StudyMed医師国家試験

国連機関か、日本の機関か―略称の「中身」で解く国際協力の地図

第104回医師国家試験 E問題 第35問

国試問題にチャレンジ

第104回 E問題 第35問

国際機関と事業内容の組合せで正しいのはどれか。

  1. a.JICA ―― 専門家派遣による技術協力
  2. b.UNESCO ―― 児童の福祉・健康改善
  3. c.UNHCR ―― 二国間無償資金協力
  4. d.UNICEF ―― 政府開発援助
  5. e.WHO ―― 難民の帰還支援

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は国際保健に関わる機関と、その事業内容を対応させる問題だ。着眼点は2つ。1つは、並んでいる機関を「国連の機関」と「日本の機関」に分けること。もう1つは、略称を日本語の正式名称に置き換えることだ。名前がわかれば、何をしている機関かはほぼ自然に見えてくるよ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で一通り習ったんですが、アルファベットが並ぶと正直混乱します。UNから始まるものは全部国連ですよね。
ドクタードクター
そう、UNESCO、UNHCR、UNICEF、そしてWHOは国連の専門機関、あるいは国連総会が設けた機関で、多くの国が参加する多国間の枠組みで活動している。一方でJICA、国際協力機構は日本の独立行政法人で、日本政府の政府開発援助、つまりODAを実施する機関なんだ。
医学生医学生
ということは、ODAや二国間の資金協力みたいな「日本政府の援助」が国連機関と組み合わされていたら、その時点でおかしいということですか。
ドクタードクター
その通り。ODAは各国政府やその実施機関が開発途上国に行う援助だから、国連機関の事業ではない。ここで2つの選択肢がすぐに外せるね。難民支援の機関と二国間無償資金協力、子どもの機関と政府開発援助、という組み合わせだ。
医学生医学生
じゃあ正解はJICAと専門家派遣による技術協力でしょうか。JICAって青年海外協力隊のイメージが強いんですが。
ドクタードクター
正解だよ。協力隊の派遣ももちろんJICAの事業だけど、中心的な柱の一つが技術協力なんだ。日本の専門家を途上国に派遣する、相手国の人材を研修員として日本に受け入れる、必要な機材を供与する。これらを組み合わせて、相手国の人づくりや制度づくりを支える。保健分野でも母子保健や感染症対策、医療人材育成のプロジェクトが数多く行われているよ。
医学生医学生
さらにJICAは円借款や無償資金協力もやっているんですよね。だとすると、二国間無償資金協力という言葉自体は日本の事業として正しいんですね。
ドクタードクター
よく気づいたね。二国間無償資金協力は返済義務のない資金を供与するODAの一形態で、外務省とJICAが担っている。問題はそれを難民の機関と組み合わせた点にあるんだ。UNHCRは国連難民高等弁務官事務所で、難民や国内避難民の保護と、自主帰還・庇護国への定住・第三国定住といった恒久的解決を任務としている。
医学生医学生
そうか、最後の選択肢の「難民の帰還支援」は、WHOではなくUNHCRの仕事ですね。機関と事業を入れ替えたひっかけになっているんだ。
ドクタードクター
そういうこと。WHOは世界保健機関で、すべての人が最高水準の健康に到達することを目的としている。感染症対策、国際保健規則の策定、国際疾病分類つまりICDの作成、医薬品や食品の国際基準づくりなどが仕事だ。
医学生医学生
ICDは臨床実習でカルテの病名コードを見たときに出てきました。WHOが作っているんですね。では、ユネスコの「児童の福祉・健康改善」も入れ替えですか。
ドクタードクター
そう。UNESCOは国連教育科学文化機関で、教育・科学・文化を通じて平和に貢献する機関だ。基礎教育の普及や識字教育、世界遺産の登録・保護などが代表例だね。児童の福祉・健康改善はUNICEF、国連児童基金の事業で、予防接種の普及、栄養改善、安全な水と衛生などを通じて子どもを支えている。
医学生医学生
ユネスコは世界遺産、ユニセフは子ども、と覚えれば区別できそうです。名前に「教育科学文化」とか「児童」と入っているのがヒントですね。
ドクタードクター
まさに略称を日本語に直す効果だよ。ついでに周辺の機関も押さえておこう。労働者の安全衛生ならILO、食料・農業ならFAOで、FAOはWHOと合同で国際食品規格のコーデックス委員会を運営している。食料援助はWFP、人口問題やリプロダクティブ・ヘルスはUNFPA、HIV対策はUNAIDSだ。
医学生医学生
ODAにも二国間と多国間があると習った気がします。国連機関への拠出は多国間援助になるんでしたっけ。
ドクタードクター
その理解で合っている。日本のODAは、技術協力・有償資金協力・無償資金協力からなる二国間援助と、国連機関や国際金融機関への拠出・出資による多国間援助に分かれる。日本は国連機関を通じても、JICAを通じても国際保健に関わっているわけだ。将来、海外の医療支援や災害医療に関わりたいと思ったとき、どの機関がどんな役割を担うかを知っていると、進路の選択肢も広がるよ。
医学生医学生
国際緊急援助隊もJICAが派遣しているんですよね。救急の先生が参加したと話していたのを思い出しました。
ドクタードクター
そうだね。医師としての国際貢献は意外と身近なところにある。機関名を丸暗記するより、「誰が・どの枠組みで・何をするか」で整理しておこう。

まとめ

国際保健に関わる機関は、多国間の枠組みで活動する国連機関と、日本の政府開発援助(ODA)を実施するJICAに分けて整理すると理解しやすくなります。JICAは専門家派遣・研修員受け入れ・機材供与による技術協力のほか、無償資金協力や円借款、海外協力隊や国際緊急援助隊の派遣を担い、ODAや二国間資金協力は国連機関の事業ではありません。国連機関は、WHOが保健全般(感染症対策、国際保健規則、ICD)、UNICEFが子どもの健康・福祉、UNESCOが教育・科学・文化、UNHCRが難民の保護と帰還・定住支援を担います。ILO、FAO、WFP、UNFPA、UNAIDSなど周辺機関も含め、略称を日本語の正式名称に置き換えて役割を結びつけることが、この分野を確実に得点するコツであり、将来の国際医療協力を考える土台にもなります。

解答・解説

正解はaです

国際保健・国際協力に関わる機関の略称と、それぞれが担う事業内容を対応させる問題である。 まず、選択肢の機関を「国際連合(国連)の関連機関」と「日本の機関」に分けて考えるとよい。UNESCO、UNHCR、UNICEF、WHOはいずれも国連の専門機関または国連総会が設けた機関であり、多国間(マルチ)の枠組みで活動する。一方、JICA(国際協力機構)は日本政府の政府開発援助(ODA)を実施する独立行政法人であり、日本と相手国との二国間(バイ)の協力を担う。 したがって、「二国間無償資金協力」や「政府開発援助」といった日本のODAに関する事業は国連機関の事業ではない。また、各国連機関の名称(教育科学文化、難民、児童、保健)を正しく日本語に置き換えられれば、事業内容との対応はおのずと判断できる。

選択肢考察

  1. ○a.  JICA ―― 専門家派遣による技術協力

    正しい。JICA(国際協力機構。英語名の頭文字をとった略称)は、日本のODAを一元的に実施する独立行政法人である。選択肢の中で唯一、国連機関ではない。中心的事業の一つである技術協力では、日本の専門家を開発途上国へ派遣する、相手国の人材を研修員として日本に受け入れる、必要な機材を供与する、などの方法で相手国の人材育成や制度づくりを支援する。医療・保健分野でも、母子保健、感染症対策、保健医療人材育成などのプロジェクトが実施されている。このほか、青年海外協力隊(JICA海外協力隊)の派遣、有償資金協力(円借款)、無償資金協力の実施、国際緊急援助隊の派遣なども担っている。

  2. ×b.  UNESCO ―― 児童の福祉・健康改善

    誤り。UNESCO(ユネスコ、国連教育科学文化機関)は、教育・科学・文化・コミュニケーションを通じた国際協力によって平和に貢献することを目的とする国連の専門機関である。すべての人が基礎教育を受けられるようにする取り組み、識字教育、多様な文化の保護、世界遺産の登録・保護などが代表的な事業である。児童の福祉・健康改善を主に担うのはUNICEFである。

  3. ×c.  UNHCR ―― 二国間無償資金協力

    誤り。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所。1950年に国連総会の決議で設立)は、難民や国内避難民の保護と、難民問題の恒久的解決(自主帰還、庇護国への定住、第三国定住)を任務とする国連の機関である。難民の帰還支援はUNHCRの事業にあたる。二国間無償資金協力は、日本政府が開発途上国に返済義務のない資金を供与するODAの一形態であり、外務省およびJICAが実施する。

  4. ×d.  UNICEF ―― 政府開発援助

    誤り。UNICEF(ユニセフ、国連児童基金。1946年に戦後の子どもへの緊急援助機関として設立され、そのときの英語名の頭文字が略称として現在も使われている)は、子どもの生存・発達・保護を目的とする国連の機関である。開発途上国や紛争地域の子どもに対して、予防接種の普及、栄養改善、安全な水と衛生、基礎教育、保護などの支援を行う。児童の福祉・健康改善はUNICEFの事業である。政府開発援助(ODA)は、各国政府やその実施機関が開発途上国に対して行う資金・技術の援助であり、国連機関の事業ではない。

  5. ×e.  WHO ―― 難民の帰還支援

    誤り。WHO(世界保健機関)は、すべての人々が可能な限り最高の健康水準に到達することを目的とする国連の専門機関である(本部はジュネーブ)。感染症の制圧・撲滅、国際保健規則(IHR)など国際的な条約・規則の策定と勧告、国際疾病分類(ICD)の作成、医薬品やワクチン、食品の安全性に関する国際的な基準づくり、各国への政策支援・技術協力などを行う。難民の帰還支援はUNHCRの事業である。

主な国際保健・国際協力関連機関

・WHO(世界保健機関):保健全般。感染症対策、国際保健規則(IHR)、ICDの作成、健康に関する国際基準の策定。 ・UNICEF(国連児童基金):子どもの健康・栄養・教育・保護。予防接種、母子保健、安全な水の確保など。 ・UNESCO(国連教育科学文化機関):教育・科学・文化。基礎教育の普及、世界遺産。 ・UNHCR(国連難民高等弁務官事務所):難民・国内避難民の保護と帰還・定住支援。 ・ILO(国際労働機関):労働条件の改善、労働者の安全衛生。 ・FAO(国連食糧農業機関):食料・農業。WHOと合同でコーデックス委員会(国際食品規格)を運営。 ・WFP(国連世界食糧計画):食料援助。 ・UNFPA(国連人口基金):人口問題、リプロダクティブ・ヘルス。 ・UNAIDS(国連合同エイズ計画):HIV/AIDS対策。

日本の政府開発援助(ODA)

・二国間援助:技術協力、有償資金協力(円借款)、無償資金協力。主にJICAが実施する。 ・多国間援助:国連機関や国際金融機関などへの拠出・出資。 ・JICAの技術協力は、専門家派遣、研修員受け入れ、機材供与を組み合わせて行われる。

POINT

・JICAは日本の独立行政法人で、ODAによる二国間協力(専門家派遣による技術協力、資金協力、海外協力隊派遣など)を担う。 ・UNESCO:教育・科学・文化、UNHCR:難民支援、UNICEF:子どもの福祉・健康、WHO:保健全般。 ・政府開発援助(ODA)や二国間無償資金協力は国連機関ではなく各国政府(日本では外務省・JICA)の事業である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。