「誰を・何のために」で解く―公費医療と根拠法の正しい組み合わせ
第104回医師国家試験 E問題 第19問
国試問題にチャレンジ
公費医療と関連法の組合せで正しいのはどれか。
- a.結核医療 ―― 予防接種法
- b.医療扶助 ―― 児童福祉法
- c.措置入院 ―― 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律〈精神保健福祉法〉
- d.未熟児養育医療 ―― 母体保護法
- e.予防接種健康被害救済 ―― 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律〈感染症法〉
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
公費負担医療は、社会防衛のための強制入院、国の施策に伴う健康被害、生活困窮者の保障、長期療養や成育支援といった目的ごとに、法律で医療費の公費負担が定められた制度です。措置入院は精神保健福祉法に基づき、2名以上の精神保健指定医の判断と都道府県知事の権限で行われ、保険優先で残る自己負担分が公費で賄われます。結核医療は感染症法、医療扶助は生活保護法、未熟児養育医療は母子保健法、予防接種健康被害救済は予防接種法が根拠であり、自立支援医療は障害者総合支援法、指定難病は難病法と、法改正による移行も含めて整理しておくことが大切です。「誰を・何のために」支援する制度かを考える習慣は、試験対策だけでなく、患者さんを適切な社会資源につなぐ臨床の力にも直結します。
解答・解説
正解はcです
テーマ
公費負担医療(公費医療)とは、医療費の全部または一部を国や地方自治体が税財源で負担する制度である。日本の医療費は原則として医療保険でまかなわれ、残りを患者が自己負担するが、特定の目的のために法律で公費負担が定められている場合がある。本問は、代表的な公費医療とその根拠法を正しく対応させられるかを問う。
公費負担が行われる理由
大きく次のように整理できる。 ・社会防衛のために本人の意思によらない入院などを求める場合(感染症の入院勧告、精神障害者の措置入院など)。強制を伴う以上、費用を公が負担するのが筋とされる。 ・国の施策に伴って一定の確率で避けられない健康被害が生じる場合(予防接種の健康被害救済など)。 ・経済的に困窮している人の生活保障(生活保護の医療扶助)。 ・長期の療養で負担が大きい疾患や、健やかな成育のための支援(難病、小児慢性特定疾病、未熟児養育医療、自立支援医療など)。
解き方
各制度の名称から、「誰を・何のために」支援する制度かを考えると根拠法に結びつけやすい。結核は感染症対策、医療扶助は生活保護、措置入院は精神保健、未熟児は母子の健康、予防接種の被害は予防接種そのものの法律、と対応させれば、正しいのは措置入院と精神保健福祉法の組合せである。
選択肢考察
- ×a. 結核医療 ―― 予防接種法
結核の医療費の公費負担は感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)に基づく。結核はかつて結核予防法で扱われていたが、同法は2007年に廃止され感染症法に統合された。感染症法では、入院勧告・措置による入院医療では医療保険を適用したうえで残る自己負担分が公費で負担され(所得に応じた一部負担あり)、通院による一般医療では医療費の95%から保険給付分を差し引いた額が公費負担となる(患者負担は5%)。予防接種法はBCGなどの予防接種の実施を定める法律で、結核治療の医療費とは関係しない。
- ×b. 医療扶助 ―― 児童福祉法
医療扶助は生活保護法に定められた扶助の一つである。生活保護には生活・教育・住宅・医療・介護・出産・生業・葬祭の8種類の扶助があり、医療扶助は指定医療機関での現物給付(医療そのものの提供)として行われ、原則として患者の自己負担はない。児童福祉法に基づく公費医療としては、小児慢性特定疾病医療費の支給や、結核にかかった児童への療育の給付などがある。
- ○c. 措置入院 ―― 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律〈精神保健福祉法〉
措置入院は精神保健福祉法(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)第29条に基づく入院形態である。2名以上の精神保健指定医が診察し、いずれも「精神障害のために自身を傷つけ、または他人に害を及ぼすおそれ(自傷他害のおそれ)がある」と判断した場合に、都道府県知事(政令指定都市の市長)の権限で入院させる。本人の同意によらない行政処分であるため、入院医療費は医療保険を優先適用したうえで、残りの自己負担分を公費で負担する(本人・扶養義務者の所得に応じて費用徴収が行われることがある)。
- ×d. 未熟児養育医療 ―― 母体保護法
未熟児養育医療は母子保健法第20条に基づく。出生時体重が2,000g以下の児や、生活力が特に弱く一定の症状を示す児で、入院による養育が必要と認められた場合に、指定養育医療機関での医療費が公費で給付される(所得に応じた自己負担あり)。実施主体は市町村である。母体保護法は、不妊手術と人工妊娠中絶の要件や手続き、受胎調節の実地指導などを定める法律であり、未熟児の医療費とは関係しない。
- ×e. 予防接種健康被害救済 ―― 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律〈感染症法〉
予防接種による健康被害の救済は予防接種法に定められている。予防接種法に基づく定期接種(A類疾病・B類疾病)や臨時接種によって健康被害が生じ、厚生労働大臣が接種との因果関係を認めた場合、市町村が医療費・医療手当、障害児養育年金、障害年金、死亡一時金などを給付する。法律に基づかない任意接種による健康被害は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)による医薬品副作用被害救済制度の対象となる。感染症法は感染症の発生予防やまん延防止、患者への医療を定める法律で、予防接種の被害救済は規定していない。
主な公費負担医療と根拠法の整理
・結核の入院・一般医療、1類・2類感染症などの入院医療 ―― 感染症法 ・措置入院、緊急措置入院 ―― 精神保健福祉法 ・自立支援医療(精神通院医療・更生医療・育成医療) ―― 障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律) ・医療扶助 ―― 生活保護法 ・未熟児養育医療 ―― 母子保健法 ・小児慢性特定疾病医療費、結核児童の療育の給付 ―― 児童福祉法 ・指定難病の特定医療費 ―― 難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律) ・予防接種健康被害救済 ―― 予防接種法 ・原爆被爆者の医療 ―― 被爆者援護法(原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律) ・戦傷病者の療養の給付 ―― 戦傷病者特別援護法
補足
・精神通院医療はかつて精神保健福祉法に、育成医療は児童福祉法に規定されていたが、2006年から障害者自立支援法(現在の障害者総合支援法)の自立支援医療に一本化された。 ・難病の医療費助成は、かつては法律に基づかない予算事業(特定疾患治療研究事業)だったが、2015年から難病法による制度となった。 ・予防接種法の対象疾病の区分は、2013年の改正で従来の「一類・二類」から「A類・B類」に改められた。A類は主に集団予防・重篤な疾患の予防を目的とし、B類は主に個人の重症化予防を目的とする(高齢者のインフルエンザなど)。 ・公費負担医療の多くは医療保険を先に適用し、残る自己負担分の全部または一部を公費で負担する「保険優先」の仕組みをとる。一方、生活保護の医療扶助は、国民健康保険に加入しない被保護者について医療費の全額を公費で負担する(被用者保険加入者は保険優先)。
POINT
・結核医療は感染症法(結核予防法は2007年に廃止・統合)。 ・措置入院は精神保健福祉法(精神保健指定医2名以上の診察、都道府県知事の権限)。 ・医療扶助は生活保護法。 ・未熟児養育医療は母子保健法(母体保護法は不妊手術・人工妊娠中絶の法律)。 ・予防接種健康被害救済は予防接種法(任意接種はPMDAの医薬品副作用被害救済制度)。
