分母はどっち?―1秒率64%を正しく導く肺機能検査の読み方
第104回医師国家試験 B問題 第62問
国試問題にチャレンジ
肺機能検査の結果を示す。 肺活量3,200 mL,予測肺活量3,600 mL,1回換気量576 mL,努力肺活量3,000 mL,1秒量1,920 mL 1秒率を求めよ。 解答:①② %
対話形式の解説
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ドクターまとめ
1秒率(Gaensler法)は1秒量を努力肺活量で割って求め、本問では1,920÷3,000×100=64%となります。分母を肺活量にするとTiffeneau法の60%となり誤答になるため、提示された肺活量、予測肺活量、1回換気量といった不要な数値に惑わされないことが重要です。結果の解釈では、1秒率70%未満で閉塞性、%肺活量80%未満で拘束性換気障害と判定し、本例は%肺活量が約89%のため閉塞性換気障害のパターンです。COPDではエアトラッピングにより努力肺活量が肺活量より小さくなることがあり、診断は気管支拡張薬吸入後の1秒率、病期分類は%1秒量を用いる点も区別しておきましょう。各指標の定義を正確に理解することは、スパイロメトリーの結果を臨床で読み解く土台になります。
解答・解説
正解は64 %です
求めるもの
1秒率(FEV1%:forced expiratory volume in 1 second percent)は、最大吸気位から一気に強く吐き出したとき、最初の1秒間に吐き出せた量(1秒量、FEV1)が、吐き出せた全量に対して何%を占めるかを示す指標である。
式
一般に用いられるのはゲンスラー(Gaensler)の1秒率で、分母は努力肺活量(FVC:forced vital capacity)である。 1秒率(%)= 1秒量 ÷ 努力肺活量 × 100
計算
1,920 mL ÷ 3,000 mL × 100 = 0.64 × 100 = 64% よって解答は 64 である。
ひっかけの数値に注意
問題文には肺活量(VC)3,200 mL、予測肺活量 3,600 mL、1回換気量 576 mL も並んでいるが、1秒率の計算には使わない。 ・分母を肺活量にするとティフノー(Tiffeneau)の1秒率となり、1,920 ÷ 3,200 × 100 = 60% と別の値が出てしまう。国試で単に「1秒率」といえばGaensler法(分母はFVC)と考える。 ・予測肺活量は%肺活量(%VC)の計算に使う値であり、3,200 ÷ 3,600 × 100 ≒ 88.9% となる。 ・1回換気量は安静呼吸1回あたりの換気量で、1秒率とは無関係である。
結果の解釈
1秒率 64% は基準の70%を下回るため閉塞性換気障害に該当する。一方、%肺活量は約89%で80%以上を保っているので拘束性換気障害はない。したがって本例は閉塞性換気障害のパターンと判定される。
肺気量分画と主な指標
・1回換気量(TV):安静時に1回の呼吸で出入りする空気量。成人で約500 mL前後。 ・肺活量(VC):最大吸気位から最大呼気位までゆっくり吐き出した量。 ・努力肺活量(FVC):最大吸気位からできるだけ速く強く吐き出したときの全呼出量。 ・1秒量(FEV1):FVC測定時の最初の1秒間の呼出量。 ・%肺活量(%VC):実測VC ÷ 予測VC × 100。予測値は性別・年齢・身長から算出する。
換気障害の分類
・%VC 80%以上かつ1秒率 70%以上:正常 ・%VC 80%未満、1秒率 70%以上:拘束性換気障害(間質性肺炎、肺線維症、胸郭変形、神経筋疾患など) ・%VC 80%以上、1秒率 70%未満:閉塞性換気障害(COPD、気管支喘息など) ・両方とも低下:混合性換気障害
VCとFVCの関係
健常者ではVCとFVCはほぼ等しい。しかしCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などでは、強く吐き出すと胸腔内圧の上昇で末梢気道が早期に閉塞し、空気が肺内に取り残される(エアトラッピング、air trapping)。このためFVCがVCより小さくなることがある。本問でもFVC(3,000 mL)がVC(3,200 mL)より小さく、閉塞性障害と矛盾しない。
COPDの診断と病期
COPDの診断は気管支拡張薬吸入後のFEV1/FVCが70%未満であることが基本となる。病期分類には1秒率ではなく%1秒量(%FEV1:予測1秒量に対する実測1秒量の割合)を用いる点も区別して覚えておく。
POINT
・1秒率(Gaensler)= 1秒量 ÷ 努力肺活量 × 100。分母はFVCであり、VCではない。 ・本問:1,920 ÷ 3,000 × 100 = 64%。 ・1秒率 70%未満で閉塞性換気障害、%肺活量 80%未満で拘束性換気障害。 ・計算に不要な数値(VC、予測VC、1回換気量)に惑わされない。分母をVCにすると60%(Tiffeneau法)となり誤答になる。
