「何時に目が覚めますか?」―不眠の“かたち”がうつ病を語る
第104回医師国家試験 C問題 第2問
国試問題にチャレンジ
うつ病の可能性が高いのはどれか。
- a.「試験の前夜は心配で眠れません」
- b.「3,4時間しか眠りませんが大丈夫です」
- c.「息が苦しくて何度も目が覚めてしまいます」
- d.「前に経験した事故の夢を繰り返し見て眠れません」
- e.「朝方3時,4時から目が覚めてその後一向に寝つけません」
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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医学生
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ドクターまとめ
不眠は入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害に分けて聴取すると、原因疾患の手がかりになります。うつ病に特徴的なのは早朝覚醒で、朝に抑うつ気分が最も強くなる日内変動と関連します。一方、出来事前夜だけの入眠困難は健常者の不安反応、短時間睡眠でも苦痛がない睡眠欲求の減少は躁状態、呼吸苦による中途覚醒は睡眠時無呼吸症候群や心不全などの身体疾患、外傷体験の悪夢の反復はPTSDの侵入症状を示唆します。非定型うつ病などでは過眠がみられることもあり、高齢者では早朝覚醒が生理的にも起こり得る点に注意が必要です。「眠れない」という訴えの中身を丁寧に聞き取り、背後に潜むうつ病を見逃さない姿勢は、どの診療科でも求められる基本的な臨床能力です。
解答・解説
正解はeです
本問は、患者の睡眠に関する訴えから、背景にある疾患を推測させる問題である。 睡眠障害(不眠)は多くの精神疾患・身体疾患に共通してみられる症状であるが、「どのような眠れなさか」を具体的に聞き取ると、原因疾患の手がかりになる。不眠は一般に次のように分類される。 ・入眠困難:寝つくまでに時間がかかる。不安・緊張が強いときに典型的。 ・中途覚醒:夜中に何度も目が覚める。身体症状(呼吸苦、痛み、頻尿など)や加齢でも起こる。 ・早朝覚醒:予定より2時間以上早く目が覚め、再び眠れない。うつ病に特徴的。 ・熟眠障害:眠った感じが得られない。 うつ病では、特に早朝覚醒が特徴的とされる。うつ病の気分には日内変動があり、朝方に最も抑うつ気分が強く、夕方にかけて軽くなることが多い。早朝に目覚めて寝床の中で悲観的な考えにとらわれ、そのまま眠れなくなるという訴えが典型的である。 したがって、各訴えを「不眠のタイプ」と「それを示唆する疾患」に照らして判断すればよい。
選択肢考察
- ×a. 「試験の前夜は心配で眠れません」
特定の出来事(試験)を前にした不安による一時的な入眠困難であり、健常者にもよくみられる反応である。試験前夜に限られていることから、普段は眠れていると考えられ、持続的な睡眠障害を伴ううつ病を示唆する訴えではない。
- ×b. 「3,4時間しか眠りませんが大丈夫です」
睡眠時間が短いにもかかわらず本人が苦痛を感じておらず、休息が取れたと感じている。これは睡眠欲求の減少であり、躁状態(躁病エピソード)の代表的な症状である。うつ病の不眠では、眠れないことを苦痛と感じ、日中の倦怠感や疲労感を訴えるのが普通であり、この点で対照的である。
- ×c. 「息が苦しくて何度も目が覚めてしまいます」
呼吸苦という身体症状による中途覚醒である。閉塞性睡眠時無呼吸症候群、心不全による発作性夜間呼吸困難、夜間の気管支喘息発作など、身体疾患をまず考えるべき訴えであり、うつ病に特徴的な不眠とはいえない。
- ×d. 「前に経験した事故の夢を繰り返し見て眠れません」
過去の外傷的体験(事故)に関する悪夢を繰り返し見るのは、心的外傷後ストレス障害(PTSD:post-traumatic stress disorder)の侵入症状(再体験症状)の一つである。PTSDではほかに、フラッシュバック、外傷を想起させる状況の回避、過覚醒(不眠、易刺激性、過度の驚愕反応など)がみられる。
- ○e. 「朝方3時,4時から目が覚めてその後一向に寝つけません」
明け方に目が覚め、その後再び眠ることができない早朝覚醒の訴えである。早朝覚醒はうつ病(特にメランコリア型の特徴をもつもの)に典型的な不眠であり、朝に抑うつ気分が最も強くなる日内変動とも関連する。よって、選択肢の中でうつ病の可能性が最も高い。
うつ病の症状(DSM-5の大うつ病エピソード)
次の9項目のうち5つ以上が2週間以上ほぼ毎日続き、そのうち少なくとも1つが①抑うつ気分か②興味・喜びの喪失であることが診断の要件である。 ①抑うつ気分 ②興味・喜びの著しい減退 ③体重・食欲の減少または増加 ④不眠または過眠 ⑤精神運動焦燥または制止 ⑥易疲労性・気力の減退 ⑦無価値感・過剰な罪責感 ⑧思考力・集中力の減退、決断困難 ⑨死についての反復思考・希死念慮
うつ病の睡眠障害
・入眠困難・中途覚醒もみられるが、早朝覚醒が特徴的である。 ・非定型の特徴を伴ううつ病や双極性障害のうつ状態では、逆に過眠がみられることがある。 ・睡眠ポリグラフでは、レム睡眠潜時の短縮、深睡眠(徐波睡眠)の減少などが知られている。
不眠と疾患の対応の整理
・入眠困難:不安障害、ストレス反応、むずむず脚症候群など ・中途覚醒:睡眠時無呼吸症候群、心不全、前立腺肥大症による夜間頻尿、疼痛、高齢者など ・早朝覚醒:うつ病、高齢者 ・睡眠欲求の減少(短時間睡眠でも苦痛なし):躁状態 ・悪夢・過覚醒:PTSD
臨床上の注意
不眠を主訴に内科などを受診する患者の中にうつ病が隠れていることは少なくない。「眠れない」という訴えを聞いたら、不眠のタイプを具体的に聞き取るとともに、抑うつ気分や興味の喪失、食欲低下などを確認し、うつ病の可能性を念頭に置く必要がある。
POINT
・うつ病に特徴的な不眠は早朝覚醒である(朝に抑うつが強い日内変動と関連)。 ・睡眠時間が短くても苦痛がない「睡眠欲求の減少」は躁状態を示唆する。 ・外傷体験の悪夢の反復はPTSDの侵入症状。 ・呼吸苦による中途覚醒は睡眠時無呼吸症候群や心不全などの身体疾患を考える。 ・不眠は入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害に分けて聴取する。
