸部の診療で用いる器具(①~⑤)を別に示す。  声帯の観察に用いるのはどれか。

第104回 F問題 第1問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、耳鼻咽喉科・頭頸部の診察で使う基本器具を見分けて、声帯の観察に使うものを選ぶ問題だ。ポイントは「声帯がどこにあって、なぜ正面から見えないのか」を考えること。まず、口を大きく開けてもらえば声帯は見えるかな。
医学生医学生
見えないと思います。声帯は喉頭の中にあって、舌根や喉頭蓋の奥、しかも下向きの方向にあるので、正面からは覗けません。
ドクタードクター
その通り。だから光と鏡を使って、曲がった先を「反射で」見る工夫が必要になる。そこで古くから使われてきたのが間接喉頭鏡だ。長い柄の先に小さな円形の鏡が斜めに付いた器具だね。
医学生医学生
器具の中で、柄の先に小さな丸い鏡が付いているものがそれですね。歯医者さんのミラーに少し似ています。
ドクタードクター
形のイメージとしてはそれで合っている。使い方は、患者さんに舌を前に出してもらい、術者がガーゼで舌を保持する。鏡は体温くらいに温めて曇りを防ぎ、口蓋垂の後方付近まで入れて、額帯鏡で光を当てると鏡に喉頭が映るんだ。
医学生医学生
鏡を温めるのは、息で曇るからなんですね。OSCEの練習では舌圧子と耳鏡くらいしか触らなかったので新鮮です。
ドクタードクター
そうだね。鏡には喉頭蓋、声帯や仮声帯、披裂部、下咽頭の梨状陥凹まで映る。「エー」や「イー」と発声してもらえば、声帯が正中に寄る動きも確認できる。では他の器具を見ていこう。先端が二枚のくちばし状に開く短い器具は何だと思う?
医学生医学生
鼻の穴に入れて広げる鼻鏡ですか。
ドクタードクター
正解。前鼻鏡で、鼻前庭や鼻腔の前方、下鼻甲介や中鼻甲介の前端、鼻中隔の前部を観察する。そして同じくちばし状でも先端が長いものは長鼻鏡で、鼻腔の奥や上方の観察、鼻中隔矯正術などの手術で術野を確保するのに使うんだ。
医学生医学生
似た形なので、長さで区別するんですね。漏斗のような形のものは耳鏡でしょうか。
ドクタードクター
そう、耳鏡だ。外耳道に挿入して外耳道と鼓膜を見る。成人では耳介を後上方に引くと外耳道がまっすぐになって見やすい。最後の平たいへら状の器具は?
医学生医学生
舌圧子ですね。扁桃炎の患者さんで口蓋扁桃を見るときに使いました。これで声帯まで見えないんですか。
ドクタードクター
舌を押し下げれば口腔や中咽頭、つまり口蓋扁桃や口蓋垂、咽頭後壁までは見えるけれど、声帯はさらに奥で下を向いているから届かない。だから舌圧子だけでは声帯は観察できないんだ。
医学生医学生
間接喉頭鏡と似た器具で、後鼻鏡というのもありましたよね。混同しそうです。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。後鼻鏡も口から入れる小さな鏡だけど、鏡を上向きにして鼻腔後方や上咽頭、アデノイドや耳管咽頭口を見る。間接喉頭鏡は下向きにして喉頭を見る。向きと観察部位をセットで覚えるといい。
医学生医学生
鏡で見るということは、像が反転して見えるんですか。
ドクタードクター
鋭いね。間接喉頭鏡の像は前後が逆転して見える。像の上方が喉頭の前方、つまり前連合側になる。一方、左右は実際と同じなんだ。声帯の病変の位置を記載するときに大事になる。
医学生医学生
耳鼻科の実習では、鼻から細いファイバーを入れて声帯を見ていました。
ドクタードクター
現在の臨床ではそれが主流だね。喉頭ファイバースコープは咽頭反射が強い人でも観察しやすく、録画もできる。声帯振動を見るなら喉頭ストロボスコピー、手術では全身麻酔下の直達喉頭鏡を使う。それでも間接喉頭鏡は「鏡で反射させて見る」という喉頭観察の原点だから、構造と使い方は押さえておこう。

まとめ

声帯は喉頭の奥で下方を向いて位置するため、口を開けて正面から覗いても直接は見えず、柄の先に小さな円形の鏡が付いた間接喉頭鏡で反射像として観察します。鏡を温めて曇りを防ぎ、舌を前方に保持して口蓋垂の後方に挿入すると、喉頭蓋・声帯・披裂部・梨状陥凹が映り、発声させれば声帯運動も評価でき、像は前後が逆転し左右は実際と同じです。鼻鏡は鼻腔前方、長鼻鏡は鼻腔深部、耳鏡は外耳道と鼓膜、舌圧子は口腔と中咽頭、後鼻鏡は上咽頭と、器具と観察部位を対応させて覚えることが大切です。現在は喉頭ファイバースコープが主流ですが、基本器具の構造と用途を理解しておくことは、耳鼻咽喉科診察の基礎として臨床実習でも役立ちます。

解答・解説

正解はbです

耳鼻咽喉科・頭頸部の診察で使う基本的な器具を見分け、声帯の観察に用いるものを選ぶ問題である。 声帯は喉頭の内部にあり、口を開けて正面から覗き込んでも直接は見えない。そこで古くから用いられてきたのが間接喉頭鏡である。これは長い柄の先に小さな円形の鏡を斜めに取り付けた器具で、患者に舌を前に出させて術者がガーゼで舌を保持し、温めて曇りを防いだ鏡を口蓋垂(のどちんこ)の後方付近まで挿入する。額帯鏡などで光を当てると、鏡に喉頭の像が映り、声帯・喉頭蓋・披裂部・梨状陥凹などを観察できる。発声(「エー」「イー」)させれば声帯の運動も評価できる。 図の器具のうち、柄の先に小さな円形の鏡が付いた②が間接喉頭鏡であり、これが正解である。①は鼻鏡、③は耳鏡、④は長鼻鏡、⑤は舌圧子で、いずれもほかの部位を観察するための器具である。 なお現在の臨床では、喉頭ファイバースコープ(軟性内視鏡)や電子内視鏡による観察が主流になっている。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    ①は鼻鏡(前鼻鏡、クリアン型など)である。二枚の嘴状の先端を外鼻孔に入れて開き、鼻前庭や鼻腔前方(下鼻甲介・中鼻甲介の前端、鼻中隔前部など)を観察する前鼻鏡検査に用いる。声帯の観察には使わない。

  2. ○b.  ②

    ②は間接喉頭鏡である。柄の先の小さな円形の鏡を口腔から咽頭後方へ挿入し、鏡に反射した像で喉頭を観察する(間接喉頭鏡検査)。喉頭蓋、声帯(仮声帯を含む)、披裂部、下咽頭の梨状陥凹などが観察でき、発声させることで声帯の動きも確認できる。挿入前に鏡を体温程度に温めて曇りを防ぎ、舌を前方に引き出して視野を確保するのが手技の要点である。

  3. ×c.  ③

    ③は耳鏡(漏斗状の耳鏡)である。外耳道の入口に挿入し、耳毛や外耳道の屈曲を避けながら光を当てて外耳道や鼓膜を観察する。成人では耳介を後上方に引くと外耳道が直線化して観察しやすい。声帯の観察には使わない。

  4. ×d.  ④

    ④は長鼻鏡(キリアン型など、先端の長い鼻鏡)である。鼻腔のより奥や上方を観察・操作するために用いられ、鼻中隔矯正術などの手術の際にも術野の確保に使われる。診察での鼻腔深部の観察は、現在は鼻内視鏡(ファイバースコープ)で行われることが多い。声帯の観察には使わない。

  5. ×e.  ⑤

    ⑤は舌圧子である。舌を下方へ押し下げて視野を確保し、口腔や中咽頭(口蓋扁桃、口蓋垂、咽頭後壁など)を観察するのに用いる。舌圧子だけでは声帯までは見えない。

耳鼻咽喉科の主な診察器具と観察部位

・額帯鏡:光源の光を反射させて観察部位を照らす凹面鏡。中央の穴から覗いて観察する。 ・耳鏡:外耳道・鼓膜。 ・鼻鏡(前鼻鏡):鼻前庭・鼻腔前方。 ・長鼻鏡:鼻腔深部・上方、鼻中隔手術の視野確保。 ・後鼻鏡:小さな鏡を口から咽頭に入れ、上方に向けて鼻腔後方・上咽頭(アデノイド、耳管咽頭口)を観察する。形は間接喉頭鏡に似るが、鏡は小さく、上向きに用いる。 ・間接喉頭鏡:喉頭(声帯を含む)・下咽頭。鏡を下向きに用いる。 ・舌圧子:口腔・中咽頭。

喉頭の観察法

・間接喉頭鏡検査:鏡像であるため、観察像の前後は逆転して見える(像の上方が喉頭の前方=前連合側)。左右は実際と同じである。 ・喉頭ファイバースコープ(軟性内視鏡):鼻腔から挿入して観察する。咽頭反射が強い人でも観察しやすく、録画も可能で、現在の主流である。 ・喉頭ストロボスコピー:声帯振動の観察に用いる。 ・直達喉頭鏡:全身麻酔下に喉頭を直視し、喉頭微細手術(ラリンゴマイクロサージェリー)などに用いる。

POINT

・声帯の観察には間接喉頭鏡(柄の先に小さな円形の鏡)や喉頭ファイバースコープを用いる。 ・鼻鏡→鼻腔前方、長鼻鏡→鼻腔深部、耳鏡→外耳道・鼓膜、舌圧子→口腔・中咽頭、後鼻鏡→上咽頭。 ・間接喉頭鏡の像は前後が逆転する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。