駆血帯はいらない、リキャップはしない―写真で学ぶ動脈血採血の正しい作法
第104回医師国家試験 C問題 第3問
国試問題にチャレンジ
血液ガス分析用の動脈血採取についての写真(①~⑤)を別に示す。 正しく行われているのはどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
動脈血採血は静脈採血と似ているようで、いくつかの重要な違いがあります。動脈は内圧が高く拍動を触知して穿刺するため駆血帯は不要であり、穿刺前には手袋を着用したうえで穿刺部位を十分に消毒します。抜針後は医療者が自ら5分以上確実に圧迫止血し、患者任せにしたり肘を曲げて押さえさせたりしてはいけません。使用済みの針はリキャップせず専用廃棄容器に捨て、血液ガス検体は空気を除いて密閉し速やかに測定します。標準予防策と針刺し事故防止の原則は、あらゆる侵襲的手技に共通する医療安全の基盤であり、臨床実習の段階から確実に身につけておくべき知識です。
解答・解説
正解はbです
本問は、血液ガス分析のための動脈血採血(動脈穿刺)の手技を写真で確認する問題である。写真はいずれも肘窩(肘の内側)での採血場面で、上腕動脈の穿刺を想定している。 写真の内容は次のとおりである。 ①上腕に駆血帯を巻いている。 ②手袋を着用した術者が、穿刺部位の肘窩を綿で消毒している。 ③素手の術者が、一方の手指で動脈の拍動を触れながら注射器を刺入しようとしている。 ④採血後、患者自身が肘を曲げて綿を挟み、押さえている。 ⑤採血後の注射針に、両手でキャップをかぶせようとしている(リキャップ)。 動脈血採血を正しく行うための要点は、次の4つに整理できる。 ・動脈は内圧が高く拍動を触れて穿刺するので、駆血は不要である。 ・穿刺部位をしっかり消毒する(清潔操作)。 ・血液に触れる可能性がある手技なので、標準予防策(スタンダードプリコーション)として手袋を着用する。 ・動脈は静脈より止血しにくいため、術者(医療者)が責任をもって十分な時間の圧迫止血を行う。 ・使用後の針はリキャップせず、ただちに専用の廃棄容器に捨てる。 これらの原則に照らして各写真を評価すると、正しく行われているのは消毒の場面である②のみとなる。
選択肢考察
- ×a. ①
駆血帯を巻いている。駆血帯は静脈の還流をせき止めて静脈を怒張させ、静脈採血を行いやすくするための道具である。動脈は内圧が高く、駆血しなくても拍動を触知して穿刺できるので、動脈血採血には駆血帯は不要である。むしろ駆血により末梢の血流が変化し、拍動の触知が難しくなるおそれもある。
- ○b. ②
手袋を着用したうえで、穿刺部位をアルコール綿などで消毒している。動脈穿刺は深部の血管に針を刺す侵襲的な手技であり、感染予防のために穿刺前に十分な消毒を行う必要がある。術者の手袋着用と穿刺部位の消毒という、正しい手順が示されている。
- ×c. ③
術者が素手で動脈を触知し、穿刺しようとしている。採血は患者の血液に曝露される可能性のある手技であり、標準予防策に従って手袋を着用しなければならない。手袋は術者の血液感染(B型・C型肝炎、HIVなど)を防ぐと同時に、患者への汚染を減らす役割もある。
- ×d. ④
採血後の止血を患者自身に任せ、しかも肘を曲げて綿を挟む形で押さえている。動脈は内圧が高いため静脈よりも出血しやすく、止血が不十分だと血腫を形成しやすい。動脈穿刺後は、医療者が穿刺部位を指で確実に圧迫し、少なくとも5分程度(抗凝固療法中などではさらに長く)止血を行い、出血や血腫がないことを確認する必要がある。肘を曲げた状態では圧迫点がずれやすく十分な圧迫が得られにくいので、肘を伸ばした状態で直接圧迫するのが望ましい。
- ×e. ⑤
使用済みの注射針にキャップをかぶせる(リキャップ)動作は、針刺し事故の主要な原因であり、原則として禁止されている。使用後の針はリキャップせず、その場で耐貫通性の専用廃棄容器に捨てる。血液ガス分析用の検体では、針を安全装置付きの器具などで外し、注射器の先端を専用キャップで密閉して空気の混入を防ぐ。
動脈血採血の穿刺部位
・橈骨動脈:表在性で触知しやすく、圧迫止血が容易。穿刺前に尺骨動脈からの側副血行を確認するアレンテスト(Allen test)を行うことがある。 ・上腕動脈:肘窩で触知する。近くに正中神経が走行するので注意する。 ・大腿動脈:鼠径部で触知する。太く穿刺しやすいため、病棟のベッドサイドや緊急時によく用いられる。近傍に大腿静脈・大腿神経がある。
手順の概要
①必要物品(ヘパリン加の血液ガス用シリンジ、消毒綿、手袋、廃棄容器など)を準備する。 ②手指衛生を行い、手袋を着用する。 ③動脈の拍動を触知して穿刺部位を決め、消毒する。 ④拍動を触れながら穿刺し、必要量を採取する。動脈血は内圧で自然にシリンジ内に流入してくることが多い。 ⑤抜針後、ただちに穿刺部を5分以上圧迫止血する。 ⑥針はリキャップせずに廃棄し、シリンジ内の気泡を除いて密閉する。 ⑦検体は速やかに分析する。すぐに測定できない場合は冷却して保存する(空気が混入したり時間がたったりすると、PaO2・PaCO2の値が変化する)。
標準予防策(スタンダードプリコーション)
すべての患者の血液、体液、分泌物、排泄物、傷のある皮膚、粘膜を感染の可能性があるものとして扱う考え方である。血液に触れる可能性がある処置では手袋を着用し、飛散のおそれがあればマスク・ゴーグル・ガウンも用いる。
針刺し事故の防止
リキャップの禁止、使用直後の専用容器への廃棄、安全装置付き器材の使用が基本である。針刺し事故が起きた場合は、ただちに流水で洗浄し、所定の報告と感染症(HBV、HCV、HIV)の検査・予防措置を受ける。
POINT
・動脈血採血では駆血帯は不要(静脈採血との違い)。 ・穿刺前に消毒し、術者は手袋を着用する(標準予防策)。 ・抜針後は医療者が5分以上しっかり圧迫止血する。患者任せにしない。 ・使用済みの針はリキャップ禁止。そのまま専用廃棄容器へ。 ・血液ガス検体は空気を除いて密閉し、速やかに測定する。
